はじめに
公務員と言えば定時で帰れるライフワークバランスが安定している職業だというイメージが強いかもしれません。一方で公務員でも官僚は残業が多いというイメージがあるのではないでしょうか。
公務員は残業がないわけではなく、部署や職種によっては残業が発生します。本記事では公務員の残業事情について説明します。
公務員の残業事情について
まずは、公務員がどの位残業しているのか、定量的なデータを元に説明します。
国家公務員の残業時間
オープンワーク株式会社が行った調査によると、省庁別の国家公務員の平均残業時間ランキングは次のとおりとなっています。
本調査は口コミを元に集計しているので数値ですが、その分だけリアリティーのあるデータと言えるでしょう。一番残業時間が多いのは財務省で72時間、少ないのは裁判所で9時間と残業時間に8倍程度の差があります。
同じくOpenworkがまとめた民間企業の残業時間に関するデータによると、残業時間70時間は広告代理店や建設業クラスの忙しさ、60時間は飲食や証券業クラスの忙しさとなります。上位の省庁は一般的にブラック・ハードワークだと言われることも多い業界と遜色のない労働時間だと言えるでしょう。
一方で裁判所の残業時間9時間は、月20日勤務だとすると1日当たりの残業時間は27分ということで、ほとんど残業がないともいえます。
地方公務員の残業時間
続いて地方公務員の残業時間について総務省が2014年、2015年に調査した「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果」より紹介します。結果は次のとおりです。
国家公務員と比較すると総じて残業時間が少ないことがわかります。全体の年間平均残業時間が158.4時間ですが、この当時の国家公務員の残業時間は233時間(本府省363時間、それ以外206時間)、民間の労働時間は154時間となっています。
民間の残業時間が僅差で地方公務員よりも少なくなっていますが、民間の場合、残業が基本的に発生しないパートタイム、アルバイトも含まれているので、実質的には地方公務員が一番残業時間は少なくなる可能性が高いと考えられます。
統計から推測すると、地方公務員は残業時間が全体的に少なく政令指定都市だけ地方公務員の中でも若干残業が多めだと考えれば良いでしょう。
公務員に残業はないとは言えないが、ほとんどない部署もある
両方の統計から言えることが、公務員に残業はないと言えないが、平均的にはほとんど発生しないケースもあるということです。
国家公務員は一般的に残業時間が多くなりやすく、財務省や経済産業省などのトップクラスに残業が多い省庁は、一般的に大変だと言われる民間企業の業種と比較しても遜色ない位ハードワークです。
一方で国家公務員でも国税庁や裁判所、地方公務員は平均的に残業をしなくても良い場合が多いです。就職先さえコントロールすればある程度、残業の少ない公務員としての働き方を実現することもできるでしょう。
忙しい地方公務員はどの位残業するのか?
地方公務員は総じて残業時間が少な目なことは説明した通りですが、平均残業時間はあくまでも平均であって、部署やポジションによっても残業時間は異なります。平均とは別に忙しい場合の地方公務員の労働環境について考察します。
残業60時間超えの地方公務員は約3%
同じく総務省の調査では残業時間が60時間超え(時間外手当が割増になる基準)、80時間超え(労災の認定基準)の職員の割合についても調査しています。結果は次のとおりです。
総合的には残業時間が少ない地方公務員でも約3%の方が月間60時間以上の残業を行っています。さらに1.1%の方は労災の認定基準になる残業時間80時間を超えています。
残業が多いのは出先機関よりも本庁の方で特に政令指定都市の場合は残業が多くなりやすく、一番残業時間が多い政令指定都市の本庁の場合は、60時間以上残業しているのが全体の5.8%、80時間残業しているのが2.3%となっています。
一部の地方公務員は一般企業以上にハードに働いていることが統計から読みとれます。
地方公務員で忙しいと言われる部署
一般的に残業が少ないと言われる地方公務員であっても、一部の部署は残業時間が非常に長いことがわかります。具体的にどのような部署が忙しくなりやすいのかいくつか例を紹介します。
忙しくなりやすい部署
まず国家公務員の激務職としてイメージしやすいのが、国家総合職として採用される官僚でしょう。国家の中枢を担う機関としてさまざまな意思決定が求められるのはもちろんのこと、国会対応などのためにどうしても深夜まで残業が発生しがちな公務員職です。
地方公務員の場合は福祉・医療系の課が激務になりやすいと言われています。どうしてもクレーム対応などが多くなるので、事務作業が後回しになって残業が発生しやすくなっています。また、精神的にもプレッシャーのかかる課でもあります。
災害対策・防災対策の部署は普段はゆったりしていることも多いですが、台風や地震などの災害時にはさまざまな業務が発生するのでピンポイントでハードワークになることもあるでしょう。防災課のように職種によっては特定の時期や条件を満たした時に非常に忙しくなる課も存在します。
比較的楽な部署
比較的楽だと言われているのが、国家公務員なら裁判所や税務署です。ただし、税務署の場合は確定申告などが集中する3月頃はピンポイントで忙しくなる可能性があります。地方公務員の場合は、本庁ではなく出張所などで勤務するのが比較的楽だと言われています。よほどのことがなければ定時で帰宅できるでしょう。
国家公務員の場合はともかく、地方公務員の場合は総じて残業が少なくなりやすいので全体的には楽だと考えても良いかもしれません。
公務員の労働環境
定量的なデータは上記のとおりですが、定性的に公務員の職場環境についていくつかの考察を行います。
公務員の方がむしろサービス残業が発生しやすい?
統計だけを見ると、公務員の方が残業は少なそうに見えますが、統計に表れないサービス残業はむしろ公務員の方が多くなりがちかもしれません。
民間は従業員が働けば働くほど会社の利益は増えるので、残業代の原資は増加します。一方で公務員の場合は「利益」という概念はなく予算に応じて残業代の上限が決まっています。
よって、残業が多くても予算の上限に達すれば、それ以上残業代が支払われないケースもあると想定した方が良いでしょう。そして、これらの残業はサービス残業となってしまいます。
民間企業に対しては労働法によってさまざまな規制が適用されるのに対して、公務員の場合は一部の労働法が適用されないため、かえって民間よりも残業のルールが曖昧になっている可能性があります。
》公務員に労働基準法は適用されない?知っておきたい公務員労働と法律
国および地方自治体等の公務をおこなう公務員の労働は、一般の労働者とは異なります。それでは、どのような法律上のルールがあるのでしょうか。今回は、公務員労働と法律というテーマで、労働法と公務員への適用について解説します。
出退勤の管理が意外と曖昧?
もう1つの懸念点として挙げられるのが出退勤の管理が意外と曖昧かもしれないということです。
先ほど紹介した総務省の調査によれば、地方自体においてタイムカード・ICカード等の客観的な記録によって出退勤を管理しているのは全体の25%で、75%程度は任命権者からの現場確認や職員からの申告などアナログな手法で出退勤を管理しています。
もちろん2015年の調査なので、状況は改善されている可能性はありますが、地方公務員全体として出退勤を客観的に記録、労働時間を管理しようとする意識が薄いのではないかとも、このデータからは読み取れます。
もちろん、出退勤が客観的に記録されてないことにより、楽な部署は楽かもしれませんが、激務の部署は、ハードワークだったとしても客観的に証明できない、管理者が気づいてくれない可能性もあります。
自治体・部署・上司などによっても働き方は変わる?
自治体・部署・チームを率いている上司によっても働き方は変わると考えられます。一般企業と同様に自治体毎によっても労働環境に関する意識の差があり、自治体の中でも部署の業務内容、そこを率いている上司の仕事の振り方によっても、個人の労働時間は変化するでしょう。
就活時にできることは、せいぜい自治体や官庁を選ぶことぐらいまでです。よって、楽な働き方を目指して公務員になった場合でも、自分ではコントロールできない配置転換によって楽な部署になったり、厳しい部署になったりします。
少しでも楽に仕事をしたい場合は、各自治体の公表している労働環境改善に関する取組や就職先口コミサイトのレビューを元に良さそうな自治体、官庁を探した方が良いかもしれません。
まとめ
以上のように公務員の残業について紹介してきました。一般論として国家公務員よりも地方公務員になった方が残業時間は少ない傾向があります。ただし、部署によっては地方公務員でも残業時間80時間を超えるケースもあるので、必ずしも残業が発生しないとは言い切れません。
特に公務員の場合は民間企業のように労働法によって厳しく労働環境が規制されているわけではないので、各自治体の労働環境に対する意識の高さによって環境は異なると考えられます。
就活時はある程度の残業を覚悟した上で、事前に労働環境改善に関する取り組みや口コミなどをチェックしておいた方が良いでしょう。
コメント