【公務員試験重要科目「憲法」】「日本国憲法」の全文解説 第三章

公務員試験重要科目の一つ、「日本国憲法」について解説します。第三回は、第三章にあたる国民の基本的人権について書かれた第10条から第40条です。(憲法全文解説第三回)日本国民の「権利」と「義務」について書かれています。


目次

第10条は、憲法は日本人の条件を示さない?

第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第十条は、日本国民としての資格を定めているのは「国籍法」という別の法律である、ということを示しています。

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現在の国籍法によれば、日本国籍を取得する方法は二つで、一つ目は出生時に両親どちらかが日本国籍を持っている場合で、二つ目は一定の要件を満たした外国人が帰化する場合です。

しかしながら、日本国憲法で登場する「日本国民」とは国籍保有者に限られるのかどうか、それとも国籍を持たない人も含んだ、日本に住むすべての人々を意味しているのかについては、現在も議論されています。

国籍法について

国籍とはその国の構成員としての資格であり、「国籍法」は日本国民の国籍の取得と喪失について定めた法律です。なお、日本国民であるための要件をこの法律で定めていますが、天皇と皇族はこの法律の対象外です。

第11条 基本的人権

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

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第十一条では国民の「基本的人権」について言及しています。

「人権」とは憲法で定められる以前から存在する、人間が生まれながらに有する権利です。しかし、旧憲法では人権は天皇から恩恵として与えられるものとされていて、悪法や軍部の暴走による人権侵害も頻発してしまいました。このことの反省から、日本国憲法では憲法自体が国民の人権を保障するかたちへと大きく改められました。

この基本的人権は日本で生活する日本国籍を持たない人々にも当然与えられている権利ですから、私たちは人種や国籍、宗教・思想の違いなどで差別することは許されません。そして「侵すことのできない永久の権利」であることから、たとえ憲法改正などがあったとしても基本的人権は侵害されないことが保証されていると言えるでしょう。

第12条は、基本的人権を保持する義務について

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によつてこれを保持しなければならない

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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第十二条では人権を守るためには国民も努力をしなければいけないこと、そして人権を濫用してはいけない、ということが述べられています。

過去を振り返ってみると、人権が「全ての人間」に認められるようになったのは最近のことで、現在私たちが当然のように享受している人権は、先人たちの努力によって「獲得」されたものです。ですから、私たち国民が声をあげて人権を主張し続けなければ、権力者たちによって再び人権を奪われてしまうことだってあり得るでしょう。


また、いくら人権が保障されていると言っても、それを盾にして自分勝手に振舞って他人に迷惑をかけてしまっては、相手の人権を侵害してしまうことになります。そのため、私たちには他人を思いやって行動するという責任があります。

第13条は、幸福を追求する権利について

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

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第十三条では、全ての国民が「個人」として尊重される、すなわち国民は国家のために存在するのではなく、個人一人ひとりがかけがえのない存在として認められる、ということを示しています。これは、過去には特定の身分である人にしか認められていなかった人権が、全ての国民のものとなったことを明言しているのでもあります。

何をもって「幸せ」であるかというのは人それぞれですよね。ですから憲法では幸福を「追求する」ことを権利としたのです。したがって、自分が定義する幸福を実現するために必要となる権利を「新しい人権」として主張することも本条によって保障されていることになります。例えばプライバシー権や自己決定権、環境権といった権利はこの十三条が根拠として成り立っています。

ただし、他人に迷惑をかけてまで自分の「幸福」を追求することは当然ながら認められていません。

第14条は、法の下の平等について

第14条

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2項 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3項 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。

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第十四条では「法の下の平等」について明言されています。つまり、政府は人種や宗教、性別、出身などによって国民を差別してはならないということです。

旧憲法の時代には華族と呼ばれる貴族階級が存在し、法律上においても特権を持っていました。しかし現行の憲法では華族制度は廃止され、法律上、全ての国民は平等に扱われることが示されました。

また現在においても、様々な分野で多大な功績を残した人に対して勲章を贈ることがありますが、これを貰ったからといって特権的な立場になることはありません。

華族制度とは?

「華族」とは、版籍奉還と同じ時期に、朝廷に勤める身分の高い役人(公家)と大名(諸侯)の代わりに設置された身分の呼び方です。

1884年の「華族令」によってその範囲が広がり、明治維新以降に国家への勲功があった政治家や軍人にも華族の身分が与えられ、新華族または勲功華族と呼ばれました。華族の身分は世襲制で、様々な特権が伴いました。この特権身分制度のことを「華族制度」といいます。

また、華族は貴族院の議員となる特権を持ち、一般国民の議員によって構成される衆議院を牽制し、天皇制の維持を図る役割を持っていました。

第15条は、公務員を国民が選ぶ権利、「参政権」について

第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

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第十五条は「参政権」に関する条文です。公務員とは議員や役人などを指し、公務員は全ての日本国民のために働かなければならないと定められています。すなわち特定の誰かが得をするように働きかけたりすることは憲法違反です。

議員選挙などを行う際には、成年の全国民が選挙権を持つ「普通選挙」を行います。そして、そのときに誰に投票するかは個人の自由であり、誰に投票したのかは秘密にされなければなりません。また、その選択を他人から非難されたり、何らかの不利な扱いを受けるようなことがあってはなりません。


普通選挙とは?

納税額や性別などの条件を満たした国民のみが選挙権を得る「制限選挙」に対し、「普通選挙」は全ての国民が選挙権を持ちます。

明治憲法時代の1925年に「普通選挙法」が制定されましたが、この法律によって実現したのは男子普通選挙であり、女性には選挙権がありませんでした。男女普通選挙は、日本国憲法に改正される直前に実現されました。

第16条は、苦情を言う権利「請願権」について

第16条

第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

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第十六条では「請願権」について示しています。請願とは、国民が国や都道府県、市町村といった公的な機関に対して苦情や要望などを申し出ることです。条文にあるように損害の救済、公務員の罷免(辞めさせること)、法律などの政治的な問題などを平穏に伝えることが権利として保障されています。

請願権は選挙以外で民意を伝える手段、つまり政治に参加する手段ですので、国民にとって重要な権利です。

「平穏に」とあるのは、つまり何かを訴えることき暴力や破壊行動などを用いてはいけないということです。また、請願の内容は先に列挙したもの以外でもよく、どんな内容の請願をしたとしても、そのことによって差別をされたりすることはありません。

第17条は、公務員のミスは賠償責任があるか?

第17条

第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

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第十七条では、公務員の不法行為に賠償責任があることが明言されています。旧憲法の時代には本条のような定めがなく、公務員のミスによって損害が発生したとしても国や公共団体には賠償責任がなかったのです。

具体的な取り決めは「国家賠償法」という別の法律で示されています。公的機関に賠償責任が発生するのは(1)公務員が故意、過失に関わらず他人に損害を与えた場合、そして(2)道路や河川などの設置・管理に過失があり他人に損害を与えた場合、となっています。

第18条は、奴隷や強制労働の禁止について

第18条

第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服さない。

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第十八条では、「奴隷制」や強制労働の禁止を示しています。

人間としての権利や自由を奪われることは、「奴隷的拘束」と表現されます。旧憲法下では「警察権」を乱用し、国民が不当に拘束されたり、拷問を受けたりすることがありました。このような、個人の自由を不当に奪うようなことはあってはならず、日本国憲法では、誰一人として奴隷的な扱いを受けることはないと明示しています。

「苦役」とは、働く意思のない人を無理やり働かせることです。刑罰として以外の、国家権力による苦役は禁じられていることはもちろん、企業による個人の尊厳を無視するような働かせ方についても本条は禁止しています。

警察権とは?

「警察権」とは、国民に対して命令・強制し、自由を制限する公権力のことです。国家統治権の一つであり、公共の秩序を守るために警察機関によって行使されます。ただし、法律で定められた以上の警察権の行使は違法であり、「警察権の限界」を定める以下の4つの原則があります。

(1)警察公共の原則(公共の場所以外での警察権の発動はできない)

(2)警察責任の原則(公共の安全や秩序を乱す行為の責任者以外に対する警察権の発動はできない)

(3)警察比例の原則(公共の安全や秩序を守るために必要最小限の警察権の発動にとどめる)

(4)警察消極の原則(公共の秩序を乱す具体的な危険性がある場合に、それを除去するためだけに警察権を発動する)

奴隷制とは?

「奴隷制」とは、人格を否定され、財産として他の人間に所有される「奴隷」という身分や階級が存在する社会制度のことをいいます。


第19条は、心の中の自由について

第19条

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

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第十九条では、心の中で何を考えていても自由である、ということが示されています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、過去の戦争は政府による思想の統制によって引き起こされたという側面があり、その反省がこの条文に込められています。

例えば「愛国心」を持つかどうかというのは個人の自由であり、誰かに強制されるべきものではありません。また、自分の思想や考え方について、無理やり聞き出すことは禁止されています。

このように、日本国憲法は国民一人ひとりが体だけでなく心も自由であることを保障しているのですね。

愛国心とは?

「愛国心」とは幅広い意味を持つ言葉です。自分の国に対する親近感や愛着、懐かしさといったぼんやりとしたものから、忠誠心を持ち国家に身を捧げるという気持ちまでを含み、その土地に住んでいる人なら誰もが自然に持つ感情です。

近代的な意味での愛国心とは、主権を持つ国民が国家を自らの手で守るという、民主主義や自由を結びつくものですが、天皇主権であった戦前の日本では、天皇への忠誠心と愛国心はイコールであり、「愛国心」は軍国主義を押し進めるためにも利用されました

第20条は、政治は宗教にどう関わるか?

第20条

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

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第二十条では、宗教に関する取り決めについて示されています。国民はそれぞれが宗教を選び、信仰する自由を持っています。もちろん、無宗教でいる自由も持っています。また、宗教に関わりのある行事などに参加したくなければ拒否することができます。これらは第十九条で保障されている内心の自由のひとつといえます。

そして、本条では政治と宗教が結びつくことを禁止しています。旧憲法時代には宗教が軍国主義を維持するために政治利用されました。すなわち、国家神道が国民に強制され、これ以外の宗教を信仰する人々に対する迫害が行われました。こうした過去の反省から政教分離原則を徹底するべく本条は定められています。

第21条は、自分の意見を発表する権利について

第21条

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

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第二十一条では、「表現の自由」について定めています。すなわち、この条文によって、国民は多様性のある意見を自由に発信できることが保障されます。国民は誰でも自分の考えを発表したり、出版したりすることができ、その内容を国家権力によってチェックされることはありません。また、国家が手紙などの内容を盗み見ることは禁じられています。

交わされる意見の中には、国家のあり方に対して異論を唱えるものも当然あるでしょう。しかし、国家がこうした意見をチェックしたり、内容をコントロールしようとすることはできません。

文章による情報発信のほか、団体設立や集会を行うことも基本的に自由です。ただし、表現の自由があるとはいえ、他人に迷惑をかけるような内容・方法は認められていないことに注意する必要があるでしょう。

第22条は、職業や居住地を選ぶ権利について

第22条

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

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第二十二条では経済的自由について示されています。国民は誰でも、自分の好きな職業を選ぶことができ、また住む場所も自由です。ただし、他の人に迷惑をかけるような仕事、例えば健康被害の恐れのある食品や薬品を扱うような仕事は認められませんし、道路の真ん中で生活をするようなことも公共の福祉に反しているでしょう。

第二項では日本から離れ、外国籍を取得することができることを示しており、すなわち「日本人をやめる権利」すら認めているといえます。

すなわち本条は、かつての人と土地を縛り付けていた「封建制」を否定し、人々が制限なく移動できることで成立する自由な経済活動を保障しています。

封建制とは?

「封建制」とはいわゆる「ご恩と奉公」と呼ばれる、土地を仲介した主従関係を結ぶ地方分権の政治形態をいいます。例えば、将軍が家来が領地を持つことを認めて保護し、戦などで功績があったときには新しい領地を与えるなどしました(ご恩)。そして、家来は将軍に忠誠を誓い、戦の際には将軍のために戦いました(奉公)。

第23条は、「学問の自由」について

第23条 学問の自由は、これを保障する。

第23条 学問の自由は、これを保障する。

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第二十三条は「学問の自由」について定めています。すなわち、何について勉強・研究をするかは個人の自由であり、国家にとって都合の悪い研究や学説を排除するような行為を禁止するということです。これにより、個人の探究心が侵されることのないようにしています。


実際に、旧憲法時代に滝川事件や天皇機関説事件といった思想・学問の自由を侵害するような事件が起こったため、日本国憲法では学問の自由が保障されるようになりました。

学問の自由には(1)学問を研究する自由、(2)研究を発表する自由、(3)大学などで教授する自由の3つがあります。

第24条は、夫婦間の権利に差はあるか?

第24条

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2項 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

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第二十四条では、結婚における男女平等を定めています。日本にはかつて家制度と呼ばれる家父長的な制度が存在し、女性の立場がとても弱い時代が続きました。そのため、日本国憲法では夫婦が同じ権利を持つと定め、お互いが対等な関係として協力し合わなければならないとし明言しました。また、憲法は「男らしさ」や「女らしさ」といった性差別的な考え方を否定し、家族のあり方についてもそれぞれ個人が自由な選択をできることを目指しています。

第二項では、結婚や家族に関わる法律を作るときには、個人を尊重し、また男女が平等に扱われるようにしなければならないと定めています。

第25条は、「生存権」について

第25条

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

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第二十五条は「生存権」とも呼ばれる、国民の誰もがが人間らしい生活を営む権利について定めています。「健康で文化的な最低限度の生活」がどのようなものであるかははっきりと定められてはいないものの、全ての国民が教育を受け、身体的だけでなく精神的にも豊かであることができるように国は努力する必要があることが示されています。

つまり、国には生活保護や健康保険、年金のような、国民にとってセーフティーネットとなるような仕組みをしっかりと整備し、国民の生活を守る責任があります。

第26条は、教育を「受ける権利」と「受けさせる義務」について

第26条

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

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第二十六条では「教育を受ける権利」について定められています。すなわち、国民は誰でも、その能力に応じた教育を受けられることが保障されています。

読み書きや計算をはじめ、特に義務教育の間に学ぶ内容というのは、個人が成長したり、人格を形成したりするためにもとても重要です。また、この社会がどのように成り立っているのかを知らなければ、将来、政治に参加するようになったときにも正しい判断ができないでしょう。それでは、日本という国も危ういものになってしまいます。ですから、国民の「三大義務」の一つとして、全ての親は、子どもに教育を受けさせる義務があります。

そして、家庭の貧困が原因で学校に行けないということが無いように、小学校・中学校からなる義務教育の間は、授業料を無料とすることが憲法で約束されています。

国民の3大義務とは?

「国民の3大義務」とは、憲法26条2項の「教育の義務」、27条1項の「勤労の義務」、そして30条の「納税の義務」のことを指します。教育の義務は子供を持つ保護者に対する義務であり、子供に対する義務ではありません。親は子に教育を受けさせる義務があり、子は教育を受ける権利を持ちます。

また、勤労の義務があるとはいえ、国民に強制労働をさせることは許されませんし、働いていなくとも罰則規定はありません。不労所得を得ることも認められます。

第27条は、国民には働く「権利」と「義務」がある?

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2項 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3項 児童は、これを酷使してはならない。
第二十七条は、国民の働く権利と義務について定めています。国は労働者の権利を守るため、労働基準法や雇用保険法、男女雇用機会均等法などの法律を制定し、労働者が低賃金などの劣悪な労働条件で働かされたり、性差別的な扱いを受けることが無いようにしています。


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この条文では、国民には「勤労の義務」があるとも明記されています。これは、働く能力や機会があるのに働かない人は生活保護費を要求できない、というように解釈されています。すなわち、義務を果たさなければ権利はない、ということです。

第三項に示されているように、18歳未満の子どもが働くことも認められていますが、酷使してはいけないとあります。これは、子どもが安価な労働力として使われていた過去が実際にあるために定められました。夜8時以降になるとテレビの生放送に子どもの出演ができないのは、この条文があるためです。

第28条は、労働者が持つ3つの権利とは?

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

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第二十八条では、労働者が団結して自分たちの生活を守ることを、国が権利として保障することを定めています。

使用者(雇い主)との関係において、労働者は弱い立場に置かれることが多く、不利な労働条件を強いられることもあります。ですから、労働者が団結し、社長と談判する権利を国が保障することによって、使用者と労働者の立場を対等にすることを目指しました。

労働者に認められている権利は「団結権」「団体交渉権」そして「団体行動権」です。これら3つの権利は合わせて「労働基本権」と呼ばれています。たとえ会社などに不利益を生じさせたとしても、この権利にのっとって行われた行為に関して刑事罰や民事責任を問われることはありません。ただし、公務員の団体行動権は制限されています。これは、公務員によるストライキなどによって、国民に対するサービスがおろそかになってしまうことを避けるためです。

第29条は、個人の財産は憲法で守られる?

第29条 財産権は、これを侵してはならない。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

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第二十九条は、「財産権」について定めています。すなわち、国民は自分の財産を持つことが認められているということを示しています。自分が持つ財産のことを「私有財産」といい、この中には著作権なども含まれます。

基本的には、国が個人の財産の使い道を制限したり、奪ったりすることはできませんが、公共の福祉、つまり社会全体のことを考えた場合に個人の財産を奪わざるを得ないこともあります。

例えばダムの建設や、道路を広くする工事をするときに、土地の所有者に対して「立ち退き」をお願いすることができますが、国はその分の補償を所有者に対して行う必要があります。

第30条は、納税の義務について

第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

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第三十条は、「納税の義務」について定めています。国民は法律によって定められた税金を払う義務があり、「国民の三大義務」の一つとされます。

国を運営するためのお金は全て税金が元手になっています。税金を納めない人が大勢いると、
公共事業の運営や、現在の社会福祉制度を維持できなくなってしまいます。そして、そのことで困るのも私たち国民自身です。したがって、国民の権利を守るためにも税金はきちんと納めなければなりません。

第31条は、「罪刑法定主義」について

第31条

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

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第三十一条は、法律というルールに沿わなければ身体の自由を奪われたり、刑罰を与えられたりすることはないことを定めています。

悪事を働いた人を逮捕するためには法律で定められた手続きを踏まなければいけませんし、「どんな犯罪に対してどんな罰を与えるか」もあらかじめ決められています(罪刑法定主義)。そうでなければ裁判人の気分次第で罰が重くなるなどの不公平が起こってしまうかも知れません。

つまり、憲法は重すぎる刑罰や不正な拘束といった人権侵害から国民を守っているといえます。

第32条は、「裁判請求権」について

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

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第三十二条は「裁判請求権」について定めたものです。全ての人は裁判を受ける権利があり、これは基本的人権の一つとされています。裁判は犯罪を犯したときに受けるもの、というイメージが強いですが、それ以外にも例えば国や企業の行為によって自分の権利が侵されているので助けてほしい、というときにも裁判所に訴えることができます。

どんな訴えも拒否されることなく、裁判を受けられることを憲法は保障しています。

第33条は、犯人逮捕には令状が絶対必要

第33条

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

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第三十三条は、逮捕に関する取り決めです。裁判官が発行した逮捕状(令状)がなければ、どんなに怪しい人であったとしても逮捕することはできません(令状主義)。逮捕状にはその人がどんな罪を犯したのかをはっきりと明記する必要があります。もしこの取り決めがなければ、悪いことをしていないのにも関わらず、警察から犯人だと決めつけられて逮捕されてしまう人がいるかも知れません。無罪の人を拘束してしまうことは人権侵害であり、あってはならないことです。

ただし、現行犯については明らかに罪を犯したことが確認できていることから、令状なしで逮捕することができます。

第34条は、逮捕された人の持つ権利とは?

第34条

第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

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第三十四条は逮捕された容疑者(被疑者)に対して保障されている権利を示しています。逮捕によって身体的拘束を受けることになった場合には、その容疑者には「逮捕の理由を知る権利」と「弁護士を依頼する権利」があります。

「拘留」とは逮捕などの一時的な拘束のことをいい、拘禁とは拘留後のさらに長期にわたる身体的拘束をいいます。どちらの場合においても拘束の正当な理由が示されなくてはなりません。そして、被疑者が自分の立場を守るためには弁護人の協力が不可欠であり、弁護士のアドバイスや援助を受ける権利が保障されています。

また、被疑者は捜査機関に対して拘禁の理由を公開法廷で明らかにするよう要求することもできます。これらの決まりは被疑者の人権を守り、自白の強要などによる誤審を防いでいます。

第35条は、家宅捜2項

第35条 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十五条では家宅捜索や証拠品の押収の際のルールを定めています。住居というのはとてもプライベートな空間であり、正当な理由なく、国家権力によってプライバシーが侵されることがあってはなりません。そのため、捜査機関は裁判官が発行する令状なしに個人の住居に勝手に入ったり、家にあるものを持ち出すなどすることはできないと定められています。

また、令状には捜索する場所、証拠品として押収する物が明記されていなければなりません。

第36条は、拷問の禁止について

第36条 公務員による拷問及び残索のルールについて

第36条 公務員による拷問及び残索のルールについて
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

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第三十六条は、拷問や残虐な刑罰を「絶対に」禁止すると明言した条文です。旧憲法時代にはこのような条文がありませんでした。そのため自白を強要するための手段として、容疑者に対するひどい拷問が行われるなど、人権侵害が日常的に起こってしまいました。

この反省から、日本国憲法では「絶対」という強い表現を使って肉体的・精神的な苦痛を与えるような行為を禁止しています。そのため、例え拷問による自白を得たとしても無効であり、証拠として扱うことはできません。

第37条は刑事事件の被告人が持つ権利とは?

第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2項 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3項 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

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第三十七条では刑事事件における被告人の権利について定めています。被告人には公平な公開裁判をできるだけ早く受ける権利があります。そして、検察側が用意した証人に対して質問をする権利(反対尋問権)と、自分にとって有利な証人を国のお金で呼び出す権利があります。また、被告人に呼び出された証人は必ず法廷に出廷しなければなりません。

第三項で述べられているように、被告人はどんな場合においても弁護士を依頼する権利があり、例え弁護士を雇うお金がなかったとしても、国が用意してくれることになっています。このとき被告人に付けられる弁護士は「国選弁護人」と呼ばれます。

第38条は、「自白」の取り扱いについて

第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2項 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3項 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

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第三十八条では、「供述拒否権」「黙秘権」について定められています。供述とは、事実を述べることで、自白とは自分の罪を認めることです。

取り調べをする際には、被疑者は自分に不利になるようなことをいう必要はありませんし、検察側も被疑者に無理やり自白や供述をさせてはいけません。これは、拷問や脅し、長期にわたる身体的拘束から逃れたい気持ちから、被疑者が嘘の自白、つまり本当はやっていないのに罪を認めてしまうおそれがあるためです。

第三項では、自白した内容だけしか有罪を決定するための証拠がない場合には証拠不十分となり、有罪判決が下されることがないとしています。

第39条は、法律が後から変わったら罪を問われるか?

第39条

第39条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

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第三十九条は、実行する時点で無罪とされている行為については、後から法律が変わったとしても無罪である、ということを示しています。このことを「遡及処罰の禁止」といいます。

そして、ひとつの犯罪に対して一度処罰されたら同じ犯罪についてもう一度処罰されることはありません。

第40条は、無罪判決に対する国からの補償について

第40条

第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

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第四十条では、被告人は、無罪判決が出た場合には国から補償金を受け取ることができる、と定めています。これは無罪であったのにも関わらず、不当に身体的拘束を受けたことに対する償いという意味で国から支払われるものです。また、例え捜査機関に捜査上のミスなどがなかったとしても請求できます。

補償額については「刑事補償法」という別の法律で示されていて、拘束された日数に応じて裁判所が決定することになっています。

ただし、補償を受けるためにはあくまでも「無罪の判決」を受けることが必要とされ、逮捕・補導されて身体的拘束を受け、その後釈放された場合などには補償を受けられません。

本記事は、2017年12月24日時点調査または公開された情報です。
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