日本の首都「東京都」について – 唯一の「都」

知っているようで知らない「日本のマチ」を知るシリーズ、記念すべき第1回は「東京都」についてです。日本を代表する都市「東京都」は、都道府県の中で唯一の「都」となった歴史、首都としての役割を担うなど様々な特徴を持っています。

今回は、意外と知らない「東京都」のアレコレについてご紹介します。


日本最大の都市として知られている「東京都」ですが、47都道府県の中で唯一の「都」となった歴史、日本の首都としての役割を担っているなど様々な特徴を持っています。

GDPでは日本の20%、広さは45番目という下から3番目、世界的な都市となっている東京都。

今回は、その公務員として「東京都」に働きたい向けに「東京都」について解説します。

東京都の基礎知識

まずは東京都の基本的な情報について解説します。

「東京都」は東京23区と呼ばれる「都区部」と「多摩地域」、「東京都島嶼部(とうきょうととうしょぶ)」に3地域で構成された日本の主要都市です。東京都が公式に用いている「東京都」の英称は “Tokyo Metropolis”で、「東京都」という1つの自治体で1つの都市という扱いになっています。

東京都の推計人口は約13,72万人(2017年5月1日現在)、日本の人口の約10%を占め、年々増加傾向にあります。人口密度も日本で最も高い値となっていて、練馬区、板橋区、足立区、杉並区、江戸川区、世田谷区、大田区、八王子市では、人口が50万人を超え、特に人口が集中しています。

2017年では東京都の高齢化率は約22%となっており、5人に1人が65歳以上の高齢者ということになり比率は年々増加しています。また、15歳未満の年少人口の割合は高齢者人口よりも少なく、今後さらに減少すると予想されています。

東京都は、昼間人口が約1,558万人に対して、夜間人口は約1,316万人(2010年時点)と日中の人口が多いのも特徴的です。

東京都の面積は約2,190平方キロメートル、47都道府県で45番目の広さです(2017年時点)。

東京都の歴史

歴史上、正式に「東京」の名前が使われたのは明治維新後のことです。新政府が1868年に「江戸府」を開設し、のちに「東京府」と改めたのが現在の東京都の始まりと言われます。翌年1869年には明治天皇が旧江戸城である皇居に入り、名実ともに日本の首都となりました。

廃藩置県後の大改編の後、1889年には東京市(現在の東京都区部に相当)も発足し、その後順調に人口を増やしていきます。1893年までには小笠原・多摩地域などが東京府へと編入され、このころに現在の東京都とほぼ同じ管轄地域を持つようになりました。


順調に発展していた東京でしたが、1923年に関東大震災により、死者7万人を超える被害に見舞われました。また、木造住宅が多かったことが被害も拡大させ、東京市内の60%以上の家屋が火災により焼失しました。その影響は一時期ですが、東京市の人口が大阪市に抜かれるほどの深刻さでした。

その後、戦時中の1943年、それまであった東京府と東京市が合併され、「東京都」が成立します。しかし、その2年後の1945年、戦況が悪化し3月の東京大空襲で再び甚大な被害を受け、文字通りの焼け野原となってしまいます。

戦後は、政府の東京を優先する経済政策の下、驚異的な速度での復興を遂げ、1964年に東京オリンピックを開催するまでになりました。その後も高度経済成長期を経て、東京はますます発展を遂げます。しかしその反面、経済での東京一極集中が進み過ぎたため、都心部の地価が高騰し、都心部から郊外へと移住するドーナツ化現象も話題になりました。

都市整備や公共交通機関の発達に伴い、緩和はされたものの、現在でも渋滞などの問題は残っています。また、少子高齢化やインフラの老朽化による再整備の財政圧迫など、さまざまな問題を抱えています。しかし、2020年には2度目のオリンピック開催が決定するなど、世界の冠たる巨大都市としての存在感は健在です。

昼間人口・夜間人口、昼間流入人口

東京都は昼間人口が約1,558万人に対して、夜間人口は約1,316万人となっており(2010年時点)、夜間よりも昼間の人口が多いというのが特徴です。これは東京都内の企業や学校に通勤通学する人々によって、夜間よりも昼間の人口が増加していることを示しています。そして、東京都の中でも昼間は千代田区や港区など都心部の人口が多く、夜間は練馬区や大田区、江戸川区などの郊外の人口が多くなっています。

東京都心部への昼間流入人口は約289万人とされ、その95%が神奈川、埼玉、千葉といった近隣県の住民です。都心部は、通勤や通学、またはショッピングなどの経済活動で賑わっていることがわかります。

しかし、その昼間人口の増加は、交通機関の運用に支障があった際、多くの人に 職場や学校などから帰れない、行けないという問題が発生します。東日本大震災が発生した際は、首都圏で約525万人が当日自宅に帰れない帰宅難民となったとされています。

*人口データの出典:「東京都の昼間人口」の概要|東京都

東京都の地理、気候、地形、地質

東京都は東京23区、多摩地域、島嶼部の三宅島・大島・八丈島・小笠原諸島で構成されています。島嶼部を除けば、東京都は関東平野の南部に位置し、比較的なだらかな地形で、中でも23区部は海抜が低く、軟弱な地盤の沖積平野となっています。

多摩地域は、武蔵野台地と多摩丘陵を内包しその海抜は高めです。島嶼部は活火山も多い火山島であり、三宅島では2000年以降雄山が現在も火山活動中です。

また、東京都は広範囲に土地が存在するため、日本では珍しい複数の気候を持っている都道府県です。23区部と島嶼部は太平洋側気候、多摩地域の一部は中央高地式気候、小笠原諸島は南日本気候となります。小笠原諸島はアジアのガラパゴスと言われ、その海で隔離されている特殊な気候・風土により、数々の珍しい動物・植物の固有種が生息していることで有名です。

島嶼部の沖ノ鳥島と南鳥島は日本においても最南端・最東端の島であり、東京都は日本の最東端・最南端に位置する都道府県ということになります。

東京都の業務

東京都は、巨大な人口と流通を抱える都市であるため、その流れや生活を支えるインフラ整備は何よりも重要な都の業務となります。都市整備局は、都市計画に基づいて、公共交通や道路などの整備を行うとともに、都市部での緑地確保にも努めています。

さらに、東日本大震災を機に首都直下型地震の脅威についても、より深刻に考えられるようになりました。そのため、防災計画の策定が急務とされており、「防災都市づくり推進計画」に基づき、木造住宅密集地域の改善など防災都市づくりに取り組んでいます。

また、国の有識者会議では「最悪死者2万人」と予想された直下型地震に対し、停電時の対応や各所への災害物資備蓄などでの減災対策が取られています。


東京都の23区は「市町村」とは少し異なり、上下水道や消防などについて独自の権限を持たない性質を持ちます。しかし、時代とともにこの制度に反対の声も高まっており、23区共同で組織する協議会は「より強く独自の自治権を獲得していく」と声明を出しています。そのため、今後は23区も通常の市町村のような自治権を持った自治体となっていく可能性があります。

東京都の財政

東京都全体の経済規模は巨大であり、GDPでいえば94兆4千億円と日本国内の20%を占めています。これは、インドネシアやオランダといった一国のGDPをしのぐ規模であり、東京都は一国の都市であるにも関わらず、狭い地域でも他の国家と並ぶ経済規模があります。

東京都の財政で特徴的なのは、特別区である東京23区の特殊性です。前述のように東京の23区は通常の市町村とは違い、都に清掃や消防など一部の機能を行ってもらっています。そのため、税収についても、23区では市税にあたる一部を都税として徴収し、さらにその一部を各区へ財政状況に応じて分配するシステムになっています。

これは、23区の人口密度が非常に高いため、都が一括したサービスを提供し、それにかかる費用も都に集めるのが効率的だという考えです。これを「都区財政調整制度」呼び、再分配されるお金を「財政調整交付金」といいます。

ところが、港区など税収が多く交付金を受け取れない区からは当然反発も出ており、今後、市制度移行など、自治権の拡充が進むものと予想されています。

また、これとは別に「都市計画交付金」という再分配される交付金もあるのですが、この交付が現状に即しておらず、自主財源でまかなっている区も存在し問題となっています。

市役所としての「東京」、県庁としての「東京」

東京都庁は、東京23区を包括する「市役所としての役割」、そして、東京都全域を包括する「県庁としての役割」をもつ特殊な行政機関です。この背景には「東京都」という集合体ができた歴史的背景が関係しています。

「東京都」は1943年に東京都制が施行され「東京市」と「東京府」が合併する形で設置されました。終戦後の1947年に地方自治法が施行されたため、東京都制は廃止されましたが「東京都」の名称と自治体としての行政区域は変更されていません。

地方自治法の施行によって、旧東京市にあたる23区は特別区として市に準ずる権限を与えられ、基本的な市役所としての業務は、各区が行うことになっています。

しかし、「法律または政令により都が所掌すべきと定められた事務」、「市町村が処理する事務のうち、大都市地域における行政の一体性や統一性の確保から、都が一体的に処理することが必要とされる事務」に関しては東京都が一貫して行い「市役所としての業務」を担っています。具体的には上下水道、消防などのインフラ業務、都市計画、税制の一部は都税として扱われています。

首都としての東京

日本の首都、東京。ごくありふれたフレーズですが、実を言うと首都が東京であることについては議論があります。「首都」の定義があいまいなうえ、現行の法律上は首都を定める法令が存在しません。中には「歴史上最後の首都だった京都からの正式な遷都令が出ていない、だから法律的には今も日本の首都は京都だ」という論者もいます。

厳密な法律的根拠はともかく、都道府県の中で群を抜く知名度・人口・経済規模に加え、首相官邸、国会議事堂、最高裁判所など、三権の最高機関が存在する東京が、首都の役割を果たしています。

さらに、天皇陛下の御在所も明治になり、京都から東京へと移転になりました。京都は大きな港湾がなく多数の人口を抱えきれないため、首都機能を果たす都市としては不適であり、また、明治維新の刷新を印象付けるためと言われています。

しかし、近年では東京への官公庁や大企業などの集中が進み過ぎ、交通渋滞や大気汚染などの問題が起きています。そのため、一部の機能を地方に移転させる首都機能移転が活発に議論されています。通信技術や輸送手段も発達しているため、地方への機能分散などが課題となっています。

東京都庁の組織図

【議決機関】
<都議会>
<議会局>
●管理部
●議事部
●調査部

【執行機関】
[知事]
(行政委員会)
<教育委員会>
●教育庁
・総務部
・都立学校教育部
・地域教育支援部
・指導部
・人事部
・福利厚生部
・多摩教育事務所
・派出所(3)
・学校経営支援センター(3)、支所(3)
・中央図書館、多摩図書館
・教職員研修センター
・教育相談センター
・都立高等学校(中高一貫教育校含む)
・都立特別支援学校
<選挙管理委員会>
●事務局
<人事委員会>
●事務局
・任用公平部
・試験部
<監査委員会>
●事務局
<公安委員会>
●警視庁
・総務部
・警務部
・交通部
・警備部
・地域部
・公安部
・刑事部
・生活安全部
・組織犯罪対策部
・警察学校
・方面本部(10)
・犯罪抑止対策本部
・人身安全関連事案総合対策本部
・サイバーセキュリティ対策本部
・オリンピック・パラリンピック競技大会総合対策本部
・警察署(102)
<労働委員会>
●事務局
<収用委員会>
●事務局
<東京海区漁業調整委員会>
<内水面漁場管理委員会>
<固定資産評価審査委員会>

[副知事]
(知事部局)
<政策企画局>
・青少年・治安対策本部
*総合対策部
・総務部
・調整部
・計画部
・外務部
<総務局>
・総務部
・復興支援対策部
・行政改革推進部
・情報通信企画部
・人事部
・コンプライアンス推進部
・行政部
・総合防災部
・統計部
・人権部
・公文書館
・消防訓練所
・支庁(4)、出張所(3)、大島公園事務所、小笠原亜熱帯農業センター、小笠原水産センター
<財務局>
・経理部
・主計部
・財産運用部
・建築保全部
<主税局>
・総務部
・税制部
・課税部
・資産税部
・徴収部
・都税事務所(25)、都税支所(4)
・都税総合事務センター
<生活文化局>
・総務部
・広報広聴部
・都民生活部
・消費生活部
・私学部
・文化復興部
・東京ウィメンズプラザ
・消費生活総合センター、多摩消費生活センター
・計量検定所
<オリンピック・パラリンピック事務局>
・総務部
・総合調整部
・パラリンピック部
・大会施設部
・スポーツ推進部
<都市整備局>
・総務部
・都市づくり政策部
・住宅政策推進部
・都市基盤部
・市街地整備部
・都営住宅経営部
・基地対策部
・市街地整備事務所(2)、六町地区整備事務所
・多摩ニュータウン整備事務所
・多摩建築指導事務所
・住宅建設事務所(2)
<環境局>
・総務部
・地球環境エネルギー部
・環境改善部
・自然環境部
・資源循環推進部
・多摩環境事務所
・廃棄物埋立管理事務所
<福祉保健局>
・病院経営本部
*経営企画部
*サービス推進部
*都立病院(8)
・総務部
・指導監査部
・医療政策部
・保険政策部
・生活福祉部
・高齢社会対策部
・少子社会対策部
・障害者施策推進部
・健康安全部
・監察医病院
・看護専門学校(7)
・保健所(6)、出張所(4)、支所(2)
・西多摩福祉事務所
・ナーシングホーム
・児童自立支援施設(2)
・女性相談センター
・女性相談センター多摩支所
・児童相談センター
・児童相談所(10)
・心身障害者福祉センター、多摩支所
・障害者福祉会館
・北療育医療センター、分園(2)
・多摩療育園
・府中療育センター
・総合精神保健福祉センター(2)
・精神保健福祉センター
・健康安全研究センター
・市場衛生検査所、出張所(2)
・芝浦食肉衛生検査所
・動物愛護相談センター、城南島出張所
・動物愛護相談センター多摩支所
<産業労働局>
・中央卸売市場
*管理部
*事業部
*新市場整備部
*築地市場
*食肉市場
*大田市場
*市場(8)
・総務部
・商工部
・金融部
・観光部
・農林水産部
・雇用就業部
・皮革技術センター
・皮革技術センター台東支所
・農業復興事務所、農業改良普及センター(3)
・森林事務所
・島しょ農林水産総合センター、事務所(3)
・家畜保健衛生所、支所(3)
・病害虫防除所
・労働相談情報センター、事務所(5)
・職業能力開発センター(4)、校(7)、分校
・東京障害者職業能力開発校
<建設局>
・総務部
・用地部
・道路管理部
・道路建設部
・三環状道路整備推進部
・公園緑地部
・河川部
・建設事務所(11)、出張所
・土木技術支援・人材育成センター
・公園緑地事務所(2)
・江東治水事務所
<港湾局>
・総務部
・港湾経営部
・臨海開発部
・港湾整備部
・離島港湾部
・東京港管理事務所
・東京港建設事務所、高潮対策センター
・調布飛行場管理事務所
(会計管理者)
<会計管理局>
・管理部
・警察・消防出納部

<東京消防庁>
・企画調整部
・総務部
・人事部
・警防部
・防災部
・救急部
・予防部
・装備部
・方面本部(10)
・消防学校
・消防技術安全所
・消防署(81)

(地方公営企業)
<交通局>
・総務部
・職員部
・資産運用部
・電車部
・自動車部
・車両電気部
・建設工務部
・都営交通お客様センター
・研修所
・荒川電車営業所
・総合指令所
・駅務管区(6)
・乗務管理所(4)
・自動車工場
・車両検修場(4)
・電気総合管理所
・電気管理所(4)
・発電事務所
・工務事務所
・地下鉄改良工事事務所
・保線管理所(4)
<水道局>
・多摩水道改革推進本部
*調整部
*施設部
*給水管理事務所(2)、給水事務所(2)
・総務部
・職員部
・経理部
・サービス推進部
・浄水部
・給水部
・建設部
・研修・開発センター
・水運用センター
・水質センター
・水源管理事務所、貯水池管理事務所(2)
・支所(6)、営業所(16)
・浄水管理事務所(3)、浄水場(7)
・建設事務所(2)
<下水道局>
・流域下水道本部
*管理部
*技術部
*流域下水道本部水再生センター(4)
・総務部
・職員部
・経理部
・計画訓整部
・施設管理部
・建設部
・下水道事務所(7)、水再生センター(10)
・水再生センター
・基幹施設再構築事務所(2)


出典:東京都庁の組織図

まとめ

いかがでしたか?

「東京」というと日本を代表する大都市として名高いですが、行政機関としての特色や日本で唯一の「都」となった経緯は知られていないのではないでしょうか。

行政機関として複数の役割を担い、日本で唯一の「都」としての歴史的背景を持つなど、東京都にしかない特徴が数多くあります。2020年には2回目の東京オリンピック開催が予定され、世界からも注目されています。この機会に日本人としても改めて、「東京都」の今まで知らなかった一面も見ていきたいですね。

本記事は、2018年2月22日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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