アメリカの貧困問題の原因やその実態

アメリカではいつの時代も「貧困」という問題があります。一方で、世界の億万長者トップ10のうち7割はアメリカ人が占めているという事実もあり、アメリカでは貧富の格差は広がり続けています。

なぜアメリカでは貧困問題が解消されずにいるのでしょうか?さらに貧困や格差社会の実態や課題はどのようなものなのか、アメリカで暮らす筆者目線で現地の状況をお伝えします。

アメリカの貧困の原因は何?

アメリカの貧困問題の原因はアメリカ人に根強くある「自己責任論」や「極端な資本主義」、そして「加速し続けるグローバリゼーション」などです。

自己責任論や極端な資本主義はアメリカ建国の頃から根強く残る「国民性」や「アメリカのプライド」のようなもので、政策や個人的な倫理観ではコントロールできない要素と言えます。さらに、待ったなしのグローバリゼーションによって貧困問題は解消できないほどに深刻化しています。

アメリカの「自己責任論」

アメリカは何に対しても自由であることの反面、その責任は自分で負わなければならない「自己責任論」という考え方が定着しています。日本でもこのような考え方は一般的かもしれませんが、アメリカではもっと厳しく、容赦がない印象を受けます。遊びや仕事、恋愛などすべて何をするのも自由で始めやすい、応援してもらいやすい環境である反面、ひとたび何か起きた場合には誰も手を貸してくれないことはよくあります。

例えば、大麻が良い例でしょう。違法性は州によって異なりますが、自由を主張して大麻に手を出してから止められなくなって労働意欲や友人を失い、貧困層に入ってしまうケースはよくあります。さらに近年では「フェンタニル」と呼ばれる医療用鎮痛剤が流行しており、安価な中国産の物に手を出した結果、薬物依存になるケースもあります。アメリカでは薬物に頼るのも自由ですが、立ち直れなくなっても自己責任であるが故に誰も手を差し伸べてくれないのです。

アメリカの「極端な資本主義」

「極端な資本主義」もアメリカの貧困の原因のひとつです。アメリカは1776年の建国以来ずっと資本主義を貫いてきました。アメリカ大陸という新しい土地で努力した者が成功し財を成す姿はいつしか「アメリカンドリーム」などと呼ばれ、世界中の人を魅了しました。この結果、多くの人が成功を夢見てアメリカ大陸に渡って成長してきたのです。つまり、アメリカの繁栄の根底には資本主義があると言えます。

そしてアメリカの資本主義が絶対的な正義になったのが「冷戦」です。冷戦はアメリカとソ連の間で起きた武力衝突を伴わない対立で、アメリカの資本主義vsソ連の共産主義の構造を指します。自由経済を主張するアメリカに対して、ソ連は国や政府の指揮の元で平等を目指すことを主張し、意見は真っ向から対立しました。

しかし、1989年のドイツ統一、1991年のソ連崩壊を機に共産主義が脆弱化し資本主義が世界のスタンダードになったのです。つまり、アメリカの資本主義は絶対的な正義になり、資本主義の勢いが増した訳です。これにより国内で成功者と敗者の二極化が明確になり始め、富裕層と貧困層が生まれました。

当時、資本主義の成功者(富裕層)は白人、敗者(貧困層)はアフリカンアメリカンやアジア人などの移民という構図でした。現在でもこの名残があり、黒人が多く生活している南部州ほど貧困率が高い事実があります。

アメリカの「加速し続けるグローバリゼーション」

最後にアメリカの貧困問題の原因とされているのが「加速し続けるグローバリゼーション」です。アメリカは建国当初から様々な物を国内生産で調達してきましたが、自由経済が進むに連れて経営者たちは、よりコストが低い海外生産や輸入にシフトしました。この結果、消費者は安くて良い物が手に入るようになりましたが、国内の労働力(小売り店なども)は必要なくなったのです。つまり、多くの人が職を失い貧困になってしまったということです。

さらに、アメリカの資本主義らしく、成功した経営陣のみが利益を独占するという仕組みも貧困や格差を生み出します。具体的には、アメリカの富裕層1%がアメリカの総資産3割を保有しているデータが分かりやすいでしょう。さらに、世界では富裕層の上位62人の総資産が下位36億人の資産と同額とされており、極端な資本主義によってアメリカのみならず世界中で格差が生まれているのです。なかでもアメリカの格差は最も顕著な例と言えます。

このようにアメリカの貧困の原因は、自己責任論、資本主義、そしてグローバリゼーションの3つによって生まれ、なおかつ解消されないままでいるのです。とくに自己責任論と資本主義はアメリカ人や国の根幹に繋がるものなので簡単に変えられるものではありません。

アメリカの貧困の実態

アメリカの慈善団体である「Feeding America」の最新の報告によると、2019年時点でアメリカでは3,800万人が貧困状態にあるとされ、その中には子ども1,100万人も含まれています。(アメリカの総人口は約3.3億人)これらの世帯年収は$25,750以下で、アメリカの平均世帯年収$56,516を大幅に下回っています。単純に計算するとアメリカ人の8人に1人が貧困層になります。

また、州や都市ごとの貧困層分布を見てみると、西海岸のカリフォルニア州から東海岸のサウスカロライナ州までを通して南部の方に貧困層が集中しています。とくにニューメキシコ州やミシシッピ州では全体の20%近くが貧困層とされており深刻な状態です。対照的に、アメリカの北部エリアの貧困層は10%以下の州が多く、アメリカの貧困の実態は北部と南部で明確に分かれており、南部ほど深刻と言えます。

アメリカでは南部ほどアフリカンアメリカンやヒスパニック系が多く、北部ほど白人が多い傾向があるため、富裕層と貧困層には人種も関係していることが分かります。

▼データ参照元;
https://www.feedingamerica.org/hunger-in-america/facts
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_U.S._states_and_territories_by_poverty_rate

アメリカの貧困に対する対策

貧困問題を解決するためのアメリカ政府による具体的な対策は採られていません。

貧困問題対策は連邦政府以外に保健福祉省、農務省、エネルギー省、労働省、財務省などで分権されているため統一されたものはなく、州や街によっても対策が異なります。連邦政府は各州に対して資金提供による支援こそしていますが、その運営や方針は州によってバラバラです。アメリカでは連邦政府、州政府、地方自治体など分権状態にあるため、国としての貧困問題対策はうまく機能していないのが現状です。

政府による対策以外では、民間ボランティア団体や慈善事業団体によるシェルター開放、飲食の提供、衣類の提供などが盛んに実施されています。例えば、アリゾナ州では気温が下がる季節にはシェルターを解放したり、貧困層の人でも住める専用住居の建設、無償で医療が受けられるサービス、携帯電話の貸与などが実施されています。

アメリカの貧困問題対策は政府レベルと民間レベルで差があることは否めず、ボランティア団体などによるサポートなくして成り立たないのが実態と言えるでしょう。貧困問題に関する根本的な解決策は採られていないのです。

アメリカの貧困と医療の関係

アメリカ政府による貧困問題解決のための取り組みとしてよく知られているのが、オバマ大統領が公約として掲げた「医療保険制度改革(オバマ・ケア)」です。2010年に可決、2014年から実施されたこの制度は、国民皆保険をうたい貧困層でも医療が受けられるようにしたものです。貧困層や社会的弱者を守るための画期的な法律として注目を浴びました。

しかし、財政負担増加や保険料値上がりの弊害が起こり、貧困層を助けるために実害を被ることを嫌った中間層以上が抵抗しました。そしてその意向を汲んだトランプ大統領によって全廃に向けた調整がされる事態になります。この事態の背景にも自己責任論や極端な資本主義精神が見え隠れしていると言えます。国民の健康や命においても資本主義的な格差があるのはアメリカならではの課題でしょう。

アメリカの貧困と先住民族

アメリカの貧困を語るうえで欠かせないのはネイティヴ・アメリカンと呼ばれる先住民族です。

直近のデータではアメリカで生活しているネイティヴ・アメリカンは300万人程度とされており、アメリカの人口の1%未満です。大半は政府によって保護された居留地で生活していますが、深刻な貧困に直面しています。

現在アメリカで最も大きなインディアンの部族とされているナバホ族は、40%近くが貧困線以下とされており、高い失業率、肥満、アルコール依存、ドラッグ中毒など貧困層特有の問題を抱えています。貧困が故に健康的な食事が摂れず、現実逃避としてアルコールやドラッグに頼るという負の連鎖が何世代にも渡って続いているのです。とくにナバホ族の肥満問題はすべての世代に共通しており、貧困が引き起こした問題とされています。

まとめ

アメリカの貧困問題は建国以降続いている資本主義から派生する自己責任の風潮や国民性、そして急速に広まったグローバリゼーションなどが大きく影響しています。アメリカの貧困問題を解消するための具体的な対策はなく格差は広がる一方です。貧困層を救うための医療保険制度改革もうまく機能せず、貧困層と中間層以上の隔たりは大きいことが浮き彫りになっています。

自国の利益を優先し、強くて偉大なアメリカを目指すトランプ政権では貧困問題を解消することは難しいでしょう。弱者救済をモットーにしたオバマ政権でも貧困問題は解決出来なかったことを考えると、もはや政府の取り組みによる解消は難しく、アメリカ国民自らが意識を変えることが課題なのかもしれません。

本記事は、2020年3月20日時点調査または公開された情報です。
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