イギリスの社会状況2022

イギリスの減税策は経済回復の救世策となるか?(2022年10月情報)

イギリス在住の日本人による、イギリスや日本に関する記事レポートです。今回は「トラス新政府が打ち出した減税政策」についてまとめました。


 はじめに

2022年9月23日、トラス新政権は50年ぶりの大幅減税策を発表しました。

コロナで低迷した経済成長、ロシア・ウクライナ戦争による影響などイギリス国民および企業が直面している窮地からの打開策として発表されました。

ところが、国際社会はこの政策に対して、さらなるインフレが起こるのではないかなど、疑問を呈した様子です。

23日の外国為替相場は、対ドルでイギリスポンドが最安値を更新するニュースにイギリス国民の不安は募るばかりです。

今回は、具体的な減税策の内容についてご紹介します。

9月23日に発表されたイギリスの新政権の大規模減税政策の内訳

「ミニーバジェット(小予算)」で「経済成長」を目標に打ち立てた減税政策

2023年4月1日からの実施を計画しています。

  1. 最高所得税率を45%から40%に削減(法人税率の削減は撤廃し、現状を維持することを決定)
  2. バンカー(銀行員や金融機関で働く人)のボーナス制限の撤廃(これまでは基本給料の2倍までという上限規定が設けられていた)
  3. 基本税率を20%から19%に削減
  4. 不動産購入に係る印紙税の削減
  5. 光熱費の高騰に対する補助金政策
  6. 新たな投資産業に対する税優遇措置

これらの政策は今後議会で承認を得た後、2023年の4月1日からの実行予定としていますが、果たしてこの政策に対して承認が得られるものかどうかという声も上がっています。

このような減税政策によって国の財源は減ることが見込まれているため、国債の発行の増加の決定および、英国中央銀行は2022年9月22日に0.5ポイントの利上げを決定し、2.25%としました。

これを受けてイギリス国債およびポンドが下落したことはイギリス経済が今後混迷するのではないかという不安の表れだとしています。

これまでに実施された減税政策

2022年7月6日に施行された減税政策

イギリス全土において3億近くの人には有益な今後10年にわたる個人減税政策を実施。これにより勤労国民にとっては、年間330ポンド(1ポンド=157円 51810円)の減税が見込まれると予測されています。


減税の主なるものは、国民健康保険は年金などに関わる税金の税率の低下によるものが多くなっています。これによって恩恵を受けるだろうとされる勤労者は7割以上にのぼるとされています。

職業別恩恵額例

職種 平均的給料(£) 減税額
 病院職 19,860 292ポンド以下
在庫管理 12,351 333ポンド以下
 警備員 24,814 246ポンド以下
フォークリフトの運転手 25,071 243ポンド以下
中型バスの運転手 20,250 289ポンド以下
大型トラック運転手 30,620 191ポンド以下
建築労働者 26,619 229ポンド以下
縫製職 16,651 322ポンド以下
タイヤ交換 22,513 267ポンド以下
金属加工業 22,842 267ポンド以下
看護職 14,462 343ポンド以下
大工 27,520 220ポンド以下

これらの減税策はボリス・ジョンソン前首相が実施した減税策の一環でした。ただ国民が実感する程の減税策だと感じられるまでにはいかなかったようです。

まとめ

今回の減税策で上限課税率の引き下げや金融従事者に対する賞与制限などの撤廃が含まれていたことで、高所得者優遇減税ではないかという批判も出始めました。

日々の買い物でインフレ率の上昇を肌で感じても、減税の恩恵があまり感じられていないと感じる国民が多いのが現状です。

新しい首相を迎えたばかりのイギリスですから、判断にはもう少し様子見が必要のようです。

参考資料サイト

Energy bills to be capped at £2,500 for typical household – BBC News

pwc-new-uk-government-announces-taxcut-agenda.pdf

United Kingdom Interest Rate – 2022 Data – 1971-2021 Historical – 2023 Forecast (tradingeconomics.com)

Tax cut worth up to £330 comes in for 30 million workers – GOV.UK (www.gov.uk)

本記事は、2022年10月11日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG