【自衛隊って公務員?】日本の「自衛隊」がわかる!(入門編)

自衛隊は、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊からなる、防衛省の管轄の防衛組織です。最高指揮監督権は、内閣総理大臣にあります。なお、自衛隊で働く「自衛官」は、防衛省の自衛隊に所属する特別職の国家公務員です。


自衛隊とは?種類と特徴

自衛隊は、日本の平和と独立を守り、日本の防衛を任務としている国防組織です。自衛隊の任務や行動、権限などの自衛隊に関することは自衛隊法によって決められており、その範囲内で行動をします。

自衛隊の軍事費は5兆円近くに上り、額だけで見れば世界上位となりますが、GDP比で換算すると1%程度であり、世界レベルでいえば下の部類です。

自衛隊は「陸上」「海上」「航空」の3部隊で構成されている

自衛隊は大きく分けて3つの隊で構成されていて、陸を管轄する「陸上自衛隊」、海を防衛する「海上自衛隊」、そして、空を守る「航空自衛隊」の3つで成り立っています。

3つの隊の中で最も多いのが陸上自衛隊で、定数は約15万人となっています。全国各地に自衛隊の基地があり、その多くは陸上自衛隊です。

その次に多いのが航空自衛隊であり、定数は約5万人です。防衛区域が4つにわかれており、こちらも全国各地に点在しています。民間の空港と共用になっていることが多く、身近なところで航空自衛隊と接することもあります。

最後に海上自衛隊ですが、定数は約4万5000人で、海上基地や航空基地などが存在します。

このように、陸上、海上、航空の各自衛隊は日本各地に点在しており、日々厳しい訓練を受けながらも、日本の防衛のために頑張っています。

とはいえ、自衛隊の仕事は日本の防衛のためだけではなく、実は多彩な仕事をこなしており、それぞれの隊で別々の活動をし、日本のために尽くす活躍を見せています。

自衛隊はどのような活動をするの?

自衛隊の活動内容には、以下の5つがあります。

「災害派遣」について

「災害派遣」では、都道府県知事の要請により自衛隊が出動し、救援活動を行います。大地震など明らかな災害が発生した場合には要請に関係なく出動し、救助部隊が投入されます。出動件数は災害派遣だけでここ最近では、年間500~600回程度、多かった年(2005年)で900回近くなど、実質的な任務として大活躍をしているのが現状です。

防衛出動」について

主たる任務として「防衛出動」があります。これは他の国から武力攻撃があった場合などに内閣総理大臣が命令を出し出動します。この場合、事前に国会の承認が必要です。日本の防衛のために武力行使をすることになっており、自衛隊が結成されてから今に至るまで1度も防衛出動は行われていません。


「治安出動」について

「治安出動」とは、内乱などが発生し、警察だけではどうにもならないような状況になった場合、内閣総理大臣の命令で自衛隊が出動することです。

「領空侵犯対応」について

最近目立つのは「領空侵犯対応」です。他国の航空機が日本の領空に侵入した場合、これを阻止することができます。スクランブルは冷戦時に数多くあり、2013年度から2015年度にかけては、年間に800回以上が発生しています。ここ数年は隣国からの領空侵犯に対応することが多くなっており、自衛隊の出番が増えているのが現状です。

「海外派遣」と「不発弾処理」について

他の任務には「海外派遣」や「不発弾の処理」などが行われています。特に海外派遣は毎回国会などで議論になることがあり、自衛隊の是非が常に問われている他、不発弾の処理はかなりの危険が伴うため、周囲から人を出して任務を行います。

少子化もあり、自衛隊を希望する人が減少傾向にあることから自衛隊は、広報活動も力を入れています。また、自衛隊の基地では周辺住民の人たちを対象としたイベントなどを数多く実施し、親しみを持って自衛隊に接してもらう活動を展開しており、他にもスポーツへの協力なども行われ、日本の防衛以外のことにも力を入れています。

自衛隊の歴史

自衛隊の元となる「警察予備隊」が誕生

1950年、朝鮮戦争が勃発し、大国が両方の勢力に支援に乗り出すなど緊迫感が増しました。この時、アメリカは韓国側を支援しており、アメリカ軍は日本の駐留部隊を派遣することになります。

しかし、日本の駐留部隊が日本を離れてしまうことで、日本の防衛力と治安を維持する組織がいなくなるという大きな問題となりました。そこでアメリカ軍は日本に対し、暴動などに備える治安警察隊の創設を提言し、これにより、日本でも警察予備隊が組織され、日本の国防を守る組織が誕生します。

自衛隊の誕生と防衛庁の誕生について

時を同じくして、旧海軍の一部が海上警備隊に再編され、2つの機関をまとめる保安庁が生まれました。

その後、組織の再編が行われ、1952年には保安隊、1954年には自衛隊、海上自衛隊が誕生し、これと同じ時期に航空自衛隊が新設され、今の体制となりました。

これら3つの隊をまとめるために防衛庁が同時期に設置されます。今の防衛省になったのはそれより50年も経った2007年のことです。

自衛隊の仕事の変化について

冷戦期の自衛隊は主にアメリカ軍がカバーしきれない部分をカバーするような役割を担っており、スクランブルなどが主な任務となっています。

冷戦が終了すると、海外派遣が増え、世界各地に海外派遣をすることが主な任務の1つとして加わっており、時代に応じてその役割はかなり変化しているのが今の姿です。

警察予備隊も当初は日本国内の治安維持が主たる任務であったため、警察官に近い形で職務に当たっていましたが、朝鮮戦争の影響で重装備化が進んでいきます。

この時に問題となったのは、当時追放されていた旧日本軍の軍人の復帰です。指揮系統を強固なものにするため、徐々に追放解除の幅を広げていき、保安隊に切り替わる1952年には大佐レベルの高級幹部の復帰が認められることになります。

こうした活動を経て、警察予備隊は重装備化が進み、保安隊を経て今の自衛隊へと進化を遂げてきました。周辺国の政情不安から自衛隊の需要が高まるのは昔からのことです。

自衛隊の階級制度

自衛隊には階級が存在しますが、軍隊の階級でありがちな大将や大佐といったものは使われていません。また、大将に相当するポストは存在せず、中将に相当する、陸将、空将、海将が該当します。


自衛官は幹部自衛官と一般の自衛官に分かれ、幹部自衛官は防衛大学校を卒業、もしくは幹部候補生採用試験の合格者が務めることができ、三尉と呼ばれるところからキャリアをスタートさせます。

自衛隊の階級:幹部について

幹部自衛官の中でも大きく分けて3つの階層があり、尉官、佐官、将官が存在します。

尉官と佐官は一番下が三尉、三佐であり、数字が少なくなると出世するようになります。大佐のクラスは日本では一等陸佐または1佐が該当し、大尉は一尉(1尉、略称の時は英数字が使われる)がそれです。1佐の上は将官のステージであり、将補と呼ばれ、その上が陸将などの将です。この呼び方は陸上、海上、航空各自衛隊でも共通しています。

自衛隊の階級:一般自衛官について

一般の自衛官は士と曹に分かれます。

旧日本軍で一番下の二等兵と同じ階級に当たるのが二士であり、上等兵は士長となります。士の中でも、2~3年の任期制の人、将来的に一般曹候補生となる非任期制の2つがあり、任期制の場合は任期中に曹への昇任試験に合格しなければなりません。

旧日本軍であった曹長、軍曹、伍長に当たるものは曹長、一曹、二曹、三曹という形で存在します。曹までがいわゆる定年制が導入されており、職業柄、一般企業よりも早い段階で定年を迎えることになります。幹部自衛官と一般の自衛官の間に位置する階級として准尉があり、技術職、もしくは曹士の最高位という位置づけとなっていることから、幹部に準ずる立場と言われています。

幕僚長の階級章は元々3つ星のものが使われていました。これは旧日本軍からの名残でしたが、アメリカでは4つ星が大将レベルの階級章だったため、アメリカに言った際、中将の扱いを受けたことで急きょ星を足して参加し、当時問題になりましたが、アメリカと歩調を合わせる形で幕僚長の階級章も4つ星となり、今に至ります。

自衛隊の平和維持活動

海外でも活躍する日本の自衛隊

日本の自衛隊は当初日本国憲法の影響で海外出動はしない方向で活動をしていました。

このため、邦人が海外に危険に晒されていても救援活動にも行けないというジレンマを抱えることになります。そんな中、1991年から紛争地帯ではないところへの海外派遣がなされるようになり、1992年のPKO法成立により、その動きはさらに強化されます。

PKOとしての実績はカンボジアへの停戦監視要員としての派遣が最初です。その後、1993年にモザンビーク、1996年のゴラン高原、東ティモールやネパール、スーダン、ハイチなどに派遣し、数年単位での活動が行われ、特にゴラン高原では17年間にわたって活動が行われ、シリア情勢の悪化を機に撤収することとなりました。南スーダンも派遣されていましたが、政情不安などから撤収が決定しています。

イラクへの海外派遣が記憶に新しいところですが、イラクへの海外派遣は後方支援、復興支援によるものです。これらの名目で海外派遣をしたケースではペルシャ湾への派遣やインド洋への派遣があります。難民救済も行っており、ルワンダやアフガニスタンなどにも派遣されていました。ただ、最も多い派遣は国際緊急援助隊としての派遣です。海外で災害が発生するたびに派遣され、毎年のようにどこかの国へ行く形になっています。

最も印象に残っている「カンボジア」への派遣

平和維持活動の中で最も人々の印象に残るのはカンボジアへの派遣です。PKO法が野党のかなりの抵抗の末、成立し、その動きに注目が集まっていました。しかもこの時に文民警察官に犠牲者が出るなど、混乱があったことも事実です。

ただ、自衛隊は当初の任務を的確にこなし、日本の世論に配慮し軽装備の任務ながらもできる限りのことは行うことができました。ここでの反省は後の平和維持活動にも実践されています。

今後自衛隊の平和維持活動は別の国でも行われることが予想されており、日の丸を背負い、それに恥じない形での任務の遂行が期待されるところです。

まとめ

いかがでしたか?

自衛隊が、合憲か違憲か。そもそも違憲なら、できてからずっと違憲状態なのか?と公務員である「自衛隊」の存在自体については、「憲法第9条のもとで許容される自衛の措置」として2014(平成26)年7月1日の閣議決定において、次のとおりとされています。

今回は、自衛隊と憲法の関係ではなく、現在の自衛隊とはどのようなもので、どのような活動をしているかについて解説しました。

憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えますが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されません。

出典
憲法第9条の趣旨についての政府見解(http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html)

本記事は、2017年7月20日時点調査または公開された情報です。
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