はじめに
「現代美術館」に非常勤契約で働く「学芸員」のキャリアレポートです。
職業・勤務先:学芸員 / 現代美術館
性別:女性
雇用体系:非常勤
所有資格:運転免許 学芸員資格 社会調査士 行政書士資格
「学芸員」を目指した理由
元々美術館が好きで、「学芸員」という仕事に憧れがありました。 大学の家庭の中に学芸員資格を取れるコースがあり、受講しているうちに職業として意識し始めました。
「学芸員」の仕事内容について
「学芸員」の業務は多岐にわたりますが大きく二つに分かれます。 ポイントとしては「美術/博物館のなんでもやさん」といったところです。 自分の専門性を生かすだけでなく、あまり興味のない分野についても誠実に学び、多くの人と折衝する仕事です。
1つ目は、学芸日常業務示の企画・運営 常設展と企画展(私は常設展の運営)について、展示する資料や説明の企画・運営を行います。 限られた空間の中で、来場者にとって有意義で面白い内容になるよう工夫します。 企画展については、巡業展示と呼ばれる外部の展示品を受け入れて展示を行うものもあり その担当者との折衝も行うことになります。
2つ目は、館の運営 日常の業務はこちらが主体となります。 館の掃除や受付、職員の管理など、美術館運営のための実務も「学芸員」の仕事になっているところが非常に多いです。日本の「学芸員」は、海外のキュレーターなどとは違い、こういった実務的な部分も担っていることが非常に多いです。 「学芸員ってあの座ってる人でしょ?」といわれてしまうゆえんでもありますがこちらも大切な仕事です。
「学芸員」の1日の仕事の流れ
07:30 自宅を出て、自動車で通勤する
08:30 到着 ・更衣・資料準備など
09:00 開館準備 掃除
10:00 開館
11:00 展示資料のケア@倉庫
12:00 昼休み
13:00 常設展示入れ替えについて会議・打ち合わせ *1
15:00 展示会場チェック 来場者への説明 *2
17:00 来客対応
18:00 閉館、閉館後の締め作業、常設展示入れ替え
19:00 退勤
*1 常設展示はいつも同じというわけではなく、定期的に入れ替えられます。トレンドや貴重度もなどを含め、常設展示企画の展開に合わせてどの資料をどのように展示するか決めます。
*2 来場者への説明は、学芸員さんのイメージとしては一番わかりやすい仕事かと思います。地域の学校の生徒への内容説明などをすることもあります。
「学芸員」の給料・残業・有給休暇について
月給23万円(残業代込)・ボーナス19万円で、年収300万円程度でした。
残業は繁忙期は非常に多かったですが、そうでもない時期は事前に調整して定時で帰ることができました。 有給休暇は比較的とりやすかったです。
この仕事で、働いているときに困ったこと
専門的な知識を持った「学芸員」でも、掃除や洗濯、監視員など、いってしまえばアルバイトでもできるような業務をしていることが多く、慢性的な人手不足のしわ寄せが学芸員にいっていることがあります。
アメリカなどでは美術館のキュレーターは専門職として尊敬される職業ですが、日本は非正規雇用の若い「学芸員」が専門分野とは関係のない実務に追われており、社会の認知度もそれほど高くありません。 業務はやりがいがありましたが、非常に厳しいと感じることも多いです。
この仕事や職場でよかったこと
本物の資料に囲まれて仕事ができること、展示企画などの仕事には強いやりがいを感じました。
そのほかの点でも、人間関係に恵まれれば、様々な経験ができる仕事だと思っています。 上司に恵まれていたので、「学芸員」としてのスキルをしっかりと身につけることができました。 自分の専門以外の部分にも誠実に取り組むことが学芸員には欠かせない力だと学びました。
福利厚生という面では大手企業に劣りますが、地域の文化を支える仕事をしている実感がありました。
「学芸員」の仕事エピソード
展示企画の際のアイデアが形になり、来場者アンケートで高評価を得たことが仕事で感動したことです。
失敗したこととしては、自分の専門以外の分野の展示で、基本的な展示情報に誤りがあったことです。 しかもそれを来場者様に指摘されてしまったことです。 「学芸員」としてその場にいる以上「専門じゃありません」とはいえません。正しい情報かどうか精査するという校閲能力必要な仕事なのだと痛感しました。
大変だったことは、展示の企画→実現までの課程のすべてです。 私は補助的な仕事でしたが、多くの人と打ち合わせをし、たくさんの業者が関わって展示を作っているため その調整に消耗しました。
「学芸員」の職場恋愛について
あまり人がいないため、職場恋愛などはありませんでした。 年齢層もバラバラで、正規社員・非正規社員含めて中高年の方が多いので、あまりそのような気持ちにはなりませんでした。もっと年齢層が若く、スタッフの多い職場であればそういった機会もあるかもしれませんが・・・・・・。
外部と折衝する機会も多いですが、ほとんどは年配の男性が占める業界です。 職場以外の出会いがあれば、学生時代からのお付き合いを実らせたり、友人の紹介などでお付き合いを始める方が多いような印象を受けます。
まとめ – 「学芸員」を目指す方へメッセージ
社会は厳しいですが、「学芸員」という仕事は大きなやりがいと意義のある仕事だと思っています。 頑張ってください。
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