【彩の国の救助隊】埼玉県内消防局の救助隊と埼玉SMARTについて

東京と千葉県に隣接、かつ新幹線も停車する埼玉県はベッドタウンとしても、北関東への玄関口としても発展してきた首都圏の主要都市のひとつです。今日は、「さいたまブレイブハート」を始めとした埼玉県で活躍する各消防組織に所属している救助隊と、埼玉県が誇る特別機動救助隊「埼玉SMART」について解説しています。
目次

埼玉県にある高度救助隊と特別高度救助隊

埼玉県内には特別高度救助隊1隊、高度救助隊3隊

消防組織の中は、オレンジの活動服を身に付け、主に救助活動を担っている救助隊が配置されています。救助隊はその自治体の規模に応じて(一般)救助隊・特別救助隊・高度救助隊・特別高度救助隊とランク付けがされ、配備されています。埼玉県内にも、各消防署に救助隊、特別救助隊が配備されている他、高度救助隊が3隊、特別高度救助隊が1隊配備されています。

▼埼玉県内に配備されている高度救助隊
川越地区消防局・埼玉西部消防組合消防局・朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部に高度救助隊が各1隊ずつの計3隊が配備されています

▼埼玉県内に配備されている特別高度救助隊
さいたま市消防局に特別高度救助隊(通称さいたまブレイブハート)が1隊配備されています。

川越地区消防局の川越中央消防署高度救助隊

川越市と比企郡川島町で組織している消防本部の高度救助隊

埼玉県川越市と比企郡川島町が組織している消防本部が、川越地区消防局です。川越地区消防局の川越中央消防署に配備されていた特別救助隊は2005年に高度救助隊に昇格され、現在1隊(1隊7名編成)×2部制の計14名の隊員が配備、内潜水士の資格取得者が11名、国際消防救助隊に2名が登録しています。

川越地区消防局の川越中央消防署高度救助隊の実績

川越地区消防局の川越中央消防署高度救助隊では、高度救助隊への昇格に伴って、電磁波探査装置、二酸化炭素探査機などの高度資機材が配備されたこと、また既存の資機材も新しいものに更新されたので、日々新しい資機材を適切に取り扱う為の訓練を実施しています。

近隣住民への騒音を配慮し、地上部分ではなく消防庁舎の屋上にCSR訓練施設を作成し、ブリーチングやクリビングなどのJDR技法の訓練を実施しています。また、埼玉県警察本部機動隊と月に1回救助合同訓練を実施しています。

国際緊急援助隊としてスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害に11日間、緊急消防援助隊として新潟・福島豪雨災害に2日間、新潟県中越地震に3日間、東日本大震災では岩手県へ21日間、福島県に18日間の出場実績があります。

川越地区消防局の川越中央消防署高度救助隊が持つ車両と装備

▼消防車両
救助工作車Ⅲ型1台

▼高度救助用資機材
高度救助用資機材として、瓦礫の下などにいる要救助者を発見できる画像探査機Ⅰ型・Ⅱ型、地中音響探査機、熱画像直視装置Ⅰ型、夜間用暗視装置(ナイトビジョンゴーグル)、地震警報器、電磁波探査装置、二酸化炭素探査装置、NBC災害や有機化学物質の災害にも対応できる放射線防護服、陽圧式化学防護服、化学防護服、他各種測定器の可燃性ガス等測定器、放射線測定器、携帯型生物剤検知装置、携帯型化学剤検知器、救助活動だけでなく訓練にも使用される救助用支柱器具が配備されています。

埼玉西部消防組合消防局の高度救助隊

広域化に伴って統合された消防組合の高度救助隊

埼玉県の西部にある所沢市と入間市、狭山市と飯能市、そして日高市の5つの都市は、元々それぞれの自治体で消防本部を持っていました。

もしも、大きな災害や事故が起きた場合で当該地区の消防本部では対応ができない場合、近隣地域の消防本部から応援の形で被災地や事故現場へ救助活動や救急活動の為に向かいます。この自治体や都道府県の垣根を越えて行う消防活動の事を広域活動と呼びますが、今後大きな災害や事故が起こった時に、より確実な広域活動が行える様に、所沢市消防本部、埼玉西部広域消防本部、入間市消防本部、狭山市消防本部が統合し埼玉西部消防組合消防局として新しく生まれ変わりました。なお、元々あった各自治体の消防本部は、広域化に伴って解散・消滅しています。

埼玉西部消防組合消防局には、2013年4月より高度救助隊を1隊配置しています。所沢中央消防署に所属し、1隊5名の3部制、計15名の隊員組織されており、内8名が潜水士の資格を取得しています。

埼玉西部消防組合消防局の高度救助隊の実績

高度救助隊発足と同時に高度救助資機材が整備され、より高い救助技術を習得する為にブリーチングなどの訓練も行われています。他にも、最新鋭の高度救助資機材を所有しているので、管轄区域での火災対応や一般救助活動の技術も飛躍的に向上しています。

発足からまだ数年しか経っていない為、国際緊急援助隊での出動実績はなく、緊急消防援助隊としては2015年9月の茨城豪雨災害に初めて出場実績がありますので、今後の活躍が期待される高度救助隊でもあります。

埼玉西部消防組合消防局の高度救助隊が持つ車両と装備

▼消防車両
救助工作車Ⅲ型

▼高度救助用資機材
高度救助用資機材として、画像探索機、熱画像直視装置、地中音響探査機、地震警報器、夜間用暗視装置、電磁波探査装置などの要救助者の探知や発見ができる資機材の他、重火器であるダブルブレードエンジンカッター、ダイヤモンドチェーンソー、コアドリル、パワーショア―、鉄筋カッター、鉄筋探査機などの救助用資機材も充実している特徴があります。

朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部の高度救助隊

4市が合同で設立している消防本部の高度救助隊

朝霞地区一部事務組合とは、埼玉県朝霞市、志木市、和光市及び新座市の4市が設立している一部事務組合で、内消防事務も処理する為に、埼玉県南西部消防本部を設置しています。

朝霞地区一部事務組合朝霞消防署に高度救助隊が1隊配置されており、1隊5名の3部制、計15名の隊員で構成されています。朝霞地区一部事務組合朝霞消防署には、高度救助隊の他にも救助隊が配置されており、国際消防救助隊には朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部内では6名、内高度救助隊員3名が登録しています。

朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部の高度救助隊の実績

朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部の高度救助隊では、国際消防救助隊に登録している隊員により高い技術を習得させるために高度救助資機材やNFPA基準に準拠したロープレスキュー技術等都市型捜索救助活動を積極的に行っており、隊員自身の持つ消防救助技術の向上だけでなく、同消防本部内の他救助隊員への救助技術を指導する役割も担っています。

また、同消防本部で複数の救助隊が出場しなければいけない状況下では、必ず出場救助部隊の内一隊を高度救助隊に指定しています。

朝霞地区一部事務組合埼玉県南西部消防本部の高度救助隊の持つ車両や装備

▼消防車両
救助工作車Ⅱ型

▼高度救助用資機材
高度救助用資機材として地震警報器、画像探索機、夜間用暗視装置、地中音響探査機、熱画像直視装置が配備されています。

さいたま市消防局特別高度救助隊 さいたまブレイブハートとは

平成19年4月に誕生した特別高度救助隊

消防組織において救助隊は、国が定める「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」によってどのような規模や装備を配置するかが決められています。

埼玉県の県庁所在地であるさいたま市は政令指定都市ですので省令に従い、高度救助資機材に加えて救助工作車1台と特殊災害対応車1台以上、人命の救助に関する専門的かつ高度な教育を受けた隊員5名以上で編成する「特別高度救助隊」を配置しています。

さいたま市消防局の特別高度救助隊は、平成19年4月に大規模な災害や事故などに対してより高い救助技術と体制を充実させるために誕生しました。愛称は「さいたまブレイブハート」、これは「市民の為に勇敢な心を持って活動する」という意味が込められており、一般公募によって決定されました。「さいたまブレイブハート」の名称は、隊員章や運用している車両にも入れられています。

本項でも、以下「さいたまブレイブハート」と記述します。

さいたまブレイブハートの編成について

現在活躍しているさいたまブレイブハートは、元々大宮消防署と浦和消防署に配置されていた特別救助隊を昇格させた形で誕生しましたので、現在も両消防署に1隊10名ずつの2部制で配置され、合計40名の隊員で編成されています。

大宮消防署と浦和消防署の両方に配置されているのは、鉄道駅や高速道路などを多く抱えているさいたま市ならではの地理的理由からです。さいたま市は、特に列車の脱線事故や道路での多重衝突事故などの発生時、被害を軽減する事を救助活動の中でも特に重点を置いていますが、大宮消防署と浦和消防署はさいたま市内でも特に新幹線を含めたターミナル駅、各高速道路を管轄内に持っているので、さいたま市でも中心でありながら一番事故や災害が起こる可能性が高い地域となっています。その為、大宮消防署と浦和消防署に1隊ずつさいたまブレイブハートを配置する事により、あらゆる事故や災害に迅速かつ適切に対応できる体制を築いているのです。

さいたまブレイブハートは、管轄内での通常の災害出場に加えて、特殊災害や集団災害が発生した時には優先的に編成部隊に組み込まれるようになっており、特に多数の要救助者が発生する活動も困難な災害現場では、消防部隊の中でも中心的な活動を行う精鋭部隊となっています。

また、他の自治体消防本部の特別高度救助隊と同じく、NBC災害が発生した時の対応も行います。他の自治体消防本部の場合、特別高度救助隊自体がNBC災害への対応を行いますが、さいたま市消防局は北消防署に特殊災害対応車を運用しているNBC災害対応の専用部隊である「特殊災害対応部隊」を配置しています。NBC災害発生時には、特殊災害対応部隊とさいたまブレイブハートが連携し、特殊災害対応部隊はNBC災害そのものへの対応を、さいたまブレイブハートは人命救助活動を主体に行い、被害軽減のためにそれぞれの活動ができる体制を整えています。

さいたまブレイブハートの実績について

さいたまブレイブハートの計40名の隊員の内、潜水士資格所有者は9名、国際消防救助隊の登録隊員数は10名となっています。

今まで緊急消防援助隊として岩手・宮城内陸地震、東日本大震災へ出動、国際緊急援助隊としてインドネシア西スマトラ州パダン沖地震災害に述べ約6日間出動した実績があります。

より高度な救助技術を取得する為に、高度救助用資機材を使用した訓練や都市型探索救助(USAR)訓練も行われています。

さいたまブレイブハートの持つ車両と装備について

▼消防車両
2台一組で活動する救助工作車Ⅳ型を大宮消防署に、従来型の救助工作車Ⅲ型を浦和消防署にと分散して配備する事で、あらゆる災害や事故に対応できるようになっています。

救助工作車Ⅳ型は、日本全国の消防本部の中でも6か所にしか配備されていない最新車両です。救助工作車Ⅳ型の特徴は、2台一組の為航空機で積載し、空輸が可能である事です。1号車には救助工作車に通常積載される基本的なアイテムを、2号車には高度救助用資機材を集めて積載しており、1号車には三連はしご、2号車には照明装置も搭載されています。

他に5トン級のドラグショベルと共に配備されている重機搬送車が大宮消防署に、大型ブロワーとウォーターカッターを備えた特別高度救助工作車が浦和消防署に配備されています。

▼高度救助用資機材
画像探査機2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、電磁波探査装置、二酸化炭素探査装置、水中探査装置

彩の国の部隊が集結 埼玉県特別機動援助隊埼玉SMARTとは

3部隊で編成される救助部隊

埼玉県では、埼玉県内で発生した大規模災害に対応できるように、消防組織の救助隊、防災航空隊、埼玉DMATの3部隊によって編成される「埼玉特別機動援助隊」という部隊が存在しています。通称は“Special Mobile Assistance Rescue Team”の頭文字を取って、「埼玉SMART」と呼ばれており、県内において大規模災害が発生した時には埼玉県知事の要請・指示の元で編成され、救助や救急活動を行います。

本項では、以下「埼玉SMART」と記述します。

埼玉SMARTの誕生について

埼玉SMARTの前身となる部隊が「彩の国レスキュー隊」です。彩の国レスキュー隊は、阪神・淡路大震災での教訓を生かして平成8年5月、埼玉県内での大規模な地震災害発生時に、消防と医療機関が連携した救助活動を円滑・迅速に行う事を目的として県下14消防本部と医療チーム、埼玉県防災航空隊の3部隊当時の総隊員数211名にて創設されました。

その後、新潟県中越地震における東京消防庁のハイパーレスキューの活躍が話題となり、より高い救助技術を得るために、またJR福知山線脱線事故の発生を受けて、自然災害だけでなくターミナル駅である大宮駅や各種高速道路も有している埼玉県内でも発生する可能性の高い列車事故などあらゆる災害に対応できる体制を整えるために、高度な救助訓練を受け専門的知識と高度資機材を持つ隊員で構成され、大規模災害発生時に県知事の要請と指示の下で編成される「埼玉県特別機動援助隊」(埼玉SMART)が、平成18年7月に彩の国レスキュー隊を改編する形で創設されました。

現在の埼玉SMART

現在の埼玉SMARTはさいたま市消防局の特別高度救助隊さいたまブレイブハート、
埼玉東部消防組合・川口市消防局・川越地区消防局・埼玉西部消防局・越谷市消防本部・埼玉県南西部消防本部・埼玉県央広域消防本部の高度救助隊、春日部市消防本部・熊谷市消防本部の特別救助隊からなる県内10消防本部からの機動救助隊11隊、埼玉DMATから17チーム、防災航空隊3機から構成されており、大規模災害時には「埼玉SMART」と書かれた黒いベストを着用の上で活動します。

年1回、埼玉SMARTの隊員チーム、訓練を行う市町村近隣の消防本部も参加する大規模な埼玉県特別機動援助隊合同訓練も行い、日ごろから大規模災害に対する高い救助・救急技術の習熟に努めています。

埼玉県内の救助隊員及び埼玉SMART隊員になるには?

救助隊員は自治体の消防職員採用試験合格後、救助隊員へ

救助隊員は各自治体に所属する消防職員ですので、まず自治体の地方公務員試験である消防職員採用試験を受験し、合格します。その後所轄の消防学校で初任教育を受けた後、最初は消火隊として各自治体の消防署に配属され、最低1年間消防職員としての経験を積んだ後、希望が通れば救助隊として配属になります。

救助隊はその自治体の規模によって編成される救助隊が異なりますので、どの自治体の消防職員になりたいかによってその後の救助隊として活躍する場が決まります。例えば、「最終的にはさいたまブレイブハートを目指したい!」場合には、さいたま市消防局の消防職員採用試験に合格し、さいたま市消防局の職員になる必要があります。

救助隊員として経験を積んだ後、高度救助隊やさいたまブレイブハートへ

高度救助隊員や特別高度救助隊員であるさいたまブレイブハートは、各自治体の救助隊の中でも特に高い技術や専門の知識を持つ精鋭で構成されます。とても狭き門のため、救助隊員として経験を各消防署で積んだ後に上司の推薦を受けられれば、やっと高度救助隊や特別高度救助隊入りの道が開きますが、専門の厳しい救助訓練や研修などの教育を受けて通過した隊員のみが配属になります。

埼玉SMART隊員は航空隊員や、医療従事者になりDMAT登録の道もある

埼玉SMART隊員は、埼玉県内10消防署の特別高度救助隊、高度救助隊、特別救助隊11隊で編成されていますので、これらの救助隊に所属になれば埼玉SMART隊員として大規模災害時には編成される事になります。

他にも埼玉SMARTとして活躍する道はあり、埼玉県の防災航空隊に入隊する、医療従事者になり埼玉DMATに登録するなど、消防の救助隊員以外の職種でも活躍できますので、自分の特技やなりたい職種を生かして埼玉SMART入りを果たす人も少なくありません。

まとめ

交通網の多様さから、大規模な災害や事故の時には甚大な被害になりかねない埼玉県。さいたまブレイブハートや各消防署の救助隊、埼玉SMARTは埼玉県内の自衛のために、そして日本全国の大規模災害時には広域活動も行える部隊として誕生しました。災害大国の中でも頼りになる部隊として、今後の更なる活躍が期待されます。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年12月31日時点調査または公開された情報です。
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