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「福祉専門官のポスト」と「刑務所とハローワークの関係」について

【国家公務員「刑務官」のコラム】

今回は、最近の矯正現場(刑務所や少年院、少年鑑別所の実務現場)の様子での、「福祉専門官のポスト」についてと「刑務所とハローワークの関係」についての2つテーマのコラムです。

2018年06月16日更新

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目次
最近の矯正現場の様子
福祉専門官というポスト
刑務所とハローワークの関係について
まとめ
【受刑者の就労支援】再犯防止に舵を切った刑務所について

刑務官が読む機関誌「刑政」(矯正協会発行、2018年1月号)に掲載された記事から興味深いものを紹介します。

この「刑政」では、毎年1回程度「会長を囲む座談会」という特集が組まれます。「会長」というのは矯正協会の会長のことであり、矯正協会とは刑務所や少年院などの職員から会費を集め、それで運営されている公益財団法人のことです。

その歴史をたどると明治時代までさかのぼり、この種の組織としては日本一クラスの伝統を誇る組織です。そしてその会長は、その昔は総理大臣が務めていたこともあるのですが、「官」の色彩が強いことを批判されるようになって最近は様変わりし、現在は元中央大学教授の藤本哲也氏がその任に当たっています。

この方は知る人ぞ知る我が国の刑事政策の権威であり、私が現役時代には矯正研修所の講師を務めていただいたこともあってお世話になった方でもあります。

最近の矯正現場の様子

さて、その藤本矯正協会長を囲む座談会の記事ですが、今回は「再犯防止への思いを語る」と題して、刑務所をはじめ少年院、少年鑑別所の現場の代表に加え、法務省の矯正局と保護局の担当者などが集まって座談会が行われ、その内容を紹介するものとなっています。

この「会長を囲む座談会」の特徴は、その時代時代における矯正行政が抱える中心的な課題をテーマに据えて議論されることです。ある意味、最も重要でかつ難しいテーマが扱われると言ってもいいと思います。ですから、この座談会の記事を読むと、最近の矯正現場(刑務所や少年院、少年鑑別所の実務現場)の様子がよく分かるので参考になります。

ということで、その記事の内容についてですが、私が興味を抱いたところのうち二つだけ紹介します。

福祉専門官というポスト

1番目は、ほかの刑務所からは首席矯正処遇官とか統括矯正処遇官という役職に就いている刑務官が出席しているのに、岩国刑務所(女子刑務所)からは「福祉専門官」という肩書の人が出席していることです。私が現役時代には無かった職名で、社会福祉士の資格を持つ方のポストとして最近作られたようです。

私が現役時代のおしまいの頃には福祉士の方を非常勤職員として採用し、その専門的な知識を生かして受刑者の社会復帰を支える仕事をしてもらえるようになっていたのですが、最近ではこのように常勤職員としてのポストが出来て、本格的に仕事ができるようになったわけで、刑務所のここ数年の動きを象徴するような変化だと思いました。そしてまた、今回の座談会のテーマである再犯防止について格好の出席者だと思いました。

その福祉士さん(井上さん)は、高齢とか障害がある受刑者の社会復帰に関して「客観的には支援が必要だと思える者でも、本人が拒否すれば支援ができない」ことがあって困っていると訴えていました。つまり、現行の福祉制度では本人から申請があってはじめて支援できるという仕組みになっているので、本人が拒否したら何もできなくなってしまうということを嘆いているのです。

実際、天涯孤独の高齢者や障害者が満期釈放になった場合、何らかの支援なしには生きていけないことが明々白々な場合があります。このようなとき、元受刑者の場合には往々にして窃盗とか無銭飲食(詐欺)を繰り返します。彼らの多くは福祉制度についての知識を持たず、仮に持っていても面倒などといった理由でそれに頼ろうとせず、安直に犯罪に向かってしまいます。彼らの理屈で言えば、「そうしないと死んでしまうから」。

このような人たちに、何とか服役中に福祉制度のことを理解してもらい、また同時に、スムーズに福祉の支援を受けられるように刑務所の中にいる間に環境を整えたい。この福祉士さんはきっとそう思っているのだと思います。そして至極もっともなことだと思います。

福祉制度の根幹にかかわることですから簡単なことではないかもしれませんが、放置しておけば犯罪の被害に遭う国民が出てしまうことが確定的なのですから、そのような場合には、国民を守るという観点からこのような受刑者を福祉のレールに乗せる制度にしてほしいものだと切に思います。

付言すると、この福祉関係の職員に関する法務省矯正局山本更生支援室長の発言にも興味深いものがありました。平成18年度当時、矯正施設には4~5人程度の福祉関係職員しかいなかったそうですが、平成29年度にはこれが234人まで増えているとのことです。驚異的な拡大です。ここに最近の国・法務省の力の入れ具合がはっきりと見えたように思います。

刑務所とハローワークの関係について

2番目に興味深かったのは、刑務所とハローワークとの関係です。ハローワークの職員が刑務所に駐在して受刑者の就労支援を行うという試みがスタートしたのは平成27年のことだそうですが、この座談会が行われた時点(平成29年)では全国の25の刑務所で行われるまでに拡大したとのこと。全国の刑務所の3割以上ということになります。いい傾向ですね。

まとめ

座談会の中で、実際にこの駐在員が活動している札幌刑務所の職員から、これら駐在員の活躍によって、扱ったケース27件のうち10件について就職の内定が得られたとのことです。

「何だ、半分以下じゃないか!」

と思う方もいるかもしれませんが、私が知る限りこれは相当高い数字です。以前なら受刑中にハローワークの活躍で就職先が決まることなどほとんどなかったからです。いよいよ本格的な支援が始まったのかもしれないと嬉しく思い、また今後を期待したい思いです。

(文:小柴龍太郎)

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