【受刑者の服役生活に潤い!?】「塀の中の放送局」について

【国家公務員「刑務官」のコラム】
今回のテーマは「塀の中の放送局」です。

コミュニティFM(ラジオ)放送と刑務所との取組の例を、三つの刑務所の例を紹介しながら、そのポイントを解説しています。執筆は、元・刑務官の小柴龍太郎氏です。

刑務官が読む機関誌「刑政」(矯正協会発行、2018年2月号)に掲載された記事から興味深いものを紹介します。

今回は、「塀の中の放送局」です。

「塀の中の放送局」について

刑政2月号では「矯正施設とコミュニティメディア」と題する特集記事を掲載しています。具体的にはコミュニティFM(ラジオ)放送と刑務所との取組の例を紹介しているのです。三つの刑務所の例が紹介されているのでそのポイントを説明します。

富山刑務所の例

まずは富山刑務所の例です。

富山刑務所では、毎月1回、夕食後の時間帯に1時間半にわたって受刑者向けの「生放送」が行われています。中心となるのは受刑者から寄せられたリクエスト曲を流すことですが、その合間にはディスクジョッキーのトークがあります。この方はお坊さんで、過去には民間の放送局でディスクジョッキーをやっていたという珍しい経歴を持った方で、いわばプロです。

始まったのは昭和54年。それ以来ずっとこの方が中心となり、パーソナリティを迎えてお話を交えながら台本無しで放送を続けてきたとのことです。「すごいなあ」と思います。

また、リクエスト曲の音源は地元の放送局から借用しているとのことで、この放送局の協力がなければ塀の中の放送もできません。どこの刑務所でもこのような「塀の中のラジオ放送」ができるものでもないというのは、案外このようなところにもあるのかもしれないですね。

府中刑務所の例

次は府中刑務所です。日本一受刑者数が多い府中刑務所では近くの「調布エフエム」という放送局に番組制作を依頼し、その職員が府中刑務所に来て所内向け放送をやっているようです。個人にお願いしている富山刑務所とはその点が違います。面白いのは、番組放送中に刑務官がそれを聴いている受刑者の生の声を聞いてきて、それを番組のトークをやっている方に伝えるのだそうです。そしてその声がまた番組で流される。刑務官が現場からのリポートを送る役割を果たしているようで、少し笑えます。

この企画は平成18年に始まったということなので10年を経過しました。ほぼ定着したとみていいでしょうね。日本を代表する府中刑務所でこのようなことができたということは、全国への波及効果が大きいと思います。つまり、府中刑務所というのは大きいだけに小回りがききにくく、新しい取組を始めることが容易でないのです。その府中刑務所ができたわけですので、
ほかの刑務所からすれば、
「ウチではできません!」
と言いにくいということです。たとえそんな消極的な動機でもいいので、このような取組がもっと全国に広がっていってほしいと思います。

札幌刑務所の例

最後は札幌刑務所の例です。

こちらは「苗穂ラジオステーション」というのだそうです。「苗穂」(なえぼ)というのは札幌刑務所の所在地から来ています。スタートは平成23年だそうですから比較的新しい企画です。

ここの所内向けのディスクジョッキー番組の特徴は、この放送が刑務所の中だけでなく一般社会に向けても放送していること。こんなことは全国の刑務所でもここだけのようです。

その理由は、この番組の制作を地元のコミュニティ放送局である「三角山放送局」に依頼したところ、放送局の方から刑務所に対して、「この番組を一般リスナー向けにも放送させてほしい」との申し出があったからなのだそうです。

曲のリクエストと共に受刑者からの思いなどをしたためたコメントが寄せられるのですが、それを見た放送局の方が感じるところがあって、「ぜひとも地元住民にもこの思いを知ってほしい」と刑務所に依頼したのだとか。

当初は刑務所が面食らってこの申入れを断っていたのだそうですが、その熱意にほだされて結局OKしたとのこと。いやあ、それにしてもよく刑務所が決断したと思いますし、おそらくそれに先立って監督官庁にもお伺いを立てたでしょうから、矯正管区とか法務省がよく認めたと思いますね。アッパレです。

幸いなことに刑務所などが心配していたリスナーからの苦情はなく、むしろ出所した受刑者がこの番組を聴いて「苦しい時の励みになる」とのお礼の手紙が寄せられるなどして、好評なのだそうです。

この取組によって、住民の方の受刑者に対する理解だとか、彼らの更生に対する支援の気持ちがどれほど高まるかは分かりませんが、先駆的な取組として大いに頑張っていってほしいと思います。

まとめ

ということで、三つの例を紹介しましたが、刑務所ではこのように様々な取組をしています。そのことに対する賛否両論は刑務所側にも一般国民側にもあるかと思いますが、私は大いにやったらいいと思っています。

これによって受刑者の服役生活に潤いがもたらされ、更生のための力を蓄えることなどに有効だと思うからですし、直接・間接に一般の方々が受刑者の実態を知り、その更生を応援しようという気持ちになってもらうためにも有効だと思うからです。

(文:小柴龍太郎)

本記事は、2018年10月18日時点調査または公開された情報です。
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