はじめに
新型コロナウイルスが猛威を振るうアメリカで、アジア系の人達が公共の場で嫌がらせを受けたり、襲われたりする事件が相次いでいます。
実際に西海岸にあるアジア人系N G Oに、たった2週間で1000件以上の差別や嫌がらせの報告が寄せられました。
トランプ大統領に政権が移って以来、大統領自らの人種差別的発言が、多くのメディアで取り沙汰されています。
今まではメキシコ移民や中東、アフリカ出身の人達が、大統領発言によって差別の標的になっていましたが、アジア系の人達を標的にした事件はほとんどありませんでした。ところが今回トランプ大統領の“チャイナウイルス”発言が引き金となり、アジア系の人たちへの嫌がらせが一気に多くなりました。
今はコロナウイルスという大義名分があるので、法律によって抑圧されていたアジア人に対する社会的、経済的不満が一気に爆発して、堂々と嫌がらせが行われています。しかしコロナ騒動がなければ、アジア人に対する差別はないのかといえば、そうでもありません。
元々アメリカ人の白人は、自分達が世界で一番だと子供の頃から教育され、ごく自然に有色人種は自分達より劣っていると思っています。そしてなかには、自分達より劣っているはずのノンホワイトが、裕福な暮らしをしているのをよく思わない人もいます。
マイノリティ差別
アメリカ社会では社会の中の不公平を無くすため、黒人、ヒスパニック系とネイティブアメリカン(インディアン)は、マイノリティとして優遇されています。社会にはマイノリティ枠というものが存在し、学校に入学する時や会社の就職の際に、白人ばかりが優先されないよう、企業や学校は、決められたパーセンテージの有色人種を入れなくてはなりません。
しかしアジア系は、このマイノリティの枠の中には入っておらず、優遇対象から外されています。その理由は、多くのアジア人が高学歴で、経済的に余裕があるからだそうです。
確かに成績優秀で生活能力があって自力で頑張れる人を、社会が過度に優遇する必要はないと思います。しかし親が高学歴で、富裕層に属する他のマイノリティも、中にはいる筈です。そして全アジア人が、成績優秀で裕福な家庭出身だとは限りません。
例えば、東南アジア出身の経済難民としてアメリカに移住してきた人達も、アジア系の枠に一括りにされるため、マイノリティとしての優遇措置を受ける事ができません。マイノリティ優遇措置が本当の意味で、社会の中の不公平感を無くすための物なら、なぜアジア人だけが優遇措置から除外されているのか、そしてなぜ他の有色人種は無条件で優遇されるのか疑問が残ります。
私が勤めている図書館も、200人近くいる職員はほとんど全員白人で、アジア系の社員は私一人だけです。採用されたのもボランティアを1年以上して、他の職員と顔見知りになってからで、ボランティアをする前は何度募集に応募しても、履歴書の時点で不採用になっていました。
そう考えると、今までずっと差別を受けた経験がないと思っていたのは、アジア系移民としての自分が、社会から受けてきた差別や偏見に気付かなかっただけ、なのかもしれません。
偏見による差別
アメリカは国が大きいせいか、州によって文化や人の対応が全く異なります。ここ数十年で有色人種に対するあからさまな偏見は、ずっと減りました。しかし潜在的な偏見を消し去るのはずっと難しく、心の中では、女性よりも男性の方が、肌の色が濃い人よりも薄い人の方が、理知的で勤勉、性格も良いと、ほとんどの人が思っています。
残念ですが、アジア系もあまり利口な人種だとは思われていません。しかし多くのアメリカ人は同じアジア系の中でも、日本人に対してとても友好的です。日本人は勤勉で責任感が強く、優しくて親切だと、大抵のアメリカ人は答えてくれます。日本の事が大好きで、機会があれば日本人と仲良くなろうと思っているアメリカ人も沢山います。
しかし今、アメリカに住む人々は、コロナウイルスがアメリカ中で大蔓延しているのは、中国人のせいだと多かれ少なかれ思っていて、社会全体がピリピリしていて、今までアジア人とほとんど接したことのないような人も、メディアの情報だけで、中国人が嫌いになっています。
ウイルスによって職や家族を失い、被害にあった人々のストレスが中国人に向けられ、中国人以外のアジア人に対しても飛び火してくる可能性も考えられます。いくら日本人が他のアジア人と比較すると高評価だったとしても、同じアジア系人種としていつ標的になるかわかりません。
大半の人は気さくに接してくれます。それでも咳やくしゃみをしたりすると、あからさまではないまでも、やはり他人の仕草や視線が「自分がアジア系だからではないか」と、きになってしまいます。
このようにアメリカに住む多くのアジア人は、普段ならあまり気にしなかったようなことにも気を配り、危ない目に合わないよう以前より気を付けるようになったと思います。
まとめ
いつの時代も、人間の本質はあまり変わらないようで、アメリカ合衆国建国以来、白人の有色人種に対する差別は、事あるごとに何度も繰り返されてきました。太平洋戦争では日本人が、冷戦後はロシア人が、911ではアラブ人が、そして今回はコロナウイルスの流行が引き金となって中国人が、差別の対象になっています。
ウイルスの流行をきっかけに、そんな差別や偏見があらわになった分、今は非常事態の際の人間性が問われているのではないでしょうか。
この先どのようなニューノーマルがやってくるのか、今はまだ誰にもわかりません。元のような社会は戻らないかもしれませんが、今より少しでも良い社会になって欲しいものです。
以下Twitterで本テーマの話題についていくつか調べてみましたので掲載します。
マット・ラフ『ラヴクラフト・カントリー』を読み終わりました。白人による有色人種差別が「あたりまえ」の1950年代アメリカを「人類を一顧だにしない邪神がしろしめすラヴクラフト的恐怖世界」になぞらえ、黒人青年とその家族による魔術と冒険の日々が描かれる。大傑作。#日本怪奇幻想読者クラブ pic.twitter.com/6z4gUvo36H
— うさぎ小天狗 (@USAGI_koTENGU) April 24, 2023
日本が人種差別のない軍隊、多民族国家を形成していたのに対して、アメリカやイギリスは強烈な人種思想を持ち、強制収容所を建てて有色人種の隔離政策をしていたのは意外に知られていない。
— 橋本琴絵 (@HashimotoKotoe) August 3, 2021
これが多くのアメリカ人の本音。日本人なんかにMVPを取られるのが我慢できない。人種差別が当たり前。アジア人大嫌い、有色人種大嫌い、白人が世界で一番偉い。だから表向きにやたらと大声で綺麗事ばかり叫んでリベラル・人格者を装う。そういう屑野郎の巣窟の国。https://t.co/TlXwCurM5J
— たくろふ (@takutsubu) September 28, 2023
米国ではアイルランド系が差別されていましたよね。ケネディ後も。
しかしカトリックとプロテスタント対立と白人の有色人種への差別はまた別の根深さ。政治中枢への関与等ユダヤ系は単純な被差別側とも言い難い。
「ファンタジーランド狂気と幻想のアメリカ〜」など読むと米国は特殊な国という感想です— ふくふう (@FukuFuu15) September 24, 2023
ベイマックスを「我ら日本人の物語」と受容してる人が日本に多くないのは幸せなことなんですよ
アメリカの有色人種は現実社会で差別で苦しんでるからこそ作品鑑賞でもそういうのを気にする羽目になってるわけで、その点は僕も同情するんですよね。だからこそ現実社会での差別は良くないという話になる— てねーる🇬🇧 (@TenerPr) February 11, 2022
「ドリーム」1961年、アメリカ南部において有色人種分離政策時代。ソ連の人工衛星打ち上げでアメリカのNASAにもプレッシャーがかかる。NASAの黒人女性の数学者にエンジニアたちは差別を撤廃させ、自分たちの力を証明し、宇宙ロケットの発射と帰還を成功させる。邦題以外が良い映画。 pic.twitter.com/Igy7Wofgdi
— 浅井ラボ@されど罪人は竜と踊る24(2023年2月17日発売) (@AsaiLabot2) March 12, 2022
(続き)これが在日米国大使館のツイート。先日、入管職員の暴行で損害賠償を求める裁判を起こしたアメリカ人はハイチ系の黒人だった。
入管での暴行や人権侵害の報道を見ると、黒人やアジア人など有色人種ばかり。組織内部での人種差別思想の蔓延が疑われる。今や国際問題。https://t.co/wEQP4lJtek pic.twitter.com/RSaYn59ow8
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) December 6, 2021
日本の嫁姑があーと騒いでる奴らには欧州南部やアメリカクソ田舎の嫁姑関係を体験して頂きたい。有色人種外国人要素まで入るから差別も加わり、男尊女卑も日本の都会より遥かにひでえからな…食べ物すら気持ち悪いだのぐちぐちいわれ、お前の国は犬食うのかとか義両親がいうしな…
— May_Roma めいろま 谷本真由美 (@May_Roma) June 24, 2021
大谷君のここ最近の四球、敬遠はホームランキング争いのライバル2人のチームではなく、大谷君の打順がまわってきたときにエンゼルスのチャンスを潰すためでもなく、
「アジア人差別」ですよね。
アメリカ人の有色人種に対する差別は我々日本人とては信じられないほどのえげつなさだそうです。— tachio (@chirorin4140) September 27, 2021
アメリカで出てきている有色人種への差別と陰謀論"great replacement theory"の話や、トランプが中絶反対派の最高裁判事を入れていたことにより今後多くの州で今後中絶が禁止になる可能性、ロシア・ウクライナの性的少数者の置かれている状況…など気になるニュース、北丸雄二さんの解説。 https://t.co/IkwBXC4p34
— に🎈 (@Xj1FxNG0Tv1QhrU) May 29, 2022
石原慎太郎さんも、この押し付けられた憲法にはアメリカ(GHQ)の日本人(有色人種)に対する差別意識があったと言っていたと思いますが、そうとしか考えられません。
アメリカ嫌いの立憲民主党、共産党、社民党らがこのアメリカに押し付けられた日本国憲法を守ろうと、護憲の立場を取るのが不可解です— hanaBi (@hanabingogle) January 14, 2022
🇺🇸米政府が、有色人種のサル痘患者の治療でも人種差別
医療分野のニュースを報道するアメリカのニュースサイト、STAT(スタット)は、同国の一部州や地域からの統計によれば、国内のサル痘の感染者の割合は有色人種のほうが高いことが明らかになっており、このことは多くの懸念を引き起こしています。 pic.twitter.com/uiQvidyYDw
— ParsToday Japanese (@ParstodayJ) August 14, 2022
https://twitter.com/dumbledore5555/status/1688879836876689408?s=20基本的に留学生が集まる語学学校ESLならOKだけどそれ以外だと嫌な気持ちにさせちゃうかも。
アメリカ(白人)だとワンチャン出身州を教えてくれるよ!
アメリカ(有色人種)だと揉め事に発展するよ!
アメリカ(全般)にこれを聞かれた時には結構差別的な意味合いが多いよ!もしくは英語が下手すぎる。 https://t.co/SFcLUccYfd— そら豆 (@cursingeverythi) August 11, 2023
前後編両方読むべきだなと思った。白人の有色人種に対する差別の酷さが凄い。
原爆を「お笑いネタ」化して炎上 映画「バービー」を機に知っておくべき「歴史の真実」 主犯はアメリカでも“共犯”の国が二つ | デイリー新潮 https://t.co/a981Qc0lMu
— 紀(ハジメ) (@hajime703) August 6, 2023
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