アメリカにとって大きな転換期「2021年」の政治動向の総括(2022年2月レポート)

2022年2月、ロシア・ウクライナへの侵攻、EC・アメリカの動きも非常に注目されています。

今回は、バイデン政権となったアメリカの2021年の政治動向についてレポートします。


はじめに

2021年はアメリカにとって大きな転換期になった年と言えます。

トランプ大統領が率いた共和党政権がバイデン大統領率いる民主党政権に移行し、不正選挙の疑惑が晴れないまま新しい時代を迎えました。

一方、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、マスク着用やワクチン接種義務化など、アメリカ国民の間で対立を深めた1年でもありました。

今回は、アメリカの2021年を振り返り、将来的にも覚えておきたい重要なポイントを3つを厳選してご紹介します。

分断を生んだ新政権のスタート

2021年1月20日(日本時間21日)、ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領に正式就任しました。同時に、アメリカ史上初となる女性副大統領のカマラ・ハリス氏も副大統領に就任し、多様性を強調する民主党政権がスタートしました。

世界中で賛否両論を巻き起こしたトランプ政権(共和党)が終了し、再び民主党が政権を取り戻したことは2021年の大きなポイントでしょう。

アメリカ国内の反応を見ると、カリフォルニア州やニューヨーク州といった民主党の地盤であり、リベラル派が多いエリアでは、バイデン・ハリス政権を歓迎する一方、テキサス州やフロリダ州などの共和党の地盤では落胆する人たちが多かったようです。

2017年から4年間続いたトランプ政権では「アメリカ第一主義」が一貫しておこなわれてきました。具体的には、トランプ政権における最大の成果とされる「法人税の大幅減税(35%から21%)」や、気候変動への国際的な取り組みである「パリ協定からの離脱」、アメリカ人の職や税金を奪う原因とされた「不法移民の排除」などが挙げられます。

これらは徹底してアメリカの国益を優先して考えられた政策であり「まずはアメリカ」と考える愛国心が強い人たちからは好評だったことは違いありません。

一方、トランプ政権が実行してきたこれらの政策は、国際的な協調路線でなおかつ人道的支援に積極的な民主党からしてみれば「理想とは真逆の政策」ばかりだったと言えるでしょう。事実、国際社会からはアメリカ(トランプ大統領)に対する批判は多く、日本でもトランプ大統領の印象を悪くするような報道が多く見受けられました。

このように、トランプ政権(共和党)からバイデン政権(民主党)へ「真逆の政権」「真逆の政策」へ移行したのが2021年だったのです。


反トランプ派の人たちは、せっかくアメリカ第一主義が機能してきたところで、再び協調路線のバイデン・ハリス政権に戻ったことは残念だったはずです。対照的に、地球温暖化問題や人権問題、差別撤廃を重視する人たちからすれば、やっと正常に戻ったと感じているでしょう。

2021年1月6日:連邦議会議事堂襲撃

2021年にはこのような対極的な構造がこれまでよりも深刻化し、国民間の分断の溝が深まったことは否定できません。それを証明する出来事が、2021年1月6日に発生したアメリカ史上初めてとなる「連邦議会議事堂襲撃」です。

この事件は、2020年11月に実施された大統領選挙において、バイデン氏が有利になるような数々の不正が行われたと信じた熱狂的なトランプ支持者らが、次期大統領を正式に確定する「選挙人投票の開票日」に合わせて連邦議会議事堂に集結し、おおよそ3時間にわたり建物内を占拠したものです。

この一件では4名の死者をはじめ、725名の逮捕者が出る結果となり「アメリカ史上最悪の1日」として歴史に刻まれることになると言われています。これほどの事態を招くほどに2020年の大統領選挙とバイデン政権誕生はアメリカに大きな混乱をもたらしたのです。2020年11月の大統領選挙から2021年1月の大統領正式就任までの3か月間に起きた一連の騒動は、単に2021年の出来事としてだけでなく「アメリカ史の出来事」として覚えておくとよいでしょう。

新型コロナウイルスが生んだ国民の分断

次に、2021年を振り返る際のポイントが「新型コロナウイルス」です。2020年初頭に始まったコロナの影響は1年以上の時間をかけて、アメリカ経済だけでなくアメリカ国民の感情にも影響を及ぼし、2021年には国民の分断を深刻化させました。

「マスク着用義務化」と「ワクチン接種義務化」

具体的には「マスク着用義務化」と「ワクチン接種義務化」のふたつが分断の要因です。アメリカでは、各州で感染防止対策が異なるため、ある州では規制が厳しいけれども、別の州では規制が緩いという事態が起こります。

例えば、カリフォルニア州やニューヨーク州ではマスク着用や、公務員のワクチン接種義務化がいち早く導入された一方、テキサス州やフロリダ州では、マスク着用やワクチン接種の規制は任意とされています。バイデン大統領が大規模企業に対してワクチン接種義務化を命じたものの、多くの州から反発が生じて裁判に発展したほどです。(2022年1月、最高裁はバイデン大統領の指示を差し止めた)

他にも、マスク着用を巡っては、州の方針と町の方針に食い違いが生じ、一般市民の間で混乱や衝突が起きているのも事実です。筆者が暮らすアリゾナ州では、マスク着用を拒む人とマスクを着用している人がスーパーマーケット内で喧嘩する事件が起き、一連の動向を撮影した動画がSNS上で話題になりました。

また、ワクチン接種を巡っては、より深刻な分断を生んでいます。筆者の周辺ではワクチン接種を拒否している人が多く、すでにワクチンの接種を終えている人たちとの間で温度差があります。お互いがお互いに批判的な意見を持ち、人間関係としての接触を避けているようです。ワクチン接種に関する話題が会話にあがると、ちょっとした緊張感が生まれるのも事実です。

ワクチン普及に積極的なバイデン政権

バイデン政権はワクチン普及に積極的です。

2021年8月、アメリカ国防省はすべての兵士に対してワクチン接種を義務化すると発表しました。これに先立つ7月には、民主党地盤のニューヨーク市が警察官を含む市職員(公務員)すべてにワクチン接種を義務化しています。

民主党のバイデン政権はアメリカ国民に対してワクチンを接種させることに非常に積極的で、法律を変えてでも広めようとしているほどです。コロナを「ただの風邪」と言い放ったトランプ元大統領とは対照的な対応と言えるでしょう。とくに、他人に指図されることを嫌う傾向が強いアメリカ人からすれば、バイデン政権の方針は苦痛かもしれません。

ワクチンの強制的な接種に積極的なバイデン政権(民主党)のこのような動きはアメリカ全土で抵抗を引き起こし、ここでもまた国民の分断を生んでいます。

アリゾナ州にある病院では、ワクチン接種を拒否した看護師らが一斉に退職させられる事態が起きており、接種完了者と非接種者の間で対立が深まっています。また、警察官として働き、ワクチン接種を拒んだ公務員は「昨日まで英雄だったのに、今日は反勢力派として見られるようになった」と、現政権の行き過ぎた方針に不満を述べていました。

アメリカ国内では、とくにトランプ元大統領を支持していた人たちを中心にして、ワクチン接種を義務化してまで推進し続けるバイデン政権を「ファシズム政権」と評しており、民主党批判が続いています。(ファシズムとは、強権的、独裁的、非民主的な思想のこと)


このように、コロナの影響で始まったマスク着用やワクチン接種義務化は、アメリカ国民の生活に直結する形で表面化し、より深刻な分断を引き起こしています。2021年はコロナの影響で国民間の分断が深まった年として覚えておくとよいでしょう。

右肩上がりのアメリカ経済とかけ離れた実態

2021年のアメリカ経済は株価で判断すると右肩上がりに成長した1年でした。

具体的には、2021年のダウ平均株価の動きは、1月4日時点30,223.89ドルだったものが、12月末時には36,338.3ドルを記録しています。失業率を見ると、2021年1月時点6.3%だったものが、同年12月では3.9%にまで下落しています。このことから、数字が示すアメリカ経済は非常に好調な1年だったと言え、バイデン政権はコロナの影響から着実に回復していると評価できるでしょう。

経済面においても二極化

一方で、コロナの影響で減収したり、職がないため生活が苦しい人はまだまだ多く、経済面においても二極化しているのも事実です。2021年には、追い打ちをかけるようにアメリカ全土で「物価上昇」が起き、生活に直結するガソリン代や家賃、食料品などが大幅に値上がりしました。

筆者が生活しているアリゾナ州では、トランプ政権がスタートした2017年に1ガロン(3.78リットル)あたり2.19ドルだったものが、2021年には3.27ドル程度に上昇しました。乗用車であればゼロから満タンにすると1,000円以上も高くなる計算です。(アリゾナ州のガソリン代はアメリカ内ではかなり安い部類に入る)

また、賃貸住宅(1ベッドルーム)の家賃も値上がりし、2017年4月時点で625ドル/月だったものが、2021年4月には765ドルになりました。(2022年2月には875ドルまで上昇)

食品ではコーヒーやヨーグルト、野菜、肉類全般が値上がりし、筆者の感覚ではどの商品もひとつあたり50セント(60円)程度高くなったと感じます。同時に、品ぞろえも悪くなり、ひどい時は商品棚に何もないこともあります。

このような値上がりや物品不足の背景には、コロナの影響で全米各地の港での物流が滞っていることやトラック運転手不足があり、改善策が後手に回っているバイデン政権の失態と言われています。

2021年11月、バイデン大統領はアメリカの物流拠点であるロサンゼルスの2つ港を24時間稼働させるように指示を出して改善を試みました。また、全米で長距離トラック運転手の報酬が年収1,000万円を超える高待遇になっているものの、日常的な物流の不安定さは否めません。この結果、アメリカ国民はバイデン政権の失態を日々実感する事態になっています。

このように、アメリカ経済は株価などの指標では好調であるものの、国民生活における実態は値上がりや物流の問題が起きており、これまでになかったような混乱が始まった年だったと言えます。

まとめ

以上、「アメリカ・2021年の政治動向の総括」でした。

アメリカの2021年を総括すると「新政権スタート」、「コロナによる分断」そして「好調な経済」がポイントになるでしょう。

一方で、政権やコロナの影響で、国民間で分断や対立が深まったことも事実です。2021年は、アメリカがこれまで以上に二極化した年として覚えておくとよいでしょう。

本記事は、2022年2月25日時点調査または公開された情報です。
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