キャリア公務員が出会いで変わっていく様を描いた『県庁の星』
『県庁の星』は、桂 望実さんの小説を原作とした映画です。2006年に劇場公開され、現在DVDが発売されています。
県庁のキャリア職員が登場する『県庁の星』
『県庁の星』は、県庁のキャリアとして将来を期待される主人公・野村 聡が、スーパーのパート店員・二宮あきと出会い、時に衝突、時に協力する姿を描いた物語です。
主人公の野村 聡は、県庁のキャリア職員として、将来を期待された「県庁の星」と呼ばれています。そして、プライドが高く、出世欲が高い人物でもあります。
野村は、民間企業との人事交流研修の一環として、経営差し止め寸前のスーパー「満天堂」へ派遣され、経営立て直しのために動き出します。野村に教育係としてついたのは、パート店員として働く年下の女性・二宮あきです。二宮はやる気がなく、上昇志向の高い野村とは正反対の性格です。
そんな二宮の態度に呆れていた野村ですが、スーパーでは県庁の常識は通用せず「役立たず」としてお荷物扱いされてしまいます。さらに、その後も県庁で関わっていたプロジェクトのメンバーから外される、婚約者から婚約破棄を言い渡されるなど、スーパーへの派遣をきっかけにさまざまな困難が野村の身に起こります。
心がおれかけていた野村を救ったのは、正反対の人物だと思っていた二宮でした。
『県庁の星』の見どころ
『県庁の星』では、キャリア公務員が務める「行政」とパート職員が務める「民間」の価値観・認識の違いがユーモアたっぷりに描かれています。
野村が務める県庁では、県民が暮らしやすい街を作るための「過程」を重視して活動しています。対する二宮が務めるスーパー=民間では、利益を出すために売り上げを作り出す「結果」を重視して活動しています。この価値観・認識の違いによって最初は衝突していた2人が、ある「出来事」をきっかけに共通の認識で活動することになります。この「出来事」というのが、思わずきゅんとしてしまう出来事で……気になる方はぜひともチェックしてみてください。
県庁のキャリア職員・野村を演じるのは『踊る大捜査線』で知られる織田裕二さんです。『踊る大捜査線』では、ノンキャリアの警察官を演じていた織田さんが、キャリア職員を演じていることもある意味見どころかもしれません。そして、スーパーの店員・二宮を演じるのは『大河ドラマ おんな城主 直虎』で知られる柴咲コウさんです。
『県庁の星』作品情報
2006年に公開された『県庁の星」は、興行収入20.8億円を記録しています。
監督は、『白い巨塔』『ガリレオ』などで知られる西谷 弘さんです。主演は織田裕二さん、ヒロインは柴咲コウさんが演じています。さらに、佐々木蔵之介さん、和田聰宏さん、酒井和歌子さんらが出演しています。
若手地方公務員が観光促進のために躍進する『県庁おもてなし課』
『県庁おもてなし課』は、有川 浩さんの小説を原作とした映画です。有川さんは、『図書館戦争』や『空飛ぶ広報室』など、「公務員」をテーマにした小説を数多く執筆している小説家です。
2013年に劇場公開され、現在DVDが発売されています。
地方公務員が登場する『県庁おもてなし課』
『県庁おもてなし課』は、原作者・有川さんの出身地である高知県の県庁を舞台とした物語です。高知県庁では、やる気に満ち溢れた若手公務員職員・掛水史貴を担当職員として、観光促進を目的とした「おもてなし課」が発足します。
掛水は、おもてなし課を発足するも、何をすればいいのか分からず悩みます。そこに地元出身の作家・吉門から電話が届き、おもてなし課の「役所気質」と「民間とのズレ」を批判されてしまいます。加えて吉門は、おもてなし課に若くてアンテナの広い女性を配置すること、県庁の元職員で「パンダ誘致」を提案していた人物を配置することをアドバイスします。
掛水は、喜門のアドバイスを基にメンバーを探し出し「本当のおもてなし」をするために動き出します。
『県庁おもてなし課』の見どころ
『県庁おもてなし課』は、原作者の有川さんが実際に高知県から観光特使を依頼された時の話がモデルになっています。有川さんは、観光特使として活動することに加えて、実際にあったエピソードを物語にすることで地方活性に繋がると考えたそうです。
『県庁おもてなし課』は、高知新聞で連載された後に、さまざまな地方新聞で連載されます。そして、書籍化の後に映画化されるなど、結果として広く高知県のおもてなし課の存在が広まったことは有川さんの狙い通りなのかもしれません。
物語としては、高知県の美しい風景を楽しみながらも、「おもてなし課」として高知県の観光促進のために奔走する若手公務員・掛水、そんな掛水にアドバイスを送る喜門の関係性、掛水が集めた仲間たちとの関係性が見どころです。そして、有川さんの小説といえばラブストーリーも見どころのひとつ。登場人物たちの恋模様にも注目です。
『県庁おもてなし課』作品情報
2013年に公開された『県庁おもてなし課」は、興行収入6.9億円を記録しています。
監督は、『僕と彼女と彼女の生きる道』、『アットホーム・ダッド』などで知られる三宅喜重さんです。主演は錦戸 亮さん、ヒロインは堀北真希さんが演じており、関 めぐみさん、甲本雅裕さん、松尾 諭さんらが出演しています。
市役所職員が6人の殺人者を信じ、疑う『羊の木』
『羊の木』は、原作・山上たつひこさん、作画・いがらしみきおさんによる漫画を原作とした映画です。2018年2月に劇場公開されました。
市役所職員が登場する『羊の木』
『羊の木』は、富山県の市役所が、政府の要請で凶悪犯罪を犯した受刑者6名を秘密裏に受け入れ、人間性を更新させるプロジェクトで巻き起こる事件を描いたサスペンスドラマです。
受刑者たちの窓口となった市役所の職員・月末 一は、誠意を持って接していくも、危険なオーラを漂わせる男や、気弱ながらも怒らせると危ない男、一件普通に見えるが凶悪犯罪を起こしていた男などクセのある6名の受刑者に振り回されていきます。しかし、気持ちを新たに生きていこうとしていく受刑者たちを見守るうちに、親しみも抱き始めます。
しかし、一時は穏やかに流れていた日々も、ある事件をきっかけに崩れ始めていくのです。
『羊の木』の見どころ
『羊の木』は、これまでご紹介した「地方公務員の活躍」とは少し異なり、サスペンス色の強い作品です。
元受刑者を受け付けていることを知るのは、市長や市役所の職員・月末ら限られた人だけ。過疎化が進む地方都市が受刑者を受け入れることで人口減少を留めようと考え、国は受刑者にかかる税金を削減することができる。このようなプロジェクトは実際しないのですが、「もしかしたら知らないだけであるのかもしれない」と思わされてしまうリアルさがあります。
また、犯した罪を償っているとはいえ、受刑者たちは元凶悪犯罪者たちです。今は更生しようと考えていても、もしかしたらまた事件を起こすかもしれない、もしかしたら自分の大切な人が事件に巻き込まれるかもしれない……そう考えだすと「信じようとしても信じられない」という気持ちが沸いてくる。人間の猜疑心と信頼感を見ることができる作品です。
『羊の木』作品情報
2018年に公開された『羊の木』は、興行収入5.9億円を記録しています。
監督は、『桐島、部活やめるってよ』、『紙の月』などで知られる吉田大八さんです。主演は、錦戸 亮さんで、木村文乃さん、北村一輝さん、優香さん、市川実日子さん、松田龍平さんらが出演しています。
地方公務員が死を前に今を考えた『生きる』
最後にご紹介するのは、1952年(昭和27年)に公開された『生きる』です。今からおよそ60年前の作品で、DVDとして発売されています。
地方公務員が登場する『生きる』
『生きる』は、名匠・黒澤 明さんが監督を務めた映画として知られています。物語の主人公・渡邊勘治は、市役所の市民課長を務める50代の男性で、毎日書類に判子を押すだけの無気力な日々を送っていました。その日々は「生きているけれど、死んでいるよう」です。しかし、自分の余命が僅かだと知った時、「今を生きる」ことを考え始めるのです。
『生きる』の見どころ
『生きる』は、公務員としての生き方を描いた作品であり、公務員という生き方を皮肉った作品でもあります。
主人公・渡邊は、30年以上無欠勤を貫くことを誇っていた公務員です。娯楽を知らず、ただ毎日を役所で判子を押すことに費やしていました。しかし、余命が僅かであることを知ると、初めての夜遊びを試してみたり、仕事を無断欠勤してみたりと、これまで経験したことがなかったことにチャレンジし始めます。
そして、次第に「公務員としての生き方」にも向き合い始め、これまで成しえなかった仕事を行います。この映画は、人や公務員としての生き方だけでなく、「できないことはない」ということを知ることができる作品でもあります。
また、主人公が「いのち短し 恋せよ乙女~」の歌詞で知られる『ゴンドラの唄』を口ずさみながらブランコをこぐシーンは名シーンとして有名です。60年前の作品ではありますが、描かれているものは今もなを通ずるものばかりですので、ぜひともチェックしてみてくださいね。
『生きる』作品情報
1952年に公開された『生きる』は、『七人の侍』、『隠し砦の三悪人』などで知られる黒澤 明さんが監督を担当しています。主演は志村 喬さんで、日守新一さん、田中春男さん、千秋 実さん、小田切みきさんらが出演しています。
まとめ
今回は、地方公務員が登場する映画をご紹介しました。
どの作品もさまざまな角度から「公務員」という仕事が描かれています。
公務員を目指す皆様、是非、こうした作品をチェックしてみてください!
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