フランス・ドイツの政治体制
フランスとドイツの政治体制は、ともに大統領制と議院内閣制の両方を取り入れていますが、ドイツの方がより議院内閣制に近いかたちとなっています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
「半大統領制」のフランス
フランスは大統領と議院内閣制の折衷型です。国民から直接選挙で選出される大統領とは別に、議会から選出される首相と内閣があります。
実質的には「議院内閣制」のドイツ
ドイツは大統領と首相が存在しますが、大統領は象徴的・形式的なものにとどまっており、政治の実権は首相が握っているため、実質的には議院内閣制となります。
フランス・ドイツの大統領
フランスとドイツは大統領がいる国家です。しかし、大統領の役割は大きく異なります。
強い権限のフランス大統領
フランス大統領は国家元首であり、首相の任免権、議会の解散権、憲法改正の発議権などといった強い権限を持ちます。議会は大統領に対する不信任決議権を持たないため、任期途中で解任されることはありません。
大統領は国民の直接選挙によって選出されます。任期はかつては7年でしたが、2000年の国民投票による憲法改正によって5年となりました。また、2008年からは三選が禁止となっています。
2021年現在は、マクロン大統領です。
弱い権限のドイツ大統領
ドイツの大統領は象徴的・形式的な存在で、政治的な権限がありません。
フランスとは異なり、大統領は国民の直接選挙ではなく連邦会議で選出されます。任期が5年で三選禁止であることは同じです。
フランス・ドイツの首相
フランス・ドイツには大統領だけではなく首相がいますが、ここでもフランスとドイツでは大きな違いがあります。
フランスの首相と内閣
首相は大統領から任命されます。また、内閣を組織する大臣は首相の提案に基づき、大統領が任命します。大臣は国会議員との兼職が禁止です。
内閣は国政の決定・遂行、行政機構と軍隊の管理・運営を行い、議会に対して責任を負います。
強い権限のドイツ首相
ドイツでは、実質的権限を権限をもつのは首相になります。首相は連邦会議で選出され、連邦会議に対して責任を負います。
2021年現在は、ショルツ首相です。
フランスのコアビタシオン
フランスでは、大統領の所属政党と首相の所属政党が異なる状況が起こります。これを「コアビタシオン」と言い、日本語では「保革共存政権」と訳されます。
フランスでは、大統領が国民から選ばれるため、大統領の所属政党と議会の多数派政党が異なることが起きるのです。この状況では、大統領の議会運営は難しくなり、内閣が不信任されたり、政策に必要な法案が通らなくなったりする可能性があります。そのため、首相を多数派政党の他党から選び、議会運営を円滑に進められるようにします。
フランス・ドイツの議会
フランスとドイツの議会は、共に二院制です。それぞれの特徴をみていきましょう。
フランス議会
フランスの議会は元老院(上院)と国民議会(下院)の二院制です。解散がある下院の優越があり、国民議会は内閣不信任決議、予算先議権を持ちます。
ドイツの議会
ドイツの議会は連邦参議院(上院)と連邦議会(下院)の二院制です。連邦参議院は非民選議員で構成されます。連邦議会は小選挙区比例代表制により選出され、下院の優越があります。
フランス・ドイツの裁判所
司法の最高機関である裁判所には、どのような特徴があるのでしょうか?
フランスの裁判所
フランスの裁判所の特徴は、司法裁判所(刑事・民事裁判)と行政裁判所が分離していることです。最高裁判所にも違憲立法審査権はなく、憲法院が違憲審査を行う憲法裁判所となります。
ドイツの裁判所
ドイツの最高裁判所である連邦憲法裁判所は、具体的な訴訟がなくても、抽象的に法律の合憲性を審査することができます。
フランス・ドイツの政党制
フランス・ドイツは共に多党制です。多党制とは、多数の政党が政権獲得を目指して競合する政治状態を指します。過半数を占める政党が存在しないため、複数の政党による連立政権となります。
多党制の場合、多様な国民の意見を反映することができ、世論に基づく政治運営ができるといったメリットがありますが、一方で政権内の対立から連立が解消されるなどして、政権が不安定になりやすいといったデメリットもあります。
まとめ
以上「フランス・ドイツの政治制度」について解説させていただきました。
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