「子ども・子育て支援新制度」の概要について
平成27年4月よりスタート
「子ども・子育て支援新制度」は平成27年4月から、0才から6才の小学校就学前年齢の子供及び子を持つ保護者を対象に、幼児教育や保育の拡充と質の向上を目的とした制度として始まりました。
国ではなく、市町村が進める
子ども・子育て支援新制度は、該当地域の市町村自治体が地域住民の幼児教育や保育に対するニーズを正確に把握した上で、5年計画である「市町村子ども・子育て支援事業計画」を立案し、進めていきます。幼児教育や保育に対するニーズは、市町村自治体によって異なってきますので、国ではなく、市町村が新制度を進めることによって、より市民のニーズに叶った子育て環境整備ができる体制を整えています。
財源は消費税増税分より
子ども・子育て支援新制度による、幼児教育と保育の拡充と質の向上のための費用は、10%増税が決まっている消費税の増税分より使われる予定です。
「子ども・子育て支援新制度」の目的について
幼児教育・保育の質、幅ともに高めるのが最大の目的
子ども・子育て支援新制度の最大の目的が、幼児教育と保育の質、幅ともに高めることです。合わせて、妊娠出産後の女性も働きやすい環境づくりや、第2子、第3子と複数子供を持ちやすいための取り組みもされていますので、労働力不足解消と少子化対策の目的も含まれています。
幼児教育・保育の質の向上のために行われること
▼施設ごとに配置する職員数を増やす
幼稚園、保育園など複数の子供を見る施設では、職員の数が多ければ多いほど子供たちにも目が行き届きやすくなりますので、教育や保育の質の向上に繋がります。子ども・子育て支援新制度では、例えば、現在幼稚園年少及び保育園3歳児クラスでは子供20人に対して職員1人の割合で配置されていますが、これを子供15人に対して職員1人にする、などです。
▼職員の教育や処遇の改善
より幼児教育や保育の質を高めるために、研修を今より充実させる、幼稚園教諭や保育士のキャリアアップ制度を設ける、など各施設で働く教諭や職員の質の向上に努めます。
また、質の高い教諭や職員を確保できても、給料が低かったり激務であったりすると、離職率も上がってしまいますし、元から幼稚園教諭や保育士を目指す人がいなくなってしまいます。より質の高い教諭や職員の確保のために、処遇面の改善も行われます。
▼幼稚園、保育園だけでなく児童養護施設の質向上も
事情により親元を離れて暮らす子供たちの、児童養護施設などの質向上や改善も行われます。
幼児教育・保育の幅を広くするために行われること
▼認定こども園や保育ママなど、幼児教育・保育の受け皿を増やす
待機児童問題が取りざたされているので、保育園とは「女性が仕事をしている間に子供を預ける施設」というイメージを持たれています。ところが、元々保育園とは「何らかの理由によって保育が困難な場合に子供を預かる施設」という、福祉施設です。現在は、共働き世帯の増加によって、仕事をしている人が保育園を利用するイメージがありますが、あくまで仕事は子供の保育が困難な場合の1ケースに過ぎません。
保育園に入れないので育休から復帰できない人がいる状態なので、これから仕事をしたい人、介護や自分の病気によって保育ができない人などは更に保育園が利用できない状態になっています。
また、恒久的にではなくその都度、もしくは週に数日だけ利用する「一時保育」も、フルタイムで働く人が保育園に入れないために利用するので、自分の通院やリフレッシュ目的での理由では利用ができず、一時保育の制度があってないような地域もあります。
保育園だけでなく、幼稚園と保育園の機能を持った認定こども園を作る。幼稚園でも延長保育や預かり保育を充実させる。保育ママや施設型保育施設を増やすなど、保育園以外の受け皿を増やし、待機児童解消の他預ける理由に関係なく、全ての保育を必要としている人がいつでも利用できる体制づくりを行います。
仕事と子育ての両立のために行われること
▼「仕事・子育て両立支援」の創設
子育てをしながら働く従業員を持つ企業を支援するための「仕事・子育て両立支援」を平成28年度より創設します。
その企業で働く従業員が、就業時間内に子供を預けられる事業内保育所などは、待機児童解消にも繋がるほか、従業員の働きやすい環境づくりにも繋がるので、離職率の低下や出生率の向上にも繋がります。事業内保育所などの設置や運営のための助成や、時短勤務などの多様な働き方への対応など、企業主導型保育事業への支援を行います。
また、残業や休日出勤、夜勤など保育施設の預かり時間外に子供を預ける必要がある時には、ベビーシッターを利用する人も多いです。高額になりがちなベビーシッターを仕事のために利用した場合、利用料金の補助を受けられます。
▼「放課後子ども総合プラン」による、小学校以降の子供への支援
延長保育のある幼稚園や保育園は年長もしくは6歳児クラスまでになり、以降は義務教育である小学校に通います。ところが、小学校に進学したとたんに学校の終わる放課後の時間に、子供の預け先がなくなってしまう「小1の壁」現象が起きます。そして、現在は待機児童問題が取りざたされていますが、同時に幼稚園や保育園を卒園した子どもたちの放課後の預かり施設である「学童保育所」不足の加速が予想されるのです。小1の壁減少によって、子供が小学校進学と同時に離職したり、正社員からパートなどの短時間勤務になったりする女性も少なくありません。
この小1の壁の問題解決のために作られたのが、子供・子育て新制度の一環である「放課後子ども総合プラン」です。小学生の子供が余っている小学校の教室や保育所施設で放課後過ごせる「放課後児童クラブ」の拡充のための取り組みが行われます。
具体的には、平成31年度までに放課後児童クラブの職員約30万人を新たにに配備すること、質の高い職員の定着を図るために処遇の改善を行うこと、施設不足解消のために全小学校学区で余っている教室を学区内で連携しながら使用する「一体型の放課後児童クラブ」の推進などが行われます。
子ども、子育て新制度の認定について
幼児教育・保育の利用状況によって認定が変わる
保育園を利用する時には自治体の子供支援課などに保護者の勤務状況などを提出し、保育園の利用希望申請を行わなければいけません。一方で幼稚園は文科省管轄の教育施設ですので、利用する時には直接その幼稚園に入園申し込みを行います。子ども、子育て新制度では、保護者の状況に応じて子供が1号、2号、3号に認定を受けることになります。
1号認定とは
保育を必要とする事由のない、3才から5才までの子供は1号認定に該当します。利用する施設は幼稚園または認定こども園です。また、保護者が就業している場合でも幼稚園に通わせたい場合は1号認定を受ければ可能です。
1号認定の場合、利用したい幼稚園もしくは認定こども園に直接申し込みを行います。
2号認定とは
保育を必要とする事由のある、3才から5歳までの子供は2号認定に該当します。利用する施設は保育園または認定こども園です。
3号認定とは
保育を必要とする事由のある、0才から2才までの子供は三号認定に該当します。利用する施設は保育園または0才から2才保育を行っている認定こども園です。
2号認定、3号認定を受けるには市町村に認定の申請を行い、市町村から保育の必要が認められると認定証を発行。その後、利用したい保育施設への申し込みを行い、市町村の利用調整を受けた後で利用先が決定します。
保育料について
保育料は保護者の所得によって決まる
子ども・子育て新制度では世帯の子供の数によって保育料の負担軽減措置が受けられます。
1号認定の場合、3才から小学校4年生までの子供が対象です。第二子は半額、第三子は無料になります。例えば第一子が小学校3年生で第二子が幼稚園年長の場合第二子の幼稚園保育料が半額になります。第一子が小学校4年生、第二子が小学校1年生、第三子が幼稚園年中の場合第三子の幼稚園保育料が無料になります。
2号・3号認定の場合、0歳から小学校1年生までの子供が対象です。第二子は半額、第三子は無料になります。
年収約360万円未満世帯には軽減措置がある
認定の種類に限らず、年収約360万円未満の世帯には軽減措置があります。また、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は、第一子から保育料が無料になります。他にも、ひとり親世帯への補助など、世帯年収によって軽減措置が設けられていますが、具体的な金額などは自治体によって異なります。
幼稚園には旧制度園と新制度園がある
今幼稚園に通わせている子供がいる世帯や、今後子供を幼稚園に入れたいと考えている世帯で、気を付けなくてはいけないのが新制度に移行する園と旧制度のままの園があることです。
旧制度のままの幼稚園の場合、一号認定の名称は使用されません。また、保育料も保護者の所得によって決まるのではなく、園が保育料や施設料などを設定します。ただし、自治体によって異なりますが、旧制度のままでも所得や子供の人数に応じた「私立幼稚園奨励金」などの補助金が支給されます。
今は旧制度のままの幼稚園でも、今後新制度に移行する可能性もあります。また、新制度に移行するだけでなく、幼稚園が幼稚園型の認定こども園になるパターンもあります。
子ども・子育て新制度で変わる幼児教育・保育施設について
認定こども園
幼稚園、保育園の機能を併せ持つ施設が「認定こども園」です。
施設によって異なりますが、3才から5才までの子供たちが、保護者の就労などの状況に関係なく、幼稚園時間帯(およそ9時から14時)まで、同じ場所で同じ教育や保育を受けます。幼稚園時間帯終了後には、引き続き保育園としての機能用いて2号認定の子供を預かり、1号認定の子供も延長保育などを必要に応じて利用できます。また、1号認定の子供の保護者がフルタイム勤務になったなどで2号認定になったり、2号認定の子供の保護者が退職して1号認定になったりしても、そのまま同じ施設に継続して通えるので子供や保護者の負担が少ないメリットもあります。
幼稚園型の認定こども園と保育園型の認定こども園があり、保育園型の場合0~2才の三号認定の子供も預かる保育施設としての機能や、地域で子育てを行う保護者や子供の交流の場でもある子育て支援センターとしての機能も持っています。
地域型保育施設
保育の受け皿拡大のために生まれたのが地域型保育施設です。原則20人以上の子供たちを預かる保育園よりも少人数単位で0才から2才の子供を預かり、タイプ別に4つの施設に分かれています。
▼家庭的保育(保育ママ)
定員5人以下の子供を預かる保育施設が保育ママとも呼ばれる家庭的保育です。その名前の通り、保育ママの自宅で保育を行うことが多く、きめ細かく家庭にいるような雰囲気の元で保育が行われます。
▼小規模保育
定員6人から19人までの子供を預かり、きめ細かな保育を行う保育施設です。
▼事業所内保育所
事業所内保育所は、原則その企業で働く従業員の子供を対象にした保育施設です。ただし、保育園の預かり人数に余剰がある時には同時に地域の子供も預かり、一緒に保育を行います。
▼居宅訪問型保育
保護者の自宅において、1対1でケアを行うのが居宅訪問型保育です。病気などで個別のケアが必要な子供に対して行われます。
地域の子育て支援の充実
地域子育て支援拠点の設置や、利用者の支援
子育てに関する悩みはその世帯によって様々です。地域で実際に幼稚園や保育園の利用を希望する人への情報提供や、子育て世帯や妊婦さんの困りごとや悩み事相談を担う、利用者支援を自治体ごとに設けています。
また、公共施設や保育所の一室、NPO法人など色々な団体が担い手となって気軽に子育ての相談ができたり、地域で子育てを行っている人たちの交流の場となったりする、子育て支援センターを始めとした地位子子育て支援拠点を今以上に拡充・設置します。
保育園以外の預かれる場所の拡充
▼ファミリーサポートセンター
子どもを助け合いの観点から支援する、乳幼児や小学生の子育て世帯で、一時的な子供の預かりを希望する会員と、会員への援助を行う会員との相互援助活動であるファミリーサポートセンターがあります。通称ファミサポと呼ばれ、援助を受ける、援助をする相互の自宅で子供を預かる他、子供の習い事の送り迎え、保育園や学童保育からのお迎えなど、相互の合意の元で色々な子育て支援を展開します。
▼一時預かり
保護者の通院や急用、パートタイムなどの短時間労働の他、幼稚園や保育園の延長保育時間外、休日などで子供を預ける必要がある時に利用できる一時預かり施設を拡充させます。
▼子育て短期支援
宿泊を伴う子供の預かりを短期間行う「ショートステイ」や、平日の夜間に子供を預かる「トワイライトステイ」などの子育て短期支援を拡充します。特に保護者の通院や出産による入院時などに、頼る先がなく子供を預ける先がない人の受け皿が現在少ないため、自治体による支援が期待されています。
▼病児保育
病気中、もしくは病後で通園、通学ができない子供を保護者の就業中などに医療機関で預かる病児保育を今後拡充させます。また、平成28年度からは幼稚園や保育園などで保育中に具合が悪くなった子供を看護師などが迎えに行き、そのまま医療施設で保護者がお迎えに車で預かるタイプの病児保育も新しく創設されました。
妊婦、乳児への子育て支援
▼乳児家庭全戸訪問
生後4か月までの乳児を育てている世帯全てに対して、自治体の助産師、保育士、保健師などが自宅に訪問して体重測定や育児に関する相談を受ける、支援も含めた育児に関する情報を提供する乳児家庭前途訪問を行います。
乳児の発育状態や生育環境を把握できるほか、産後の女性の状態もチェックできるので、産後うつなどの防止にも期待が持てます。
▼養育支援訪問
乳児家庭全戸訪問や、乳幼児健診などの結果によって養育支援が必要と判断した世帯に対して、定期的な訪問を行い、育児に関する指導や助言を行います。
▼妊婦健康診査
妊婦さんの妊娠期間中の健康維持と増進を目的に、健康状態の把握、検査計測、保健指導を行います。
参考:
内閣府 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/sukusuku.html
まとめ
ここで紹介した子供・子育て新制度の内容については、自治体によって具体的な支援内容が異なりますので、お住いの自治体ではどんな支援を行っているのかをチェックするのがおすすめです。
また、子供・子育て支援新制度はいずれも魅力的な支援や制度が整っているように見えますが、まだ開始してから1、2年しか経っていません。また、自治体によっても支援内容の質も幅も異なるので、どんなところにいても、子育て世代が希望する支援を希望に応じて受けられる体制づくりを整えることが、少子化を解消する鍵になるのではないでしょうか。
(文:千谷 麻理子)
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