着実に悪化中!米中による「南シナ海問題」とは?

2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、アメリカと中国の関係は悪化していきました。そんな中、南シナ海の領有権を巡る問題で、アメリカと中国にさらなる亀裂が入ろうとしています。

今回は、米中による「南シナ海問題」について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - アメリカ大統領選挙にも影響する「南シナ海問題」

2020年、大統領選に湧くアメリカですが、大統領選の報道に隠れるようにして、アメリカと中国の「南シナ海」を巡る問題が大きく動いています。

南シナ海の領有権を主張する中国と、これまでの立場を覆して中国の主張を違法としたアメリカで対立が起きているのです。中国はアメリカに対して内政問題に関する介入と批判し、アメリカは中国企業に対して制裁を加えるなどして、事態は泥沼化しています。

そこで今回は、大統領選の影に隠れがちな、米中による南シナ海問題についてご紹介します。アメリカの大統領選にも影響を及ぼす問題とされていますので、ぜひ参考にして下さい。

南シナ海問題とは?

はじめに南シナ海問題について概要を見てみましょう。

南シナ海とは

南シナ海は中国(香港)、フィリピン、インドネシア、マレーシア、そしてベトナムに囲まれた海洋領域です。

南シナ海一帯は国際法上有効となる所有国がなく、石油や天然ガスなどの海底資源、豊富な漁獲量、東アジア諸国への重要な海上交通路といった価値があります。つまり「非常に高い価値があるけれど誰のものでもない場所」と言えるでしょう。

領有権を巡る主張と対立が問題

南シナ海問題は大きく分けて2つの問題があると考えられます。ひとつは東アジア諸国による領有権問題、そして中国とアメリカおよび同盟国の対立です。

南シナ海を巡っては、周辺諸国が長年にわたり領有権を主張し合う状態が続いています。なかでも、中国による主張は強引さが目立ち、過去には中国とベトナムが武力衝突して、ベトナム兵77名が死亡する事件(1988年)も起きていることから問題になっています。

もともとは、南シナ海周辺諸国の問題として扱われていましたが、アメリカが介入してからは、より複雑な問題になりました。

2010年、第17回ARF閣僚会合(ASEAN地域フォーラム)において、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官(当時)が、「南シナ海の航行の自由はアメリカの利益」と発言したことから始まります。

それまで南シナ海の領有権を巡る問題は、関係諸国の問題として解決すべきと「中立派」だったアメリカが立場を覆したのです。アメリカは同盟国であるフィリピンを防衛することを理由に、シンガポールに沿海域戦闘艦を配置して中国を牽制する事態になりました。

これに対して中国はあくまでも領有権を主張しており、同海洋上に他国よりも多く人工島を建設して、一時は兵器を配置するなどアメリカや関係諸国を牽制し返しています。

つまり、南シナ海の領有権を巡って強引な主張を繰り返す中国に対して、自国利益や同盟国の保護を目的に介入してきたアメリカとの対立が現在の南シナ海問題と言えます。

中国の主張と関係諸国の主張

南シナ海の領有権を主張しているのは中国、台湾、ベトナム、マレーシア、フィリピン、そしてブルネイです。アメリカは中国以外の東南アジア諸国を支持しています。

中国は紀元前の夏王朝から漢王朝時代まで遡った「歴史的背景」を根拠に領有権を主張していますが、2016年にはフィリピンが中国を相手取って起こした裁判で「歴史的な権利はない」という判決が下っています。

東南アジア諸国を支持しているアメリカも判決に同調するかたちで、「南シナ海は公海であり(領有権は)海洋法に関する国際連合条約」にて決められるべきと主張しています。

しかし、中国は新型コロナウイルスによる混乱の隙を突くようにして、南シナ海だけでなく尖閣諸島周辺の海域や東シナ海まで勢力圏を広げています。

日本にとっての南シナ海問題

日本には南シナ海の領有権はありませんが、日本が輸入している石油の8割は南シナ海を通過するため、南シナ海の平和は国益に直結します。さらに、東アジア諸国との貿易の要衝でもあることから、日本の経済にも影響する問題と言えます。

一方で、関係が悪化することを回避したい中国と、同盟国としての連携が強いアメリカという2国に挟まれていることから、難しい立場にあることは間違いないでしょう。

南シナ海を巡る米中の対立

南シナ海を巡る問題の背景を理解したうえで、昨今の米中対立で具体的にどのようなことが起きているのか見てみましょう。

中国企業への制裁措置

8月27日、トランプ大統領は南シナ海の人工島建設および軍事施設化に関与したとして、中国企業24社に制裁を課すと発表しました。

主な制裁の内容としては、制裁対象企業がアメリカ企業と取引することを禁止する措置や、企業関係者のビザ発給停止などが含まれています。

今回の制裁措置で最も注目されているのは、「中国交通建設」が対象企業になっていることです。中国交通建設は、売上高8兆円規模の国有企業で、世界3位の建設会社です。売上規模は日本の大手ゼネコン4社の合計よりも多く、アジア、アフリカ、ヨーロッパで活動しています。

同社は中国の巨大経済圏構想プロジェクト「一帯一路(The Belt and Road Initiative)」を主導しています。中国政府としては、アジアやアフリカ、ヨーロッパで勢力を広げて、アメリカ経済に対抗する構えですが、その中心になっているのが中国交通建設なのです。

アメリカとしては南シナ海問題を利用して中国系インフラ企業を締め出し、中国政府の影響力拡大を抑制したいと見られます。これに先立って実施された中国IT企業5社との取引を禁じた措置では通信分野を、そして今回の措置でインフラ分野に打撃を与える計画でしょう。

中国軍への対抗を呼びかけ

8月26日、アメリカのエスパー国防長官は、ハワイ沖で実施された軍事演習を視察し、その際に「中国を抑止できないなら、いつでも戦って打ち負かさなければいけない」と発言しました。

同氏は中国軍に対する軍事圧力に積極的で、同盟国に対しても軍事面で中国に圧力をかけていくべきだと呼びかけています。米紙への寄稿では「国防総省は中国軍に備えている」や「中国軍は国家のものではなく、中国共産党のための軍隊だ」と厳しく指摘しています。

日本に対しても圧力を強めるように呼びかけると見られ、同盟国による中国包囲網を軍事面でも築こうとしています。

中国の対応

南シナ海を巡る問題に対して中国の動きも活発化しています。

南シナ海に中距離弾道ミサイル4発を発射

8月26日、アメリカ軍は中国軍が南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射したと発表しました。

台湾英文新聞の報道によると、発射されたうち2発はグアムを射程にする「東風26(Guam Killer)」、残りは南シナ海を航行する戦艦を駆逐できる「東風21D(Carrier Killer)」2発とされています。仮にこれが事実であれば、南シナ海周辺で活動するアメリカ軍に対する牽制行為の意味になります。

中国軍はミサイル発射に先立ち、アメリカ軍の偵察機が飛行禁止区域に侵入したことを批判しており、南シナ海周辺におけるアメリカ軍への牽制や、中国軍の軍事力を誇示する狙いもあると見られます。

一方で、中国政府はミサイル発射についてはコメントを出しておらず、「挑発を止めて両国の関係を正しい方向に戻すように忠告する」とだけ述べています。

南シナ海周辺で軍事演習を活発化

中国は南シナ海周辺で火力を伴う実弾射撃訓練を頻繁に実施しています。前もって船舶に航行を中止するよう促しているものの、アメリカを牽制する狙いがあると見られます。

同海域で軍事演習を活発化させる中国に対して、アメリカは原子力空母2隻を派遣して演習を実施しています。アメリカのポンペオ国務長官は「中国の領有権主張は完全に違法」と断定し、南シナ海における中国の活動を威圧しています。

中国国内では軍事演習の様子やアメリカ軍の行動に関する報道が続けられており、世論を味方につける動きも活発化しています。

内政干渉と批判

中国外務省の趙立堅報道官は27日の記者会見で、アメリカが中国企業に制裁を加える発表をしたことを受けて「自国領土で(人工島を)造成することは完全に主権内の行為だ」と南シナ海の領有権を主張したうえで「アメリカの不道理な内政干渉に反対する」と述べました。

このところ連続して実施されているアメリカによる制裁措置に対する返答と変わらず、中国政府からは対抗措置が取れないもどかしさが感じられます。

まとめ

以上、「着実に悪化中!米中による南シナ海問題とは?」でした。

南シナ海を巡る問題は、東アジア諸国による領有権の主張から、アメリカの介入による米中の対立問題へと変化しつつあります。

トランプ政権は中国が世界一の経済大国になることを阻止するために、安全保障や同盟国保護を理由にして中国の通信企業やインフラ企業に制裁措置を加えています。

南シナ海は勢いづく中国とそれを阻止したいアメリカの主戦場と言えるかもしれません。日本にしてみても無視できない問題ですので、今後の展開に注視しましょう。

参考資料サイト

台湾英文新聞
https://www.taiwannews.com.tw/en/news/3995931

本記事は、2020年9月3日時点調査または公開された情報です。
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