わかる政治経済シリーズ 第6回

「社会契約説」とはなにか?唱えたのは誰?

近代市民社会の理論的基礎となるのが「社会契約説」です。

本ページでは「社会契約説」について解説します。


社会契約説とは

社会契約説では、社会や国家は、自然状態にあった諸個人の契約によって成立すると考えられます。

この説は、ホッブズ、ロック、ルソーといった17世紀から18世紀のヨーロッパで活躍した政治思想家たちによって唱えられました。

社会契約説を唱えた人物その1:ホッブズ

ホッブズは、17世紀イギリスの哲学者、政治思想家です。

著書の『リヴァイアサン』で、自然状態では「万人の万人に対する闘争」が生じると述べています。

自然状態とは、政治権力が存在しない状態のことを指します。この状態では、各人が自然権、人間が生まれながらにもっている権利を主張するため、争いが生じると言うのです。ホッブズは闘争を避けるために、各人が契約を結び、自然権を国王に譲渡して国家権力を打ち立てることが必要であると示しました。

ホッブズは国家と国民の契約内容を、国家は国民の生命を保護し、国民は統治社に対して自然権を放棄すると考えます。

ホッブスの理論は、絶対王政を正当化するものでしたが、王権神授説とは異なり、各人の自然権から論理を組み立てているので、社会契約説の出発点と言えます。

社会契約説を唱えた人物その2:ジョン=ロック

ジョン=ロックは、17世紀イギリスの哲学者、政治思想家です。ホッブスよりも後に生まれました。

ロックは著書の『市民政府二論(統治二論)』で、人々は自然状態の下で、生命・自由・財産などについての自然権(=所有権)を持つと述べています。この自然権をより確実なものにするために、契約によって国家を作ったと説いています。

ロックは国家と国民の契約内容を、国家は国民の自然権を保護し、国民は自然権を統治者に信託すると考えました。

ホッブズの考えと違いは、ロックは「抵抗権」があると考えているところです。国家の下でも、各人は自然権を手放すわけではなく、作られた国家・政府が自然を侵害するようなことがあれば、人々はこれに抵抗し、政府を変更することができると述べています。


社会契約説を唱えた人物その3:ルソー

ルソーは、18世紀フランスの啓蒙思想家です。著書には『社会契約論』『人間不平等起源論』があります。

ロックの社会契約説を発展させ、人民主権の立場を明らかにしました。ロックと同様に「抵抗権」はあると考えます。

『社会契約論』では、国家においても自然状態と同様の自由が保証されなければならず、そのためには民主政治が必要であると主張しています。

ルソーは国家と国民の契約内容を、国家は国民の自然権を保障し、国民は共同体に自然権を譲渡すると考えました。そして、国家は、自由と平等を目指す一般意思に従って作らなければならないと考えます。

政体の違い

社会契約説を唱えたホッブズ、ロック、ルソーですが、それぞれ考える政体が異なります。

ホッブズの考えは、君主に主権があることを基礎とする絶対君主制です。

一方で、ロックは国民が自ら選んだ代表者である議員を通じて、議会において間接敵に国民の意志を国家意思として執行に反映させる間接民主制、ルソーは国民が直接に政治運営に参加する直接民主制を考えており、ともに国民に主権があります。

社会契約説の影響

ホッブズの考えは、絶対王政を擁護するものでしたが、ロックやルソーの考えは市民革命に大きな影響を与えました。

ロックの『市民政府二論』は、1688年の名誉革命を擁護するために書かれたもので、18世紀のアメリカ独立戦争につながっています。1776年に出された「アメリカ独立宣言」は、ロックの政治思想が継承されており、自然権、社会契約論、国民主権、抵抗権が説かれています。

ルソーの人民主権の理論は、1789年のフランス革命に大きな影響を与えています。

まとめ

以上「社会契約説」について解説させていただきました。

本記事は、2022年6月3日時点調査または公開された情報です。
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