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日本とは違う?アメリカのリモートワーク事情 2020年5月

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目次

はじめに – リモートワーク先進国アメリカ

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの人が外出規制の対象になりました。これに伴い、医療従事者や食料品を扱うスーパーマーケットなどの必要不可欠なサービス以外の人は原則として「在宅勤務」を強いられています。

日本でも感染防止措置として在宅勤務やテレワークなどが推奨され、今回を機に多くの企業がリモートワークを導入しました。アメリカはリモートワーク先進国と言われており、コロナ禍以前から自宅やカフェなどで仕事をする人が多く見られました。

そんなリモートワーク先進国のアメリカがコロナ禍によってどのような変化があったのか、アメリカの労働環境は変化していくのか、問題点は何かなど、アメリカ在住の筆者目線で解説します。

アメリカのリモートワーク事情

はじめに、アメリカにおけるリモートワーク事情を見てみましょう。ちなみに、アメリカでは「リモートワーク」と「テレワーク」という言葉が混在していますが、同義語として扱われています。

リモートワークの歴史が古いアメリカ

アメリカでは1990年代初頭からリモートワークを推進してきた歴史があります。

1995年には連邦政府職員が自宅で仕事を出来るように、電話回線をはじめとする必要な機器の購入を政府が負担する法律が認められました。(Public Law104-52)

2000年10月には同法律が改正され、各省庁でリモートワークによる生産性を向上させるための制度を構築することが義務づけられました。加えて、法の施行から6ヶ月以内に対象者の25%がリモートワークを実施し、翌年から対象者を25%ずつ拡大することも義務づけられています。(実は目標達成には至っていない)

2004年には各省庁に「リモートワークコーディネーター」の設置、2010年にはリモートワークを一層強化するための「Telework Enhancement Act of 2010」が成立しました。これにより、全職員に対してリモートワークの適格性テストが実施されています。

アメリカではインターネットが出現する前の1990年代からテレワークを積極的に取り入れています。テレワークの課題や解決策、認知度、法律などの環境も整備されていることから、コロナ禍においても一般企業や個人がスムーズにテレワークを受け入れられたのです。

2001年からリモートワーク人口増加中

アメリカでは2001年のニューヨーク同時多発テロを機にリモートワークの人口が増えました。この背景には「危機管理」があり、企業が事業を安定して継続させるためには、機能を分散させた方が良いという考えに基づいています。

アメリカの労働人口は約1億6,000万人で、このうちの56%はリモートワークが可能な職業とされています。実際にリモートワークで働いている人は約20-25%で、5人にひとりがリモートワークで働いている計算です。


2009年のリーマンショックによりリモートワーク人口は減少していますが、リモートワークの機会やリモートワークを好む人の割合は増加傾向にあります。

実際に、アメリカを含む世界中の労働環境などを調査しているGlobal Workplace Analyticsは今後の予想として「2021年までに労働者の25-30%(約4,000万人以上)が週に数日は在宅勤務になる」としています。アメリカではコロナ禍が終息した後もリモートワーク化が進むという訳です。

▼参考URL:https://globalworkplaceanalytics.com/work-at-home-after-covid-19-our-forecast

リモートワークを導入したアメリカの主な企業

アメリカではコロナ禍をきっかけにしてIT企業を中心に「恒久的なリモートワーク」が広まっています。

リモートワークを導入した企業1:Twitter

2020年5月12日、Twitter社は新型コロナウイルス対策として導入したリモートワークを「永遠に」許可することを発表しました。

カリフォルニア州のサンフランシスコに本社を構える同社は、州の非常事態宣言を受けて3月初旬から在宅勤務を継続してきました。しかし、ジャック・ドーシーCEOは、業務が在宅勤務でもうまくいく確証が得られたとし、この状態を永遠に続けると発表しました。

一方で、子育てなどの家庭の事情で在宅勤務が大変な社員には出社を容認しており(9月から)、世界で4,000名いるとされる従業員たちはフレキシブルに仕事が出来るようになっています。

世界的に有名なシリコンバレーのIT企業が採用した決断は、数年後には一般企業にも浸透すると見られており、日本のベンチャー企業も追随する可能性があります。

リモートワークを導入した企業2:Shopify

5月22日、中小企業向けのECプラットフォームを提供するShopify(ショッピファイ)も永久的なリモートワークを容認しました。(同社の拠点はカナダのオタワですが、2015年にアメリカのニューヨーク証券取引市場に上場しており、実質的な活動拠点はアメリカ)

現在、新型コロナウイルスの影響で一時的にオフィスを閉鎖している同社ですが、2021年末まで閉鎖を継続し、全従業員を在宅勤務にしました。仮に、オフィスが再開しても在宅勤務を続けるとしており、大きな反響を呼んでいます。

同社CEOのトビアス・リュトケ氏は、Twitter上で永久的なリモートワークを発表し「オフィス中心主義の時代はもう終わった」と宣言しています。

Amazonのライバルとされている新鋭のIT企業が恒久的なリモートワークを導入したことは、大きな影響を与えそうです。

リモートワークを導入した企業3:Facebook

Facebookは7月6日にオフィスを再開するものの、年内は在宅勤務を続けられると発表しています。マーク・ザッカーバーグCEOは、事業体系の問題で在宅勤務が出来ない人もいるため、他社のように全従業員が恒久的なリモートワークに移行出来ないとしています。

アメリカのIT企業のなかでも先陣を切ってリモートワークを取り入れた同社は、コロナ禍によって在宅勤務および家族手当として全従業員に対して一律1,000ドル(約11万円)を支給しています。

リモートワークを導入した企業4:Microsoft

Microsoftは他社よりも長い10月までオフィスを原則閉鎖し、在宅勤務を継続すると発表しています。


ただし、従業員に選択の余地があり、同社があるワシントン州の方針によってはオフィスを再開する予定もあるとしています。日本では週休3日制を導入している同社だけに、日本での動向も注目されています。

この他に、GoogleやAmazon、AppleなどのIT系企業が2020年夏にはオフィスを再開させる予定ですが、秋まではリモートワークを中心にして働けるようにしています。これらの企業の方針は他の中小企業への影響が大きく、CEOの判断に注目が集まります。

問題も多いアメリカのリモートワーク

リモートワーク先進国とされるアメリカですが、リモートワークに関する問題も起きています。

リモートワークの問題1:3人にひとりがリモートワーク中に飲酒

様々な依存症に関する研究や調査を実施しているAmerican Addiction Centers(依存症センター)の発表によると、アメリカ人3,000人を対象にした調査で、3人にひとりがコロナウイルスによって強いられた在宅勤務中に飲酒をしていることが判明しました。

最も飲酒率が高かったのがハワイ州(67%)、最も低いのがアーカンソー州(8%)という結果でした。回答したうち22%の人がアルコールを買いだめしていると答えており、リモートワークによるストレスや、監視の目がないことの課題が浮き彫りになりました。

実際にはもっとたくさんの人が飲酒をしていると考えられていることから、潜在的な深刻な問題と言えます。

▼参考URL:https://www.alcohol.org/guides/work-from-home-drinking/

リモートワークの問題2:リモートワーク格差

アメリカではリモートワークが拡大している一方で「リモートワークが出来ない人」とのギャップが問題になっています。

一般的にリモートワークは、これまでオフィスでパソコンを使うような専門性が高い仕事をしていた人たちが対象です。さらに、経営者やマネージャークラスの「ホワイトカラー」と呼ばれる人たちのみが対応できる働き方と言えます。

対照的に、レストランのサーバーや、スーパーマーケットのレジ、美容室の店員などはリモートワークに対応出来ません。アメリカでは、これらの職業は学歴がない人や低賃金で働いている人が多く、富裕層と貧困層の差が浮かび上がっています。

当然、感染リスクも高まります。貧困層ほど感染リスクが高くなり、万が一の時は高額な医療費をどのように負担するかも問題です。

Global Workplace Analyticsの調査によると、アメリカの一般的な在宅勤務者は45歳以上で大卒、従業員規模100名以上の企業勤務、そして年収58,000ドル(約600万円)ほどのステータスがあるとしています。

アメリカではリモートワークにおいても格差があるという訳です。

▼参考URL:https://globalworkplaceanalytics.com/telecommuting-statistics

これからアメリカのリモートワークはどうなる?

Global Workplace Analyticsは、以下の調査結果を根拠に挙げて、アメリカではコロナウイルス感染拡大が収束した後、さらに在宅勤務が加速すると考えています。

・従業員の56%が、仕事の一部をリモートで実行できる仕事である(同団体調べ)
・オフィスのデスクを使用していない時間は労働時間の時間は50-60%(同団体調べ)
・62%の従業員がリモートで作業できると回答(Citrix 2019 poll)
・従業員の80%がいつかは自宅で仕事をしたがっている(State of Remote Work 2019, Owl Labs)
・自宅で仕事をしたくないと回答した連邦政府職員は12%(Federal Employee Viewpoint Survey 2018)
・従業員の35%が、リモートでフルタイムで働く機会を得るために転職する(State of the American Workforce, Gallup, 2016)

日本の社会経済の生産性を調査している公益財団法人日本生産性本部が2020年5月中旬に1,100名を対象にした調査によると「6割超がコロナ後もテレワークを続けたい」と回答しています。

これからは日本もアメリカ同様にテレワークを導入する企業、個人が増えてくることは間違いないでしょう。

まとめ

アメリカでは新型コロナウイルスによって多くの人や企業がリモートワークに移行しました。さらに、この変化を恒久的なものにしようとする動きも活発化しており、日本企業も参考すべき姿になりつつあります。


リモートワークが拡大する一方で、飲酒や格差などのアメリカらしい問題も浮き彫りになっており、日本の企業はこれらの課題も参考に出来そうです。次世代の働き方としてリモートワークが定着するかどうか、アメリカ経済の変化に今後も注目してください。

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本記事は、2020年6月3日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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