音楽系公務員にはどんな公務員職があるのかをご紹介
音楽学科を卒業した後、音楽に関わる仕事に就くために公務員を目指す方も多くいます。
大学などの音楽学科で学んでいる方が音楽の知識を活かして公務員を目指す場合、どのような職種があるのかをご紹介します。
音楽学科の方が目指せる公務員の職種は、大きく分けると、学校などで音楽を教える教師系、音楽隊に入隊する演奏系、音楽療法士の資格を活かして公立施設で勤務する医療系などがあります。
音楽学科から目指せる公務員1)学校の先生などの教育分野で活躍する公務員
音楽学科など音楽を専攻していた方が目指す音楽系の公務員としては、まず教育系の職種があります。
例えば、公立の小学校・中学・高校で音楽などを教える音楽教員や、公立の幼稚園や保育園での教員の仕事があります。
また、警察学校など、特殊な公立の施設で音楽を教える講師として働く方もいますが、外部から民間の講師を招くケースが多く、必ずしも公務員というわけでは無いようです。
公立小学校・中学校・高等学校の音楽教師として音楽などを教える
音楽に関わる公務員として、最も多くの人が就職しているのが、公立の小・中・高校の音楽の先生かと思います。
音楽の先生になるためには、教育系大学の音楽学科や、音楽大学での教員養成課程などで学び、教員採用試験の受験に必要な教育実習などの卒業要件を満たして受験資格を得る必要があります。
小学校では、音楽だけでなくほかの科目を総合的に教える場合が一般的ですが、自治体によっては、音楽の専任教師を雇用している場合もあります。また、低学年は担任の先生が音楽を担当し、高学年になると音楽の先生に習うというケースもあります。
小学校で音楽を教える場合には、主に教育系大学の小学校教員養成課程で、「小学校教員免許状」を取得することが多いようです。
中学校・高等学校では、「音楽」の教員免許状を取得した場合のみ、音楽を教えることができます。
このように、音楽だけを教えるのか、それ以外の教科も担当するのかは、学校の種別によって異なります。
音楽学科から音楽の先生になる可能性を考えている方は、どの学校の教員免許を取得するかを検討したうえで、大学・短大を選ぶのが良いでしょう。
地方公務員である学校教員、この中で音楽教員の免許取得に関する体験談レポートです。 音楽の先生になるには、どんな過程があるのか、どんな専門的知識が求められるのか、そして、仕事の魅力についてまとめました。
▼参考URL:文部科学省|教員をめざそう
(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/miryoku/1283833.htm)
公立幼稚園の教員として音楽などを教える
幼稚園教諭養成課程のある教育系や保育系の大学の音楽学科などから、幼稚園教諭の免許を取得した上で、公務員を目指す方法もあります。
市立幼稚園や町立幼稚園などの公立の幼稚園の先生は公務員なので、公務員として、子どもたちに音楽教育を行う立場になることができます。
ただし、幼稚園教諭は、クラス担任などになれば音楽以外の子どもたちの活動全般を見ることになりますし、担任を持たない場合でも、音楽以外の活動を指導するのが一般的です。
また、幼稚園教諭になるためには音楽以外の知識も必要ですので、必ず幼稚園教諭養成課程のある大学や短大で必要な科目を習得するようにしましょう。
幼稚園教諭免許状を取得(または取得見込み)で、市町村等が行う幼稚園教諭採用試験に合格すると、公務員の幼稚園教諭として働くことができます。
公立保育園の保育士として、歌や楽器演奏などの音楽活動に関わる
音楽学科から目指せる公務員の仕事として、公立保育園の保育士という仕事もあります。
保育士の資格は、保育士養成課程のある大学・短大・専門学校のほか、独学での受験も可能です。そのため、ご自身の通う音楽学科に保育士専門の養成課程が用意されていなくても、保育士を目指すことができます。
保育士の仕事の中で、音楽に関わる仕事は一部ですが、園児の歌に合わせてピアノを弾いたり、発表会の演奏などの指導をすることもあります。
そのため、ピアノが弾けることなど、音楽の技術がある場合は、保育士免許試験での実技試験や、保育士採用試験で有利な場合があります。
そして保育士の資格を取得したうえで、市町村等が行う保育士採用試験に合格すると、公務員の保育士として働くことができます。
音楽学科から目指せる公務員2)音楽隊などの演奏を専門とする公務員
音楽学科を卒業し、公務員として演奏家になる道は、意外と様々なところに開かれています。
例えば、自衛隊や、各県の警察本部などは組織ごとに音楽隊を設置しており、式典などで演奏したり、広報活動のためにコンサートを行ったりしています。
音楽学科出身の公安系公務員は、実はこれまでにも多く採用されているのです。
公務員の音楽隊員は、演奏活動に専念する専業の場合と、演奏がない時には、他の業務を担う兼業の場合があります。
また、専業の場合であっても、音楽隊に関わる事務作業など、一般の業務にも携わる場合があります。
ここからは、音楽隊がある公務員が働く組織について、ご紹介します。
自衛隊音楽隊には陸・海・空それぞれの音楽隊がある
自衛隊の音楽隊には、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊それぞれの音楽隊があります。自衛隊の音楽隊員は演奏業務を専業としています。
また、各自衛隊の音楽隊にも、地方ごとなどに複数の音楽部隊が設置されています。
自衛隊の音楽隊は、隊員の士気高揚のための演奏活動はもちろん、国賓を迎えるための演奏や、自衛隊の儀式・国家的な行事での式典演奏のほか、広報活動や地域貢献としての定期演奏会、ファミリーコンサートなどの各種演奏会、被災地での慰問演奏、学生に対する演奏指導、民間のレコード会社からの依頼を受けて、録音に協力するなど、各方面で活躍しています。
音楽隊によって、楽団の編成も様々であり、募集している担当楽器も異なります。
楽器に欠員がある時のみ募集が行われることがほとんどですので、その年によって募集する楽器が違うため、新卒でスムーズに入隊するのは難しいこともあります。
そのため、担当希望楽器によっては欠員が出るまで他の仕事に就いていたり、フリーランスの演奏家として活動しながら、募集があるまで何年か待つという方もいるようです。
自衛隊音楽隊への所属を希望する場合でも、入隊して最初の研修は他の隊員と一緒に自衛隊としての基礎的な研修、訓練を受けることとなります。
陸上自衛隊音楽隊には20ほどの音楽隊があります
陸上自衛隊音楽隊は、陸上自衛隊員で編成された音楽隊で、陸自音楽隊などとも呼ばれています。
陸自音楽隊には、東京に設置されている中央音楽隊、北海道、東北、東部、中部、九州の各地方に設置されている方面音楽隊、そして、全国の師団・旅団に全部で15の音楽隊が設置されています。
それぞれの音楽隊は普段は独自で活動していますが、オリンピックなどの大規模な祭典・式典で演奏する時には、合同で演奏することもあるようです。
募集する楽器はその年によって異なりますので、各音楽隊のホームページなどで、採用案内を確認してください。
陸上自衛隊音楽隊員として採用された場合、まずは入隊してから3ヶ月間「前期教育」として自衛官としての基礎訓練を受けます。音楽とは一旦離れ、体力をつけるための訓練、射撃の訓練、自衛官としての心構えなどを学びます。
その後、「後期教育」として、3ヶ月間音楽隊員としての基礎教育を受けます。演奏技術についての個人レッスンはもちろん、マーチングや、室内楽のレッスンを受け、陸自音楽隊として人前で演奏できる技術を磨きます。また、体力を維持するための訓練もあるようです。
合計半年間の訓練を修了すると、全国の音楽隊へ配属され、音楽隊としての本格的な活動が始まります。
▼参考URL:陸上自衛隊中央音楽隊
https://www.mod.go.jp/gsdf/central/band.html
海上自衛隊音楽隊になるには、自衛官の候補生などになって音楽職種説明会に参加します
海上自衛隊は海上自衛隊の隊員で編成された音楽隊です。
海上自衛隊音楽隊の中心的な存在は、防衛省が直轄している東京音楽隊です。そのほかに、地方ごとに、横須賀音楽隊(神奈川県)、呉音楽隊(広島県)、佐世保音楽隊(長崎県)、舞鶴音楽隊(京都府)、大湊音楽隊(青森県)が配置されています。
海上自衛隊音楽隊の演奏場所の特徴として、護衛艦の入港の際に、港で演奏することがあります。
海上自衛隊音楽隊になるためには、まず各地方の「自衛隊地方協力本部」に連絡し、各エリアで行われる自衛官採用試験を受験します。その上で、9月・10月頃に行われる海上自衛隊音楽隊の「音楽職種説明会」に参加し、音楽隊の仕事内容を確認します。
例年、翌年の3月末に入隊後は、まずは教育隊に配属され、4ヶ月間自衛官としての基礎訓練を受けます。5月頃に音楽隊員としての適性検査が行われ、7〜8月頃に全国の各音楽隊へ配属される予定となっています。
▼参考URL:海上自衛隊東京音楽隊
https://www.mod.go.jp/msdf/tokyoband/
空自衛隊音楽隊は、珍しいジャス編成もある音楽隊です
航空自衛隊音楽隊は、航空自衛隊の隊員によって編成された音楽隊です。
航空自衛隊音楽隊は、防衛大臣が直轄し、国の式典の演奏なども担当する中央航空音楽隊のほか、地方ごとに北部航空音楽隊、中部航空音楽隊、西部航空音楽隊、南西航空音楽隊というように、全部で5つの音楽隊が設置されています。
特に、沖縄県にある南西航空音楽隊は、珍しいジャズオーケストラ編成であり、自衛隊唯一のジャズバンドとして地域の方にも親しまれているようです。
航空自衛隊音楽隊を目指す場合にも、まずは自衛隊地方協力本部への問い合わせの後、自衛官採用試験を受験します。
音楽隊になることができるのは「一般曹候補生」と「自衛官候補生」という2種の候補生のみなので、必ずどちらかの採用試験を受験しましょう。
航空自衛隊に入隊後はまず教育隊に所属し、自衛官としての基礎訓練を積みます。教育隊での期間中に職種選択の希望が取られるので、「音楽隊」を希望します。音楽隊員を希望する隊員には、楽器演奏実技の他、楽典、ソルフェージュなどの試験や面接などにより適性試験が行われ、試験の結果選抜されると、音楽隊員になることができます。
7月頃に教育隊での課程を修了すると、全国の航空自衛隊音楽隊に配属が決まりますが、まずは1ヶ月間航空中央音楽隊で新隊員全員での訓練が行われます。実際に配属されるのは9月頃の予定です。
▼参考URL:航空中央音楽隊
https://www.mod.go.jp/asdf/acb/
海上保安庁音楽隊は、音楽と保安業務を兼務する隊員で構成されています
海上保安庁音楽隊は、海上保安庁の職員で編成された音楽隊です。
自衛隊の音楽隊が専業なのに対し、海上保安庁の音楽隊は、一般の海上保安庁職員としての業務も担当する兼業の音楽隊です。
海上保安庁音楽隊は、職員の士気の高揚や、市民に対して海上保安庁の活動を広報することなどを目的に、国民的行事での演奏や、海に関するイベントでの演奏、市民向けのコンサートなどの活動を行っています。
海上保安庁の音楽隊は、音楽隊員としての採用試験は行っていません。音楽隊に入るには、海上保安学校などを卒業して「海上保安官」になってから音楽隊を希望するか、事務官から音楽隊への配属を希望する方法があります。
海上保安庁音楽隊は保安官のメンバーがほとんどですが、2016年には事務官から初の音楽隊員が誕生し、事務官からも音楽隊になる道が開拓されつつあるようです。
海上保安庁の事務官は、一般職として採用される職員で、高卒から目指すことができます。
▼参考URL:海上保安庁音楽隊
https://www.kaiho.mlit.go.jp/doc/band/ongaku.html
警察音楽隊は、全国の警察本部などに設置されています
警察音楽隊は、警視庁と、道府県警にそれぞれ設置されている音楽隊です。
全国で初めて音楽隊が設置されたのは、神奈川県警で1934年のことでした。その後、東京の警視庁や大阪府警などにも音楽隊が設置され、現在では全国の警察に音楽隊は組織されています。
警察音楽隊には、音楽隊の活動に専念できる専務隊と、警察官としての一般業務と両立して音楽活動も行う兼務隊があります。
全国の警察音楽隊のうち、この専務隊が結成されているのは、歴史ある神奈川県警音楽隊や、警視庁音楽隊などの11の音楽隊のようです。
警察音楽隊になる方法は、各警察によって異なりますが、一般的には警察学校で警察官としての訓練を積み、警察官として一人前になったのちに、オーディションを受ける方法が多いようです。
また、警察ではない警察の事務職にあたる、警察職員からも音楽隊になれる警察もあるようです。
》参考URL
警視庁音楽隊
(https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/about_mpd/shokai/katsudo/ongaku/index.html)
神奈川県警音楽隊
(https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesa8086.htm)
皇宮警察音楽隊は、皇室行事で演奏することができる音楽隊です
警察音楽隊の一つに、皇宮警察音楽隊があります。皇宮警察とは、皇室や国賓などの要人の警備などを専門とする警察であるため、皇宮警察音楽隊が演奏する場所も園遊会などの皇室行事や、皇居でのコンサートなど、格式高い場面での演奏も実施しているようです。
しかし、皇宮警察隊の音楽隊は、警察音楽隊でも触れた兼務の音楽隊であり、隊員は演奏のほか、警務部門の採用や、人事管理、予算、福利厚生など、皇宮警察の組織の基盤を支える事務的な仕事も担当しています。
兼務の音楽隊は、専務隊に比べて音楽大学出身者の割合も少ないと言われているため、音楽学科卒業の方はもちろん、音大出身でなくとも、努力次第では皇居などで演奏できる機会が得られるということです。
皇宮警察音楽隊に入隊するためには、まず皇宮護衛官などとして、皇宮警察本部に採用される必要があります。
▼参考URL:皇宮警察本部 警務課音楽隊
https://www.npa.go.jp/kougu/mission/index.html?goto=section02
消防音楽隊は、全国の消防本部などに設置されている音楽隊です
消防音楽隊は、消防隊員によって編成されている音楽隊のことです。全国で最も歴史がある消防音楽隊は、1949年に東京消防庁に設置された音楽隊です。
消防本部は市町村ごとに設置されていますが、消防音楽隊は全国で約160隊ほどあり、音楽隊がある消防本部と、設置されていない消防本部があります。
また、音楽演奏活動に専念している専務の音楽隊があるのは、東京消防庁と、12の政令指定都市の消防本部です。
そのほか、約150の消防音楽隊は、消防職と音楽隊を兼務している隊員によって組織されています。
消防音楽隊になるには、消防隊から募集する場合と、音楽隊員を民間から募集し、事務職員として採用する場合など、消防本部によって様々な採用方法がありますので、各消防音楽隊のホームページなどで確認するようにしてください。
▼参考URL:東京消防庁音楽隊
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-ongtai/index.html
音楽学科から目指せる公務員3)医療系公務員、音楽療法士と理学療法士
音楽学科から目指せる3つ目の職種として、医療系の公務員があります。
近年、音楽学科では「音楽療法士」の資格を取得できる学校が増えているかと思います。音楽学科卒で、音楽療法士の資格を活かして働きたいという方は、公務員として働くという選択肢もあります。
公務員で「音楽療法士」を募集するケースはまだ少ないようですが、音楽療法士と併せて「作業療法士」や「理学療法士」などの資格を取得しておくと、音楽療法もできる作業療法士ということで、公立の高齢者施設や、病院などで勤務し、音楽療法のリハビリメニューなどを任されることもあるようです。
音楽療法士の公務員として働きたいと思っている方は、音楽療法を積極的に取り入れている公立施設や自治体の採用案内について、調べてみるとよいでしょう。
医師や看護師などの医療従事者の中にも、公務員がいることをご存知でしょうか?医療系公務員の中には公立病院で勤務する方だけでなく、市役所や地方競馬組合など、意外な場所で勤務する方もいます。医療系公務員にはどのような職種があるのか、どのような勤務先があるのか、まとめました。
まとめ
このページでは、音楽学科から目指せる公務員として、音楽に関わる仕事をしている公務員についてまとめました。
音楽学科出身者が多く採用されている公務員の職種としては、大きく分けると教育系、演奏系、医療・福祉系の仕事がありました。
職種によっては、公務員採用試験を受ける前に、それぞれの職業の資格取得が必要な場合がありますので、音楽学科のカリキュラムなどと併せて、どのような選択肢があるのか調べてみるとよいかと思います。
また、意外に思う方もいるかもしれませんが、公安系の公務員職種には、音楽隊が設置されているケースが多いです。
演奏家としての将来を考えている方も、公務員としての就職を検討してみてはいかがでしょうか。
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