共働き家庭の多い台湾の育児・保育園事情

台湾では共働きの夫婦が多く、女性が働きやすい制度や環境が整っているそうです。

今回は、そんな共働き家庭の多い台湾の育児・保育園事情について、現地に住む日本人女性にレポートしていただきました。


はじめに - 台湾は半数以上が共働き家庭

今や日本では「当たり前」とも言える夫婦共働き。台湾でも、小さな子どもを持つ世帯の共働き率は70%を超えていると言われています。台湾は、

・家族が育児に協力的
・残業が少ない
・育児休暇の手当も充実

など、女性が働きやすい環境や制度が比較的整っており、結婚や妊娠・出産を経てもフルタイムで管理職などをバリバリこなす人も多いです。

では、小さな子どもを抱える台湾の働く女性たちは一体どのようにして子育てをしているのでしょうか。

家族全員での育児・保育が当然の台湾

前述の通り育児休暇やその手当が充実している台湾ですが、これは出生率の低さから2009年の法改正されたもの。様々な手当があるものの、多くの台湾女性は労働基準法で定められた産前・産後の8週間の出産休暇(給料は通常通りの支給)のみを取得し、出産する直前まで働きます。そして、産後も出産休暇を消化した約2か月後には勤務に戻る場合が多いのです。

ここで問題になってくるのが、生まれてきた子供の預け先です。生後2か月の乳児は当然ながら一人で留守番など不可能。小さな子どもを預かってくれる保育園などももちろん存在しますが、台湾では両親が共働きしている間、祖父母や親戚が子供の面倒を見る、というケースも少なくありません。

元々家族皆で子育てをするという文化が根付いている台湾ですから、祖父母、そして親戚も育児には協力的です。平日の公園には、母親ではなく祖父母が小さな子どもを連れて訪れる姿も多く見られます。

また、女性に限らず男性も積極的に育児に参加する場合が多く、台湾では父親が保育園の送り迎えをする、というのも当たり前の光景となっています。

日本でも近年は育児に積極的に参加する父親が増加しており、女性の社会進出や働く母親をパートナーが応援し、サポートするのは世界共通だと言えるでしょう。

2歳までの「保活」は日本同様大変

とはいえ、台湾でも核家族化が進み、「家族皆で」という育児スタイルは崩れつつあります。祖父母や親戚が育児を担えない場合、「托嬰所」という日本の託児所・保育園と同様の施設に子供を預けます。托嬰所は公立と私立があり、公立は費用が安いです。その分人気も高く、定員をオーバーしてしまう場合も少なくありません。

日本でも「未満児」と呼ばれる3歳になるまでの子供を保育園に預けることは非常に大変だと言われていますが、台湾でも2歳までの子どもを托嬰所に預けるためのいわゆる「保活」は、2歳以上の子どもを預けるよりも大変です。


そこでもう1つの選択肢として選ばれるのがベビーシッター(保母)です。ベビーシッターというと日本では自宅に来て子供を見てくれる、というイメージが強いですが、台湾の保母は少し違い、保母の自宅に子どもを連れていき、複数の子どもたちを保母が保育する、という形が一般的。とはいえ希望すれば自宅に来てもらって育児をしてもらうことも可能です。

台湾の保母は政府が資格を与えた人を、地域が管理しています。保母に子供を預けたい場合は地域の管理センターを通して紹介してもらうのですが、運が良ければ同じマンション内や近くの家などの保母と出会えるので、送り迎えの時間の削減にもなります。

2歳以降は「幼幼班」への入園も可能

台湾の「保活」は2歳未満とそれ以降で大きく変わってきます。前述の通り、2歳未満の子供の預け先は、

・祖父母や親戚
・托嬰所(託児所)
・保母(ベビーシッター)

の大きく3つです。しかし、2歳を超えると台湾の子どもたちは皆幼稚園、「幼幼班」へ通うことになります。日本で幼稚園というと、

・3歳以上の子どもが通う
・保育時間が短い
・母親が専業主婦の場合が多い

という印象が強いですが、台湾の幼幼班は少し違います。共働き世帯が多い台湾では、幼幼班も早朝や夕方以降の保育に対応している場合が多く、給食のほかに朝ごはんやおやつを提供してくれます。

また、日本の幼稚園は小学校などと同様に長期休みが多いところもたくさんありますが、幼幼班は長期休みがないので夏休みや春休みも預けることができます。働く親の負担にならないよう、幼幼班の行事に親が参加を求められることも少ないです。

このような「保育園」の良い部分を取り入れながらも、園生活は日本の幼稚園、小学校のようなカリキュラムを導入しているのも幼幼班の特徴です。幼幼班は公立・私立に関係なく毎日時間割を決め、しっかりと学習時間を確保するところが多く、英語や音楽、体育、美術などは専門的な知識を持った講師を迎えて授業を行います。

また、16時頃にクラス学習が終わった後も、園内で習い事を開講しているところが多く、小さなころからの教育に熱心であり、自身もフルタイムでの勤務を希望する人が多い台湾の共働き世帯のニーズに合っていると言えるのではないでしょうか。

そして2歳からの4年間を幼幼班で過ごした子どもたちは、小学校へと入学します。幼幼班では卒園が近くなると、小学校での生活を見据えた教育も行われます。

台湾の保育料

女性が働きやすく、結婚や出産後の夫婦共働きの環境も比較的整っていると言える台湾。家族皆での子育て以外に、子供の預け先として日本でいう託児所や幼稚園、ベビーシッターという様々な施設が挙げられますが、その保育料も気になるところです。

托嬰所(託児所)の保育料

私立の托嬰所にかかる費用は毎月18,000台湾元(約64,800円/1台湾元=3.6円)くらいだと言われています。公立はもっと安価で利用可能ですが、その分競争率も高いです。台湾の平均月収は48,000台湾元(約172,800円)前後だと言われているので、私立の托嬰所に預けると給料の3割以上が保育料に消えていくことになります。日本でも未満児の保育料は高額で、時短勤務の場合給料の半分、もしくはそれ以上を保育料として納めている家庭もあります。台湾も日本も、小さな子どもを預けるには費用がかかることがわかりますね。

保母(ベビーシッター)の保育料

2歳までの子供を保母に預ける場合の平均費用は毎月20,000台湾元(約72,000円)だと言われています。私立の托嬰所よりも高額な保母ですが、自宅近くで少人数保育をしてもらえる、もしくは自宅でマンツーマンで育児をしてもらえるというメリットもあります。とはいえ、やはり台湾の平均月収と比較すると費用が高いので、可能であれば祖父母や親戚、もしくは公立の托嬰所に預けるという人が多いです。

幼幼班の保育料

幼幼班の月謝は


・公立:2,500台湾元(約9,000円)
・私立:16,000台湾元(約46,800円)

くらいが相場だと言われており、その差が非常に大きいのが分かります。私立はバス通園や習い事などで更に費用が掛かる場合がほとんどです。日本円にして8~10万円ほど月謝がかかることも多く、給料の半分以上を子どもの教育に費やすという人も。しかし、幼幼班は園によってカリキュラムも大きく異なり、費用が高い分しっかりとした教育が行われています。人気の私立幼幼班は、生まれてすぐに入園を申し込まないと入ることができない、ということもあるのです。

まとめ -「働くママ」を悩ませる定員と保育料

以上、「共働き家庭の多い台湾の育児・保育園事情」でした。

少子化が深刻な問題となっている台湾ですが、小さいうちからの子供の教育には非常に熱心。しかし教育には多額な費用も必要となってくるため、生活や教育の為に共働きは必須となり、いくら産前・産後の制度が整っていても出生率の増加に繋がらないのも問題となっています。

台湾の出生率アップや今後の育児・保育を充実させるためには、

・公立の托嬰所の定員を広げる
・私立の托嬰所や幼幼班、保母の保育料を安くする
・公立幼幼班での充実した教育カリキュラム

の実現が課題となってきます。日本は児童手当の支給に加え、2019年10月より3歳以上の保育料が無償化となりました。台湾でも子育てや教育に関する様々な手当や制度を設けていくことが重要なのではないでしょうか。

本記事は、2020年11月13日時点調査または公開された情報です。
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