コロナウイルスの流行で、人々のライフスタイルが変わった
コロナ禍でアメリカ不動産価格の高騰が起こったのは、人々の仕事の仕方やライフスタイルが大きく変化したことが、一番の原因ではないでしょうか。人との接触を最小限に抑えるために始められた、企業のリモートワークや大学のオンライン授業が、人々の住まいに対する考え方を大きく変化させました。
以前アメリカでは、子供がいったん親元を離れると、また親と一緒に生活することはほとんどありませんでした。大抵は高校卒業や大学入学を機に親元を離れ、会社や学校の近くにアパートを借りて生活をはじめ、大体はそのまま独立して自分の家や家庭を持ちます。
しかしコロナ禍で企業のリモートワークや学校のオンライン授業化が進み、狭い都心部のアパートに、わざわざ高い家賃を払って住む必要がなくなった多くの若者たちが、実家に戻って生活しているようで、2020年の国勢調査によると、親元で同居している18歳から25歳の若者が約52%もいるそうです。
物件の需要と供給のバランスが崩れてしまった
アメリカでは同じ家に何年もずっと住み続ける人はとても少なく、普通はライフスタイルが変わるたび何度も住居を変えます。
一般的なライフサイクルだと、まず学校を卒業して本格的に働き始めると、親から離れ、交通の便が良い仕事場の近くにアパートを借りて生活を始めます。働いて少しお金が貯まると、今度はスターター・ホームと呼ばれる小さな家を買います。
その後、結婚して家族が増えれば大きな家に住み替え、子供が小学校に入学する頃には、学校区の良い町の物件を探します。そして子供が巣立ったら、今度はダウンサイジングし老後に備えます。
その後も自分が元気なうちは、子供に頼ることなく自立した生活を送り、病気や怪我でいよいよサポートが必要になれば、福祉サービスの整った高齢者向けのアパートや、医療従事者が常時在中するナーシングホームなどに移り住むといった感じです。
しかし、このパンデミックで、このライフサイクルが崩れ、親元で同居する子供の数が増え、親も老後のためのダウンサイジングどころか、リモートワークのためのワークスペース確保のために、さらに広い間取りの家が必要になってしまいました。
そして普通なら老後の資金作りのため、ファミリーサイズの大きな家を処分し、小さめのタウンハウスへ移り住むはずの高齢者も、コロナ禍が落ち着いてから売却や住み替えを検討すれば良いと考え、大きな家に独り暮らしを続けている人が多くみられます。
このように、普通なら大きな家が必要にならない年齢層の人たちが需要を押し上げ、人と接触が増える物件の売却自体を積極的に考えていない、家の持ち主が供給を減らしているという、ニーズの不一致が需要と供給のバランスを崩す原因になっています。
アメリカ人と日本人の借金に対する考え方の違い
ローン完済を目標に一大決心して住宅購入に踏み切る日本人と違って、ローンの金利や返済期間を考えるより、家族の人数が変わればそれに合った家に住み替えるだけと考え、家を何回も買い替えるアメリカ人は住宅購入の決断がとても早いと思います。
アメリカではローンを組むのに年齢制限がないので、比較的簡単に誰でもローンを組むことができます。申請時点に過去2年の所得証明があれば、未成年でも契約可能ですし、リタイア後でも年金を2年以上受給していれば、所得照明として有効です。
現在住宅価格は上がる一方なので、これからどんどん買いにくくなることを考えると、良い物件が見つかれば、年齢に関係なく即購入を検討する人々が増えるのは、至極当たり前なことなのかもしれません。
まとめ
今アメリカで住宅価格が下がりづらい状況になっているのは、コロナ禍で広い家で仕事をしながら快適に暮らしたいという人々の需要と、今はじっとしてコロナが落ち着いてから、これからの住まいについて考えようとしている、高齢者のニーズが一致しないことが考えられます。いつまでこの状態が続くのかはわかりませんが、今後もしばらくは今と同じような状態が続くのではないでしょうか。
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