「SIT」とは?「警視庁刑事部捜査一課」などにある「特殊事件捜査係」のこと
「SIT」とは、警視庁の刑事部捜査一課に設置されている「特殊犯捜査係」などの捜査チームのことです。「SIT」は「Special Investigation Team」の略称とする説もありますが、諸説あり定説は無いようです。
また、東京都を管轄する警視庁以外の道府県警察本部にも「SIT」と同様の組織が設置されている警察本部があります。ただし、その名称は「特殊事件捜査係」「特殊犯捜査班」などと警察本部ごとに異なっています。
警察庁では全国にある「SIT」にあたる組織を「特殊事件捜査係」と総称しています。
なお、「SAT(警備部特殊部隊)」に関しては以下の記事も併せてご参考ください。
「SAT(警備部特殊部隊)」になるには、警察学校の中でも特に優秀な成績を修め、厳しい訓練に適応するなど、高い能力が求められます。スタートは一般的な警察官と同じように、警察官採用試験に合格するところから始まる、「SAT」になる方法をご紹介します。
》警察の特殊部隊「SAT」と「SIT」とは?その違いや任務内容を解説
警察、自衛隊、海上保安庁には特殊部隊が存在しますが、その任務内容から公にされる事はあまり多くありません。今回ご紹介する警察の特殊部隊である「SAT」と「SIT」もそのひとつ。ここではSATとSITの違いや任務内容について解説しています。
警察本部ごとに名称が違う「SIT」
「SIT」は警察本部によって名称が異なります。日本語でも「特殊事件捜査係」や「特殊犯捜査班」など名称が異なっているように「SIT」のような略称も異なっています。
例えば、大阪府警の「SIT」にあたる組織は「Martial Arts Attack Team」の略で「MAAT」です。
千葉県警では「Assault and Rescue Team」の略で、「ART」と呼ばれています。
ただし、全国的にも「SIT」というチーム名を採用している警察本部が最も多位ようです。
このページでも、全国の「特殊事件捜査係」にあたるチームを総合して「SIT」として、「SIT」になるための方法について解説します。
「SIT」になるには 1)まず警察官採用試験に合格する
「SIT」になるには、一般の警察官と同じように「警察官採用試験」に合格しなければなりません。
警察官になるには、警察庁(国家公務員)、皇宮警察(国家公務員)、警視庁や道府県警察本部(地方公務員)のいずれかの採用試験を受験し、合格する方法があります。
大阪府警の「MAAT」など、特定の「SIT」にあたるチームに入りたいという場合は、そのチームがある大阪府警の採用試験などに合格することが必要です。
「SIT」になるには 2)刑事を目指して、警察学校の講習を受ける
「SIT」は各警察の刑事部・刑事課内の組織です。そのため、「SIT」になるには、まず刑事になる資格を持ち、刑事課に配属されることが必要です。
警察学校を卒業するとほとんどの新任警察官は「地域課」に所属する「巡査」として、管轄地域の交番などに配属されるのが一般的です。
その後、刑事課に欠員が出れば、地域課から刑事課に異動できることがあります。「刑事課」に配属されたとしても「刑事」という役職はなく、「刑事課巡査」というように階級は「巡査」のままですが、地域課では制服着用だったところから、刑事課では私服警官になる、というような違いがあります。
ただし、刑事課に配属されるためには、刑事になるための指定の捜査講習を事前に受講しておく必要があります。
指定の捜査講習についても、都道府県によって異なりますが、警視庁警察学校の場合は「捜査専科講習」または「公安捜査講習」を受講しているか、または警察の「幹部教育機関である」管区警察学校の「捜査研修過程」を卒業していることが、刑事課に異動できる条件のようです。
この捜査講習は、誰でも受講できるわけではなく、交番での勤務態度や、刑事課の要請に対する捜査協力状況、犯人を刑事課に引き渡した実績などが評価され、刑事課勤務の素質があると地域課の上司や刑事課の目に止まると、講習に呼ばれるという仕組みになっています。
「SIT」になるには 3)捜査一課や公安部への配属を目指す
地域課から刑事課に配属になった後にも、「SIT」になるために努力が必要です。刑事ドラマなどでもよく目にすると思いますが、刑事課にも「捜査一課」や「捜査二課」など、対応する犯罪ごとにチームが分かれています。
その中でも、「SIT」が設置されているのは強行犯を扱う「捜査一課」、またはテロ組織などに対応する公安部です。
公安部、刑事課の捜査一課に配属されるのは、警察官の中でも優秀なごく一部の職員なので、「SIT」への配属希望の意志を示した上で、日々の業務を確実にこなし、公安部、および捜査一課への異動のチャンスを待つことが大切です。
「SIT」になるには 4)「人質交渉術」など、「SIT」に必要な専門知識を身につける
誘拐事件などで、人質交渉人(ネゴシエーター)など専門の捜査技術を持つ警察官も「SIT」の一員です。
そのため、人質交渉術などの専門講習を修了しておくことも「SIT」になる方法の一つです。
2005年に警察大学校に設置された「人質交渉人」のための「専科」では、全国警察本部捜査一課の「巡査部長以上」の刑事が専門知識と技術を学ぶことができます。
この専科で学ぶと、専門の「人質交渉官」として「SIT」などに配属されるようになるということです。
▼参考URL:警察大学校|組織・教養課程
https://www.npa.go.jp/keidai/about/soshiki.html
まとめーSITになるには、まずは講習を受けられるよう警察官として昇進することが大切
このページでは「SIT(特殊事件捜査係)」になるには、どのような事件や訓練、講習があるのかをご紹介しました。
「SIT」になるには、警察官として採用された後、捜査技術や人質交渉術など、専門の知識を身につけていく必要があります。
刑事課への配属を目指すための講習や、人質交渉人としての配属を目指すための講習などがあり、それぞれの講習には、スカウトされた人や、参加できるまでの役職に昇級している人など、警察官の中でも一握りの職員しか参加することができません。
そのため、まずは、地域課の交番勤務であっても、地域で発生した事件についての捜査に協力するなどして、刑事課に異動したいという意志や成果を上司や刑事課など周囲に伝えておく、日頃の努力が大切なようです。
また、全国の警察本部の捜査一課で昇進し、巡査部長以上の役職のみが学べる警察大学校で学ぶことができれば、「SIT」には無くてはならない人質交渉人などの専門職へ一歩近づけることになります。
以上、このページでは「SIT」になるには、刑事課への配属、そして昇進に向けた努力と成果が大切なことについて解説しました。
ちなみに、「SIT」に名前が似ていて、よく混同される「SAT」については、任務の内容や採用方法が異なります。「SIT」は刑事部内の組織ですが、「SAT」は主に警備部内の組織であり暴力行為の制圧などがメインの任務です。
例えばある人質ハイジャック事件が起こったとすると、「SIT」は犯人の動機などについて捜査し、犯人と交渉する役割がありますが、現場への突入は「SAT」に協力を要請して協力して行う、などの役割を分担しています。
詳しくはこちらの記事も併せてご覧ください。
「SAT(警備部特殊部隊)」になるには、警察学校の中でも特に優秀な成績を修め、厳しい訓練に適応するなど、高い能力が求められます。スタートは一般的な警察官と同じように、警察官採用試験に合格するところから始まる、「SAT」になる方法をご紹介します。
》警察の特殊部隊「SAT」と「SIT」とは?その違いや任務内容を解説
警察、自衛隊、海上保安庁には特殊部隊が存在しますが、その任務内容から公にされる事はあまり多くありません。今回ご紹介する警察の特殊部隊である「SAT」と「SIT」もそのひとつ。ここではSATとSITの違いや任務内容について解説しています。
コメント
コメント一覧 (4件)
SITという組織があることを初めて知り、勉強になりました。
SITに所属している警察官は、とても優秀だということが分かりました。
警察組織の中でSITは聞いた事はありましたが、詳細は知りませんでした。
素朴にSATとの違いがわかりませんでした。
しかし記事で成り立ちを知ることが出来ました。
SAT・SITの仕事内容の説明は読んでいてほとんど知らないことばかりでした。特にSATの存在を20年近く
秘密にしていたというのは驚きました。
「SIT(特殊事件捜査係)」と「SAT(警備部特殊部隊)」って名前が似ているけど、いったい何が違うのか今までわからなったから、この情報は大変参考になりました。