「イエメン共和国」ってどんな国?
「イエメン共和国」の正式名称はアラビア語で「الجمهورية اليمنية(al-Jumhūrīya al-Yamanīya)」で、略称は「اليمن(al-Yaman, アル=ヤマン)」です。公式の英語表記は「Republic of Yemen」です。
日本語での正式名称は「イエメン共和国」であり、漢字による当て字では「也門」と表記します。
面積・場所について
「イエメン共和国」の国土の広さは、約56万平方キロメートルで、これは日本の約1.5倍弱の大きさに相当します。
「イエメン共和国」の場所は中東にあり、アラビア半島の南端部に位置している、海沿いの国です。国境は、東が「オマーン」、北が「サウジアラビア」と接しており、西は紅海、南はアラビア海のアデン湾と面しています。また、インド洋に浮かぶ島々の一部も、「イエメン共和国」の領土です。
都市について
「イエメン共和国」の首都は「サヌア」であり、その位置は標高約2,300mの高原にあります。
「サヌア」はアラブ文化が強く残っているイスラムの都市であり、市内にはムスリム大学やモスクなどがたくさんあります。
「サヌア」は世界最古の町の一つであり、サヌア旧市街地は、世界遺産にも登録されています。また、内戦などの影響により、2015年には「危機にさらされている世界遺産リスト」にも加えられました。
人口について
「イエメン共和国」の人口は2016年の国連調査によれば、約2,700万人です。これは、東京都の人口の約3倍の人数です。
成り立ちについて
「イエメン共和国」の地には、紀元前10世紀ごろには、古代イエメンがあり、インド~地中海・東アフリカ間の貿易中継地点として、繁栄していました。この時代、古代ギリシャ人やローマ人から「幸福のアラビア」と呼ばれていました。
7世紀なるとイスラム教が流入し、9世紀には、イスラム教シーア派の分派であるザイド派の宗教指導者イマームがこの地を支配しました。
16世紀以降、「イエメン共和国」の地は、南北に分かれて、それぞれに支配されていきます。
北イエメンは、1849年には、オスマン帝国が占領します。その後1918年、オスマン帝国は第一次世界大戦に敗れ、北イエメンは「イエメン王国」として独立しました。1962年に、軍事クーデターによって「イエメン王国」が崩壊すると、「イエメン・アラブ共和国」が成立しました。
南イエメンは、1839年にイギリスによって占領され、これ以降イギリスの保護領になりすが、反イギリス運動が激しくなり、1967年に、「南イエメン人民共和国」として独立しました。さらに、1970年には、国名を「イエメン民主人民共和国」と改称しました。
東西冷戦構造もあり、1970年代~1980年代にかけて、南北イエメン間では武力衝突も起こりましたが、両国は南北統一への道を模索していました。
1989年、アデン合意によって、南北統一への途が開かれると、翌1990年、北イエメンである「イエメン・アラブ共和国」と、南イエメンである「イエメン人民民主共和国」が合併し、現在の「イエメン共和国」の形で成立しました。
2000年、ジッダ条約によって、北にあった国「サウジアラビア」との国境線が画定し、「イエメン共和国」としての正式な領土面積が決定されました。
「イエメン共和国」の国民・宗教・言語について
国民について
「イエメン共和国」の国民は、主としてアラブ人です。
宗教について
「イエメン共和国」の宗教は、ほぼ国民すべてがイスラム教徒です。内訳は、スンナ派が5割強、シーア派が4割弱です。シーア派のほとんどがシーア派分派であるザイド派ですが、シーア派の一派である十二イマーム派も、少数存在します。
言語について
「イエメン共和国」の公用語は現代標準アラビア語です。また、地域によって、アラビア語の方言である、北イエメン方言、南イエメン方言、ハドラマウト方言や、南アラビア諸語であるマフラ語、ソコトラ語、ホビョト語、バトハリ語、ラジフ語を話す人もいます。
「イエメン共和国」の経済状況について
「イエメン共和国」の通貨はイエメン・リアル、GDPは約312億ドル、世界第98位です。一人当たりのGDPは約1,000ドルで、世界で162位であり、これは周辺のアラブ諸国に比べても、非常に低い金額です。このため、「イエメン共和国」は後発開発途上国とされています。
なお、後発開発途上国とは、国際連合が決めた国の分類であり、発展途上国の中でも、特に開発が遅れている国々のことを指します。
「イエメン共和国」の主な産業は石油・天然ガス産業、農業、漁業です。石油・天然ガスを産出・輸出していますが、その貿易収入は、ほとんどが食料品や機械類などの輸入で帳消しになっています。農業では、コーヒー豆の生産が盛んですが、砂漠も多いために農業もそれほど好結果には繋がりません。
最近では、隣国であるサウジアラビアに行く出稼ぎ労働者も増えています。
現在、イエメン政府と反政府勢力の衝突や、イスラム原理主義過激派組織のテロ行為などによって、国内は混乱状態にあり、イエメン政府はますますの経済状況の悪化を懸念しています。
貿易について
「イエメン共和国」の主要な貿易相手国は、輸出が「アラブ首長国連邦、中国、タイ」で、輸入が「アラブ首長国連邦、中国、サウジアラビア」です。
イエメン政府統計によると、主な貿易品目は、輸出が石油、コーヒー豆、魚介類、天然ガスで、輸入は、食料品及び動物(食用)、機械類、化学製品です。
総貿易額は、輸出が約76億ドル、輸入が約99億ドルです。
「イエメン共和国」の政治・政策について
政治体制について
「イエメン共和国」は共和制の立憲国家です。なお、アラビア半島の国の中で共和制を採用しているのは、この国だけです。
「イエメン共和国」の国家元首は大統領であり、国民の直接選挙によって選ばれます。
「イエメン共和国」の議会は二院制で、代議院が301議席、諮問評議会が111議席です。代議院議員は国民の直接選挙で選ばれ、立法権を持ちます。一方、諮問評議会議員は大統領が任命し、立法権はなく、大統領の政策に対する助言機関という位置づけになっています。
政策について
「イエメン共和国」では現在、イスラム原理主義過激派組織「アラビア半島のアル・カーイダ(AQAP)」や、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」の支部組織が活動しており、テロ行為等の危険があり、治安は悪化しています。
「イエメン共和国」は、こうした国内の状況の打開や、治安の回復の為、湾岸協力理事会(GCC)加盟国や、欧米ドナー諸国との協力関係を強化する事を目指しています。
「イエメン共和国」の大統領・首相について
大統領について
「イエメン共和国」の大統領は、国民の直接選挙によって選ばれます。大統領の任期は7年で、連続で2期まで務めることが出来ます。
「イエメン共和国」における大統領の権限は非常に大きく、国家の最高指導者としての役割を果たします。
「イエメン共和国」の現在の大統領は、アブドラッボ・マンスール・ハーディ氏です。
首相について
「イエメン共和国」の首相は、イエメン行政府の長であり、大統領によって任命されます。
首相職が設置されたのは、1990年、北イエメンであった「イエメン・アラブ共和国」南イエメンであった「イエメン人民民主共和国」とが統一したときです。
「イエメン共和国」の現在の首相は、アハマド・ビンダグル氏です。
アラブ首長国連邦の国防制度・軍事制度・兵役について
「イエメン共和国」の軍隊であるイエメン軍は、陸軍・海軍・空軍の3軍種を擁します。この他に、内務省の中央保安機構、沿岸警備隊、共和国防衛隊など、準軍事組織も存在します。
イエメン軍の最高司令官は法律上は大統領ですが、実際はイエメン政府の長である首相が指揮しています。
兵士数は陸・海・空軍で合わせて約67,000人で、軍事予算は約19億万ドルです。
「イエメン共和国」では徴兵制があり、兵役は2年です。
「イエメン共和国」と「日本」の関係について
「イエメン共和国」と「日本」は、1990年、イエメン共和国成立に伴って、外交関係を樹立しました。
2000年、「イエメン共和国」は、イエメン・日本友好議員連盟を設立し、2010年には「日本」も、日本・イエメン友好協会を設立するなど、二国間の関係は極めて友好です。
「日本」は、「イエメン共和国」に対して、経済的な支援や、技術協力、そしてテロ対策支援を始めとした治安回復への支援などを行っています。具体的には、食糧援助等の人道的な支援や、人材育成などです。
また、文化面における交流もあります。「日本」は2005年、「イエメン共和国」の首都サヌアで、伝統能の公演や、空手デモンストレーション、日本映画上映会を開催しました。同じ年に、「イエメン共和国」は愛知県で実施された「愛・地球博」に参加しています。翌年には、「日本」は生け花デモンストレーション、手仕事のかたち展、日本映画週間などを開催しています。
しかし、「イエメン共和国」の治安悪化は、二国間関係にも影響を及ぼしています。2011年、治安情勢の悪化を受けて、「イエメン共和国」にある日本大使館を一時閉鎖しました。同年12月には再開されましたが、2015年、またも治安の悪化により日本大使館を一時閉館することになりました。現在は、「サウジアラビア」にある、在サウジアラビア日本国大使館内において、イエメン関係業務を行っています。
まとめ
「イエメン共和国」は、敬虔なイスラム教徒が多く住み、首都の一部は世界遺産に登録されているなど、古い歴史と文化を持つ国です。
また、「イエメン共和国」には、ロッククライミングやハイキング、スキー、登山などのアウトドアスポーツを楽しめる山が多くあり、各国の登山家が訪れる国でもあります。
なお、男子サッカーの「イエメン共和国」のFIFAランキングは、2018年12月では「135位」です。
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