はじめに – 「外務省」の組織体制について
先の中央官庁「外務省」の基本情報では、その役割や組織構成、予算などの情報をまとめました。「外務省」の基本情報は、下記の通りです。
「外務省」は、東京都千代田区霞が関にあり、1869年に設置、定員は、6,146人です。年間予算(平成30年度)は、約5,051億5880万円です。
今回は、国家公務員総合職や一般職の方がどの官庁へ就職するかの判断材料になるための詳細情報をまとめました。
それでは、今回は基本情報に続いて、詳しい組織体制について解説します。
「外務省」の組織概要
「外務省」の組織は、「外務大臣」を長とし、「幹部」組織と大きく10の「内部部局」を中心として構成されています。加えて、その他の機関などがあります。
なお、その他の機関には、2つの「審議会等(外務人事審議会等)」「施設等機関(外務省研修所)」「特別の機関(在外公館)」があります。
「外務省」の組織分析
「外務省」の主な業務は、「日米同盟の強化」や「近隣諸国との関係推進」、「経済外交の推進」を三本柱とした外交の推進、国益の増進などです。
外務省では,私たち日本国民が豊かで安全な生活ができるように,日本の国の利益(国益)を守る仕事をしています。このために,平和で安定した豊かな国際社会を作るため,核兵器,テロ,感染症(HIV/AIDS,マラリアなどの病気),環境問題といった世界中のみんなに関わる問題や,世界経済の発展などのためのさまざまな取組を行っています。また,日本の文化を外国に紹介したり,人と人との交流を通してお互いの理解を深めたり,海外に住む日本人の保護をしたりと,日本の外交活動の中心となっています。
「外務省」の上部組織・下部組織について
「外務省」の上部組織および下部組織は、ありません。
12の「内部部局」について
「外務省」の「内部部局」について説明します。
まず、12の「内部部局」の内訳は、下記の通りです。
1)「大臣官房」
2)「総合外交政策局」
3)「アジア大洋州局」
4)「北米局」
5)「中南米局」
6)「欧州局」
7)「中東アフリカ局」
8)「経済局」
9)「国際協力局」
10)「国際法局」
11)「領事局」
12)「国際情報統括官」
続いて各内部部局についてご紹介します。
「大臣官房」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「大臣官房」の主な業務は、本省の各部局や在外公館がその機能を十分活かして活動できるよう、省全体の事務を総合的に調整することです。
また、先の業務のほか、「大臣官房」は、外務省の定員・予算・機構を拡充して効率的に整備するなど各部局と連絡などの業務も担っている部局です。
なお、「大臣官房」は、「監察査察官」、「儀典長」、「外務報道官」、「国際文化交流審議官」と5つの課、7つの室職、2つの館職が置かれています。
1)総務課
外務省の業務の総合調整を担当しています。
2)人事課
外務省職員の採用、人事管理を担当しています。
3)情報通信課
公文書類や外交文書の接受や発送などを担っています。
4)会計課
外務省の予算・決算・会計、会計監査などを行っています。
5)在外公館課
在外公館の運営などを行っています。
6)考査・政策評価室
外務省の政策の評価などを担当しています。
7)国際機関評価室
外務省の所掌する国際機関等への拠出金に関する評価などを行っています。
8)ODA評価室
ODAの評価などを行っています。
9)外交記録・情報公開室
情報公開法に関する業務などを担当しています。
10)情報防護対策室
情報防護に関する業務を担っています。
11)危機管理調整室
危機管理に関する業務
12)地方連携推進室
地方と外務省との連絡の推進などを行っています。
13)外交史料館
外交資料の編纂(さん)などを行っています。
14)図書館
図書の保管を担っています。
「総合外交政策局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「総合外交政策局」の主な業務は、日本が直面する幾多の課題や問題点に取り組むため、総合的・中長期的観点から政策立案を行い、地域・機能別の政策を全省的観点から総括・調整することです。
また、このような観点から、「総合外交政策局」では、重要な外交政策の総合調整、安全保障・テロ対策を含む総合的外交政策の策定、重大緊急事態への対応、国連・人権・国際的な組織犯罪や宇宙に関する外交政策の策定などの業務も行われています。
さらに、「総合外交政策局」の下部組織には、下記の通り、14の部署があります。
1)総務課
外務省の業務の総合調整を担当しています。
2)政策企画室
総合的な外交政策の企画・立案を担当しています。
3)新興国外交推進室
総合的な外交政策の新興国に係るものの企画・立案などを行っています。
4)安全保障政策課
日本の安全保障に関する外交政策の企画・立案・総括を担っています。
5)国際安全・治安対策協力室
テロ対策に関する国際協力に関する外交政策の企画・立案・総括を担っています。
6)国際平和協力室
テロ対策に関する国際協力に関する外交政策の企画・立案・総括を担当しています。
7)海上安全保障政策室
日本の安全保障に関する外交政策のうち海外の安全に関するものの企画などを行っています。
9)宇宙室
宇宙に関する外交政策に関する企画・立案などを行っています。
10)国連企画調整課
政治分野を除く国際連合の活動を担っています。
11)国際機関人事センター
国際機関における日本人職員増強のための支援を行っています。
12)国連政策課
政治分野における国際連合の活動に関する外交政策を担当しています。
13)人権人道課
人権・人道に関する外交政策を担っています。
14)女性参画推進室
女性・ジェンダーに関する外交政策を担当しています。
「アジア大洋州局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「アジア大洋州局」の主な業務は、日本に地理的に近く、経済的・文化的・歴史的に関係の深いアジア大洋州地域全体の平和と繁栄を構築するための政策を立案することです。
アジア地域の動向は日本に直接関係するため、この地域の一層の発展と安定を保つことは、日本の平和と繁栄にとっても非常に重要です。
そのため、アジア地域全体の平和と繁栄を構築するために取り組んでいる「アジア大洋州局」の具体的な業務は、大きく9つあります。
1)アジア太平洋地域における政治・安全保障対話や経済・社会開発協力の推進
2)韓国との友好協力関係の強化および朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくり
3)国際社会において、より一層建設的な役割を果たすことが期待されている中国との協力関係の推進
4)「5つの構想」をはじめとするASEAN諸国との協力関係の強化
5)インドシナを含む東南アジア地域の安定的発展のための努力
6)インド他南西アジア諸国との協力・協調関係の強化や同地域の安定的発展への貢献
7)東ティモールの国造りへの支援
8)オーストラリア・ニュージーランド両国との二国間関係の強化
9)太平洋島嶼国(とうしょこく)への経済協力などを通じた国造りへの協力
「北米局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「北米局」の主な業務は、「米国」と「カナダ」の2国に関する総合的・経済的政策と外交政策です。
「日本」と「米国」は、貿易・投資等を含め極めて緊密な二国間の経済関係を構築し、世界上位の経済大国として、世界経済の成長と安定に対する責任が課せられています。
「北米局」では、日米の両国の責任を果たすべく、「日本」と「米国」が連携し、日米の経済関係を発展させることに加え、世界経済が成長・安定できるよう外交政策が行われています。
さらに、「北米局」では、日米安保体制を維持しながら両国の信頼性を高めるため、「世界の中の日米同盟」との考えに基づいて、世界各地の地域情勢や開発・環境・テロ・大量破壊兵器の問題等の地球規模の課題に関する取組が行われています。
なお、「日本」「カナダ」の両国についても、「北米局」では、政治・経済・文化など多岐にわたる分野で協力関係にあることから、二国間の枠組みにとらわれることなく、共通した価値観の根付いた外交政策が行われています。
「中南米局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「中南米局」の主な業務は、カリブ地域を含む中南米地域33か国を所掌し、これらの中南米地域と日本との関係強化のために外交政策を企画・立案することです。
日本は、これまで中南米地域との間で約160万人の移住者・日系人の存在をはじめとする人的な絆もあり、伝統的な友好関係を築いてきました。
また、近年の中南米諸国は、豊かな資源と着実な経済成長を背景に世界での存在感を高めており、日本にとって民主主義・市場経済などの基本的価値を共有する国際社会での重要なパートナーとなっています。
特に、ブラジル・メキシコ等をはじめとする新興国は、国際社会で急速に発言力を高めています。
このような状況を踏まえ、「中南米局」では、下記の3つを柱とした外交政策が行われています。
1)二国間関係だけでなく、地球規模の課題への対応についても連携を強化すること
2)日本企業の活動を支援し、経済連携協定(EPA)や投資協定などの経済連携枠組みの強化等を通じた、日本と中南米の経済関係を一層促進すること
3)緊密化する日本と中南米の関係を今後とも確固たるものとするため、中南米地域の安定的発展に対する支援を行うこと
「欧州局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「欧州局」の主な業務は、欧州局所掌事務に関する総合調整、欧州地域に関する総合的な外交政策、欧州連合に関する外交政策、欧州諸国および欧州連合、国際機関等に関する政務などです。
この「欧州局」は、9つの部署に分かれ、地域を分担して業務が行われています。
1)政策課
欧州地域に関する外交政策・事務に関する総合調整
2)アジア欧州協力室
アジア欧州会合の外交上における総合的な政策
3)西欧課
西欧地域に関する外交政策
4)中・東欧課
中欧・東欧地域に関する外交政策
5)ロシア課
ロシアに関する外交政策
6)日露共同経営活動推進室
日露館の協同経営活動、北方四島・北海道に関する業務
7)日露経済室
日露間の経済に関する業務、ロシアへの技術支援
8)中央アジア・コーカサス室
中央アジア・コーカサス地域に関する外交政策
9)ロシア交流室
ロシアとの人物交流
近年の状況として、「欧州局」では、英仏独伊などの西欧諸国、ポーランド・ハンガリーなどの中・東欧諸国、旧ソ連諸国、EU、NATO、OSCE、CEなどの国際機関に対し、これら各国との関係を強化・発展させるため、領土問題、地域問題などの取組みが行われています。
特に、「EU」については、急速に統合し、さらに拡大・深化していることに伴い、日本においても「EU」に加盟する国々と、より積極的な関係を構築する必要があります。
さらに、「欧州局」では、「日本」と「ロシア」においても、政治・経済・安全保障・文化など幅広い分野で協力して両国の関係を発展させ、北方領土問題をするための取組が行われています。
このように「欧州局」では、南東欧諸国や旧ソ連に対し、積極的な支援や経済協力を行い、文化交流による友好・協力関係の発展させ、国際社会を安定させることに力を入れています。
「中東アフリカ局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「中東アフリカ局」の主な業務は、同地域の大多数の国と友好関係を保ち、これらの国々と経済・技術協力、人物・文化交流を進め、アラブ・イスラエル紛争の平和的解決のために積極的な役割を果たすなど、幅広い外交を展開することです。
この中東地域は、世界の石油輸出の約47%、日本原油輸入の約86%を占めており(2002年)、主に石油供給地として重要な地位を占めています。
このため、この地域の平和と安全のために日本が積極的な役割を果たすことは日本のみでなく、世界全体の利益につながります。
さらに、この地域にはアラブ、イスラエル間の対立に起因する中東和平問題やアフガニスタンおよびイラク復興の他、国際社会が取り組むべき重要な課題であり、日本の積極的な貢献が求められています。
このような状況の中、「中東アフリカ局」では、中東地域とアフリカ地域の68か国を担当し、中東・北アフリカとサハラ砂漠以南のアフリカとの間には文化・社会面で大きな違いがあるため、サハラ砂漠以南のアフリカ49か国は、アフリカ部長の下で「アフリカ部」が担当しています。
「経済局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「経済局」の主な業務は、大きく分けて下記の4つの対外経済関係に関する外交政策です。
【業務1:国際経済の基本的ルール策定への積極的参画】
「外務省」のグローバルな取り組みとして、国際経済の基本的にルール策定の場・機会へ積極的に参加しています。具体的には、先進国の蔵相や中央銀行総裁が集まる「G7サミット」「G8サミット」「G20サミット」、世界の貿易に関する国際機関である「WTO(世界貿易機関)」、途上国支援を目的とする「OECD(経済協力開発機構)」、為替政策などの国際機関である「IMF(国際通貨基金)」、貧困削減などを目的とする「世界銀行」、国連総会に直属する常設機関「UNCTAD」などがあります。
【業務2:重層的な経済関係の拡充】
「外務省」は、アジア地域間や日本・中国の二国間の取り組みとして、重層的に経済関係を結んで拡充するために協力しています。具体的には、完全などに関する協定である「FTA(自由貿易協定)」、通商上の障壁を除去するための協定である「EPA(経済連携協定)、「日米経済」、「日欧経済」、非公式のフォーラムである「アジア太平洋/アジア欧州経済APEC(アジア太平洋経済協力)」、アジア諸国と日本・韓国・中国が協力する枠組みである「ASEAN+3(東南アジア諸国連合+日中韓)」、「日中韓」などがあります。
【業務3:経済安全保障の強化】
「外務省」は、エネルギー安全保障、食料、海洋、漁業(捕鯨を含む)等の分野積極的に関わり、経済分野における安全と保障を強化しています。
【業務4:日本企業の支援】
「外務省」は、日本企業の支援窓口を通じた相談の受付や問題解決に向けて支援するほか、知的財産保護への対応や社会保障協定・投資協定の締結等を通じて投資を促進しています。
このように、「経済局」は、日本経済の利益を保護・増進し、世界経済の発展と日本の安定の繁栄を確保するため、対外経済関係における優先課題に対して戦略的に取り組んでいます。
「国際協力局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「国際協力局」の主な業務は、「ODA」に関する企画・立案や調査、国際協力事業に関する業務です。
ちなみに、「ODA」とは、開発途上国などに対する援助・協力や、政府の開発と援助を行うことで、「Official Ddevelopment Assistance」の略称です。
この「ODA」は、国際貢献を通じて国益を実現する日本にとって重要で有効な外交手段であり、「国際協力局」による日本の「ODA」は、開発途上国の経済成長や復興や地球規模課題の解決に貢献し、日本の国際的な評価・信頼や国際社会における発言力を高めてきました。
なお、「国際協力局」では、「ODA」の政策・企画立案機能の強化のため、機構改革が行われました。
具体的には、「国際協力局」の無償資金・技術協力課および有償資金協力課が廃止され、国別担当課の機能を強化できるよう「国別開発協力第3課」が新設されました。
また、「国際協力局」では支援を強力に推進するため、新設した「開発協力総括課」の下に、3つの援助手法「無償資金協力」「技術協力」「有償資金協力」が一体となった「事業管理室」を設け、二国間の援助と多国間に対する効果的な支援を展開できるようにしました。
このような取組を通じて、「国際協力局」では、今後、さらに戦略的で効果的な「ODA」が行われます。
「国際法局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「国際法局」の主な業務は、国際法に関する外交政策、条約の締結、解釈および実施、確立された国際法規の解釈および実施などです。
最近では、国際関係が緊密化し、日本の国際的な役割が増大することに伴う国際的なルールの形成が日々行われ、締結する条約の数も年々増加しているため、国際法秩序の構築が進められています。
その理由は、このような国際法秩序の対象となる分野についても、政治・安全保障、経済、人権、環境など、これまでより広範になってきており、国民の生活に密接に関係するようになってきてるためです。
このような状況の中、「国際法局」では、日本および日本国民の安全と繁栄を確保できるような国際法秩序の構築のため、蓄積した知識を活用した国際的ルール作りや国際慣習法の法典化に構想段階から積極的に参画しています。
なお、日本が締結した条約や国際法規を誠実に遵守することは、日本外交に対する信頼を高める上でとても重要であるため、「国際法局」では、日本政府の企画・立案する外交政策が国際法に合致するよう国際法の解釈なども行われています。
「領事局」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「領事局」の主な業務は、近年、日本人の海外渡航・居住者が増加している中で、海外で事件や事故等に巻き込まれた日本人の援護をはじめとする平常時の安全対策や日本人の身分関係に関する事務や証明、旅券発給等の領事サービスや外国人への入国査証発給等です。
具体的には、下記の通り、13の業務が行われています。
1)海外で発生した事件・事故・武力紛争・天災等に巻き込まれた日本人の援護や安全確保
2)日本人に係る海外での誘拐やテロ等への対応
3)海外安全情報の提供や啓発活動
4)事前予防の観点に立った安全対策の推進
5)日本人学校・補習授業校への援助等の海外における教育支援
6)医療事情の悪い地域への巡回医師団派遣および医療情報の提供
7)海外に滞在する日本人の身分関係事項に関する事務および証明事務
8)ハーグ条約に基づく子の不法な連れ去り、留置等をめぐる問題の解決に向けた支援
9)旅券の発給および偽変造防止対策
10)外国人入国者に対する査証発給
11)在日外国人に係る諸問題についての調整
12)在外選挙の実施に関する事務
13)移住者の定着安定のための支援等
13)海外における日本人の利益の保護・増進
「国際情報統括官組織」とその業務について
「外務省」の「内部部局」の1つである「国際情報統括官組織」の主な業務は、情報収集に関する総括のほか、グローバルな課題や各地域情勢の分析などです。
この「国際情報統括官組織」の業務は、今後、急速に変化する国際情勢に機敏に対応し、日本が外交政策を適切に遂行できるよう、重要な情報を選択して的確に情勢を判断して政策に反映させる上で重要です。
「施設等機関」について
「外務省」の「施設等機関」には、「外務省研修所」があります。
この「施設等機関」とは、宮内庁・委員会・長を含む内閣府、または、国家行政組織法に規定される省・委員会・庁などの行政機関に置かれる試験研究機関・検査検定機関・文教研修施設のことです。
「外務省研修所」とその業務について
「外務省」の「施設等機関」である「外務省研修所」は、外務公務員の養成機関として1946年に「外交官吏研修所」の名称で開設され、その後、数回の改正を経て、現在に至っています。
この「外務省研修所」の主な業務は、政令で定められた文教研修施設として、省令に基づき、外務省の職員に対してその職務を行うに必要な知識、能力及び教養を増進することです。
まとめ
いかがでしたか?
「外務省」では、日本と日本国実の利益増進のため、調和ある対外関係の維持に努めながら、組織を細分化して効率的な業務が行われています。
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