【アメリカで働くには】日本人がアメリカで働くためのビザ・制度を解説

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「日本人がアメリカで働くということ」で、ビザの壁、様々な種類のビザ、インターン制度などについてご紹介します。


日本人にとって「アメリカンドリーム」という言葉はどこか刺激的ではないでしょうか。アメリカに行って一旗揚げるという人は、いつの時代にも存在しており、それが実現できそうな気分にさせてくれるのがアメリカの魅力なのかもしれません。

今回は仕事を通じてアメリカで夢を叶えるためには、どのようなことを知り、どのようなことを乗り越えなければいけないのかを、これからアメリカで働きたいと計画している人や、アメリカで働くことに関心がある人に向けて、極めて現実的な視点でご紹介したいと思います。

そして、それらの仕組みから浮かび上がる、アメリカと日本の力関係にも目を向けてみてください。

日本人がアメリカで働くということ

まず始めに知るべき事実として「日本人はアメリカでは簡単に働けない」ということです。日本とアメリカの両国間には、労働に関する厳格な取り決めがあるため、アメリカで労働することは並大抵のことではないことを理解してください。

その代表的な障害となるのが「ビザ(査証)」です。一般的に日本人はアメリカに行くことは簡単です。パスポートと飛行機のチケットさえあれば明日にも行けるでしょう。しかし、これはあくまでも「観光」に限ったことです。

アメリカ国内で労働をして収入を得る「就労」となると話は別次元です。観光と就労の間には、目に見えない高い壁があると考えていいでしょう。日本人はアメリカに行って、ちょっとしたアルバイトすらも出来ないと考えて頂いても結構です。ちなみに、大都市圏では不法労働の需要はありますが完全な法律違反です。

就労を制限する背景にはアメリカ政府の本音が隠れています。アメリカは自国民の労働先を少しでも確保し、失業率を低く抑えておきたいと考えています。そんななか、勤勉で真面目な日本人が自由に働けるようになると、アメリカ人が働き口を失ってしまうのです。

正直なところ、労働に関してはアメリカ人よりも日本人の方が遥かに優秀なため、アメリカ政府はアメリカ国民を守るためにも、日本人を簡単には働かせるわけにはいかないジレンマのようなものがあるのです。加えて、トランプ大統領の「アメリカ第一主義」はこの事態を加速させています。

このようなアメリカ政府の思惑も手伝って、日本人がアメリカ国内で就労するのは極めて難しいのです。まずは、この事実と背景を押さえておくことが重要です。

ビザの壁

日本人がアメリカで就労するには「就労ビザ」を取得する必要があります。このビザの取得がとてもハードルが高いのです。ここでは、数ある就労ビザのなかでも一般的な「Hビザ」を紹介します。

まずは、就労ビザの取得最低条件を満たしていることが大前提となります。普通4年生大学を卒業しているか、短大卒業に加えて6年間の専門職経験、学位と職種の一致、はたまた犯罪歴がないことなど、この時点でも厳格です。


つまり大前提として、アメリカで就労するためには「何かしらのプロ」であることが求められるのです。簡単に言うと、アメリカ国内の他の人には出来ないようなはことを身につけているかが問われます。

ビザ取得条件をクリアした次に、やるべきことはおおきくわけて2つあります。ひとつは「働く会社探し」そしてふたつめが「ビザスポンサーの確保」です。

日本国内であれば会社探しさえ成立すればいいのですが、アメリカで就労するとなるとビザスポンサーとなる企業も必要です。働く会社がビザスポンサーになってくれることが理想的ですが、企業にとっては最低でも5,000ドル以上かかり、法的責任も伴うため、余程の人材でなければビザスポンサーにはならないのが実情です。

このビザスポンサーの確保こそが難しく大変と言えるでしょう。さらに、就労ビザ(H1-Bビザ)は年間65,000件という制限があるため、申請者同士での競争になります。加えて、定員数に達した時点で終了するため余計に簡単ではありません。

次では、もう少し現実的なビザ取得の事例を見てみましょう。

アメリカで働く日本人の多くは「Lビザ」

就労ビザが非常に厳格で高い壁であることを紹介しましたが、実際にはアメリカではたくさんの日本人が働いています。それは「Lビザ」と呼ばれるものです。

Lビザは一般的には「駐在員」に許可されるビザのことです。別名「駐在員ビザ」とも言われます。このビザの申請にあたってアメリカの会社がサポートしますが、その会社は日本の会社の子会社または関連会社となります。

ビザ申請者は日本の親会社に勤務していることが前提ですが、学位も問われず、年間のビザ発行数の制限もありません。ただし、滞在期間は5年または7年が最大です。Lビザは申請者の家族にも適応され(L2ビザ)配偶者も就労可能です。

例えば、トヨタやホンダの工場がある町では日本人やその家族が大勢生活しています。その人たちは、アメリカにあるトヨタやホンダの関連会社からビザのサポートを受けて期間限定でアメリカに派遣されているのです。

もちろん全員に該当するわけではありませんが、アメリカで就労している日本人のなかで最も多いパターンと言えるでしょう。取得が難しい就労ビザですが、日本国内に会社があり、さらにはアメリカにも拠点を置く企業に勤めていれば取得できるビザと言えるでしょう。

しかし、近年、正当な方法で申請しなおかつ必要不可欠な人材であってもビザが許可されないほど審査が厳しいため、日系企業も頭を悩める部分です。

日本人に人気の投資家ビザ

HビザもLビザも取得には高い壁があり苦労しますが、これらと比較して難易度が低いビザが「E-2ビザ」です。E-2ビザは別名で「投資家ビザ」とも呼ばれ、アメリカにビジネス投資をした人に支給されます。

平たく言えば「ビザをお金で買う」といった感じですが、これまた必ずしも投資すればビザが発給されるわけではありません。E-2ビザはアメリカ国内で起業し、その会社に移民法で定められた相当額を投資することが条件です。さらに、申請者はその会社で管理職や専門職として勤務する必要があります。

投資すべき相当額は明確に定められておらず、日本円で5,000万円投資してもビザは発給されず、2,000万円で発給されるケースなど様々です。この点こそが、ビザはお金では買えないということを意味しています。加えて、その会社は投資のためだけの会社では許可されず、あくまでも実際に稼動している会社でなければいけません。

E-2ビザには実質的な有効期限はなく、1年に一度アメリカを出国すれば1年間分自動更新され、配偶者も就労可能なため日本人に人気です。


そんなEビザですが、ビジネス関連のビザのため大量のペーパーワークが必要になり、その書類の精度も問われます。申請時の書類の厚みは50cm以上になることもあり、実績があるビジネスに精通した移民弁護士を雇う必要があります。Eビザは、申請段階で相当な投資がいるとされています。

Hビザ、Lビザ、Eビザいずれも就労ビザですが、いかに日本人がアメリカで就労するかが大変かお分かり頂けたと思います。ビザ取得の条件や流れは複雑なため詳細は割愛しますが、日本人がアメリカで働くためのビザ問題とはこういうことです。

おすすめはインターン制度

アメリカで働くことはビザの壁がありますが、最長18ヶ月という期限付きで就労のチャンスはあります。それが「Jビザ」または「OPT(Optional Practical Training)」です。

まずはJビザについてですが、別名で「研修ビザ」とも呼ばれています。最大18ヶ月間、ビザをサポートしてくれるアメリカの企業で働けます。企業はビザスポンサーになる負担がなく、手続きも簡単なことから双方にとって都合が良い制度です。

最大18ヶ月間の期間中に企業との信頼関係を構築し、業績にも貢献すればHビザやLビザなどのビザスポンサーになってもらえる可能性があります。簡単に言ってしまえば、短期間のお試し就職と言ったところでしょう。

次に、OPTという制度も活用できます。OPTはアメリカの教育機関で9ヶ月以上の専門分野(サティフィケート)を修了した後に、そのままその分野に関連する企業で働く(インターン)制度です。

特に学生が多く利用する制度ですが、学生ビザ(Fビザ)でありながら、学校のプログラム修了後に働けるのです。アメリカで特定の分野を学び、さらにインターンを受け入れてくれる企業と出会えれば、働きながら生活可能です。OPTで就労可能な期間は細かい規定がありますが、目安として1年と考えるといいでしょう。

JビザやOPT制度を使っている日本人は多いですが、日本で働くよりも報酬は低く、労働条件は厳しいというのが難点です。さらに、受け入れてくれる企業は都市圏に集中しており、必然的に毎月の収入は生活費で消えていくのが実情です。

いずれも「H、L、Eビザなどの次のステージに繋げるステップ」と考えるといいでしょう。なかには、日本で10年間警察官として働いた後に、アメリカで弁護士になるために学生ビザで留学し、OPT制度を活用して修行を積んでいる知人もいます。アメリカの弁護士は需要も多く、比較的簡単な資格なので人気があるそうです。

まとめ

自由の国アメリカで働くということは簡単そうですが、実際にはビザというとても高い法律の壁があります。アメリカで働くためにはビザのルールを理解し、アメリカ社会で武器となるスキルを身につけることが重要です。

本記事は、2018年1月31日時点調査または公開された情報です。
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