教育委員会って何でしょうか?
まず、「教育委員会」についてご紹介します。
教育委員会とは、都道府県及び市町村等に置かれる「合議制の執行機関」で、教育行政における重要事項や基本方針を決定し、それに基づいて教育長が具体の事務を執行生涯学習、教育、文化、スポーツ等の幅広い施策を展開します。
教育長をトップとして、首長(知事または市町村長)から独立した機関となっており、市長権限とは別とすることにより中立的に専門的な運営が出来るような構造になっています。
教育委員会は大変大きな部署であり、当市であれば下記の課で構成されていました。
教育委員会は、地域の公共事務のうち、教育、文化、スポーツ等に関する事務を処理。
学校教育の振興
・学校の設置管理
・教職員の人事及び研修
・児童・生徒の就学及び学校の組織編制
・校舎等の施設・設備の整備
・教科書その他の教材の取扱いに関する事務の処理生涯学習・社会教育の振興
・生涯学習・社会教育事業の実施
・公民館、図書館、博物館等の設置管理
・社会教育関係団体等に対する指導、助言、援助芸術文化の振興、文化財の保護
・文化財の保存、活用
・文化施設の設置運営
・文化事業の実施スポーツの振興
・指導者の育成、確保
・体育館、陸上競技場等スポーツ施設の設置運営
・スポーツ事業の実施
・スポーツ情報の提供
教育総務課
小・中学校、幼稚園の庶務関係、施設管理全般を行うなど、教育関係全般の庶務業務を一手に引き受けています。事務職員は数名ですが市内全体の学校を管理し維持する為、非常に大変な事務ワークに忙殺されます。
学校教育課
小学校、中学校、幼稚園の運営管理と学校事務にかかる総括的な事務、学習や指導に関する相談の窓口であり、指導助言をします。こちらも数名の先生たちが配属され市内全体の学校の事務を総合的に運営管理する必要があるので先生たちはひっきりなしに飛び回りっぱなしです。
生涯学習課
青年会、婦人会、高齢者連合会等、各種教育団体の指導助言を行い、人材育成と地域の文化、社会教育の向上に努めます。図書館、公民館、カルチャーセンター等、総合学習の提供の場であり学びの場であり、子どもから大人まで幅広く地域と密接にかかわる課であり、私はこの課で5年在籍しました。
史跡整備課
文化財の保護、保存のために、さまざまな調査を行い、調査成果をもとに市史の編纂や報告書を刊行市民へ普及します。郷土の歴史・風俗・慣習や多くの文化遺産に対する市民の方々の理解を深めるための仕事を行います。
当市の教育委員会は本庁とは別に置かれ市民の方が活用される施設の中に配置されていたので毎日市民の方との触れ合いがありました。市によっては本庁の中に配置されていることもあります。
では、ここから私がいた教育委員会の生涯学習課の1年の流れをご紹介していきます。
教育委員会の生涯学習課の1年の流れ
生涯学習課は市民課等のような1日で始まり1日で〆るという事務の流れではなく、年間通して各種の事業を追っていくイメージです。
絶えず人が出入りし、異動初日から各種団体の方が来られ新年度の事業について話会う会議がもたれます。どの事業も前年度のうちに次年度はあの事業をするということが決定されますがそれを実際運営していくのは新年度の役員とこちらの事務局側です。うまく年間通して運営を進めていけられるかは各種団体の皆様と事務局の私たち側との連携次第です。
事務局は事業案内のラベルシール作りから各種団体の名簿作成、事業しおり作成、団体との企画立案等、各団体がもっている事業が健全運営できるよう助言していきます。
ただ、この「事業が健全運営出来るよう」というのがとても大変であり、要な部分です。
例えば、一例を挙げます。
【高齢者等の団体の年間事業】
4月 代表者会議・総会
5月 他市協会との交流事業
6月 各種地区イベント開催
7月 芸術祭
8月 市民文化祭
9月 研修旅行
10月 文化講演会
1月 新年会
3月 記念出版集創刊
ご覧の通りほぼ毎月事業があります。一職員が担当するのはこの高齢者団体だけではありません。
例えば、青年等の団体であれば、1月の成人式の本番に向け夏頃から新実行委員会の募集をかけます。 広報や各種公民館を通し依頼活動が始まり、その後各地域から選ばれた委員が集まり第一回顔合わせをし、そこから成人式の企画立案運営をどう行っていくのか毎月会議を重ねていきます。
婦人会やその他団体も全て4月から翌年度3月まで全て年間計画が既にありそれに基づき事業を走らせるので一人の事務担当職員で青年会、高齢者、婦人会と各種団体の事業を任されます。実際には副担当が付きますが、その副担当は別の主担当を任されている為、実質自分だけで各種団体の対応をしていくことになります。
毎日が戦場に化します。例えば8月から高齢者団体の市民文化祭が開催されるとしても前月から準備が始まるわけではありません。4月の総会と同時に文化祭実行委員会を同時期に立ち上げ文化祭のテーマ、今年の企画、今年の運営方針を全て決めていきます。
4月のこの実行委員会で決められた計画に基づいて5月広報等のお知らせ、ちらし、パンフレットのデザイン作成、印刷会社手配、文化祭の施設予約、1ヶ月以上にも渡る文化祭のリハーサル準備等、8月までの本番までに毎日朝から夜まで追われることになります。
しかし、その前月の7月には芸術祭が開催予定となっている為、これも4月の初期段階からとりかからないことには本番に間に合いません。しかし4月には役員の改選がある総会本番の月であり、異動初月から走りっぱなしです。
同時平行で成人式実行委員会の募集もかけ夏には第一回目の実行委員会を開催しなくてはいけないので各公民館への実行委員依頼等も早めにお願いが必要です。
このように、4月から複数事業を同時展開で長期のゴールを目指して走り始めます。
公民館との連携
生涯学習でとても大事な役割を担うのが各地にある公民館です。地域住民にとって一番身近な場所というだけでなく交流や避難所として重要な役割を果たしています。全ての公民館に市職員が配置され各館長や嘱託・臨時職員が配置されます。
そして、毎月一回各公民館職員が集まり報告会をします。その際、私も勿論出席し各公民館の事業の流れや報告連絡を聞き、そして教育委員会、連携各他部署からの連絡を各公民館職員に連絡します。
実はこの場がちょっと面白かったです。各地域の情報がリアルに各主事を通しあがってくるからです。どんなことに主事が困り、どんなことで住民からクレームが入り、今の公民館が抱えている問題が実に生生しく聞けるのです。
各地域の主事や館長がどう解決しそれを他地公民館とどう連携し市としてどう総合的に検討出来るか捉える大変良い機会となります。
図書館との連携
生涯学習では読書の推進も重点的に薦められます。
実際の読書の読み聞かせ等を推進していくのは図書館ですが、子どもたちが出来るだけ自主的に読書に親しみ、学ぶ楽しみや知る喜びを体得していけるよう図書館と連携し当課はその推進計画の策定をしていきます。
【まとめ】教育委員会の大変さ、楽しさ
上記でずっと触れてきましたがやはりなんといっても年間通して事業を追っていくので気持ちが休まりません。ゴールが無いのです。1日仕事をどっさり片付けても成果はまだ到達しません。
朝からある団体の会議に出席し、それが終わるとまとめる間もなく、次の別団体の会議が入っています。その準備し会議に向かう途中も絶えず他の団体事業関係者から問い合わせの電話が殺到します。
なので、私のモットーは、「今!その場で解決!」の対応を目指していました。
後回しにするともう二度と対応出来ない位の要求量が順次あるので次々対処していかないことには追いつかないのです。一度後回しにしてしまうと次気が付く頃にはクレームに変化してしまいます。
そこで私は「事務局の縮小化」に重点を置きました。「何でも市役所がやってくれるだろう まかせておけばなんとかなる」という市役所が大きい存在ではなく、地域住民の方一人一人が主導で活動を展開する意識作りに努めました。事務局の自主運営化を目指したのです。
これは、実は何年も前からの歴代担当者の引継ぎ事項でした。市役所側がやることが年々多くなり、少子高齢化に伴い益々活動自体が衰退していく中で殆ど事務局頼みの傾向が顕著となっている状況。この流れを変える必要があるというのは当市だけでなくとも各地域の自治体様が抱える問題であると思われます。
本来の団体活動とは一人一人がその活動自体が好きだからこそその活動をし、仲間が集まって活動したいという意思表示申請し施設を使う。一団体として自分たちで活動するより団体同士が大きい文化団体に加入することでより大きなアドバンテージを得るために文化団体に加入する。
アドバンテージとは何かといえば他団体との交流を深め情報交換が出来たり親密交流に発展したり活動の提供の場であったりします。
誰にとっても、何歳の方であろうが「自分がしたいことをする」のが一番本来の姿であり、楽しめる方法です。文化交流がしたい、語学を習いたい、習字を習いたい、そんな学習する意欲は学生だけのものではなく、生涯通じて一生の宝になるものです。
ただ、なんらかしらの活動を全体加盟の団体一員としてやる場合にはどうしてもそのアドバンテージからくる義務も生じます。予算立てであったり、会議であったり、時にはチラシ作成であったり手伝いを頼まれるかもしれません。
その際に、それは市役所がやってくれるだろうというスタンスでは本来収穫出来る一番美味しい部分が半減になってしまうことを実は気づかれている方は少ないです。その大変さを通してこそ生まれる最後の収穫の果実の美味しさは前段の大変さの量によって変化するのです。
文化活動とは自分の本来の良さ、素敵な自分発見、好きなものを通じより自分の人生を豊かにしていける手立てになるものです。事務は大変でも、計画を立てるのは大変でもそれらを達成していく過程が一つの事業終了時に達成感が増し、自分を助けてくれた仲間にも感謝を感じられるきっかけになるかもしれません。
私は生涯学習課に5年間在籍する間に当市が歴代懸案事項で引き継いできた問題「各種団体の事務局の自主運営化」を成功させました。それは、何も市役所の為ではありません。地域住民の方々の最高の楽しみの手段が自主運営化であったと捉えています。それは、実は皆様が知らなかっただけで、案外やってみたら「楽しかった!」というところに尽きます。
最初は加入団体会員のほぼ全員の方がそれは市役所がするのが当たり前、嫌よ。面倒くさい、という感覚にしかなかった皆様がいつの間にかそれは「自分たちでやってもいいかな?手伝おうか?」という気運が生まれ、次第に「自分たちでやろうか!やりたいかも!」というお声を頂くようになり最後には、「自分たちで事務局運営をやってみたいのだけどどうか」と相談されるに至りました。
当市としてはそのお声を頂いたきっかけにより、翌年から事務局の予算を別に取り事務局長を起き、自主運営されています。そして、当市の生涯学習課は文字通り、「各団体がもっている事業が健全運営できるよう助言する」になっています。
私が異動で去る際には当初の事業数より増えている位活気を取り戻しました。最初は会議一つの施設予約さえこちらが部屋を押さえ、会議の資料もこちらが準備をし、会議中の進行も一番頭に入っているのはこちら、というなんともな有様だったものがいつの間にか見事こちらが助言するだけで、司会進行、会議の資料作りも全て各団体会員が集まって会議をされていました。
人材育成、人と人が集まり、人が人から学び、人と人の絆を知り、人の貴重さに気づく。
それが、結局、自分の素敵さを発見する良い機会になるのかもしれません。教育委員会に配属された当初は週末も、朝も夜もずっと会議ばかりで家庭そっちのけの仕事三昧で大変でしたが、しかし、常に楽しさが一杯で充実していました。
私にとって有意義と感じられたのは、その何より各種団体会員様との触れ合いを通じ、その方とのご縁を頂戴し、深い人間味に気づけ生涯学習の大事さを目の当たりに感じられたからかもしれません。ひいてはそれが相手の魅力を知るきっかけとなり、最終的には自分自身の魅力に気付くきっかけを頂きました。
市役所に入庁し、このような教育委員会で得た貴重な経験は正に私の人生の宝の時間となりました。
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