権力分立とは?
権力分立とは、政治権力を複数の機関に分散させて、それぞれの間に抑制と均衡の関係を保ち、権力の乱用を防止する考えです。
この考えは、王による専制政治が行われていた17世紀ヨーロッパで生まれました。専制政治の下では、権力は統治者である王に集中し、権力の横暴を抑える手段がありませんでした。そこで、権力の集中を防ぐ手だてとして「権力分立」の考えが生まれたのです。
権力分立の学説は、ジョン=ロックとモンテスキューの2人によって確立しました。
ジョン=ロックの『市民政府二論』
ジョン=ロックは、17世紀イギリスの哲学者、政治思想家です。
ロックは著書の『市民政府二論』で、絶対君主の専制支配を打破したイギリス革命を正当化するために、君主に執行権・連合権(外交権)の二権を残し、立法権は議会にあると主張しました。
ロックの考えは、1775年のアメリカ独立戦争に大きな影響を与えています。
モンテスキューの「三権分立」
モンテスキューは、18世紀フランスの政治思想家で、当時の社会を批判し、立憲政治の必要性を説いた人物です。
各国の様々な政治体制を比較しながら、権力の均衡の重要性を説き、立法・行政・司法の三つに分け、それぞれを異なる機関で運用させ、相互の抑制と均衡をはかる三権分立制を説きました。
また、著書『法の精神』のなかで相互に抑制・均衡(チェック・アンド・バランス)することで、権力の濫用を防止させることを主張しています。
現在の日本の政治においても、国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の三権がお互いにチェックしあう三権分立体制を取っています。
主権が国民にある民主制
主権者である国民の意思に従って政治を行うのが、民主制です。民主制には「直接民主制」と「間接民主制」があります。
直接民主制は、国民が直接的に政治に参加する制度です。古代ギリシアのポリスの民会やアメリカ合衆国のタウンミーティングなどが該当します。
一方で間接民主制は、国民が自分たちで選んだ代表者による政治です。
民主制では、全人民が一同に討議し決定するという直接民主制が理想ですが、現代では、国家の規模が大きくなり、政治が複雑になると不可能であるため、一般的に間接民主制が取られています。
日本においては、原則間接民主制ですが、例外的・補完的に国民投票、住民投票など直接民主制を取り入れています。
日本国憲法における直接民主制的制度とは?
直接民主制は例外的にあると述べましたが、日本国憲法においても直接民主制的制度があります。
間接民主制を補うものとして、直接民主制の役割は重要です。
最高裁判所の裁判官に対する国民審査
最高裁判所の裁判官を罷免するかどうかを、国民が判断します。
三権のうち、国会(立法)と内閣(行政)は、選挙を通じて直接的または間接的に国民から選ばれる仕組みになっています。
一方で、裁判所(司法)に対しては、国民が裁判官の選出に関わることができません。そこで、裁判所の組織トップである最高裁判所の裁判官に対して、民主的にコントロールする仕組みとして、国民審査を採用しています。
地方特別法の制定における住民投票
国会で、特定の地方公共団体のみに適用する特別法が可決されると、その地方公共団体の住民による住民投票が実施されます。これは、特定の地域が損する法律を、住民の意思に反して国が決めることがないようにするためにあります。
憲法改正における国民投票
国会にて、憲法の改正案が可決されると、国民の承認を得るために国民投票が実施されます。
国の最高法規である日本国憲法は、通常の法律改正よりも厳しい改正手続きが必要な硬性憲法です。衆議院・参議院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成を必要とした上で、更に主権者である国民の投票で過半数の賛成を得て、初めて承認されます。
間接民主制の原理
間接民主制には「国民代表の原理」「審議の原理」「監督の原理」の3つの原理があります。
「国民代表の原理」では、議員は選挙区や階層の代表ではなく、全国民の代表とします。
「審議の原理」では、議会は国民のさまざまな意見を十分に反映させて討論するものとします。最終的には多数決で決めることになりますが、少数意見も尊重しなければなりません。
「監督の原理」は立法府である議会が、行政府を監督するものとします。
まとめ
以上「権力分立」について解説させていただきました。
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