はじめに
2022年9月23日、トラス新政権は50年ぶりの大幅減税策を発表しました。
コロナで低迷した経済成長、ロシア・ウクライナ戦争による影響などイギリス国民および企業が直面している窮地からの打開策として発表されました。
ところが、国際社会はこの政策に対して、さらなるインフレが起こるのではないかなど、疑問を呈した様子です。
23日の外国為替相場は、対ドルでイギリスポンドが最安値を更新するニュースにイギリス国民の不安は募るばかりです。
今回は、具体的な減税策の内容についてご紹介します。
9月23日に発表されたイギリスの新政権の大規模減税政策の内訳
「ミニーバジェット(小予算)」で「経済成長」を目標に打ち立てた減税政策
2023年4月1日からの実施を計画しています。
- 最高所得税率を45%から40%に削減(法人税率の削減は撤廃し、現状を維持することを決定)
- バンカー(銀行員や金融機関で働く人)のボーナス制限の撤廃(これまでは基本給料の2倍までという上限規定が設けられていた)
- 基本税率を20%から19%に削減
- 不動産購入に係る印紙税の削減
- 光熱費の高騰に対する補助金政策
- 新たな投資産業に対する税優遇措置
これらの政策は今後議会で承認を得た後、2023年の4月1日からの実行予定としていますが、果たしてこの政策に対して承認が得られるものかどうかという声も上がっています。
このような減税政策によって国の財源は減ることが見込まれているため、国債の発行の増加の決定および、英国中央銀行は2022年9月22日に0.5ポイントの利上げを決定し、2.25%としました。
これを受けてイギリス国債およびポンドが下落したことはイギリス経済が今後混迷するのではないかという不安の表れだとしています。
これまでに実施された減税政策
2022年7月6日に施行された減税政策
イギリス全土において3億近くの人には有益な今後10年にわたる個人減税政策を実施。これにより勤労国民にとっては、年間330ポンド(1ポンド=157円 51810円)の減税が見込まれると予測されています。
減税の主なるものは、国民健康保険は年金などに関わる税金の税率の低下によるものが多くなっています。これによって恩恵を受けるだろうとされる勤労者は7割以上にのぼるとされています。
職業別恩恵額例
職種 | 平均的給料(£) | 減税額 |
---|---|---|
病院職 | 19,860 | 292ポンド以下 |
在庫管理 | 12,351 | 333ポンド以下 |
警備員 | 24,814 | 246ポンド以下 |
フォークリフトの運転手 | 25,071 | 243ポンド以下 |
中型バスの運転手 | 20,250 | 289ポンド以下 |
大型トラック運転手 | 30,620 | 191ポンド以下 |
建築労働者 | 26,619 | 229ポンド以下 |
縫製職 | 16,651 | 322ポンド以下 |
タイヤ交換 | 22,513 | 267ポンド以下 |
金属加工業 | 22,842 | 267ポンド以下 |
看護職 | 14,462 | 343ポンド以下 |
大工 | 27,520 | 220ポンド以下 |
これらの減税策はボリス・ジョンソン前首相が実施した減税策の一環でした。ただ国民が実感する程の減税策だと感じられるまでにはいかなかったようです。
まとめ
今回の減税策で上限課税率の引き下げや金融従事者に対する賞与制限などの撤廃が含まれていたことで、高所得者優遇減税ではないかという批判も出始めました。
日々の買い物でインフレ率の上昇を肌で感じても、減税の恩恵があまり感じられていないと感じる国民が多いのが現状です。
新しい首相を迎えたばかりのイギリスですから、判断にはもう少し様子見が必要のようです。
参考資料サイト
》Energy bills to be capped at £2,500 for typical household – BBC News
》pwc-new-uk-government-announces-taxcut-agenda.pdf
》Tax cut worth up to £330 comes in for 30 million workers – GOV.UK (www.gov.uk)
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