【最北端の救助隊】北海道で活躍する高度救助隊・特別高度救助隊について

日本最大の面積を持ち、最北端に位置する北海道は日本の畜産業や漁業、そして観光業でも発展してきた都市です。冬には極寒の気候にも見舞われる北海道で活躍している各市町村の高度救助隊、そして県庁所在地の札幌に配置されている特別高度救助隊通称「スーパーレスキューサッポロ」について解説します。


目次

北海道に配置されている高度救助隊・特別高度救助隊

3つの自治体に高度救助隊を配置

総務省消防庁が制定している「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」に則り、日本全国の市町村自治体にある消防本部では省令の基準に応じた規模の救助隊を配置しています。

北海道では、一般救助隊と特別救助隊の他に、中核市及び消防庁長官が指定する消防本部に配置される「高度救助隊」を札幌市消防局に2隊、函館市消防本部に1隊、旭川市消防本部に1隊の計三自治体に配置しています。

札幌市消防局には特別高度救助隊 通称スーパーレスキューサッポロ(SRS)を配置

また、省令では東京消防庁及び政令指定都市に配置する高度救助隊の内1隊を、特別高度救助隊にすると定められています。これに則り、政令指定都市である札幌市は、前述の高度救助隊2隊に加えて、特別高度救助隊である「スーパーレスキューサッポロ(Super Rescue Sapporoの略としてSRSと呼ばれる事もある)」を配置しています。

札幌市消防局の高度救助隊について

北消防署、豊平消防署に1体ずつ配置

札幌市消防局管轄内の北消防署、及び豊平消防署に1隊ずつ高度救助隊が配置されおり、1隊が6名の3部制×2隊、合計36名の隊員で構成されています。

札幌市は北海道の道庁所在地であり、人口も多く面積も広く、住宅街からオフィス街、そして北海道最大の歓楽街すすきのもあります。また、札幌周辺には地下鉄やJRなど陸路も集約されていますので、大規模な災害や事故が起きた時には甚大な規模になりやすく、また人が集まる地域のため火災や事故も起きやすい地域になっています。

札幌市消防局では、札幌市の持つこれらの背景を踏まえて、市の中心に流れている豊平川を境にし、特別高度救助隊を除いた市内9か所の消防署を2方面に分けて、北消防署の北高度救助隊、豊平消防署の豊平高度救助隊の各高度救助隊が方面ごとの調査や研究、救助活動などの訓練指導を行っています。

札幌市消防局の高度救助隊の実績

東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として北高度救助隊はのべ7日間、豊平高度救助隊はのべ12日間出動した実績があります。

札幌市消防局の高度救助隊の持つ車両と装備について

車両は「SAPPORO FIRE BREAU RESCUE SAPPORO」の側面シャッターデザインの救助工作車Ⅲ型を2台、各高度救助隊が1台ずつ運用しています。

装備は高度救助用資機材として画像探索機を2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、簡易画像探査機、救助支柱機材を所有しています。

函館市消防本部の高度救助隊について

海に面しているので、潜水士有資格者も多い

函館市消防本部の直轄で、消防本部警防課に配置されているのが函館市消防本部の高度救助隊です。1隊12名の二部制、合計24名の隊員から構成され、函館市は海にも面しているので水難救助にも対応できるように、内15名の隊員が国家資格である潜水士の資格を所有しています。

函館市消防本部の高度救助隊の実績

東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として39日間出動した実績があります。


函館市消防本部の高度救助隊の持つ車両と装備について

車両は、側面シャッター上部に「F.D. HAKODATE」シャッター部分に「RESCUE HAKODATE」のデザインを持つ救助工作車Ⅲ型、救助工作車Ⅱ型を1台ずつ運用しています。

また、函館市消防本部では水難救助用として水難救助車、火災対応として水槽付きポンプ車も高度救助隊が運用しています。

装備は高度救助用資機材として、画像探索機を2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、簡易画像探査機、救助用支柱を所有しています。

旭川市消防本部の高度救助隊について

幅広い訓練を取り入れている高度救助隊

旭川市消防本部の高度救助隊は、南消防署に配置されており1隊11名の二部制、合計22名の隊員から構成されています。

平成24年9月より瓦礫救助訓練施設の運用を開始し、瓦礫の下に侵入して要救助者を救出する活動であるCSR訓練を実施しています。狭い場所に潜り込み、限定された視界や状況下で行うCSRは高度な技術と強い精神力が必要なため、技術熟練のための訓練を日ごろ行わなければいけません。まだ日本全国でCSR訓練に必要な瓦礫救助訓練施設が不足している一方で、旭川市消防本部では全国でも早い段階で瓦礫救助訓練施設を導入し、CSR訓練を行っています。

また、旭川市消防本部の高度救助隊の管轄内には日本で三番目の長さを誇る一級河川の石狩川を含めて150以上の河川があり、河川での水難救助案件への対応のために平成20年よりラフトボートを使用したパドリング技術の向上を進めています。この河川での水難救助技術は、第46回全国消防救助技能大会の水上の部において技術披露も行われました。

旭川市消防本部の高度救助隊の実績

東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として平成23年3月16日から5月1日までの、47日間出動した実績があります。

旭川市消防本部の高度救助隊の持つ車両と装備について

車両は、側面シャッター上部に「Asahikawa Fire Department」シャッター部分に「ADVANCED RESCUE」及び旭川消防本部のwebサイトアドレスがデザインされた救助工作車Ⅲ型、はしご車、ショベル型の重機の破壊工作車を運用しています。

装備は高度救助用資機材として、画像探索機を2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、簡易画像探査機、救助用支柱器具を所有しています。

札幌市消防局特別高度救助隊 スーパーレスキューサッポロ

省令改正のタイミングと同じく、早期に誕生した特別高度救助隊

札幌市消防局では併設している中央消防署に、札幌市の特別高度救助隊である「スーパーレスキューサッポロ(SRS)」を配置しています。1隊6名の三部制、計18名の隊員から構成され、内10名が国際消防救助隊として登録しています。

平成16年の新潟県中越沖地震や平成17年のJR西日本福知山線列車脱線事故など、相次ぐ災害や事故を受けて、総務省消防庁は平成18年4月に全国的な消防救助体制の強化のために、今まで「救助隊」と「特別救助隊」の2隊体制だった消防の救助隊に加えて「高度救助隊」と「特別高度救助隊」を創設し、「救助隊の編成、装備及び配置の基準を決める省令」を改正・施行しました。

スーパーレスキューサッポロ(SRS)は、平成28年4月1日の省令改正・施行と同時に発隊した、全国でも早期に誕生した特別高度救助隊の内の一隊です。本項では、札幌市消防局の特別高度救助隊を以下より「スーパーレスキューサッポロ」と記載します。

赤いヘルメットは特殊部隊・精鋭部隊の証

スーパーレスキューサッポロは、大規模な地震災害や列車事故において、高度で専門的な知識と技術と特殊な装備を駆使して多数の負傷者の救出活動を行う特殊部隊、と札幌市消防局では位置付けています。

札幌市内を二方面化し、各方面を管轄とする同消防局の高度救助隊に対して、スーパーレスキューサッポロは札幌市内全域を管轄エリアとしています。市内で発生した事故や災害はもちろん、繁華街であるすすきのでの対応案件も多く発生した雑居ビル火災の消火や検索活動、冬場には道路の積雪によって動けなくなった乗用車やタクシーの救出活動なども行っています。

また要請に応じて市内だけでなく、北海道内や日本全国へも出動し、北海道内の全救助隊の中でも精鋭で構成され、最前線で救助活動を行います。高い専門的な知識と技術力、そして最前線に立つ特殊部隊という位置づけのため、北海道内の他の救助隊と区別するために、スーパーレスキューサッポロの救助帽(ヘルメット)のみ、赤色が採用されています。


スーパーレスキューサッポロの実績

スーパーレスキューサッポロは、緊急消防援助隊として東日本大震災にのべ13日間、国際緊急援助隊としてもインドネシア西スマトラ州パダン沖地震災害に3名の隊員がのべ8日間出動しています。なお、現在国際消防援助隊として10名の隊員が登録しています。

2012年6月に札幌で開催された「IFCAA2012 国際消防救助隊合同訓練」では、大規模災害を想定した状況下にて、要救助者の捜索訓練の実施と披露を行いました。

スーパーレスキューサッポロの運用する車両

スーパーレスキューサッポロは、側面上部に「SAPPORO FIRE BUREAU」、シャッター部分に「SUPER RESCUE SAPPORO」のデザインが施された救助工作車Ⅲ型、大きな扇風機のようなファンのついた大型ブロワー車、水と特殊薬液を混ぜて、引火による爆発の危険性のある所でも火花が散らずに使用できるウォーターカッターを搭載したウォーターカッター車、NBC関連災害にも対応できる、総務省消防庁から貸与を受けた大型除染システム搭載車、特殊災害対応自動車を運用しています。

スーパーレスキューサッポロの所持する装備

装備は高度救助用資機材として、画像探索機を2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、救助用支柱器具の他、特別高度救助隊だけが持つ資機材の電磁波探査装置と二酸化炭素探査装置、水中探査装置、特殊重機のダイヤモンドチェーンソーを所持しています。

北海道の高度救助隊、特別高度救助隊になるには?

高度救助隊や特別高度救助隊の配置されている自治体を受験する

高度救助隊、特別高度救助隊員になる場合には、北海道の場合まず高度救助隊、特別高度救助隊の配備されている札幌市、函館市、旭川市いずれかの消防官採用試験を受けて、合格し消防職員にならなければいけません。また、スーパーレスキューサッポロを目指したいのなら、札幌市の採用試験を受けます。

採用試験は大卒、短大卒、高卒程度に分かれており、各自治体によって応募期間や受験日が異なりますので、受験日が異なれば複数の自治体を受験することもできます。なお、札幌市の平成30年度採用試験の募集は、大学の部は平成29年5月9日に案内配布開始、11日から19日に郵送での応募受付開始、第一次試験が6月25日、第一次試験の合格発表が7月4日、第二次試験の面接試験と身体検査が7月上旬から8月上旬、体力測定が7月30日、最終合格発表が8月中旬でした。

短大の部・高校の部は平成29年7月4日に案内配布開始、6日から14日に郵送での応募受付開始、第一次試験が9月24日、第一次試験の合格発表が10月4日、第二次試験の面接試験と身体検査が10月上旬から10月下旬、体力測定が10月22日、最終合格発表が11月上旬でした。

案内は各市町村の役所などの窓口配布、消防本部に郵送で取り寄せる、インターネットで採用サイトからダウンロードする方法がありますが、これも各地自体によって書類の入手方法が異なりますので、チェックしておきましょう。札幌市の採用試験内容は、一次試験が筆記試験、二次試験が面接、身体検査、体力測定です。

大学の部の受験者数が218名、内最終合格者数が30名で倍率は7.3倍、短大の部の受験者数が13名、内最終合格者が10名で倍率は14.3倍、高校の部の受験者数が278名、内最終合格者数が17名で倍率は16.4倍でした。

合格後、経験を積んで希望が通れば高度救助隊やスーパーレスキューサッポロに
採用試験合格後は消防学校で初任教育を半年間受け、まずは消防職員としての基本を学ぶために最初は消火隊として各自治体の消防署に配属されます。そこで、最低1年間消火隊としての経験を積んで基礎を得た後、救助隊への希望を出して通れば救助隊として配属になります。

高度救助隊員や特別高度救助隊員であるスーパーレスキューサッポロは、各自治体の救助隊の中でも特に高く専門的な技術と知識を持つ精鋭部隊のため、高度救助隊やスーパーレスキューサッポロ入りを目指す消防職員は多くなっています。救助隊員として経験を積み、上司の推薦を得て、かつ専門的な救助研修にクリアして初めて、その道が開かれます。

道産子は、水泳に注意

北海道出身の場合、地域によっては小学校や中学校で水泳の授業が導入されていない場合があり、日本全国でも「泳げない人」の割合は北海道が高くなっています。もしも、北海道出身で将来は高度救助隊やスーパーレスキューサッポロとして、または消防職員として活躍したいと考えているなら、自分で水泳教室やジムに通うなどして、泳げるようになっておきましょう。

まとめ

広大で自然豊かな土地でもあり、かつ日本有数の繁華街であるすすきのや観光名所もある北海道では、雪を始めとした自然災害、事故も多発しやすくなっています。北海道民そして要請に応じて日本全国への救助活動のために、今日も北海道の救助隊員たちは活動を続けています。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年12月27日時点調査または公開された情報です。
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