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アメリカで誕生した「宇宙軍」とは?-第6の軍隊の誕生

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目次

はじめに

2019年12月20日、トランプ大統領がアメリカ史上3人目の弾劾訴追された不名誉な記録を残したわずか2日後、アメリカは世界中に対して「宇宙軍」の正式な発足を公表しました。

トランプ大統領が2020年度国防権限法に署名したことで発足した宇宙軍とはいったい何なのでしょうか?これからの将来、アメリカは宇宙までも支配するつもりなのでしょうか?

今回はアメリカの宇宙軍について、その役割や存在価値、構想実現までの背景などをまとめて解説します。

アメリカ宇宙軍とは?

アメリカ宇宙軍とはアメリカ軍のひとつで、陸・海・空・海兵隊・沿岸警備隊に続く第6の軍として創設された集団です。

実は、宇宙軍の前身は1985年9月23日にすでに発足しており、2002年にアメリカ戦略軍に整理および統合されていました。しかし、2018年12月トランプ大統領によって陸軍・海軍・空軍の各軍種を統合した軍隊である「統合戦闘集団」として再編成することが決められました。

そして、2019年3月26日に空軍大将John W. Raymondが宇宙軍司令官に任命され、上院で承認後、宇宙軍の創設が発表されます。2019年12月20日、トランプ大統領が2020会計年度国防権限法に署名したことでアメリカ宇宙軍は正式に発足しました。ちなみに、アメリカ宇宙軍は英語では「United States Space Command」と呼びます。

アメリカ宇宙軍の役割や目的

アメリカ宇宙軍の主な役割や目的は「各種衛星の防衛」や「国益に必要不可欠な宇宙空間での平和的活動」、さらに「弾道ミサイル発射の早期警戒」などが含まれています。また、国防に関する通信やコンピューターネットワークの運用にも関与していることから「アメリカの防衛」に注力する軍隊と考えると良いかもしれません。

アメリカ宇宙軍という名称から宇宙空間での戦闘で活躍する軍隊を連想しがちですが、あくまでもアメリカの国益のために宇宙空間を中心にして様々な活動をするための組織です。

アメリカ宇宙軍の組織体系

アメリカ宇宙軍は行政的にはアメリカ空軍省の管轄になり、これまで空軍内にあった宇宙関連部隊の16,000名ほどが5年ほどかけて新たに創設された宇宙軍に移動または新規就任することになります。軍としての規模は非常に小規模で、同じような存在に該当する海兵隊(約22万人)や沿岸警備隊(約5万人)と比べても小さいことが分かります。

アメリカ宇宙軍は「統合軍宇宙構成部隊」と「統合宇宙防衛任務部隊」のふたつで編制されており、統合軍宇宙構成部隊は宇宙空間の衛星などを通して宇宙および地上の戦闘時に貢献することが目的で、統合宇宙防衛任務部隊は宇宙や地上でアメリカの脅威となる存在から資産を保護するという目的があります。

統合軍宇宙構成部隊は英語で「Combined Force Space Component Command」、統合宇宙防衛任務部隊は「Joint Task Force-Space Defense」で、それぞれ頭文字を取って「CFSCC」や「JTF-SD」と呼ばれています。


アメリカ宇宙軍の予算

2019年12月20日にトランプ大統領が署名した2020会計年度国防権限法(2019年10月から2020年9月)の予算は7,380億ドル(日本円で約80兆円)で、そのうちのおおよそ29%に該当する2,140億ドル(約24兆円)が宇宙軍の管轄である空軍省に割り当てられるとされています。宇宙軍ではどのようなことに予算が使われるか細かくは公表されていません。

アメリカ宇宙軍構想とは

アメリカ宇宙軍構想とは、宇宙空間を担当するアメリカ軍の新軍種設立までの構想のことを指します。2020年時点、アメリカ宇宙軍構想は進行中で、まずは200名ほどのスタッフで宇宙軍本部組織を設立し、順次部隊を追加していく予定です。2024年度までに運用、教育、訓練などの部門でおおよそ16,000名の人員配置を目指しています。宇宙軍構想は初年度の予算成立から5年計画で進められる予定です。

このアメリカ宇宙軍構想が支持された理由には宇宙空間における軍事利用で3つのメリットがあると考えられたからです。ひとつめは「宇宙関連部署の一元化」です。これまでアメリカの宇宙開発や資器材(衛星など)の調達などは国防総省を含め60以上に及ぶ組織に細分化されていたため、予算の競合や意思決定の遅延など非効率さが目立つものでした。しかし、宇宙軍が創設されることで予算配分や意思決定が円滑に進むようになることから宇宙軍構想が支持されました。

ふたつめの理由が「人材育成」です。これまでアメリカの政府主導の宇宙開発に携わる人員は軍や専門機関に散在し、それぞれで配置転換や離職などが起きるため専門分野でのキャリア育成が叶わない状態でした。優秀な人材を安定した環境で育成し、国家利益に還元させるために宇宙軍の創設、つまりポジションの用意が必要と判断された訳です。

最後の理由が「既存の軍が宇宙軍に注力できなかった」ことです。陸、海、空それぞれの軍は自分たちの担当範囲を優先することが最も重要で「誰の担当でもない」宇宙には注力できない状態にありました。これにより宇宙空間への無関心が続いてしまい、いつしか中国やロシアに覇権を奪われかねない状態になってしまったのです。しかし、政府が宇宙軍を正式に創設することで各軍からの無関心という問題が解消されました。

アメリカ宇宙軍構想は2024年度までの5年計画で進行しており、支持された理由には宇宙関連部署の一元化、人材育成、そして既存の軍が宇宙軍に注力できなかったことがあります。

ちなみに、アメリカ宇宙軍構想の前身は1982年代に設置された「空軍宇宙軍団」で、アメリカ大陸へのミサイル攻撃阻止を目的にした戦略防衛構想、通称スター・ウォーズ計画の頃から始まったとされています。2001年の同時多発テロを機に、宇宙兵器開発や宇宙関連の情報収集能力の強化、法整備などが本格化し、トランプ政権でついに実現したという訳です。

アメリカ宇宙軍を創設したトランプ大統領の狙いとは

アメリカ宇宙軍が誕生した背景にはトランプ大統領が掲げる「強いアメリカ」を誇示する狙いがあります。なかでも宇宙開発で勢いに乗っている中国とロシアに対して、アメリカの軍事的優位性を見せつけることが大きな狙いです。

2020会計年度国防権限法に署名した際のインタビューでトランプ大統領は「宇宙は最も新しい戦闘領域」や「宇宙でのアメリカの優位は極めて重要」、「中国やロシアにリードを許さない」などと述べており、宇宙空間においてもアメリカがどの国よりも優位でいるべきという考えを強調しています。

また、宇宙軍を創設することで国家の安全保障に繋がることや、新しい雇用創出による経済発展もあると述べています。このようにアメリカ宇宙軍の創設には、アメリカの軍事的優位性の確立、安全保障、そして経済効果の3つの狙いがあり、トランプ政権が注力する強いアメリカを維持するためにも必要不可欠だったのです。

アメリカ宇宙軍のロゴはスタートレックにそっくり?

アメリカ宇宙軍が創設されたことを受けてトランプ大統領は自身のTwitterで宇宙軍のロゴを公表しました。しかし、そのロゴがアメリカで人気のSFドラマ「スタートレック」の宇宙艦隊の紋章とそっくりだと話題になりました。このロゴは複数案の中から選ばれたもので、トランプ大統領自身もそれを選んだとされています。この話題は軍隊に対するプライドが高いアメリカ人のなかで注目されましたが、結局は公表されたものが正式採用されました。

スタートレックで登場する紋章にそっくりだとされたデザインは、2005年に採用された米空軍宇宙軍団のロゴを踏襲したという意見もあり、アメリカ宇宙軍はロゴひとつでも世界中から注目される結果になりました。

まとめ

アメリカ宇宙軍は陸・海・空・海兵隊・沿岸警備隊に続く第6の軍です。主にアメリカの国益を守るための防衛や平和的活動を目的にしており、アメリカ宇宙軍構想と題して5年計画で組織造りが進められています。「強いアメリカ」を世界に見せつけたいトランプ大統領による肝煎りの政策のひとつとして覚えておきましょう。

本記事は、2020年3月14日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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