はじめに
イギリスでは2022年10月1日から光熱費の更なる値上げが行われました。
現在の価格から予想される年間に支払う1世帯の光熱費は、前年度に比べて80%近く上昇することが見込まれています。
既に一部市民からは不払い運動が起こっています。
11月に入ってから、身体が不自由な子供を持つ母親が、支払いが出来ない状況に陥りそうだとしてクラウドファンディングで支払い金額を募ったところ、イギリス女優のケイト・ウィンスレットが運営している慈善団体から寄付があったことが公になり、市民を驚かせました。
本格的な冬が訪れているイギリスですが、如何に節エネを行うかが人々の話題の一つになっています。これからクリスマス・シーズン到来のイギリスですが、今年はどこも寒く、暗いクリスマスになりそうです。
イギリスの2022年10月のエネルギーの上昇の推移 → 月5万円の光熱費
2022年10月1日より電気ガス代料金の値上げに伴い、イギリス政府は世帯当たりの年間予想料金を発表しました。
前年度の£1971(約331,128円 £1ポンド=168円換算)に比べ、80%近い上昇の£1578(約26514円)を上乗せした£3549(約596,232円)と発表されまました。
月々当たり1世帯日本円にして約5万円の光熱費となることから理解できるように一般家庭においてはかなりの重荷となる額と言えます。
イギリスでは地域によって光熱料金に差があります。下記表は主な地域別平均電気料金価格の推移を示すものです。電気料金には5%の消費税が加算されて請求されます。
地域別電気料金(税抜き価格)
地域4 | 平均的価格値(ペンス/kwh)2021年 | 2022年4月~9月 | 2022年10月(予測) |
ミッドランド東部 | 18.4 | 26.3 | 31.9 |
東部 | 18.8 | 27.8 | 33.8 |
ロンドン | 18.9 | 28.2 | 34.2 |
マージーサイド&ウェールズ | 20.2 | 28.2 | 34.2 |
北部 | 18.4 | 25.8 | 31.3 |
北スコットランド | 19.3 | 26.6 | 32.3 |
北西部 | 18.4 | 26.7 | 32.4 |
南東部 | 19.5 | 26.5 | 32.2 |
南スコットランド | 18.8 | 26.5 | 32.2 |
南ウェールズ | 19.5 | 26.9 | 32.7 |
南西部 | 19.5 | 27.1 | 32.9 |
南部 | 18.8 | 27.1 | 32.9 |
ミッドランド | 18.6 | 26.5 | 32.2 |
ヨークシャー | 18.2 | 26.1 | 31.7 |
全英平均(税込) | 18.9 | 28 | 34 |
ガス料金
値上げ時期 | 価格(ペンス) | 上昇率 |
2022年3月 | 4.1/kWh | |
2022年4月1日 | 7.4 /kWh | 80%上昇 |
2022年10月1日 | 15/kWh | 103%上昇 |
英国政府によるエネルギー費用援助対策
トラス前首相によって発表された減税政策ミニ・バジェット(小さな予算)は失敗に終わり、多くの項目が撤回され、2022年10月17日に首相の座を辞任しました。
しかしながらその減税政策に折り込まれていた、エネルギー費用の援助対策は期間の短縮がなされたものの実行されることとなりました。これらの援助政策は、2022年10月から2023年3月までの冬季6ヶ月間を限定として施行されるものです。
対象世帯においては下記の通り、援助費用を受け取ることが出来ます。
北アイルランド世帯
北アイルランド世帯は合計400ポンド
イギリス、ウェールズ、スコットランド
2022年10月、11月 66ポンド/月
2022年12月、20223年1月、2月、3月 67ポンド/月
トレーラー・ハウス、ボート・ハウス、電線の接続がない世帯
400ポンドを上限に世帯エネルギー費用の1%の援助資金の提供
世帯状況別予想エネルギー費用
年間£3549(約596,232円)のエネルギー費用の算出基準は、イギリス全体を100と想定した場合、75番目から上にランクされた世帯の支払い予測です。
世帯によっては一人暮らしであったり、居住人数が多い世帯で光熱費の消費が多かったりと世帯内容は様々です。下記に示す試算表は世帯内容別にみた消費予測です。
全体を100と想定した場合のランキング別予想年間エネルギー消費金額
代表的世帯のエネルギー別費用 | 100世帯中 | 使用kW量 | 月額 | 四半期毎 | 年間 |
ガス | 低25番目 | 8000 | £67 | £200 | £800 |
中50番目 | 12000 | £100 | £300 | £1200 | |
高75番目 | 17000 | £142 | £425 | £1700 | |
電気 | 低25番目 | 1800 | £51 | £153 | £612 |
中50番目 | 2900 | £82 | £247 | £986 | |
高75番目 | 4300 | £366 | £366 | £1462 |
光熱費合計予想(£1=168円)
合計光熱費 | 月々 | 四半期 | 年間 |
低(25番目) | £118(19,824円) | £353(59,304円) | £1412(237,216円) |
中(50番目) | £182(30,576円) | £547(91,896円) | £2186(367,248円) |
高(75番目) | £264(44,352円) | £791(132,888円) | £3162(531,216円) |
10月分光熱費の請求書
下記はミッドランド地域居住両親2人子供2人の一般家庭の光熱費の請求書です。10月はまだそれほど寒さが厳しくなかったため、暖房費用は以後更なる上昇が見込まれます。
イギリスの夏は日本のように高温にならないため、ほとんどの家には冷房はなく、冬にガスによるセントラルヒーティングシステムで暖を取る仕組みとなっています。そのためガス代の高騰はまさに生活費を直撃するのです。
請求書からも見て分かるように、年間予想支払い金額は£1463+£2289=£3752とほぼ政府の光熱費年間支払い予想金額に近い金額になっています。
原子力発電で今後の電力を確保する計画ですが、稼働には数年を要するため、新たなガス・石油開発も視野に入れています。これが環境保護団体の強い抗議行動にもつながっているため、今後どのように市民生活の確保と環境保護団体の抗議活動の鎮火を行って行くのかも課題となるでしょう。
政府の光熱費援助金は直接光熱費から差し引かれ請求される仕組みになっています。しかしながらイギリスも日本と同様にメールや携帯電話のメッセージによる還付詐欺が横行しています。エネルギー費用還付を行うと言ってクレジットカードの情報を盗み取る手口で、政府は詐欺被害に遭わないように呼びかけています。
今後のエネルギー確保対策 →そして、原発へ
エネルギー源を原子力発電にシフトするために、イギリスではすでに新規原子炉8基の新設許可がすでに下ろされています。
2050年までには最大発電量を現在の3倍の水準24ギガワットに引き上げることで、電力需要の最大25%を賄うことが出来るという予測です。
2022年には北海の石油・ガス新規プロジェクトへのライセンス配布を計画しているものの、2030年までにはガス消費量を40%以上削減することを目標に掲げています。
その他クリーンエネルギーとして、風力発電や太陽光発電に力を入れており、今後は住宅・商業施設などでは太陽光パネルの設置がルール化される予定です。
まとめ 2022年のイギリスの冬は、ふところ事情も極寒へ
天然資源であるガスに関しては年明けに新たな値上げがあるのではないかと噂されていることもあり、ますます日常生活に更なる節エネ努力が課題となってきそうです。
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