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わかる政治経済シリーズ 第30回

「新しい人権」である、「知る権利・アクセス権」とは?

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目次

「新しい人権」とは?

「新しい人権」とは、「日本国憲法」が制定されたときには想定されていなかったけれど、社会状況が変化するにしたがって、憲法で保障されるべきだと考えられるようになった権利のことをいいます。

「新しい人権」は憲法第13条の「幸福追求権」と第25条の「生存権」を根拠として求められていますが、現在「新しい人権」そのものは憲法には具体的に明文化されていない状況です。

「新しい人権」には「知る権利」「アクセス権」「プライバシーの権利」「環境権」「平和的生存権」などがあります。

今回はその中の「知る権利」と「アクセス権」について説明していきます。

「新しい人権」の中の「知る権利」とは?

「知る権利」とは、国の政治や行政に関わる情報を国民が自由に手に入れることのできる権利のことをいいます。

「知る権利」には国によって妨げられることなく情報を入手できるという「消極的自由権」的な側面と、国に対して情報の公開を国民の側から要求することができるという「積極的請求権」的な側面があります。

山形県金山町の「情報公開条例」とは?

日本で一番最初に「情報公開条例」を制定した自治体は山形県金山町です。

山形県金山町は1982年に「情報公開条例」を制定し、日本で最初に開かれた行政に向けての先鞭をつけました。同じ年に都道府県レベルでは神奈川県が「情報公開条例」を制定しました。以後、地方公共団体の「情報公開制度」の整備が進み、2014年の段階で47都道府県の全てで条例が制定され、99.9パーセントの市区町村でも「情報公開制度」が制定されました。

それでは次に国レベルでの「情報公開制度」はどうなっているのか見ていきましょう。

「情報公開法」とは?

日本では「情報公開法」が1999年に成立、2001年に施行されました。「国民主権」の理念に基づき、国民が行政機関の保有する文書などの公開を要求することができる権利を認め、行政機関は公開を求められたときに情報の開示をしなければならないと義務付ける法律です。

「知る権利」に密接にかかわる法律ですが、「知る権利」そのものは「情報公開法」に明記されてはいません。


以下で、「知る権利」について理解するうえで重要な3つのポイントについて説明していきます。

ポイント1

「情報公開」は未成年、外国人、企業でも請求することができます。

日本の行政機関が保有する文書の公開を請求するにあたって、特に制限されている条件などはありません。そのため、未成年者、外国人、企業などであっても手数料を支払って開示の請求をすれば文書の情報を開示してもらうことができます。

ポイント2

「不開示決定」に対して、「情報公開審査会」や「裁判所」に不服申し立てすることができます。

行政機関は、開示の請求を受けると原則として30日以内に公開か非公開かの決定を下すことになっていますが、そこで非公開とされたり公開された内容に不服がある場合は内閣府に作られた「情報公開審査会」に不服申し立てをしたり、裁判所に提訴したりすることが認められています。

ポイント3

個人、企業、外交、防衛などの情報は非公開です。

行政機関が持つ様々な文書の開示請求ができる「情報公開法」ですが、例外として「情報公開」の対象とならない情報もあります。それは個人にかかわるプライバシー情報、国の防衛や治安維持にかかわる機密情報などです。このような情報は開示することで個人の権利を損なったり、国や公共の安全・秩序に支障が出るおそれがあるため、非公開となっています。

以上「知る権利」について説明しました。

次に「アクセス権」について紹介します。

「新しい人権」の中の「アクセス権」とは?

「アクセス権」とは、「マスメディア」を通して自分の意見を発表する機会を求める権利のことをいいます。「国民がマスメディアにアクセスする権利」ということです。

「アクセス権」が認められていることによって「マスメディア」が発信した内容に対して反論の機会を要求したり、意見広告を載せたりすることができます。「アクセス権」は「表現の自由」の延長線上にある権利としてとらえられることもあります。

「アクセス権」が必要とされるようになった背景として、一般市民には自分の意見の表明をすることの手段が限られているということがあります。メディアは本来市民の側に立って国家による言論の弾圧と戦うものとして位置づけられていましたが、資本主義が発達するに従いメディアは強大になり、市民とは情報の「送り手」「受け手」という立場が固定化するようになりました。

このような背景のもと「マスメディア」が発信する情報を一方的に受け取るだけではなく、市民にも自分の意見を「マスメディア」を使って表明する権利があるとして生まれたのが「アクセス権」です。

以下で「アクセス権」に関する事件を紹介します。

「産経新聞意見広告事件」とは?

「産経新聞意見広告事件」とは、サンケイ新聞(現在の産経新聞)に自由民主党が掲載した日本共産党に対する批判について、共産党が反論文掲載のための「アクセス権」を求めて産経新聞を訴えた裁判のことです。


1973年、自由民主党は広告料を支払い産経新聞に共産党を批判する意見広告を掲載しました。それを受けて共産党は、同じスペースに反論文を無料で掲載するように産経新聞に求めましたが、産経新聞は広告料を支払うならば掲載するが、無料では応じられないとしてこの要求を拒否しました。

そのため、共産党は産経新聞を相手取って訴訟を起こしましたが、共産党の訴えは棄却され、全面敗訴となりました。

理由として、「アクセス権」は明文化されておらず、憲法21条で規定される「言論の自由」の中の具体的な権利としては認められないことが挙げられます。さらに、仮に「アクセス権」を具体的な権利として認めた場合、メディア側の「消極的表現の自由(表現することを強制されない権利)」を侵害するものとして違憲になるおそれがあるということがあります。

まとめ

以上、「新しい人権」の中の「知る権利」と「アクセス権」の2つについて説明しました。

本記事は、2023年3月1日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

2021年に公務員総合研究所に入所した新人研究員。

好きな言葉は、「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」

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