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知っておきたいアメリカの人種構成やその特徴

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はじめに - アメリカは人種の坩堝(るつぼ)

みなさんは、「アメリカは人種の坩堝(るつぼ)」という言葉を聞いたことはありますか?

アメリカは移民の国としても知られており、白人をはじめネイティブアメリカン、黒人、ヒスパニック、アジアンなど様々な人種が集まります。

たくさんの人種が集まるアメリカですが、実際にその割合やそれぞれの人種の特徴などを正しく理解している日本人は決して多くはないでしょう。そもそも、遠い異国の話であり、政治や経済の影に隠れてしまって報道されないため、知ろうにも知れないのが現状です。

そこで今回は、日本人も知っておきたい常識として「アメリカの人種について」まとめてご紹介します。公務員、公務員志望の方は社会常識のひとつとしてぜひ参考にして下さい。

アメリカの人種構成

まず、アメリカにはどんな人種が存在していて、どれほどの割合で構成されているのか見てみましょう。

ここではアメリカで10年に1度の頻度で実施されている国勢調査の結果を元にしています。(2020年の国勢調査は新型コロナウイルスの影響で集計されていないため、2010年の国勢調査を参照)

アメリカの人種別構成割合

アメリカ総人口:308,745,538人
白人:72.4%
ヒスパニック:16.3%
黒人:12.6%
ネイティブアメリカン(ハワイアン、アラスカ先住民含む):1.1%
アジアン:4.8%

2010年の国勢調査では、アメリカの人種は圧倒的に白人が占めており、次いでヒスパニック(スペイン語圏からの移民/ラティーノとも呼ばれる)、そして黒人(アフリカンアメリカン)が続いています。

アメリカ国勢調査局によると、2014年時点の集計では白人が62.2%、ヒスパニック17.4%、黒人12.4%、アジアン5.2%と、それぞれ増減が生じているとしています。

アメリカの人種構成は主に「白人が過半数以上、次いでヒスパニック、黒人、アジアン」の4人種で構成されていると覚えておくと良いでしょう。

それぞれの人種の特徴

次に、それぞれの人種がアメリカでどのような特徴を持っているかをご紹介します。


白人の特徴

アメリカにおいて白人と呼ばれる人たちは、1776年の建国以前から現代にかけてイギリスやドイツ、アイルランド、フランス、オランダなどのヨーロッパ諸国からアメリカ大陸にやってきた人たちのことを指しています。

ヨーロッパからアメリカ大陸に渡る人が増えた1660年から1789年頃は、移民の65%以上をイギリスやスコットランドが占めていました。次いで、ドイツ6.9%、オランダ2.9%、フランス0.4%で、白人の大半はイギリス系だったと言えます。

アメリカで白人として生きている人たちの多くは、ヨーロッパ諸国のどこからしらにルーツを持っています。つまり、アメリカで白人と呼ばれる人たちは「祖先がヨーロッパ諸国からの移民」ということになります。

白人はアメリカ全土で生活していますが、主にニューヨーク州やペンシルベニア州などの東海岸に多い傾向があります。そもそもアメリカの歴史が始まったのが東海岸のため、建国時から続く由緒ある白人階級も東海岸に集中しています。

ヒスパニックの特徴

アメリカで白人の次に多いのがヒスパニックと呼ばれる人種です。ヒスパニックはメキシコなどの中南米諸国からアメリカにやってきたスペイン語圏の人たちのことで、急激に増加していることが特徴です。

また、陸続きでアメリカに入国しやすいことから、不法移民としてアメリカに住み着くケースも多いとされています。現在、アメリカには1,000万人以上の不法移民が生活しているとされており、そのうち700万人がヒスパニックと言われています。

ヒスパニックの女性は出生率が高いことも特徴です。白人女性が生涯で産む子どもの数が1.8人に対して、黒人は2.2人、そしてヒスパニックは3.0人という数値です。

つまり、ヒスパニックはアメリカに不法滞在で、なおかつアメリカ国内で子どもをたくさん産む印象が強いため、トランプ大統領をはじめとする白人から煙たがられているのです。

ヒスパニックの大半は、カリフォルニア州やニューメキシコ州、アリゾナ州、テキサス州などのアメリカ南西部に集中しており、東海岸では少ないことが特徴です。これらの州はもともとメキシコ領土だったため、必然的にメキシコ系の人たちが多く生活しています。

黒人(アフリカンアメリカン)の特徴

アメリカにおいて黒人と呼ばれる人たちは、1700年代にアフリカから奴隷としてアメリカ大陸にやってきた人たちの後裔や、黒人種が多く暮らすエリアからやってきた移民や難民のことです。

アメリカでは、1808年に奴隷貿易が禁止されましたが、それ以降も移民や難民としてアメリカに渡ってきた黒人は多く、それらの後裔がいまもアメリカで生活しています。

アメリカでは「黒人=奴隷」の社会的構図が長らく続いてきたことから、白人と黒人を分離する「人種差別」が生まれました。1964年に人種差別を実質的に終わらせた公民権法が成立するまで黒人は虐げられてきた歴史があります。

このような背景から、アメリカでは様々な場面で黒人を優遇して社会参画を促す「Affirmative Action(積極的差別是正措置)」という法律が用意されています。この法律では、黒人が進学や就職の際に他人種よりも点数が加算されたり、一定数の割り当てを受けられるなど、優遇されています。

一方で、この優遇こそが「白人差別」に繋がるとして、白人至上主義者たちは是正を求め、黒人と対立しているのが現代アメリカの問題です。

黒人はルイジアナ州やジョージア州、ミシシッピ州などのアメリカ南東部に集中しています。もともとこれらの州は大規模な綿花農場があり、そこで黒人奴隷が働かされていたため、黒人が多いとされています。


アジアンの特徴

アジアンは黒人やヒスパニックと比較すると少数派ですが、着実に増加傾向にある人種です。1990年には498万人だったのが、2004年に869万人、2016年には2,100万人にまで増加しています。

アジアンの中で最も多いのが中国で、次いでフィリピン、インド、ベトナム、韓国、そして日本です。

アジアン移民の歴史は、1840年から1860年代にかけて実施された「大陸横断鉄道」の建設工事や、同時期にカリフォルニア州で起きた「ゴールドラッシュ」に始まります。現代のアメリカで生活するアジアンは、この頃の後裔も含まれています。

貴重な労働力として重宝された中国人たちでしたが、増え過ぎたことや、労働条件を巡って白人と衝突が起きたことから、アメリカ政府によって1882年に中国人労働者移民排斥法(初の移民制限法)が制定され迫害を受けました。

アジアンの大半はハワイ州のホノルルや、カリフォルニア州のロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼなどで生活しており、ホノルルでは人口の約40%、サンフランシスコでは人口の約23%がアジアンとされています。

ネイティブアメリカンの特徴

ネイティブアメリカンは、イギリスなどのヨーロッパ諸国から白人がやってくる前からアメリカ大陸で生活していた人たちの後裔のことです。呼び方は様々ですが、一般的には「インディアン」と呼ばれています。

ネイティブアメリカンは建国以前から白人によって迫害され、無知を理由に強制的に土地を奪われてきた歴史があります。アメリカ建国後もアメリカ政府によって強制移住を強いられるなど、土地、文化、人口などが壊滅的な被害を受けました。

現在では政府によって「Indian Reservation(インディアン居留地)」として土地が守られ、先住民族に対する年金制度や教育支援なども確立されていますが、それと引き換えにそれぞれの州政府による管理下に置かれています。

ネイティブアメリカンはアリゾナ州やニューメキシコ州、サウスダコタ州など東海岸以外に多く点在しています。東海岸にいない理由は、東海岸からアメリカを拡大していった白人によって淘汰されたからです。

アメリカの人種による問題とは?

アメリカではそれぞれの人種で直面している問題が異なります。

アメリカの人種問題その1:白人の問題

白人は「2050年から2060年頃に過半数以下になる」という問題を抱えています。

2020年現在、白人はおおよそ60%とされていますが、ヒスパニックやアジアンなどの人種が急激に数を増やしていることから、形勢が逆転する日が近いのです。

アメリカを建国し、経済や政治を牽引してきたはずの白人が過半数を割ることは、白人からすれば憂慮すべき問題でしょう。これを防ごうと積極的な活動をしているのが「白人至上主義」と呼ばれる人たちです。

白人こそがアメリカを率いるべき、白人は他の人種よりも優秀、アメリカは白人の国という思想を持った人たちは、黒人を始めヒスパニック、アジアンなどの人種と衝突しがちです。

人によっては過激な思想から、他人種を差別することもあり、どの時代においてもアメリカの人種差別問題は白人が引き起こしています。

アメリカの人種問題その2:ヒスパニックの問題

ヒスパニックは「移民政策」という問題に直面しています。

ヒスパニックの大多数を占めているメキシコからの移民は、不法にアメリカに入国してアメリカで家族を増やして生活しています。オバマ政権では、人道的な観点から条件付きで市民権を与えられ、教育や医療などあらゆる面で優遇を受けてきました。

しかし、白人からすれば貴重な税金を不法移民に使い、アメリカ人の雇用を奪うヒスパニックは目の敵にされやすいのです。このような背景から、トランプ大統領はこれまでにない程の厳しい移民政策を打ち出し、ヒスパニックに対して排他的な姿勢を見せています。

この結果、ヒスパニックはアメリカで生活し辛くなり、極めて生活水準が低い自国に帰ることを余儀なくされています。ヒスパニックは「法か人権」の合間で揺れています。


アメリカの人種問題その3:アジアンの問題

アジアンは「学歴差別」に直面しています。

例えば、アメリカではアジア系の学生は他人種よりも平均学力が優秀であることを理由に、大学入試で不利な条件下にあります。

黒人やヒスパニックは平均学力が低いため、得点が加算される優遇措置がありますが、アジア人はアジア人というだけで得点が減算されるため、他人種よりも高い得点を獲得しなければいけません。

この結果、アメリカの名門大学(アイビー・リーグ)に合格する確率はアジアンと比較すると、白人は3倍、ヒスパニックは6倍、黒人は15倍も高い計算になります。

事実、2018年に中国人学生団体がハーバード大学に対して、アジア人を入試で差別していると訴訟を起こしました。ハーバード大学はアジア人に対して低い点数を付け、明らかに成績が劣る黒人やヒスパニックを優遇していると主張しましたが、翌年には「差別はない」と判決が下っています。

アジア人はどんなに優秀でもアメリカで学問の道に進むことは容易ではないのです。将来有望な人材でもアメリカでは「Affirmative Action(積極的差別是正措置)」によって正当に評価されない仕組みになっています。

さらに近年では「新型コロナウイルス」によって中国人をはじめとするアジア人が露骨な差別を受けていることも問題です。

アジア系レストランでは国外退去を促す貼り紙がしてあったり、街を歩いていたアジア人がヒスパニックから突然暴行を受ける事件などが起きています。

アメリカの人種問題その4:ネイティブアメリカンの問題

ネイティブアメリカンは「アメリカ社会からの孤立」に直面しています。

ネイティブアメリカンには様々な部族がありますが、どの部族も独自の文化や言語などがあり、一般的なアメリカ文化とは大きく異なります。ネイティブアメリカンが一般社会に出て行くためには、言語や教育水準といった大きな壁があるため、ほとんどの人が社会進出を諦めるのです。

その結果、アルコールやドラッグ中毒になる人が増え、子供たちは健康的な食生活を送れず肥満体型になり、平均寿命が短くなる負の連鎖が起きています。

ネイティブアメリカンとアメリカ社会は、日本人には想像できないほどの隔たりがあるため、社会的な孤立や経済的な孤立は大きな問題になっています。

まとめ

以上、「知っておきたいアメリカの人種構成やその特徴」でした。

ご紹介したようにアメリカでは白人、ヒスパニック、黒人、アジアン、そしてネイティブアメリカなど様々な人種が入り交じって生活しており、それぞれが問題を抱えています。

日本では人種の違いや、歴史や文化の違いによる差別意識などを感じる機会は少ないかもしれませんが、アメリカではこれらが日常に溶け込んでいます。

アメリカの人種差別問題を正しく理解するためには、それぞれの人種の歴史や問題点を知ることが不可欠です。グローバル化が進む現代において、アメリカの人種問題を正しく理解することはとても大切なことです。

本記事は、2020年7月21日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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