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【刑務所長が受刑者を弔う】日本の刑務所と受刑者の関係を象徴する光景

【国家公務員「刑務官」のコラム】受刑者が刑務所で亡くなるということは、意外にもよくあることだそうです。亡くなった後には色々な段取りがあり、なかなかスムーズには進まないこともあるそう。なぜスムーズに進まないのか、そこには様々な理由があるようです。

2018年01月22日更新

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目次
意外と多い、刑務所で亡くなる受刑者
検視によって明らかにしなければならないこと
刑務官の潔白を示すための特有の段取り
検察庁との連携にも気を遣う
最も大変なのは「司法解剖」になった場合
検視の次の難関は、家族
遺体が引き取られなかった場合はどうするか
【刑務所長が受刑者を弔う】日本の刑務所と受刑者の関係を象徴する光景

意外と多い、刑務所で亡くなる受刑者

刑務所ではよく受刑者が死にます。病気で死んだり、自殺で死んだり、それから塀の中でも高齢化が急速に進んでいますので老衰で死ぬ人も多くなってきました。どういう理由か分かりませんが、死ぬのは夜から未明にかけてとか、それと土日や休日の日が多いような気がします。

ともあれ、受刑者が死ぬと刑務所は大変です。

「そりゃ大変でしょ。刑務所の中だけでなくシャバだって同じです。」

とおっしゃるかもしれません。それはそうです。一般社会でも人が亡くなると大変です。いろんなことを次から次へとしなければなりません。でも刑務所で受刑者が亡くなるともっと大変なのです。

検視によって明らかにしなければならないこと

その中でも一番大変なのは、その受刑者の死が犯罪によるものではないことを明らかにしなければならないことです。一般社会では普通そんなことはしません。

どういうことかというと、受刑者が亡くなるとまず刑務所長が検視をします。受刑者の死亡を確認し、変死でないかどうかを確認するのです。これを行政検死といいます。そして、死因に疑問がある場合は検察庁に連絡し、検察官による検視を受けます。こちらは司法検視といいます。検察官は犯罪による死亡でないかどうかを確認するのです。

刑務官の潔白を示すための特有の段取り

これが本来の検視の順番なのですが、運用においてはもうちょっと複雑です。というのは、行政検視をする前に検察庁に連絡し、司法検視をするかどうかの判断を仰ぐことが少なくないのです。その理由は、もし万一その受刑者の死亡が刑務官による暴行等の結果だとしたら、刑務所長による検視を先行させるとあらぬ疑いをかけられるおそれがあるからです。

検視のためには衣服を脱がせ、身体の隅々まで検査・確認をします。言ってみれば、検察官の検視が行われる際には既に死亡直後の状態ではなくなっているわけです。そのために刑務所が証拠隠滅などをしたのではないかと疑われる可能性があるということです。それは刑務所としてはおもしろくありません。だから、何も手を付けず、死亡した状態のままにしておき、検察官の検視を受けて自らの潔白を証明しようとするわけです。

検察庁との連携にも気を遣う

このようなことから、事前に検察庁に連絡した結果、検察官による検視が行われるということになった場合には刑務所長による行政検視は控えておき、司法検視が行われる際に同時並行的に行政検視も行うことがあるのです。

ちなみに、受刑者の死亡で一番多いのは病死なのですが、刑務所は危篤状態になったらその旨を検察庁に連絡しておきます。刑の執行指揮は検察官が行うことになっているので、いわばその指揮官に受刑者が死に瀕していることを報告するわけです。このような報告をしていた後で死亡した場合には、検察庁は病死と判断して司法検視を行わないケースが多いので、刑務所とすれば、この重病指定報告は司法検視という負担の大きい事態を避けるために大事なものになっているのです。

最も大変なのは「司法解剖」になった場合

司法検視をした結果、それでも死因がよく分からない場合には司法解剖にかけられます。法医学者などによって死体が解剖され、死因の詳細が調べられるのです。それは同時に犯罪による死亡でないかどうかが調べられるということでもあります。仮に司法解剖の結果、その死が犯罪によるものではないとの判定が出れば、刑務所とすればやれやれ良かったということになるのですが、それにしても刑務所には多くの手間暇がかかりますので、刑務所にとっては大変なのです。もし万一司法解剖の結果犯罪の疑いがあるとなったら滅茶苦茶大変なことになります。

「犯人は誰だ。受刑者か刑務官か。」

そのような視点で捜査が開始されるからです。塀の中の殺人事件ともなれば受刑者の家族との対応もありますし、マスコミ対応もあります。刑務所の関係者はそれこそ不眠不休の忙しさに襲われることになるのです。

検視の次の難関は、家族

一方、犯罪によるものではないと分かった受刑者の死亡の場合、後はすんなり進むかといえば、それでも何かと大変なのです。

例えば家族との関係です。受刑者が死亡すると直ちにその家族に連絡を取ります。スムーズに連絡が取れ、受刑者の遺体を引き取ってもらえればいいのですが、私が経験した限りほとんどスンナリとはいきません。まずは連絡がなかなか取れない。受刑者の届け出た家族の住所・氏名が違っていたり、家族が引っ越ししていたり亡くなったりしています。また、運よく家族が見つかっても大体の場合は遺体の引き取りを拒みます。親でも拒否するケースが少なくありません。起こした犯罪のために家族までが白い目で見られ、その冷たい目から逃れながら身を小さくして生きてきた人たちの自然な反応なのかもしれません。

遺体が引き取られなかった場合はどうするか

「遺体は引き取れないけど、お金があるならそれはもらいます。」という家族もいました。受刑者が刑務所に入ってきた時のお金(領置金)や刑務所で働いて得たお金(作業報奨金)だけを受け取るというのです。さもしいというか、悲しいことです。

遺体が引き取られないことになると、その受刑者は刑務所でお葬式をあげて刑務所が管理する墓地に埋葬します。いわゆる獄死者が葬られているお墓に葬られるのです。お葬式には教誨師(ボランティアの宗教家)の方にお経をあげてもらい、刑務所長以下の幹部や医師、看護師などの関係者が列席し、お線香をあげます。私も何度か経験しましたが、いろんなことを考えてしまうお葬式でした。

日本の刑務所と受刑者の関係を象徴する光景

ちなみに、お彼岸とかお盆には所長が刑務所の墓地に出向いて教誨師さんにお経をあげてもらい、線香をあげます。どこの刑務所でもやっているのですが、世間にはあまり知られていないのではないでしょうか。私はここに日本の刑務所と受刑者の関係が象徴的に表れているような気がしています。

(小柴龍太郎)

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