台湾の「新型コロナウイルス」に対する対策と市民の現在

2020年4月に入ってもなお、日本では新型コロナウイルスの感染者は増えています。感染拡大を防ぐため、イベント等の自粛も余儀なくされています。

同様に、世界でも新型コロナウイルスに対して、様々な対策が行われています。本記事では、高い評価を受けている「台湾」の対策と市民の様子について、まとめました。


はじめに-「台湾」の現在の状況

新型コロナウイルスへの対策の迅速さや内容が世界的に高い評価を受けている台湾ですが、3月26日の時点で感染者は252名。3月13日時点での50名から大幅に増加し、19日からは本格的な入国制限を行っています。

海外在住の台湾人の帰国には空港での徹底した消毒などで対応し、帰国者はスマートフォンの位置情報などを利用した厳しい管理下での14日間の自宅隔離。違反者には罰金を科するなどしています。

初期の感染拡大封じ込めに成功した「台湾」

台湾では新型コロナウイルスに対する注意喚起を昨年12月31日に行い、専門家チーム発足、検疫の強化など素早い対応を行ってきました。

地理的にも中国から近く、経済・観光など様々な理由から人の行き来も多い台湾ですが、こうした素早い対応と、国民への積極的な情報開示により初期の感染拡大の封じ込めに成功しました。

SARSの経験を生かした対応

そもそもなぜ台湾は今回の新型コロナウイルスへの対応がこれほどまでに迅速だったのでしょうか。

これには2003年に流行したSARSが大きく影響しています。

中国の広東省から広がり、32の国と地域で8,000人以上の感染者が報告されたSARSでしたが、台湾でも当時SARSにより73名の犠牲者が出ました。この時の経験から多くの国民が得た危機意識が、今回の初期の感染拡大封じ込めに繋がったと考えられます。

台湾内では2月後半には公共交通機関を利用する9割の人がマスクを着用していました。

また、飲食店などでは入店前に検温を行う場合もあります。学校再開にあたっての用意も周到で、休みを延長した後は検温、消毒、換気、マスク着用、保護者などの入校禁止などの対策をしながら日々授業を行っています。

蔡総統の対策が世界で評価

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスですが、その対策については国によって大きく異なります。

そんな中、台湾の蔡英文総統が打ち出す様々な対策、そして迅速な対応は諸外国から高く評価されています。どこよりも早い対応もさることながら、


・原則として中国人の入境を禁止
・海外渡航の制限
・旧正月休みの延長
・マスク配給制

など、非常に踏み切った対策が注目を浴びています。中国人の入国制限を行うことは経済的に大きなダメージを受けることは間違いありません。

しかし、蔡総統は新型コロナウイルスの侵入を防ぐには、中国とのやり取りを抑えることが重要だと判断。1月下旬より入国制限の強化を始めました。

新型コロナウイルスが蔓延することで失うものの大きさや重大さを考え、早めの措置に踏み切った蔡総統の決断は間違いではなかったことは、台湾の感染者数を見れば明らかです。

蔡総統の功績に満足しているのは外国ばかりではありません。肝心の台湾内でも蔡総統の支持率は60%と高く、また蔡政権の新型コロナウイルス対策に対する満足度も84%。素早い対応、斬新な対策により政府を信頼しているという台湾人は多いです。

早めの経済対策

更に蔡総統は、経済に関しても早めの対策を行っています。

台湾では600億台湾ドル、日本円にしておよそ2200億円を上限として経済対策の特別予算案が可決されました。この予算は新型コロナウイルスによるダメージの大きい産業を中心に救済・復興に運用されます。

今回の新型コロナウイルスの影響により、台湾でも飲食業、宿泊業、観光業などは非常に大きな打撃を受けています。

しかし台湾のお国柄なのか、このような状況の中でも悲観的なムードは少なく、「助け合いの精神」による好循環が経済にも良い刺激を与えています。休みなく患者の治療に対応する医療関係者に対し無償で食べ物を提供する周辺の飲食店、マスク不足の医療機関に備蓄していたマスクを寄付した会社など、「善意の輪」は広がっています。

こうした応援活動により、苦しい状況の中でも台湾の社会は荒むことなく、国民は前向きな気持ちで日々を生きることができています。

3月後半に感染者急増

いち早い対応で新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めてきた台湾ですが、旅行者や留学生などが海外から戻ってきたことにより感染者が急増。3月13日時点で50名だった感染者は18日に100人、26日には252名になりました。

SARSよりも広く世界に広まった今回の新型コロナウイルスは、海外からの感染リスクも高く、中国からの感染ルートを断つことに成功した台湾でもこのような多くの感染者を生み出す結果となり、社会に大きな衝撃を与えました。

帰国者は14日間の自宅隔離を徹底し、更なる感染拡大防止に努めています。

デマによる買い占めも

海外からの帰国者で感染者が急増した台湾では、3月18日以降に「都市部が封鎖される」という噂が流れました。これによりトイレットペーパーや保存食などを買い占める人が増えました。

また、「台湾政府が日本にマスクを1000万枚寄付した」という誤情報も発信され、国民の不安は更に煽られることとなります。蔡総統、そして外交部(外務省)はこういった状況、情報に対し「生活必需品の在庫は十分あるので、買い占めをする必要はない」「マスク寄付については全くのデマだ」という声明を出しています。


「鎖国」状態で感染防止第二段階へ

帰国者による感染拡大が懸念される台湾では、3月18日の記者会見で「3月19日からの入境禁止」、また、21日からは海外渡航を全面的に禁止することを発表しました。公務など特別な許可がある外国人、台湾の居留証を持っている外国人は入境できますが、それ以外は台湾人以外入境することができなくなります。

感染者が急増した台湾はこうした「鎖国」状態で海外からの感染ルートを断ち、感染防止を行う「第二段階」へと突入したのです。

蔡総統は3月19日の会見で「向こう14日間がカギを握る」と語り、台湾の人々へ強い決心で新型コロナウイルスに立ち向かう必要性を呼びかけました。

台湾でも経済への影響が危惧

中国からの入境制限により早い段階で経済へのダメージが危惧されていた台湾ですが、事実上の「鎖国」状態に入ったことで更なる経済危機が予想されます。事実、台湾当局では新型コロナウイルスが台湾経済に与える影響は四半期以内に留まるとしていましたが、上半期中は経済への影響が続く可能性があると見解を変えています。

観光客による経済効果が見込めない中、どのように経済を回復させていくのか。大きな打撃を受けたサービス業界の人々へどういった支援を行っていくのか、蔡政権の今後の決断にも注目が集まっています。

まとめ-経験と決断がカギを握る

台湾の近くにある中国は、一足先に感染症が収束しつつありますが、3月後半で一気に感染者が増えた台湾、そして世界での終息宣言はまだまだ先になりそうです。

台湾ではSARSでの経験を生かしたことが功を奏したように思われます。また、経済への大きなダメージを理解しながらも中国からの入国制限を早い段階から行った決断力も、新型コロナウイルスの感染拡大防止に大きく貢献しました。更に台湾では、政府が多くの情報を人々に発信したこと、買い占めや帰国者の外出などに関し厳しい罰則を設けたことも、感染を抑える重要なポイントとなったと考えられます。

日本は台湾と比較するとトップの決断も遅く、指示や規制も曖昧で緩いように感じます。

目に見えないウイルスとの、終わりの見えない戦いは精神的にもつらいものがありますが、感染爆発を防ぐには台湾のような危機意識と決断力が1人ひとりに求められます。自分や家族を守るために今できることを考え、行動していきましょう。

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本記事は、2020年4月3日時点調査または公開された情報です。
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