アラブ首長国連邦ってどんな国?
「アラブ首長国連邦」は、漢字による当て字では「阿拉伯首長国連邦」と表記します。正式名称は「アル=イマーラート・ル=アラビーヤトゥ・ル=ムッタヒダ」で、英語では「United Arab Emirates」と表記します。略称は近年、日本でも英字略である「UAE」を使用することが多くなっています。
「アラブ首長国連邦」は、7つの首長国によって構成される連邦国家です。首長国とは、世襲により国家を治める首長が君臨する国家のことで、連邦国家とは、複数の国や州が同じ主権の下に平等に結合している国家形態です。
また、世襲とは、国の官位や爵位、職業、財産などを、嫡系の子孫が代々受け継ぐことです。
面積・場所について
「アラブ首長国連邦」の国土の広さは、約83,600平方キロメートルで、日本領土の約4分の1、北海道程度の大きさです。
「アラブ首長国連邦」の場所は、西アジア・中東のアラビア半島の南東部にあり、サウジアラビアとオマーンと隣接し、アラビア湾とオマーン湾に面しています。国土の大部分は、砂漠地帯で平坦な国土ですが、オマーンと接する東部は山岳地帯でありオアシスもあります。
都市について
「アラブ首長国連邦」の首都は「アブダビ(Abu Dhabi)」で、アブダビ首長国の首都でもあります。アブダビ(首長国)はアラブ首長国連邦国土の約80%を占め、連邦の政治経済を支えています。
第2の都市が「ドバイ(Dubai)」ですが、人口は約244万人でアラブ首長国連邦の中、最も多く人が住んでいます。ドバイはドバイ市のみで首長国を構成する都市国家で、中東の金融センターとしても、世界的な観光都市としても有名です。2020年には中東初の万国博覧会が、ドバイで開催予定です。
人口について
「アラブ首長国連邦」の人口は、約927万人(2016年)で、日本で2番目に多い神奈川県の人口とほぼ同じです。首都のアブダビ(約200万人)と第2の都市ドバイ(約244万人)に人口の約半分の人が住んでいます。
成り立ちについて
現在のアラブ首長国連邦の領域には、紀元前5500年頃の人類居住痕が存在し、紀元前2500年頃にはアブダビ周辺で国家が成立していて、古代文化が栄えていた周辺です。
7世紀にはイスラム帝国の支配をうけ、イスラム教が広まりました。その後オスマン・トルコ、次いでポルトガルの支配を受けます。
17世紀から18世紀頃にアラビア半島南部から移住してきた部族によって、現在のアラブ首長国連邦の基礎が形成されました。18世紀から19世紀にかけては「アラブ海賊」の海上勢力が活発になり、オマーン王国やイギリス東インド会社と激しく対立しましたが、1853年イギリスと休戦協定を結び、以後ペルシア湾に面する海域は休戦海岸と呼ばれました。その結果、この地域は1892年までに、すべての首長国がイギリスの保護領になりました。
1950年代になると石油探査が始まり、ドバイとアブダビで石油が発見され、交易国家としての基盤を固め、有力国家の一つに成長します。1968年イギリスのスエズ運河以東撤退の宣言を契機に、独立存続困難な小規模の首長国を中心に、連邦国家結成の動きが高まりました。
当初は、カタールやバーレーンを含んだ9首長国での結成を目指していましたが、1971年12月、アブダビ及びドバイを中心とする6首長国が統合して連邦を建国、翌1972年ラアス・ル・ハイマ首長国が加入して、現在の7首長国による体制を確立しました。
アラブ首長国連邦の国民・宗教・言語について
国民について
「アラブ首長国連邦」の国民は、従来その土地に住むアラブ人ですが、住民の約13%に過ぎず、住民の大多数は外国籍の人です。なお、国民以外の国籍取得が大変厳しくなっています。外国籍の住民では、他アラブ諸国人、イラン人、南アジア人系(インド人等)で半数以上を占めます。
宗教について
「アラブ首長国連邦」の宗教は、イスラム教です。内訳は、イスラム教のスンニー派が約80%、シーア派が約20%です。その他に、外国籍の住民により、ヒンドゥー教、キリスト教、仏教なども信仰されています。
言語について
「アラブ首長国連邦」の公用語はアラビア語ですが、外国籍住民が多いことやイギリスの植民地でもあったこともあり、共通語として英語が用いられます。その他に使用される言語は、ペルシャ語、ヒンディー語、ウルドゥー語、マラヤーラム語、タガログ語などです。
アラブ首長国連邦の経済状況について
「アラブ首長国連邦」のGDPは約3,487億ドル(2016年)、日本円にすると約40兆円で、世界第30位です。同年の一人当たりのGDPは約3.8万ドルで、世界で3位です。
かつては、真珠採取とわずかな中継貿易などの収入源しかありませんでしたが、1960年代、主にアブダビでの石油産出が本格化して、経済状況が一変しました。
「アラブ首長国連邦」の主な産業は石油・天然ガス、建設、サービスです。主にアブダビでは、豊富な石油資源で得た収入を背景に、活発な対外投資を進めており、製造業やサービス業等の産業の多様化に努めています。ほとんど石油を産出しないドバイは、ビジネス環境や都市インフラを整備し、商業や運輸の世界のハブとして発展しています。
貿易について
「アラブ首長国連邦」の主要輸出相手国は、石油・ガスを除くと「イラン、インド、EU、イラク、サウジアラビア」で隣接する国が多くなっています。主要輸入相手国は「EU、中国、米国、インド、日本」です。
「アラブ首長国連邦」の主な輸出品は、原油や天然ガス、原油製品ですが、中東・アフリカ・中央アジア市場への再輸出(金、電化製品等)の拠点にもなっています。
「アラブ首長国連邦」の主な輸入品は、自動車、機械、電化製品です。
総貿易額は、輸出が約3,600億ドル、輸入が約2,620億ドル(2016年)輸出額の方が大幅に多くなっています。
アラブ首長国連邦の政治・政策について
政治体制について
「アラブ首長国連邦」は7首長国による連邦制で、アブダビ首長国、ドバイ首長国、シャールジャ首長国、アジュマーン首長国、ウンム・アル=カイワイン首長国、フジャイラ首長国、ラアス・アル=ハイマ首長国で構成されています。
元首は大統領(任期原則5年)で、慣例で大統領はアブダビ首長が、副大統領はドバイ首長が兼任します。
議会制度は連邦国民評議会で、選挙により選出される20名と、各首長の勅選により任命される20名、合計40名の議員(任期4年)で構成されます。
選挙制度について
「アラブ首長国連邦」の選挙権年齢は、世界で最も高く25歳です。議会の議員は従来、勅撰のみの選出でしたが、2006年に議員の半数である20人を選挙によって選出することになりました。
しかし、選挙権は各首長国によって選出された選挙人にのみ与えられ、かつ投票率もかなり低く、国政選挙とは言い難いのが現状です。
アラブ首長国連邦の大統領・首相について
「アラブ首長国連邦」の大統領は、慣例でアブダビ首長が兼任します。その任期は4年です。副大統領は、ドバイ首長が兼任します。
内閣は、副大統領のドバイ首長が首相です。近年の国家戦略に沿って、省庁の再編など内閣改造を頻繁に行っていて、女性や若者の閣僚が増えています。
アラブ首長国連邦の国防制度・軍事制度・兵役について
「アラブ首長国連邦」は、陸海空の三軍、そして準軍事組織の警察軍で構成された国防軍と、アブダビ、ドバイ、ラアス・アル=ハイマの3首長国軍があります。これらを総称して「アラブ首長国連邦軍」と呼ばれています。
「アラブ首長国連邦軍」の兵士は志願制でしたが、2014年政府が18歳から30歳までのすべての男性の兵役を義務付ける新法と新たに予備役を制定し、現在は徴兵制(男子は義務的、女性は選択式)になりました。兵士は連邦を構成する全ての首長国から徴兵されます。兵役期間は、高校を卒業してない者は2年間、高校卒業者は9か月です。女性は学歴に関係なく9か月です。
新たに設置された予備役軍(NDRF)は、兵役を終えた者とUAE軍を退役した者で構成されています。
兵士数(予備役や補助的な要員も含む)は約5万人で、軍事予算は約93憶ドルです。陸海空軍の主な任務は国の防衛で、警察軍は国境警備や国内の治安維持にあたっていますが、湾岸戦争のときはクウェート奪還に戦力を提供した経緯もあります。
アラブ首長国連邦と日本の関係について
「アラブ首長国連邦」と日本は、1972年に国交を樹立して以降、両国の関係は良好に進んでいます。
2013年には安倍首相が「アラブ首長国連邦」を訪問し、「日本とアラブ首長国連邦との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」を発出、2018年にも安倍首相が訪問し、12分野での協力強化を目指す「戦略的パートナーシップの深化及び強化に関する共同声明」を発出しています。
中東、アフリカ、中央アジア市場への再輸出拠点である「アラブ首長国連邦」は、日本の工業製品輸出先として重要な相手で、日本からの輸出品は機械類が大半を占めます。輸入については、鉱物性燃料が大半で、サウジアラビア、オーストラリアに次いで、日本では第3位の供給国となっています。
2016年の時点で、「アラブ首長国連邦」にいる日本人の数は「約4,000人」(2016年,法務省在留外国人統計)です。
また、約340社の日本企業が,「アラブ首長国連邦」に進出しており、そのほとんどがドバイで、美容系やレストランなど日本ブランドをいかした出店などが増えています。
まとめ
いかかでしたか?
「アラブ首長国連邦」は、国土のほとんどが乾燥した砂漠で、人々は沿海地方に住んでいます。
石油の産出により、高い経済成長を遂げていますが、近くのペルシア湾等には多くの油田があり、1991年には「湾岸戦争」も起き、近年では戦争や紛争が絶え間なく起きる、不安定な地域でもあります。
ちなみに、「世界一」が目白押しの都市ドバイ。なかでも最も有名な世界一は「ブルジュ・ハリファ」で、高さ約830m、162階立ての超高層ビルです。その他にも、世界一の面積をもつ「ドバイモール」は東京ドーム23個分の広さがあるそうです。また、内装がモスク風で豪華絢爛な世界一美しいスターバックスもあります。
なお、男子サッカーの「アラブ首長国連邦」のFIFAランキングは、2018年9月では「77位」です。
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