アメリカの経済再開が本格化!感染第2波は大丈夫なの?

2020年5月上旬より、アメリカの経済活動が本格的に再開しはじめています。

本記事では、経済活動が再開されたアメリカで懸念されている新型コロナウイルスの「感染第2波」について、アメリカ在住の日本人が、現地の様子をレポートします。

公務員として、アメリカの状況にぜひ注目してください。

はじめに – 経済活動を再開したアメリカ

日本では緊急事態宣言が2020年6月まで延長されて、自粛生活が続いていますが、アメリカでは最も感染被害が多いニューヨーク州を除いて、多くの州が規制を緩和しています。

アメリカ最大の人口を誇るカリフォルニア州では5月上旬から制限があるものの、レストランや小売店の営業を再開しており、少しずつ日常生活を取り戻しつつあります。

一方で、感染者数や死者数が減少傾向にないアリゾナ州などでも経済を再開していることから、早くも「感染第2波」の到来が懸念されています。

大統領選までに少しでも経済を正常化させたいトランプ政権の決断は吉と出るか、凶と出るかアメリカ国内では注目されています。今回は、徐々に日常に戻りつつあるアメリカの様子や人々の反応をご紹介します。

アメリカの経済再開までのシナリオ

トランプ大統領は、非常事態宣言から1ヶ月経過した4月16日時点で、3段階から成る経済再開への新指針を発表しました。

経済再開までの新指針

新指針は第1段階から第3段階までに分かれており、それぞれで予め定められたチェックポイントを満たすかが問われます。チェックポイントは以下の3つで構成されています。

チェックポイント
検査の陽性件数やコロナのような症状の報告件数が過去14日間で減少傾向にあること
医療機関がすべての患者に対応可能であること
強力な検査体制が確保されていること

上記3つのチェックポイントをそれぞれの段階で満たすことによって、次の段階へと進めます。そして、最終的に第3段階まで進むことで経済を本格的に再開するシナリオです。

第1段階
・人との距離が約2m確保出来ればレストラン、映画館、ジムなどは営業可能
・学校は休校
・10人を超える集会は禁止
・在宅勤務を推奨
・高齢者や持病がある人は自宅待機

第2段階
・学校再開
・不要不急の旅行の許可
・立ち飲み式のバーも営業可能
・50人までの集会なら可能

第3段階(実質的な制限解除)
・手洗いの徹底
・対人距離の確保

強制権がない新指針

連邦政府は段階的に経済を再開する計画でしたが、実際に強制権を持っているのは州政府のため、各州政府がこの新指針に従うかどうかは別問題です。

実際に、オクラホマ州やテネシー州、アイダホ州などの10州はチェックポイントを満たしていないにもかかわらず、行動規制の緩和を決定しています。

州政府が連邦政府の指針に従わない背景には、各州で頻発する抗議デモや裁判があります。仕事がなく生活に困窮する人や、営業が規制されることで収入源を失った企業などが多く、政府の支援だけでは間に合わなくなったのです。

経済再開の望む抗議デモでは、一部のアメリカ人が銃を持って抗議するなど過激な行動を始めたため、州政府としては苦渋の決断が迫られていると言えます。当然ながら、トランプ政権(共和党)支持州ほど経済再開に意欲的です。

政府内の慎重派による声

トランプ大統領が経済再開を急ぐ一方で、政府の新型コロナウイルス対策本部のメンバーである国立アレルギー感染症研究所のFauci(ファウチ)所長は、全米で広がる経済再開に対して「とても危険なこと」と警鐘を鳴らしています。

上院議員が集まるオンライン議会で証言したファウチ所長は「地方政府(州政府)がチェックポイントを無視して経済再開を決めていることが問題」としています。また、アメリカ政府が発表している死亡者数82,925人(5月12日時点)は、実際にはそれ以上であると述べました。

4月中旬に制定した経済再開へのチェックポイントでは「新規感染者が過去14日間で減少傾向にあること」と定めていますが、実際には州政府の独自判断で多くのビジネスが再開されているのです。皮肉なことに、連邦政府中枢にある対策本部の意見を州政府が無視している事態になっています。

アメリカ政府高官による経済再開の否定的な意見はイギリスBBCやアメリカ国内主要メディアでもトップニュースで報じられており、トランプ大統領の楽観的な姿勢と相反する状態になりました。

各地で起こる矛盾

連邦政府と州政府の統制が効かないなか、アメリカの各地で行動規制の緩和を巡って様々な矛盾が起きています。

カリフォルニア州「ビーチ封鎖を巡る訴訟」

4月下旬、カリフォルニア州は熱波や本格的な夏の季節を迎えたことを受け、多くの州民がビーチに集まりました。これに対してカリフォルニア州知事はビーチの封鎖を決定しますが、すぐさま地元の市長らが抗議し、州政府を訴える事態になりました。結局、5月5日までにビーチを再開する措置が取られ決着しました。

フロリダ州「ビーチを再封鎖」

フロリダ州のマイアミ市は4月中旬には対人距離の確保やマスク着用を条件にビーチを解放しました。これにより多くの人がビーチに来るようになりましたが、ほとんどの人がルールを守らずに利用したため、再び閉鎖する事態になりました。

ビーチを利用した7,000人以上の人がルール違反による警告を受け、監視員に対する暴言や暴力事件も起きています。ルールはあくまでも自主性に委ねられており強制力はありません。閉鎖を決めた市政府としては難しい決断だったと言えます。

イリノイ州「経済再開は5段階式」

5月8日、イリノイ州シカゴ市は連邦政府が定めた3段階の新指針をよりも厳しくした5段階式の経済再開計画を発表しました。ライトフット市長はこの計画では具体的な数値を定め「入院患者数が1,800人以下」「集中治療室の患者数600人以下」「14日間続いていること」などを組み込みました。

他の都市よりも厳しい条件だけに安全を優先するグループからは歓迎される一方で、市議会では反発を受けています。この事例からは市政府内でも経済再開を巡る対立が起きていることが分かります。

ミシガン州「自動車産業は再開、外出規制は継続」

製造業が州全体の経済を19%占めているミシガン州は、5月11日から一般製造業が再開、18日にはアメリカ自動車メーカー3社が25%の稼働率で工場を再開させます。一方で、州民の外出規制は28日まで継続が決定しており、他州よりも厳しい措置が続きます。

ミシガン州デトロイトでは4月13日に経済再開を望む州民たちによる抗議デモが起きています。ミシガン州では感染者が増加傾向にある反面、経済再開を強く望む声があり、全米のなかでも難しいケースとされています。

ホイットマー州知事は「感染第2波によって事態が後戻りすることだけは避けたい」としていますが、経済再開がどのような影響を与えるかは不透明です。

テキサス州「経済再開後の感染拡大」

全米で2番目に人口が多いテキサス州は、経済再開に非常に積極的な州のひとつです。外出制限は4月30日で終了し、5月1日からレストランや小売業、映画館、美術館、教会などを許容人数の75%内に制限したうえで再開させることを決定しました。

大都市圏であるテキサス州が経済再開に踏み切ったことは、他州にも影響を与えると思われましたが、同州のパリスにある老人ホームで入居者の8割が感染する事態が発生し、3名が亡くなりました。

さらに、この老人ホームで働いている職員は買い物にも出かけており、地域一体で感染者数が増加しました。検査キットを確保出来ていない問題も重なり実態が掴めていない状態です。規制緩和によって感染が拡大した事例と言えるでしょう。

アリゾナ州「規制緩和で専門チーム解散」

5月15日まで外出制限を延長したアリゾナ州では、5月末頃に州内の感染ピークを迎えると予想した州政府対策専門チームを解散させるという出来事がありました。同州では感染者数および死亡者数は増加傾向にありますが、5月8日から段階的に経済再開を進めています。

地元のアリゾナ大学から派遣されている研究者や専門家は、同州ではこれからピークを迎えると予想しましたが、感染拡大による影響は少ないと判断される結果になりました。州政府と専門家でも意見が割れた事例と言えます。

アメリカの感染第2波は防げるのか?

次々に経済を再開する州が増えているアメリカですが、懸念されている「感染第2波」は防げるのでしょうか?

アメリカ人の生活習慣は変わりつつある

感染第1波の時は無防備であったことや、危機感を持っていない人が多かったことから感染が急激に拡大してしまいました。しかし、アメリカ人の生活習慣は明らかに変わりつつあります。

その代表的な事例が「マスクの着用」です。外出規制が出ている際には自主的にマスクを使用する人が増えました。大手スーパーマーケットのCostcoでは、顧客にマスク着用を義務付けており、2人以上での来店を拒否しています。

日本のようなマスクを付ける文化がないアメリカでは非常に大きな変化と言えるでしょう。手洗いの習慣も定着しつつあり、衛生に気を使うようになっていることは確かです。

一方で、就寝前にシャワーに入らない、男性は顔全体に髭をたくわえている、土足のまま部屋で過ごすといった習慣は変わらないようです。

強い警戒感

アメリカ人は非常時における警戒感が強いため、感染第2波にも自主的に備えるでしょう。普段は衛生のことなど気に留めないおおらかなアメリカ人ですが、新型コロナウイルスのように見えない細菌となると過剰なまでに警戒します。

街に出かけるとよく分かりますが、露骨なまでに人を避け、常にグローブとマスクを装着しています。なかには毒ガスマスクを付けている人もいるほどで、日本人からすれば冗談か本気か分からなくなります。

しかし、このような傾向は感染を警戒している人が多いことの証明ですので、仮に感染第2波が起きても被害は少なく済むのではないかと感じています。

アメリカは8月下旬まで夏休み

アメリカは小学校から大学までの教育機関は8月下旬まで夏休みに入ります。自主的に授業を取らない限りは3ヶ月ほど休みが続き、集団が集まる機会は減少します。これにより感染は抑えられるとされています。

また、飛行機を使った国内旅行も便数の減少によって例年のようにはいきません。今年の夏休みは、移動手段や目的そのものが減っていることから、必然的に感染拡大は少なくなるでしょう。

まとめ

アメリカ全体で「経済再開」と「感染第2波の到来」が話題になっていますが、アメリカは着実に日常を取り戻しつつあります。また、国民の感染予防に対する危機意識も高まっていることから、第1波のような状態には至らないでしょう。

一方で、改めて連邦政府と州政府のねじれ、州政府、市政府内の統一性のなさが浮き彫りになっており、二極化があらゆる場面で勃発しています。新型コロナウイルス問題を通じて、改めてアメリカ分断を実感する事態を迎えています。

日本も今後、段階的に経済活動が再開されれば、「感染第2波」の問題に直面します。公務員も、公務員でない人も、一足先に経済活動を再開したアメリカの今後の動向に、注視していきましょう。

本記事は、2020年5月19日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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