道路の平和を守る警察「交通執行部隊」の仕事内容と白バイ隊員になる方法

道路交通上の秩序を守るために配備されているのが白バイやパトカーでおなじみの交通執行部隊です。ここでは、警察の交通執行部隊である交通機動隊と高速道路交通警察隊の職務内容や、交通執行部隊の中でも花形の白バイ隊員になる方法に加えて、交通執行部隊を身近に見られるイベントについてもご紹介しています。


警察の交通執行部隊とは

交通機動隊と高速道路交通警察隊がある

日本の公道を走るには、道路交通法という法律に従って車両の運転や行動を行わなければいけません。速度超過や無免許、飲酒運転などの危険運転や、シートベルトやチャイルドシート着用義務違反、一時停止や信号無視などの道路交通法に違反した行動を「交通違反」といい、交通違反を行った運転者や同乗者、歩行者を「交通違反者」と呼びます。この交通違反者を取り締まるのが、警察の交通執行部隊です。

警察組織の主な任務は、日本国内での市民の安全と平和、秩序を守る事です。公道上での安全と平和、秩序を守るために違反者を取り締まる交通執行部隊には交通機動隊と高速道路交通警察隊の2隊が配備されています。

交通執行部隊の車両・装備について

パトカーの特徴

交通執行部隊の使用するパトカーは、「交通取締用四輪車」と呼ばれる特殊な仕様の白黒の警らパトカーと覆面パトカーの2種類です。

▼排気量が多い特別なパトカーを使用
交通執行部隊は、速度超過者を始めとした交通違反者の追跡を行う機会も多いです。そのためスポーツカータイプの3,000cc -~3,500cc級エンジン排気量を持つパトカーも多く配備されている特徴があります。中には、警視庁のフェアレディZや埼玉県警察本部のスカイラインGT-Rなど自治体の費用で購入・導入された独自のスポーツカータイプのパトカーもあります。

▼虫よけなど特殊な装備を持つ
交通執行部隊のパトカーは、パトランプと呼ばれる赤色灯の間にレーダーを装備している車両が多くなっています。また、スピードを出して交通違反者を追跡する時の運転の妨げにならないように、フロントガラスにバグガードと呼ばれる虫がつくのを防ぐ特殊なガードを装備しています。また、交通執行部隊のパトカーに乗る警察官は、万が一の事故に備えてパトカーでもヘルメットを着用している特徴もあります。

白バイの特徴

交通違反者をすぐに取り締まれるように、パトカーよりも機動性の高い二輪バイクも多く取り入れているのが交通執行部隊の特徴です。交通執行部隊の二輪バイクは「白バイ」の愛称でも親しまれ、正式名称は交通取締用自動二輪車または交通指導取締用自動二輪車です。機動性の高いホンダのVFR800PやCB1300Pなど、排気量800~1000ccクラスの二輪バイクが採用されています。また、2014年度からは新型の白バイとして、ヤマハのFJR1300Pも導入されています。

通常パトカーは無線を使用して連絡を取るために二人一組で行動を行いますが、白バイを使用する警察官は基本的に一人一台、かつ運転中は無線機を持つ事ができないので、白バイの警察官はヘルメットに無線が内蔵されています。

交通執行部隊の制服について

交通執行部隊の制服は、通常の警察官とは異なる青色の特別な制服を着用しています。白バイ隊員は男性隊員が青、女性隊員が赤や緑の制服(警察本部によって異なる)を着用しています。また、白バイは運転手である警察官が屋根や冷暖房もない状態で運転して職務を行いますので、冬季は防寒対策のほどこされた黒い革製の制服や、手袋なども着用します。

交通執行部隊の警察官も、他の警察官と同様に腰には手錠と拳銃を携帯しています。

交通機動隊について

交通機動隊とは、通称「交機」と呼ばれ、一般道での交通違反者の取り締まりや交通事故処理を行っています。また、白バイで駅伝や市民マラソンなど公道を使用するイベントが開催される時には、ランナーの先導を行う任務もあります。

各警察本部が管轄する地域ごとに、第一、第二などの番号が振られて配備されていますが、部隊の数は警察本部によって異なります。なお、日本全国で一番多くの交通機動隊を配備しているのは東京都を管轄する警視庁で、交通機動隊の数は10隊に及びます。さらに、警視庁交通機動隊独特の特徴として、第三方面交通機動隊として、警視庁騎馬隊を編成しています。


高速道路交通機動隊について

高速道路に関する警察の任務全般を担う

一般道を管轄にしている交通機動隊に対して、高速道路を管轄にして取り締まりを行っているのが高速道路交通機動隊です。通称「高速隊」とも呼ばれています。

交通機動隊が一般道における交通違反者の取り締まりを行っているだけに対して、高速道路交通機動隊は、高速道路上における交通違反だけでなく犯罪全般を取り締まるなど、高速道路上の警察任務全般を担うという特徴があります。例えば、高速道路上で起きた無免許運転や飲酒運転、速度超過や危険運転などの交通違反行為に対しての取り締まりを行うほかにも、高速道路上で起きた事故処理や、高速道路エリア内にあるパーキングエリアやサービスエリア上で起きた強盗事件や殺人事件などの刑事事件にも対処します。万が一殺人事件の容疑者などが高速道路を使用して逃亡している場合には、各高速道路の出口付近に緊急配備されて、検問なども行います。国賓などの要人がら高速道路を使用する場合には、要人の車両の先導を行うSPのような任務を行うこともあれば、各インターチェンジに配備されて一般車両の帰省なども行います。

高速道路交通機動部隊の配置について

高速道路交通機動部隊の基本的な編成は、高速道路交通機動部隊本隊が配備され、その下に各分駐隊が配備されています。分駐隊の名称は、高速道路のインターチェンジの名称を掲げていることが多く、例えば長野インターチェンジに配備されている高速道路交通機動部隊は長野分駐隊、首都高速道路新富インターチェンジに配備されている高速道路交通機動部隊は新富分駐隊、と名付けられています。

交通執行部隊の花形 「白バイ隊員」になるには?

白バイ隊員はとても狭き門

交通執行部隊の中でも、白バイ隊員に憧れる方は多いと思いますが、実はとても狭き門です。

まず、白バイ隊員になる第一歩として警察官にならなければいけません。警察官は地方公務員ですので、各都道府県警察本部が実施している警察官採用試験に合格します。警察官採用試験は、大卒・短大卒程度・高卒程度や社会人採用など各自治体の警察本部によって採用要項は異なります。また、試験日が異なれば複数の警察本部を併用して受験も可能ですが、警視庁と各都道府県の政令指定都市などの大規模な警察本部は同じ受験日が設定されていることが多いです。各警察本部で採用の特設サイトを設けていることも多いので、自分の受けたい警察本部の採用に関する情報は常に入手できるようにしましょう。

参考:
採用情報 | 平成30年度警視庁採用サイト
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyo/30/recruit/

その後警察学校に入学し、無事卒業後に配属先が決まります。初任配属先としては、地域警察である交番勤務か、交通警察が多くなっています。ここまでは、警察官の他の職種を目指す人と同じルートです。

初任配属先で警察官としての基本的な知識と経験、心構えを養った後、配属先の希望を初めて出すことができます。この時、交通執行部隊の白バイ隊員の希望を出し、受理されれば、各警察本部にある白バイ訓練所で白バイ隊員になるための専科教養を受けます。なお、専科教養を受けられる人数は限られているので、希望すれば全ての人が受けられるわけではありません。

専科教養では、白バイの運転方法から座学による学科まで約4週間の厳しい訓練を受けます。また、白バイの運転には大型自動二輪免許が必要ですので、専科教養を受ける前に取得する必要もあります。

また、白バイ隊員は単独で交通指導取り締まりや交通監視に当たることが多く、豊富な交通経験も必要です。交通執行部隊の白バイ隊員になった後でも、常に白バイ隊員としての勉強が必要です。そして、白バイの運転は高い技術力が必要なことに加えて、パトカーのように車両に覆われず運転者の身体がそのままの状態で運転するため、白バイ隊員も他の警察官に比べて自分の運転ミスによる殉職のリスクもあります。職務を全うする責任と共に、自らの身も守るための活動を行うことも求められます。

参考:
交通警察 | 警察官・警察行政職員紹介 | 平成29年度警視庁採用サイト
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyo/29/person/traffic01.html

交通執行部隊のイベントについて

市民である私たちが、警察の交通執行部隊の雄姿を見ることのできるイベントが毎年開催されています。最後に交通執行部隊に関するイベントを紹介しますので、交通警察や交通執行部隊、白バイ隊員を目指したい人や興味のある人は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

春・秋の全国安全交通運動に関するイベント

毎年4月ごろの「春の全国交通安全運動」および9月ごろの「秋の全国交通安全運動」の一環として、全国の警察本部では色々なイベントが行われます。

例えば東京都を管轄する警視庁では、バスやタクシーなどの民間企業と共同で、「全国交通安全運動に伴う官民一体による出陣式」を千代田区皇居外苑皇居前広場で行っています。人事報告や警視庁交通部長の挨拶のほか、警視庁交通執行部隊の白バイや騎馬隊、スポーツカータイプのパトカーや覆面パトカーなど計57車両の警察車両および関連団体の計33車両による圧巻の分列行進が行われます。

他にも、地域に密着した交通警察官とのふれあいイベントや交通安全教室など子供向けの交通安全を啓もうしたイベントや、警察官が街頭に立っての交通安全への取り組みやグッズ配布など、各警察本部によって様々な催しが行われています。


参考:
春の全国交通安全運動 警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/torikumi/safety_campaign.html

全国白バイ安全運転競技大会

各警察本部で操作技術が優れていると評価された白バイ隊員が選ばれ、かつ訓練を重ねた精鋭のみが出場できる大会が全国白バイ安全運転競技大会です。年に一度、日本全国の警察本部から選ばれた白バイ隊員が技術を競い、優秀な成績を残せば白バイ隊員として不動の名誉が与えられる、白バイ隊員にとっては目指すべき大会となっています。一般市民の入場も可能です。

参考:
全国白バイ隊員ここに集結!心技体の頂点を決める!
https://www.signalos.co.jp/news/motorcycle-police-tournament47/

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2018年4月9日時点調査または公開された情報です。
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