【アメリカの「地域性」分析】アメリカの4つの地域と9つの地区について

アメリカは50の州とワシントンD.C.というコロンビア特別区で構成されており、4つの地域とさらにそれを9つの地区に区分けしています。

今回は、アメリカの地域や地区の特徴や、そこで生活している人たちの性格などご紹介します。アメリカの国民性や、地域による特性を理解するうえで活用いただければ幸いです。


アメリカ政府が定める地域と地区

アメリカ政府は広大なアメリカの国土を、連邦法で明確に4つの地域、9つの地区に区分けしています。

4つの「地域」とは、北東部、中西部、南部、西部です。これらを「地区」という単位で9つに細分化しています。

北東部はニューイングランド、大西洋岸中部。中西部は東北中部、西北中部。南部は大西洋側南部、東南中部、西南中部。西部はロッキー山脈地帯、太平洋側という地区に分けられています。

日本でも政治や経済のニュースでは、これらの地域または地区を使った表現をされることがあると思います。他にも天気予報や、時差を表す際に用いられる地域表現もあります。特に時差を表す際には東海岸、中西部、山岳部、太平洋、アラスカ、ハワイなど違う区別がされています。

様々な表現を耳にする機会があると思いますが、アメリカの連邦法で定められている地域と地区を理解しておくと、基準が出来ますのでぜひ押さえておきましょう。

各地域や地区の特徴

日本の20倍以上もあるアメリカ国土は、気候も違うだけでなく、経済状況、宗教観、銃やドラッグなどに対する受け止め方など大きく異なります。

日本では地域によって薬物に寛容的ということなどはあり得ませんが、アメリカではそのようなことが実際にあり得ます。さらに、人種差別が酷い地域もあれば、移民を積極的に受け入れる地域もあり、同じアメリカでも地域によってまったく異なるという不思議な状況があります。

ここでは、アメリカの地域や地区にどのような特徴があるかを掘り下げてみたいと思います。もちろん、一般的に言われていることであって、個人の考え方までも断定するわけではありません。地域や地区の特性を大まかに知る程度で読み進めてください。

北東部(ニューイングランド・大西洋岸中部)

アメリカの北東部と呼ばれる地域は、アメリカで最も古いエリアとして知られています。とくに、ニューイングランド地区は名前がそれを示しているように、アメリカ建国以前にイギリスからアメリカ大陸にやってきた人たちが築いたことから「新しい英国」と呼ばれています。

アメリカなのにニューイングランドとはおかしな表現だと思う人も多いでしょうが、イギリスからやってきたプロテスタントたちが、後のアメリカの原点となる13植民地を築いたことから、このように呼ばれているのです。

いまでこそ巨大な国になったアメリカですが、もともとは北東部を中心に始まったのです。そのため、このエリアにはアメリカ建国から代々続く家系が多く、非常にプライドが高い人が住むエリアとされています。


一方で、アメリカの歴史のなかで悲しい歴史があるエリアともされており、先住民だったワンパノアグ族やポウハタン族などのインディアンたちが白人によって性別、年齢を問わず大量虐殺を受けた舞台でもあります。

1675年にはインディアンたちが同盟を組み、土地を奪おうとする白人たちと争った「フィリップ王戦争(インディアン戦争)」が起こりました。4,000人以上のインディアンが殺され、インディアンたちが共有財産と主張する土地は奪われました。

アメリカ建国の地として有名な北東部ですが、このような悲しい背景があることも知っておくといいでしょう。このことはアメリカではほとんど教えられることはありません。

北東部はアメリカが始まった場所であることから、移民が多いカリフォルニア州などと比較して、教養や年収も高く、言うならばアメリカの貴族に該当する人が他州と比較した際には多いと言えるでしょう。ちなみに、日本人に馴染み深いニューヨークは、北東部の大西洋岸中部地区に該当します。

中西部(東北中部・西北中部)

アメリカの中西部と呼ばれるこの地域は、アメリカのなかでもカントリーサイド(田舎町)という印象が強く、穏やかで友好的な人が多い地域とされています。その背景には農業を中心に栄えたことや、ドイツ系アメリカ人が多く、そもそも実直な人柄の人が多いことが挙げられます。

キリスト教が多いアメリカですが、東北中部はカトリックが多い傾向があり、古くから宗教観を大切にする人が多いとされています。非常に真面目な人が多く、政治にも経済にも慎重な地域と言われています。

中西部は「文化の交差点」と呼ばれてきた歴史があります。ニューイングランド地区から土地を求めてやってきた人たちと、東海岸を避けて五大湖やミシシッピ川を通じてドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどヨーロッパからの移民がちょうど合流したのがいまの中西部とされているためです。

そのため、アメリカのなかでもヨーロッパの文化も根強いエリアとされており、いまでもペンシルベニアドイツ語を話す人もいるほどです。寒い国からやってきた人たちの子孫が多いため、穏やかで我慢強い人が多いと言われているようです。

アメリカの政治は民主党と共和党の2大政党とされていますが、共和党は中西部が発祥の地です。1850年に奴隷制度が広まることを防ぐために設立されたことが起源で、1900年頃には革新主義運動も中西部から始まりました。革新主義運動では、政府の腐敗をなくすために、国民の意思を反映した政府作りを目指しました。

そんな中西部は諸外国の政治や戦争に口出しすることを嫌う人が多く、日本人からすればとても真面目で親しみが湧く人が多いエリアと言えるかもしれません。

南部(大西洋側南部・東南中部・西南中部)

アメリカの南部と呼ばれる地域は広く、アメリカの首都であるワシントンD.C.もここに含まれています。アメリカのなかでも最も様々な文化や特徴があるエリアとされていますが、南北戦争や奴隷制度など暗い歴史が残る地域でもあります。

南部ではニューイングランドからやってきた人たちが綿花とタバコ栽培を始めました。広大な土地と、膨大な作業を進めるには人手が必要でした。それを解消するためにアフリカからイギリスを通じてやってきた黒人を奴隷として働かせたのです。これが奴隷制度の起源です。安い人件費で莫大な利益を生んだ綿花とタバコ栽培は急激に南部の各地に拡大しましたが、それに合わせて奴隷も増えていきました。

この状況を知った北東部の人たちは奴隷制度を非人道的だと非難しますが、南部の人たちは生活がかかっているためこれに反発し、1860年には南部11州は独立して南部連合を結成します。これがアメリカ南北戦争の始まりです。

南北戦争の結果、市民50,000人以上を含む700,000万人以上の人が命を落としました。歴史上、アメリカが関連した戦争のなかで最も犠牲者が多かった戦争となった南北戦争は、アメリカ国内での争いだったという皮肉な歴史なのです。

南部では、いまでも白人至上主義の人が多く、保守的な地域と言われがちです。近年、アメリカが抱えている白人至上主義問題は、南部が火種になると考えている人も多く、潜在的な問題として懸念されています。


西部(ロッキー山脈地帯・太平洋側)

アメリカの西部と呼ばれる地域は、比較的歴史が浅い地区が多く、移民やドラッグ問題に寛容的な風潮があります。代表的な州はカリフォルニア州ですが、カリフォルニア州がその典型であるように、移民、起業、薬物などあらゆる面で寛容的な地域と言えるでしょう。

ニューイングランドから開拓を続けてきた人たちは、西部地域を最後の開拓地として太平洋を目指してきました。もともと、メキシコの国土だったカリフォルニア州の土地は米墨戦争で勝ち取り、後にゴールドラッシュに繋がっていきます。

中心都市だったロサンゼルスにはアジア系の移民も集まり、ヒスパニック系を含めて多人種の地区として発展していきました。温暖で快適な気候だったカリフォルニアでは農業が盛んになり、現代ではIT産業に姿を変えています。

北東部や中西部とは異なる移民文化や、寛容的な姿勢はアメリカのなかでも頭ひとつ抜けていると言えるでしょう。一方で、連邦法を無視したマリファナ解禁や、移民の犯罪や税収の問題など課題が多いエリアでもあります。

まとめ

アメリカには4つの地域と9つの地区がありますが、いずれもその地域の歴史と強い結びつきがあるのが特徴です。地域によって全く異なる特徴は、大きすぎてあらゆる文化が混在するアメリカがひとつになるのは容易ではないことを表しています。

広いアメリカの地域性の特徴を掴めば、アメリカの政治や経済、そして歴史を理解できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。

本記事は、2018年5月10日時点調査または公開された情報です。
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