【アメリカの「州」制度】州によって異なる税金や治安について

日米安全保障条約をはじめ、日本と政治的にも、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国についての現地日本人レポートです。

今回のテーマは「アメリカの州制度」で、消費税が高い州、低い州ランキング、税金から見るアメリカ経済の考察、治安が悪い州、良い州についてランキング形式で解説します。


アメリカは50の州とワシントンD.C.の特別区で構成されていますが、これらの州によって法律が異なることはご存知だと思います。これを州法と呼びますが、それぞれの州法は大きく異なることもあります。

法律も違うということは、文化そのものも違うということです。州の特徴や文化を知ればアメリカを知ることが出来ると言えるでしょう。

今回は州によって異なる税金や治安のランキングをご紹介したいと思います。アメリカの文化を知ることの参考にしてください。もちろん、この結果がすべてではありませんので、ランキング内容は参考程度にお考えいただければ幸いです。

消費税が高い州ランキング

アメリカは広く、州によって税金が異なるため日本と一概に比較することはできません。仮に、日本と比較するのであれば、どこかの州と比較するのが適当でしょう。例えば「日本は消費税は8%(2018年1月時点)だけれども、オレゴン州は消費税がないよね」といった感じです。

各州で定められた税率は頻繁に変わりますが、ここでは2017年時点の消費税を基準にランキング付けしてみました。他にも所得税や固定資産税などもあるため、消費税が高いことが必ずしも悪いという訳ではありません。

消費税が高い州第1位・ルイジアナ州・9.98%

日本では音楽の街として知られている「ニューオーリンズ」がある、メキシコ湾に面しているアメリカ南部の州です。9.98%の消費税の内訳は5%が州税、残りが地方税です。

消費税が高い州第2位・テネシー州・9.46%

州都の「ナッシュビル」は日本人にも人気の観光都市です。アメリカ南東部にあり、8つの州と面しているユニークな州です。米英戦争のときに多くの志願兵が出て、その働きも見事だったことから英雄扱いされており「Volunteer State」というニックネームがあります。

消費税が高い州第3位・アーカンソー州・9.30%

日本ではあまり馴染みがない州かもしれませんが、鉱物資源が豊富なことで有名です。なかでも水晶は品質も高く、山を掘れば採れるとされるほどです。アメリカの南東部に位置しています。

税金から見るアメリカ経済の考察

アメリカのなかでも消費税が高い州は「南部」または「南東部」に集中していることが分かると思います。消費税だけで判断すると住みにくそうですが、実はいま日系企業は南部に進出しています。

その背景は、土地が安く労働コストが低いためです。大規模な土地も手に入りやすく、工場を作りやすいことや、同業種や関連企業がすでに南部周辺に拠点を構えていることも挙げられます。

なかでも、トヨタ自動車が北米本社機能を南部のテキサス州に移転しましたが、その背景には州法人税がかからないことも理由に挙げられています。(ただし売上税はかかる)トヨタ自動車関連企業もこぞって同州や、その周辺の州に拠点を構えるという連鎖反応が起きています。


当然、これらの会社で働く人たちの家族も生活をするため、州全体が経済的に潤っていきます。とくに、トヨタ自動車が拠点を置くテキサス州プレイノ市は、アメリカのなかでも犯罪率が低く、治安が良い街とされており近年人気が急上昇している都市です。

加えて、小型ジェット市場で世界一になった「ホンダジェット」の生産拠点もテキサス州サンアントニオにあり、いままさに日系の主要企業がアメリカ南部に集約されてきている状態です。

トヨタ自動車やホンダジェットなどがテキサス州に拠点を構えることで、日系の航空会社が日本とテキサス州を結ぶ定期便を新たに就航し、これから増加するであろう交通渋滞に対応するため、日本の新幹線建設プロジェクトも動き始めています。

いまアメリカでは、テキサス州を始めとする南部の州の力が注目されており、日系企業もその一因を担っています。アメリカの次世代の経済拠点は、テキサス州と主張する人もいるほどですので、今後のアメリカ経済の鍵を握る州として覚えておくといいでしょう。

アメリカ消費税が低い州ランキング

消費税が安い州第1位・オレゴン州、ニューハンプシャー州、モンタナ州、デラウェア州・0%

日本人からすれば信じられないかもしれませんが、これらの州では消費税がかかりません。アメリカならではの話として、これらの州に面しているところに住んでいる人たちは、消費税分を節約のために、買い物をする際はこれらの州に出向いて買い物をするようです。

ちなみに消費税が0%のオレゴン州は、所得税が9.9%、固定資産税が1.09%と他州よりも高めです。

消費税が安い州第2位・アラスカ州・1.76%

カナダの国土を挟んで飛び地の国土になっているアラスカ州は、オーロラが見える州としても有名です。アメリカ全州のなかで面積が最も広く、人口は70万人程度です。冬は極寒の地となるアラスカ州も消費税は低めです。

消費税が安い州第3位・ハワイ州・4.35%

日本人に大人気のハワイですが、アメリカのなかでは消費税は低めです。アメリカ国籍の人にとっては良いことですが、観光客に対しては9.25%のホテル税などがかかり、そもそもの物価が高いこともあり、結果的には支出は多くなりがちです。

ご紹介した消費税だけで良し悪しの判断は出来ませんが、所得税、固定資産税、その他の税金や政府からの還元などを考慮すると、最も税金を安く抑えられる州は「アラスカ州」です。

アラスカ州は「石油採掘」による収入が多く、税収に頼らなくてもよい仕組みができています。さらには、Alaska Permanent Fundと呼ばれる基金団体から、各世帯に毎年1,000ドルから2,000ドルほどの配当金がもらえます。「アメリカ版のオイルマネー」といったところでしょうか。

アラスカ州の様に配当金がもらえる州もあれば、カリフォルニア州のように税金のせいで生活が破綻してしまいそうになる州もあります。税金の格差があることもアメリカならではかもしれませんね。

アメリカ治安が悪い州ランキング

一言で治安が悪いと言っても犯罪の種類や規模などによって大きく印象が変わります。ここでは「人口10万人当たりの犯罪件数」を基準にして、治安の悪さをランキング付けしました。

残念ですが、アメリカは日本と比較して犯罪に出くわす確率は高く、車上荒らしや窃盗などの身近なものから、強盗、カージャック、殺人など凶悪犯罪まで様々です。しかし、これがアメリカの現実でもあることを理解して頂ければと思います。

治安が悪い州第1位・ミシガン州デトロイト・8,359件

かつてアメリカの自動車産業の拠点だったデトロイトですが、いまでは「犯罪都市」という異名がつくまでになりました。2013年に財政破綻をして以降は、住民の半数以上が貧困状態で、読み書きも出来ないほどだと言われています。人手不足のため、警察を呼んでも警官が現場に到着するまで1時間ほどかかるとされています。

治安が悪い州第2位・テネシー州メンフィス・8,081件

どの都市よりもギャングが多い街とされており、暴力犯罪、殺人犯罪は増加傾向です。犯罪の3分の2が暴力事件のため、ギャング同士のいざこざなどが頻発する街と言えるでしょう。


治安が悪い州第3位・オハイオ州コロンバス・6,800件

日系自動車企業や日本人留学生も多く、日本人にとって馴染みがあるこの街は、実は犯罪件数は多めです。ただし、治安の悪さはエリアによって明確に別れており、街の東南エリアに犯罪が集中しています。窃盗や侵入事件が多いのが特徴です。

アメリカ治安が良い州ランキング

日本よりも治安が悪いアメリカではありますが、犯罪件数が少ない街もありますのでご紹介します。ここでは「人口20万人以上の都市で、暴力事件が少ない街」を基準にしています。

治安が良い州第1位・カリフォルニア州アーバイン

日本人留学生が多く暮らしているカリフォルニア州ですが、なかでもアーバインは治安が良いエリアとされています。カリフォルニア州のなかでも、大都市圏から離れた住宅エリアだということが大きく影響しています。カリフォルニア大学もあるため、留学先としても安心ですね。

治安が良い州第2位・アリゾナ州ギルバート

年間を通して温暖なアリゾナ州の州都であるフェニックス近郊のエリアです。アメリカのなかでもリタイア後に住みたい街として注目を集めており、富裕層も多いことから治安も安定しているようです。人口増加が著しいため、どこまで治安を維持できるかが問題です。

治安が良い州第3位・カリフォルニア州フリーモント

サンフランシスコ湾南東部のエリアも治安が良いエリアとされています。世帯年収100,000ドルクラスの富裕層が住むエリアなので、治安の良さにも納得です。簡単には住めないエリアだということが難点でしょう。

アメリカに住んでいる日本人の経験から言わせてもらうなら、アメリカはどこも治安が良いとは言えません。さらに、公務員である警察の働きにも違いがあります。

日本の警察は極めて優秀で、犯罪の「防止」が活動の中心と言えるでしょう。それに加えて検挙まで一貫しています。一方で、アメリカの警察は「抑圧」に焦点が当てられているため、犯罪を未然に防ぐことはあまり期待できません。

治安の良し悪しの背景には、日本とアメリカの警察の行動の違いもあるのかもしれません。

まとめ

アメリカは州によって税金や治安は大きく変わりますが、これらの違いが柔軟性を生み出し、経済への刺激や影響を与えていることは事実です。

このことを建設的に捉えるならば、州による違いがアメリカの伸びしろに繋がっているのかもしれません。州による違いを理解することが、アメリカを知ることに通じるでしょう。アメリカを知るためには、まずは州の特徴から学ぶことをおすすめします。

本記事は、2018年2月14日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG