わかる政治経済シリーズ 第3回

国家の類型 - 「機能的分類」と「歴史的分類」

これまでの国家には、どのような種類や特徴があったのでしょうか。本ページでは「機能的分類」と「歴史的分類」に分けて解説します。


国家の機能的分類とは?

国家の機能的分類では「警察国家」「夜警国家」「福祉国家」の3つがあげられます。

機能的分類その1:警察国家

16から18世紀の絶対主義時代の国家体制です。国民の人権を抑圧したり、君主の教える福祉を押し付けたりするため、警察権力が濫用されていました。

機能的分類その2:夜警国家(立法国家、消極国家)

資本主義の確立期である19世紀の国家体制です。プロイセンの社会主義者ラッサールが名付けた考え方になります。アダム・スミスの自由放任主義に基づき、国家の任務を国防や治安など最小限のものとし、市民社会は国家の干渉のない自由放任がよいとされました。

しかし、夜警国家では経済格差が広がったため、ラッサールはこれを批判しました。

財政規模が小さいので「消極国家」「小さな政府」とも言います。

機能的分類その3:福祉国家(行政国家、積極国家)

独占資本主義の確立期である20世紀の国家体制です。イギリス人の経済学者であるケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』で唱えました。資本主義の発展により、経済的な格差が生じた弊害を、政治によって是正していこうとする考え方です。

政府が雇用の創出や社会的弱者の生活を保障して、国民福祉の増進をはかります。財政支出が大きいので、「積極的国家」「大きな政府」とも言います。

国家の歴史的分類とは?

国家の歴史的分類は、19世紀ドイツの社会学者であるカール・マルクスが提唱した「唯物史観(=唯物論的歴史観)」に基づくものです。唯物史観では、物質的な生産力や生産関係の変化が、歴史を大きく動かす原動力になると考えます。

マルクスは、国家が「奴隷国家」から「封建制国家」、「絶対主義国家」、「資本主義国家」、「社会主義国家」へと移り変わっていくと考えましたが、社会主義国家は次々と崩壊し、現代では日本をはじめ多くの国が資本主義となっています。

歴史的分類その1:奴隷国家

奴隷制度を基盤とする国家です。原始共産制社会の生産力の発展に伴い、私有財産を持つものが生まれ、人類史上最初の階級社会ができました。奴隷は主人によって人格が完全に所有されており、基本的な生産担当者となっていました。古代ギリシャやローマが典型例です。

歴史的分類その2:封建制国家

領主が家臣に土地を与え、その代わりに軍役の義務を課す主従関係を主要な構成契機とする国家のことです。11世紀から13世紀にかけての、イギリス、フランス、神聖ローマ帝国が典型例で、日本では鎌倉時代から江戸時代まで封建制の社会でした。


歴史的分類その3:絶対主義国家

16世紀から18世紀のヨーロッパでは、国王が国家を支配する無制限の権力を持ちました。これを絶対主義と言います。国王が絶大な権力を持つことができたのは、神が国王に権力を授けたとする王権神授説が解かれていたからです。政治は国王の他に、貴族や官僚などに独占されており、民衆が関わることはできませんでした。

歴史的分類その4:資本主義国家

18世紀後半、イギリスで始まった産業革命を経て、資本主義が多くの国に広まりました。資本主義とは、だれでも自由に商品を生産、販売、消費することが認められている経済のことです。

歴史的分類その5:社会主義国家

生産手段を社会的に共有・管理することで、平等な社会を目指す国家のことです。恐慌や失業、労働階級の対立の激化などを生み出す資本主義体制を批判した、マルクスの思想に基づいています。
1917年のロシア革命で、初の社会主義国家であるソビエト社会主義共和国連邦が誕生しました。

第二次世界大戦後は、中国や北朝鮮、ベトナムなどが社会主義国となりましたが、1989年から91年にかけてソ連や東欧の社会主義国は次々と崩壊しています。

まとめ

以上「国家の類型」について解説させていただきました。

本記事は、2022年3月29日時点調査または公開された情報です。
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