自衛官の充実した「福利厚生」と「基地での生活」について

国家公務員である「自衛官」は、国家防衛や災害救助、有事の際の人道支援など、非常に重要な役割を担っています。今回は、自衛官の危険と隣り合わせで、人名に関わる特殊で厳しい仕事だからこそ、必要な各種手当や取得できる資格、普段はセキュリティで閉ざされた基地での生活についてまとめました。


自衛官という職業

自衛官は、自衛隊法に基づく防衛省が所管する日本の国家防衛組織で、約24万人の隊員が所属しています。大きく分類すると、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の3つにわけられ、それぞれの所属部隊で多種多様な任務の自衛官が所属し、よく知られる活動では、国家防衛や国内の大災害時の救助および被災者の支援活動などを行っています。

自衛官を構成する数多くの専門職

医師や看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、歯科技工士などの医療の業務を専門に行う自衛官や、航空機および船舶の操縦や整備などの航空関係の業務を行う自衛官、特殊車両の運転や公用車の整備などの車両に関する業務を行う自衛官など資格のもと業務にあたる専門職もあります。
いかがでしょう、日ごろ自衛隊と聞くと厳しい訓練を毎日行って災害現場で体を張りながら救助作業の第一線で活動する姿を想像されることが多いと思いますが、いわゆる裏方のような、後方支援を専門とする自衛官も数多く活躍しています。

人材確保という課題

また、自衛官は慢性的に隊員が不足している状況が長年の課題となっていて、自衛官募集の業務については特に注力されており、人員確保のために市町村や自衛官OBやOGらと連携するなど、さまざまな取り組みを行っています。近年では、自衛隊基地を一般に開放するイベントなども行われていて、より一般の人々との距離を近づけるような事業も展開されています。

各種手当とメリット

自衛官は特殊な任務に就く公務員であり、各種手当や共済、年金が他の公務員よりも恵まれています。手当は地域手当、寒冷地手当、除雪手当、災害派遣等手当、海上警備等手当ほか言い出したらきりがないくらいあります。所属の担当する業務によっては基本給以外にも相当の手当が支給されています。そして、年金もとても充実しており、多くの自衛官は50代前半で定年退職となりますが、その後の生活保障も万全です。

さらに「元自衛官」という肩書きは企業にとっても魅力があるとのことで、再就職にも非常に強みがあります。なによりも在職中にさまざまな資格を取得するチャンスがあるというのも再就職には役立ちます。そんな自衛官の募集窓口事務を経験した元市町村役所職員の立場から、自衛官の生活や自衛官としてのメリットなどについてお話していきます。

人格形成といわゆる階級社会

よく知られていることではないかとも思いますが、自衛隊組織は完全に階級社会です。

消防や警察組織も基本的に同じですが、この階級をもとに指揮命令系統が確立されていて、活動現場や日ごろの業務を行っています。なので上下関係は非常に厳しい組織で、これについてはき違えた理解をした一部の自衛官が部下にパワハラや暴言および暴力をはたらくなどして処分されるといった事案も発生しています。

大きく成長する最初の1カ月

しかし、基本的に基地での共同生活や訓練などのなかで、隊員の人格形成についても尽力しているのも事実です。特に入隊後間もなくして顕著に表れるとのことで、「入隊1カ月で見違えるように人間として成長する」と自衛官の方は口をそろえていました。実際、少し非行歴があり、いわゆるやんちゃなお子様をお持ちのとある保護者の方から「4月に入隊して5月の連休の際に久々に親子で対面したが、これが我が子かと疑ってしまうほど成長した。」という話を聞いたことがあるほどです。確かに、自衛隊施設に行っても各隊員気持ちよくあいさつもしてくれますし、物腰もやわらかくて話していてとても好感が持てました。人格形成の教育がすばらしいなと感銘したことを覚えています。

地域事務所での活動

先ほども記載しましたが、人員の確保、すなわち採用試験の受験者を増やす活動は現在の自衛隊組織にとって必要不可欠であります。自衛隊には全国いたるところに基地がありますので、身近なところで自衛隊の施設を目にすることもあると思います。

各都道府県にある地域協力本部

この自衛官の募集活動を最も一般住民に近い立場で行っているのが、通称「地本」と呼ばれる「地域協力本部」で、各都道府県に設置されており、さらに枝分かれした「地域事務所」を設置しています。

それぞれの地域事務所で管轄地域を設定しており、それぞれの管轄地域で募集活動を行っています。例えば、管轄地域内の中学や高校へ出向いて、進路担当の教諭や場合によっては生徒らに対して募集の広報などを行ったり、市町村の募集窓口や自衛隊OB、OGらに委嘱している相談員の方たちとの連絡、調整業務などです。


相談員は、各市町村に若干名~数名程度おり、入隊を希望する一般住民らと地域事務所をつなぐ役割をしていて、文字通り相談役です。地域事務所の職員が中心となり、市町村の担当者、相談員の3者で連携し、募集活動を行っていきます。

自衛隊からは各市町村に募集事務委託費を支払っており、自衛隊から見れば、市町村は協力者といった立場です。ただ、事務委託費といっても市町村自体、この自衛官の募集事務にそれほど時間も予算も費やしていませんから、会議への参加旅費や軽微な消耗品費程度しか必要ありませんので、都道府県にもよりますがこの事務委託費はおおむね年間1~5万円程度です。地域事務所に勤務する自衛官は、自衛官としての経験が豊富で、いろいろと詳しく知っていますし、これは他の自衛官にも言えることなのですが、市町村の職員や一般の方々に対して優しく人当たりがものすごくいい印象があります。地域事務所では募集活動のみを行っているわけではありませんが、いわば自衛隊の地域に身近な広告塔といった役割で広報活動を行っています。

自衛隊基地の内部

日ごろは言うまでもなく、厳しくセキュリティー管理された自衛隊基地ですので、一般の住民の方がその内部に入る機会は基本的にないといっても過言ではありません。

私が市町村の担当者として募集事務を行っていた時、年に1度程度「募集事務担当者会議」という会議が基地内で行われていました。内容は、各都道府県の市町村職員が一斉に集まって、午前中に募集事務に関する会議を行い、昼食を基地内食堂でとり、午後からは基地見学を行います。正直な話、午前中の会議は大切なことですが、昼食と午後からの基地見学が楽しみで仕方ありませんでした。

それに参加するにあたり事前準備も大変です。厳しくセキュリティー管理されていますから、出席者の指名、連絡先はもちろんのこと、基地内に進入する車両の車種やナンバーまでこと細かに報告し、銃を背負った自衛官に入場許可証を掲示して基地内に入ります。

基地の中に入るとなにか不思議な感覚に陥ります。というのも、基地の中は寮、スーパー、コンビニエンスストア、スポーツジム、体育館、プール、飲食店、床屋、自動車整備工場、ネットカフェのような施設など生活するうえで必要な施設はすべてそろっていますし、もっと言えば基地の外の世界より暮らしやすそうだなと思うほど基地の中の施設は充実しています。完全に基地の中で一つの街が出来上がっているかのような感じで、とても充実しているように思えました。

また、広大な土地を保有する基地、例えば航空自衛隊基地の滑走路の脇の土地などを利用して、無料あるいは格安で利用できる自衛官専用のゴルフ場がある基地もあるとのことでした。

自衛隊基地内での自衛官の食事や生活

自衛官の食事

多くの自衛官は日夜厳しい訓練を行っている、体力仕事の隊員です。そのため、基地内で用意される食事は3000~3300キロカロリーと非常に高カロリーに設定されています。隊員の方の話では、それくらい食事をとらないと訓練でカロリー消費してしまって痩せていってしまうそうです。私も何度か食事をいただきましたが、ウナギ丼、カレーライス、かつ丼など炭水化物がたっぷりで高カロリーなものばかりで、おかわりも自由です。

また一部年配の隊員も所属していて、彼らは若手の隊員と比べて運動量が少ないため、普通に食事をしていては太ってきてしまうので、自ら調整しながら食事をとる必要があります。

寮での生活

未婚の自衛隊員は原則として一定の年齢や階級になるまでは、駐屯地内や基地内の指定された寮で生活することとなっています。この寮は3~6名程度で生活します。階級が上がっていくと、寮にもよりますが個室になることもあります。やはり、階級社会の集団生活では上下関係があり、それぞれに与えられた役割があります。業務中以外のプライベートの時間も一定の制約はつきまとってしまうこの自衛官の寮生活ですが、いいこともあります。

一般に生活していくとなると当然に電気代、ガス代、水道代に食費とさまざまな生活費が必用となってきますが、これが無料なのです。基本的に衣食住にお金がかかりません。基地内での生活であるのでお金を使うこともあまりありませんし、生活にもお金がかからないので貯金生活をするにはもってこいの環境といえます。ちなみに結婚後は基地の外で生活できるようになりますが、基地の外に官舎も用意されており、格安で居住もできます。

任期制自衛官とキャリアアップ

自衛隊には、陸上自衛隊であれば1年9カ月、海上自衛隊、航空自衛隊であれば2年9カ月を任期として勤務する任期制自衛官が勤務しています。それぞれの任期を満了後は、再度任期制自衛官として勤務する人、採用試験を受験して一般の自衛官として勤務する人、あるいは民間企業やその他公務員へ再就職をします。

自衛隊では入隊後に陸、海、空のそれぞれの所属でさまざまな資格取得が目指せます。例えば、救急救命士や准看護師などの医療関係やパイロットや大型自動車免許などの乗り物関係などです。ほかにも土木関係やIT関係の資格取得を目指すことができ、この資格取得を目的に入隊し、資格取得後脱退して再就職を目指すといったキャリアアップのために任期制自衛官として入隊するといった人もたくさんいます。

まとめ

近年、海外派遣などの困難業務が取りざたされている自衛官の仕事は大変な仕事だというイメージが定着しつつありますが、確かに大変な仕事です。しかし、決してただ大変というわけではなく、それに見合った待遇が保障されています。給与や福利厚生も一般の公務員よりはるかに充実していますし、階級社会のなかで節度ある生活を送るため、人格形成教育が行き渡っていますので人間的にも成長した隊員が多くいます。

少し余談にはなりますが、そんなことから近年では自衛官と結婚を希望する女性が増えており、男性の自衛官限定の婚活パーティーなども開催されているほどです。なにより、国家防衛や災害や有事の際の人道支援という非常に重要な役割を担うことができる唯一の職業であることは言うまでもなく、非常にやりがいがある職業ではないでしょうか。


大変な仕事ではありますがそれに見合った、あるいはそれ以上のメリットが自衛官にはあります。個人的には、例えば高校卒業後に専門学校や大学にそれほど大きな目的なく入学するくらいだったら、任期制自衛官などになって数年間経験を積んだほうがその後の就職や将来のためになると考えています。将来の目標が見つからない学生や、今の職業に満足していない社会人の方も自衛官を職業選択のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

本記事は、2017年9月26日時点調査または公開された情報です。
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