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【アメリカの移民問題】隣接するアメリカとメキシコの関係について

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遠く離れている日本でも、大きな話題になっている「アメリカとメキシコの関係」ですが、不法移民や密輸麻薬などくらいしか、知らないという人がほとんどかもしれません。

アメリカに住んでいると、アメリカとメキシコの問題は非常に現実的で、なおかつ、深刻な問題だということがよく分かります。特にメキシコとの国境周辺の南部の州では、英語よりもスペイン語を耳にする機会が多いほど、メキシコのあらゆる文化が定着しています。

今回は、話題になっているアメリカとメキシコの間には、いったいどのような問題や課題があるのかを、アメリカ在住の記者目線でご紹介します。

目次

アメリカとメキシコの歴史

まずは、アメリカとメキシコの成り立ちを理解する必要があるでしょう。

アメリカ合衆国の始まり

1776年、アメリカは、イギリスからやってきた白人(プロテスタント)たちによって作られた、13の州を基礎にした「アメリカ合衆国」を建国しました。アメリカ大陸の先住民であるネイティブインディアン達の土地などのあらゆる権利を、なかば強引に奪い取るかたちでスタートしました。

アメリカ大陸の東海岸から始まったアメリカは、独立宣言後もアメリカ大陸の領土を拡大していきました。東から徐々に西へ進出し、その都度、ネイティブインディアン達の領土を奪っていきました。

アメリカ・メキシコ対立の始まり

18世紀中頃、拡大を続けるアメリカ合衆国は、南へ侵攻を進めメキシコと戦争を起こします。これが「米墨戦争(べいぼくせんそう)」です。1846年から1848年まで続いたメキシコとの戦争は、現在のテキサス州を巡ったものでした。

もともとメキシコの領土だった、現在のテキサス州の土地に入植したアメリカ人は、その土地で共和国を設立すると宣言しました。それに反対したメキシコと衝突し、資金や人材不足に陥ったメキシコは敗北し、その場所はアメリカのものになったのです。

いまでは平和なテキサス州ですが、メキシコ人からすれば、アメリカ人に奪われてしまった土地でもあるのです。もともとスペイン領だったメキシコは、スペイン語が共通語ですが、同じアメリカ大陸であるものの、アメリカに対して憎しみを持った世代が多く、いまだに英語を共通語にしないところに、アメリカに対する反骨精神が垣間見えます。

アメリカの勝利で終わった米墨戦争ですが、アメリカはメキシコに対し賠償としてメキシコ国土の1/3を要求し、現在のカリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州を格安で譲渡され、アリゾナ州、ワイオミング州、コロラド州、ニューメキシコ州の管理権限を手に入れます。

これにより、現在のアメリカ合衆国の全体像が構成されます。アメリカは現在のアメリカ国土の姿に近づき、欲しかった太平洋へのアクセスまで手に入れました。反対に、メキシコは国土の3分の1を失ってしまいました。


アメリカとメキシコの関係を決定付けた米墨戦争は、アメリカ側は正義の勝利とし、メキシコ側はアメリカの武力干渉と捉え、両国間の溝は大きなものとなりました。

1821年にスペインからの独立を果たして以降、国力が疲弊していたメキシコからすれば、アメリカからも攻撃され、そのうえ土地までも奪われ「泣きっ面に蜂」状態だったのです。

後に判明することですが、メキシコはアメリカに奪われたカリフォルニア州のゴールドラッシュ、テキサス州の油田発見など、経済的に大成功できるはずだったチャンスを、指をくわえて見ているだけに終わったのです。

両国における「感情」については、1846年から1848年の米墨戦争が、きっかけになっていることは間違いないでしょう。両国の関係は、この頃から緊張状態にあることを理解しておきましょう。

アメリカを目指すメキシコ人、痛し痒しのアメリカ人

アメリカとメキシコの間には、米墨戦争をきっかけにした「わだかまり」があることは違いありませんが、時代は流れ、メキシコ人たちは、アメリカで生活することの方が生きていきやすいことを感じ始めます。

スペインからの独立、米墨戦争を乗り越えたメキシコは、深刻な財政問題に陥ります。現在の価値に換算すると、丸1日どんなに働いても1ドルか2ドルにしかならず、さらには、政府が疲弊しきっていたことから、職もない状態がメキシコ全体で起こってしまいます。

そんななか、アメリカではゴールドラッシュや油田採掘などの仕事が次々に生まれ、メキシコ人たちは、アメリカへ職を求めて向かいます。18世紀、19世紀初頭は現在のような国境の壁はなかったため、比較的簡単にアメリカに行けたのです。

金鉱や油田を牛耳るアメリカ人経営者の元で働きながら、自国よりも遥かに稼げることを知ったメキシコ人たちは、どんどんアメリカに押し寄せるようになります。そして、そのままアメリカに居着いたのが、現在の不法移民の始まりです。

ヒスパニック系人種(メキシコ人)増加の問題

1960年頃には、アメリカ国民の80パーセントを超えていた白人は、いつの間にかどんどん減っていき、2017年時点では55パーセントまで減少、15パーセント程度だったメキシコ人を含むスペイン語圏のヒスパニック系の人種が、30パーセント以上にまで数を伸ばしています。

このことから、アメリカはどんどんメキシコ人たちを始めとするヒスパニック系に、数で押され続けているのです。2050年には、白人は過半数を割る計算になっているため、トランプ大統領はヒスパニック系からアメリカを守るという強い意志を持って、これまでの大統領の誰よりも極端に、メキシコ人たちの不法入国を阻止しようと政策を強めているのです。

日本人にとって観光地として身近なカリフォルニア州や、トヨタ自動車が北米本社機能を移転したテキサス州などは、メキシコとの国境に近いため、メキシコ人の比率は極めて高く、メキシコ人による犯罪も他州と比較して高いのが特徴です。

その一方で、アメリカ人が手を汚したくないと考える、建設業などの肉体労働を買って出るメキシコ人たちによって、アメリカ経済の下支えが出来ていることも忘れていけません。

公表こそされていませんが、各州の政府機関は、メキシコ人の不法移民労働者の取り締まりを、いつでも実施出来るにもかかわらず、なかなか実施しない傾向があります。この背景こそが、本腰を入れてメキシコ人をアメリカから追い出してしまうと、経済の下支えを失ってしまうからなのです。

アメリカ人にとって、メキシコ人は時として厄介者になりますが、普段はレストランや工事現場などの日常のサービスを支えてくれている影の存在でもあります。アメリカのサービス業が、労働力であるメキシコ人を失った場合、店の経営が成り立たず、結果的に税収が減るため、各州の政府機関も頭が痛い事情があるのです。

増え続けるメキシコ人などのヒスパニック系の人種問題は、アメリカを目指すメキシコ人と、自国を守りたいアメリカの思惑が交差する問題です。


薬物の仕入れ先と顧客の関係

トランプ大統領は大統領選のときの公約として、メキシコとの国境に壁を作ることを主張しました。メキシコ人をアメリカに入れないという強硬な姿勢は、増え続けるメキシコ人に不満を持った一部のアメリカ人から支持されます。

大統領就任後、1年が経過した2018年時点でも、国境に壁を築くことを主張し続けています。そこまでして壁を築くことにこだわるのには、不法移民を減らすことと、ドラッグ密売人を入れたくない、という2つの理由があります。

アメリカにとって麻薬などのドラッグは深刻な問題です。そんな麻薬はメキシコで生産されているため、裏社会ではアメリカとメキシコは、非常に強い結びつきがあるのです。これを阻止したいというアメリカ政府の思惑が、国境に壁を作ることに表れているのです。

アメリカが抱えている薬物問題は、具体的に15歳以下の男女の、マリファナなどの薬物利用比率が35パーセントという数字に顕著に表れています。大人になってからもマリファナを吸う人は多く、まともに働けなくなったり、社会で正常な判断が下せない人が多いなど弊害が出ています。

近年では、カリフォルニア州などのように、マリファナを合法的に吸える州も増え続けており、アメリカにとって薬物問題は非常に身近で、放っておくわけにはいかない問題になっています。

しかし、隣国であるメキシコは、マリファナなどの生産量が世界一で、なおかつ、アメリカとの国境に面しているため、マリファナは大きなビジネス市場になっています。メキシコでは1ドル以下で生産できるマリファナが、アメリカに持ち込めば10倍以上の値になるため、メキシコにとっても旨味がある話なのです。

アメリカ政府の思惑としては、表面上はメキシコからの薬物ルートを断つという気持ちがあるものの、薬物市場はあまりにも大きく、ビジネスに繋がるため防ぎきれない事情が見え隠れしています。

マリファナなどの薬物は、アメリカにとってはメキシコから簡単に入手でき、メキシコにとってはアメリカという大きな買い手が近くにいるという、持ちつ持たれつの関係が成立しているのが実情です。

薬物問題を解決しようとしているアメリカ政府の思いをよそに、薬物問題は日常に溶け込んでいるため、銃問題と同様に、解決はされない問題と言えるでしょう。

まとめ

アメリカとメキシコは、米墨戦争をきっかけにして複雑になりました。しかし、いまではアメリカ社会をメキシコ人が支えている実情があり、さらには、アメリカ人は薬物をメキシコから仕入れているという関係が成立しています。

アメリカもメキシコも、この関係に亀裂を入れてしまうことは、今よりも一層複雑化してしまうことを分かっているため、微妙なバランスを続けているのです。

アメリカ人からすれば、実際には両国は断絶できない関係でありながら、メキシコ人を追い出すパフォーマンスに走るトランプ大統領は、滑稽に映っているのが現実です。

本記事は、2018年5月11日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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