はじめに - 今、ますます注目されている、学費のかからない「大学校」
卒業後の奨学金の返済が困難なケース、新型コロナウイルスの影響によりアルバイトができなくなり学費が払えなくなるケースなど、近年は大学の学費をめぐる問題が次々に出てきています。
そのような中で、「学費がかからない大学」も存在します。それは「省庁大学校」と呼ばれる大学校です。
「省庁大学校」での学費が無料になるのは、将来、公務員になるということが条件であることがほとんどですが、学費を払わなくて済むだけでなく、生活費として給与を受け取りながら学べることも魅力のひとつです。
今回はそのような、「学費がかからない大学校」についてまとめてご紹介します。
「大学校」とは?「大学」との違いについて
「大学校」とは、「大学」とは違い、文部科学省が所管していない学校のことです。「大学校」は国土交通省や防衛省など、文科省以外の省庁が自身の職務に対応した大学校を運営しています。
「大学校」は「大学」ではないため、学位は授与されません。ただし、一部の「大学校」では、「独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構」に申請することで、学位が認められる課程もあります。
「大学校」が設置されている目的は、それぞれの省庁の幹部候補生や、技術系職員の育成、特殊技能を必要とする専門職業人の育成などです。
ただし、「大学」を名乗れる条件が学校教育法で規定されているのに対し、「大学校」には規定がありません。そのため、「大学校」での教育内容や訓練内容には決まりが無く、どのような学校でも「大学校」を名乗ることができるようです。
実際に、省庁大学校でも、通学期間が4年間の「大学校」もあれば、1〜2年という「大学校」もあり、それぞれの「大学校」ごとにカリキュラムの中身や卒業条件は違っています。
以下では、そのような特色ある「省庁大学校」について、順番にご紹介します。
▼参考URL:独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構
https://www.niad.ac.jp/
学費のかからない大学その1:防衛大学校
学費がかからない大学の1校目は「防衛大学校」です。
「防衛大学校」は、「防衛省」が管轄する「省庁大学校」のひとつです。 略称では、「防大」や「防衛大」などと呼ばれています。
「防衛大学校」では、陸・海・空の各自衛隊の幹部自衛官となる学生が、教育訓練されています。一般の大学と同様の教育課程を履修するとともに、防衛大学校独自の「防衛学」などの専門科目も履修します。
「防衛大学校」の卒業生は、学科によって「学士(理学)」、「学士(工学)」、「学士(人文科学)」、「学士(社会科学)」などの学位が取得できます。
防衛大学校在学中の学費はかからないほか、国家公務員(防衛省職員)として給与(学生手当)が支払われます。
ただし、卒業後に自衛官になることを辞退した場合、「償還金制度」に従って学費を納めなくてはならなくなりますのでご注意ください。
「防衛大学校」の学費や給料については、下記のページでも詳しくご紹介しています。
》【学費無料】防衛大学校の学生の学費・給料・ボーナス・寮生活まとめ
学生だけど公務員、という身分で給料が支払われる「防衛大学校」の学生の気になる初任給やボーナスなどの給料情報をはじめ、寮生活となる学生生活について、食堂の利用などの福利厚生も含めてご紹介します。朝6時にラッパの音で一斉起床するところから始まる、防衛大生特有の共同生活環境についても解説します。
学費のかからない大学その2:防衛医科大学校
学費がかからない大学の2校目は、「防衛医科大学校」です。
「防衛医科大学校」は、自衛官を養成する、「防衛省所管」の「省庁大学校」のひとつです。特に「医師・保健師・看護師」の専門スキルをもった幹部自衛官の育成や、「保健師技官」「看護師技官」といった専門職の自衛官の教育・訓練を行っています。
「防衛医科大学校」は略称として「防衛医大」や「NDMC」などとも呼ばれています。学内の学科には、医学科・看護学科があり、 「医学科」の場合、一般の医科大学と同様、6年制です。
2014年に新設された「看護学科」は4年制で、「自衛官コース」と「技官コース」があります。「自衛官コース」は、「防衛看護学」などの一般の看護科にはない特殊な教育も実施され、「自衛隊看護師」になるための訓練を受けるコースです。
「技官コース」は、防衛医科大学病院に勤務する保健師・看護師を養成するためのコースです。
また、医学科の卒業生には「学士(医学)」、看護学科の卒業生には「学士(看護学)」の学位が授与されます。
「防衛医科大学校生」は、大学に納める学費がかからないほか、国家公務員(防衛省職員)として毎月給与(学生手当)が支払われます。
「防衛医科大学校」については、下記のページでもご紹介しています。
学費のかからない大学その3:海上保安大学校
学費がかからない大学の3校目は「海上保安大学校」です。
「海上保安大学校」は、「国土交通省」の外局である「海上保安庁」が管轄する「省庁大学校」のひとつです。「海保大」などと呼ばれることもあります。
将来、海上保安庁の幹部となる職員として必要な学術や技能の修得はもちろん、心身の錬成を行い、海上保安を専門とする「国家公務員」を育成するための大学です。
「海上保安大学校」のほかに、高卒程度で入学できる「海上保安学校(海保校)」がありますが、「海上保安学校」は大学ではありません。
「海上保安大学校」では、4年以上の大学同等の教育期間があり、卒業後には学士の資格が取得できますが、「海上保安学校」は1年から2年の訓練期間であり、大学卒の資格は取得できないなど、違いがあります。
大学進学を希望する方は「海上保安大学校」の方を目指すこととなります。海上保安大学校の卒業生には、「学士(海上保安)」の学位が授与されます。
なお、「海上保安大学校」「海上保安学校」はどちらも学費がかからず、学生には国家公務員(海上保安庁職員)として給与が支払われます。
海上保安大学校について、詳しくは下記のページもご覧ください。
》海上保安大学校の学生は公務員!学費や給料や学生生活について
「海上保安大学校」の学生は、学生でありながら、公務員という身分で給料が支払われます。「海上保安大学校」は、ゆくゆくは、海上保安庁の幹部となる公務員を育成する本科4年・専攻科6か月の合計4年6か月の教育が実施され、「大学設置基準」に準じているため、卒業者に対しては学士(海上保安)が授与されます。
学費のかからない大学その4:気象大学校
学費のかからない大学の4校目は「気象大学校」です。
「気象大学校」は、「国土交通省」が管轄する「省庁大学校」です。略称は、「気大」または「気大校」です。
「気象大学校」は、国土交通省の外局である「気象庁」の幹部候補生の養成機関です。
「気象大学校」の学生は、気象に関する専門的知識、技術などを4年間学び、卒業後は気象庁の部局、または全国各地の気象台などに配属され、気象業務に従事します。
卒業生は「学士(理学)」の学位が取得できます。
なお、気大校の学生は国家公務員(気象庁職員)として、給与(学生手当)が支払われます。
「気象大学校」について、詳しくは下記のページもご覧ください。
》「気象大学校(学生)」の学費・給料・ボーナスや休みについて
「気象大学校」は、国家公務員である気象庁職員を養成する国が運営する大学校です。この大学校の学生は、学生でありつつ公務員という身分で給料が支払われます。今回はその「気象大学校」の学生の初任給やボーナスなどの給料情報や、学生生活・大学校祭などについて解説します。
学費のかからない大学その5:航空保安大学校(2年制短大と同等の扱い)
学費がかからない大学の5校目は、「航空保安大学校」です。
「航空保安大学校」は、「国土交通省」が管轄する「省庁大学校」のひとつです。ただし、「航空保安大学校」の卒業生は、上記の大学校のように学位を取得することはできませんのでご注意ください。
学位が取得できるわけではありませんが、経歴としては「大卒程度」ではなく「短大卒程度」の学歴とみなされます。
「航空保安大学校」は、「航空管制官」などの「航空保安職員」となる「国家公務員」を育成する学校です。
主に「航空管制官基礎研修課程」と、高卒から入学できる2年制の「航空情報科」と「航空電子科」があり、学生には「国家公務員」として給与(学生手当)が支払われます。
航空保安大学校について、詳しくは下記のページもご覧ください。
》日本の空を守る公務員を育成「航空保安大学校」の学生の給料・学費について
国土交通省の省庁大学校である「航空保安大学校」の学生は公務員として授業料は無料で、給与も支払われます。今回は「航空保安大学校」の学生の参考初任給やボーナスなどの給料情報や、寮生活となる学生生活を学生寮や食堂などの福利厚生についてご紹介します。
まとめ
このページでは、「学費がかからない大学校」として、公務員養成機関でもあるさまざまな「省庁大学校」をご紹介しました。
「省庁大学校」は公務員を養成する学校という性格上、学生であっても、卒業後に公務員として働くことを条件に、学費が免除され、さらに給与や賞与を受け取ることができます。
つまり、「省庁大学校」では学費はタダで、さらにお給料までもらえて、勉強ができるという恵まれた環境にあります。
さらに、法律上は大学には当てはまらない「大学校」であっても、学校によっては大学と同等の学位が授与されたり、短大と同等の経歴を認められたり、大卒・あるいは短大卒の資格を取得することができます。
ただし、「省庁大学校」での学生生活は、一般の大学生の学生生活とは全く異なる部分もあります。勉強だけでなく、厳しい訓練があったり、寮での規律ある集団生活、資格取得のための勉強、外出制限があったりするなどがその一例です。
給与を受け取って、仕事として大学校に通うという意味合いがあるからには、さまざまな条件があります。そのような「大学校」の教育訓練内容については、よく確認してから入学を検討することをおすすめします。
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