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【死ぬときゃ一緒だ!】受刑者の心に響いたある刑務官の言葉

受刑者への刑務官への信頼はとても厚いのだということが、最近の受刑者へのアンケート調査で明らかになったようです。今回のコラムは、その信頼性の高さを裏付ける、誠意ある刑務官の言動が受刑者たちの心を動かしたエピソードを紹介します。

2017年11月22日更新

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目次
信頼性の高いアンケート調査
納得のいくアンケートの結果
巨大地震の時に工場担当刑務官がとった行動とは?
受刑者たちの心に響いた言葉
【死ぬときゃ一緒だ!】受刑者の心に響いたある刑務官の言葉

信頼性の高いアンケート調査

最近、受刑者に対して行ったアンケート結果が公表されました。刑務所をどれくらい信用しているのかとか、工場担当職員をどれくらい信用しているのか、といった内容です。このような内容のアンケートはかつて行ったことがないと思うので、とても新鮮でした。名古屋刑務所の教育担当職員による「実践レポート」という形だからできたのでしょうが、とにかく貴重なものだと思います。

ちなみにこのアンケートは、(公財)矯正協会発行の「刑政」(2017年9月号)に掲載されていました。この「刑政」は明治時代から続く職員用の啓蒙雑誌ですが、一般国民も購入でき、国立国会図書館にも保存されているものなので、公開性があり、信頼度も高いものです。

納得のいくアンケートの結果

その記事によりますと、刑務所を「信頼している」と答えた受刑者は51パーセントで、「信頼していない」は16パーセント(残りは「どちらともいえない」)。一方、自分の工場担当職員を「信頼している」と答えた受刑者は77パーセントで、「信頼していない」は4パーセントという結果でした。

このアンケートを見て、工場担当職員に対する彼らの信頼度の高さを改めて知った思いがしました。約8割もの受刑者が自分の担当職員を信頼している。自分たちに指示・命令を出し、叱り、時には規律違反で摘発する職員に対するこの高い信頼度は、一般社会の人たちからすれば信じ難いことでしょう。

しかしながら、私の勤務経験に照らしてみてもこの結果は得心のいくものであり、これが実態・真実を表しているように思います。また、これが日本の刑務所の特徴であるような気もします。だから日本の刑務所では職員が銃を携行しなくてもやっていけるし、暴動も起きない。そういうふうに思います。

映画やドラマ、小説などと現実は異なる

この点、映画やドラマ、小説などは違います。多くの場合、刑務官は鬼のような存在として描かれます。でもやはり、それは事実とは違います。このアンケート調査は、その誤解を数値で明らかにしたという点でも画期的だと思うのです。

しかも、名古屋刑務所はB級刑務所と呼ばれる累犯者を集めた刑務所です。それもかなり「質の悪い」と言われる人が多く入っている刑務所です。その中での調査結果がこれだという点も注目すべきだと思います。おそらくA級刑務所(初犯刑務所)で同じような調査をすれば工場担当職員に対する信頼度はもっと高いものとなるでしょう。

巨大地震の時に工場担当刑務官がとった行動とは?

工場担当職員とは、受刑者が働く工場(作業場)を取り仕切る刑務官のことですが、このアンケート結果を見て、ある工場担当職員と受刑者の関係を示すエピソードを思い出しました。刑務所が巨大地震に見舞われた時のことです。

その地震は夕方に発生しました。受刑者が仕事を終え、自分たちの部屋に戻った直後です。その揺れはおそらくすべての受刑者が初めて経験するような大きなものであり、部屋のガラスは割れ、壁にはヒビが入りました。2階のある部屋では床に大きな亀裂が走り、1階の部屋が見えるまでになりました。

うろたえる受刑者たちで騒然となる所内

当然受刑者はうろたえ、居室棟全体が騒然となりました。

「出せえ! ここから出せえ!!」
「見殺しにする気かあ! 早く出せえー!!」

怒号が飛び交い、部屋の扉を蹴る者もいます。このままだと不測の事態に発展しかねない状況です。

窮地を救った工場担当職員の言動

その時、帰宅準備をしていたある担当職員が詰め所から駆けつけ、受刑者たちに大声で叫んだのです。

「落ち着けえ! 静かにしろ!」
「いざという時はすぐ部屋から出す! 安心しろ!」
「死ぬときは俺も一緒だあ! 落ち着けえ!」

居室の部屋を開けるカギを受刑者たちに見せながら、その工場担当職員は廊下を何度も往復しつつ受刑者にそう繰り返しました。100人もの受刑者たちはやがて少しずつ声を荒げることをやめ、担当職員の指示に従って、部屋で静かに待機するようになったのです。

受刑者たちの心に響いた言葉

この巨大地震にまつわるエピソードは、その刑務所が地震後に行った受刑者たちからの聞き取り調査で明らかとなり、全国の刑務官に知られるようになったものです。

「死ぬときゃ一緒だあ!」

このひと言が特に受刑者の心に響いたということです。

「一緒に死ぬ」。なかなか重い言葉ですし、本気で思っていなければ口にでない言葉ではないでしょうか。だからこそ、その言葉に受刑者たちは担当職員の本心を感じ取り、落ち着きを取り戻していったのではないでしょうか。

このような劇的なものまでではないにしても、名古屋刑務所では似たようなエピソードの積み重ねがあったのではないかと思います。だからこそ冒頭のようなアンケート結果になったのだろうと思っています。
(小柴龍太郎)

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