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アメリカ最高裁判事に指名されたエイミー・バレット氏とはどんな人物?

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目次

はじめに - トランプ大統領が指名したのはエイミー・バレット氏

大統領選まで残すところあと1ヶ月になったアメリカでは、大統領選と同じくらいに「あること」が注目されています。

トランプ大統領の再選か、バイデン氏が勝利して再び民主党が政権を取り戻すのか、アメリカ人でも結末が読めない大統領選よりも、その「あること」の方が世間の関心は高くなりつつあります。

そのあることとは「アメリカ最高裁判所の判事選び」です。

2020年9月18日、最高裁判事を27年にわたって務めたルース・ギンズバーグ氏が亡くなったため最高裁判事に欠員が生じました。これにより、新たな最高裁判事を大統領が指名する必要があるのです。

時の大統領であるトランプ大統領が誰を指名し、そして議会がそれを承認するのかが注目されています。

今回は、トランプ大統領が新たな最高裁判事として指名した「エイミー・コニー・バレット(Amy Coney Barrett)」についてご紹介します。

エイミー・バレット氏が指名されるまでの流れ

9月26日、アメリカの主要メディアは、トランプ大統領が新しい最高裁判事にエイミー・バレット氏(48)を指名すると一斉に報じました。

トランプ大統領は、9月18日にルース・ギンズバーグ氏が亡くなった直後から「新しい判事には若い女性判事を選ぶ」と公言していたことから、あらかじめ準備していたことを実行に移したという訳です。

また、大統領にとって重要な任務である最高裁判事の指名は、11月3日に控えている大統領選の前に片付けておきたいというのが本音です。

つまり、トランプ大統領は前々から用意していた「若い女性判事」と「大統領選前までに決着させる」というふたつの思いから、エイミー・バレット氏を指名したのです。

エイミー・バレット氏はどんな人物?

では、最高裁判事に指名されたエイミー・バレット氏とはどのような人物なのでしょうか?


バレット氏は「筋金入りの保守派判事」や「超保守派」などと呼ばれるほど保守的な考え方を持った人物です。

例えば、人工妊娠中絶に反対、移民への公的支援に反対、個人が銃を保有することに賛成、医療保険制度改革法(オバマケア)に反対など、トランプ大統領すなわち保守的な共和党と似た思想の持ち主です。

亡くなったルース・ギンズバーグ氏とは極めて対照的な存在とされており、仮に最高裁判事に任命された場合、9名で構成される最高裁判事のパワーバランスが一気に保守派に傾くことになります。

決して大げさな話ではなく、最高裁判事としてのバレット氏の存在が今後のアメリカを保守的な国にする可能性があるため、非常に注目されているのです。

エイミー・バレット氏の経歴は?

バレット氏は、弁護士、法学者、教員といった経歴を持つ、超が付くほどのエリートです。

1999年にカトリック系の名門ノートルダム大学法学部を卒業後、SouthBank Legalのパートナーを務めるジェシー・M・バレットと結婚、ワシントンD.C.で弁護士事務所を開設しています。

2000年の大統領選で当選結果を巡って起きた裁判「ジョージ・ブッシュ対アル・ゴア法廷論争」を手がけています。

2002年には、ノートルダム大学ロースクールで宗教学や民事訴訟法、憲法学の教鞭を執り始めます。その後、インディアナ州北部地区の連邦検事補を務め、2017年にはトランプ大統領からの指名を受けて連邦控訴裁判事に就いています。

この1年後にはトランプ大統領が考える「最高裁判事リスト」に名前が載っていたと言われており、弁護士としての手腕、教員としての責任感、そして保守的な思想の持ち主として、認められたのでした。

最高裁判事として指名を受けた際の声明では「判事を務めながら、家では子どもの送迎や誕生日パーティーを主催している」と、子どもを持つアメリカ人の母親たちに対して親しみやすさをアピールしています。(バレット氏は養子2名を含む、7人の子どもの母親)

また、トランプ大統領も「バレット氏が議会に承認されれば、小さな子どもを持つ母親世代が最高裁判事になるという偉業を成し遂げられる」とコメントし、バレット氏を後押ししています。

エイミー・バレット氏の保守派としての活動

これまでバレット氏は一貫して保守的な立場を貫いた活躍をしています。なかでも「人工妊娠中絶」については、保守的な姿勢が鮮明です。

「人工妊娠中絶に憲法の権利はない」と主張したことで知られる、アントニン・スカリア最高裁判事の調査官を務めていた際は、その主張を支持しました。

バレット氏が人工妊娠中絶に反対する証拠として、同氏はこれまでに人工妊娠中絶に賛成する2つの判決に対して「再審請求」を出しています。

また、人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の最高裁判決「ロー対ウェイド事件」の撤回を求める保守的活動家からの支持も厚く、バレット氏の主張を支える基盤になっています。


エイミー・バレット氏に対する懸念点

バレット氏に対する懸念点もあります。

バレット氏は「超保守派」と言われるだけあって、非常に信仰心にあつい敬虔なカトリック教徒です。それ故に「司法判断に影響を及ぼす」と懸念されているのです。

例えば、ニューヨークタイムズ紙はバレット氏について、結束が強く信仰心があつい人が集まるキリスト教団体「ピープル・オブ・プレイズ」のメンバーであると報じています。この報道は、バレット氏が「偏りすぎている」ことを暗に示しています。

他にも、自身が1998年に発表した論文において、カトリック教徒の判事は、死刑執行の選択肢は「道徳的に排除」されているため、(死刑執行にまつわる)判断は避けるべきと残しています。つまり、カトリック教徒の判事は死刑問題に関わらない方が良いという考えです。

2017年、トランプ大統領に指名された控訴裁判事の指名承認公聴会の場では、民主党議員ダイアン・ファインスタイン氏から「あなたの中にある宗教的な教義は大きな声で語りかける」と言われており、司法判断においてバレット氏の中の信仰心や宗教観が邪魔するのではないかと指摘されています。

これに対してバレット氏は「判事の職務と信仰心は切り分ける」と説明しましたが、公聴会においてバレット氏の保守的な一面を印象付ける瞬間だったことは間違いありません。

リベラル派からすれば、あまりにも保守的なバレット氏が下す判決は、信仰心や宗教観に左右されやすく、平等性に欠くのではないかという主張です。これこそ、バレット氏の懸念点とされる所以です。

エイミー・バレット氏の影響力

バレット氏が議会の承認を得て最高裁判事に就任すると、最高裁のパワーバランスが変わります。

アメリカの最高裁は9名の判事によって構成されており、バレット氏の加入によって「保守派6・リベラル派3」のバランスに変わります。つまり「保守的な最高裁」になる訳です。

アメリカ最高裁判決の重要性

最高裁判決はアメリカ国民にとって身近な問題ばかりです。さらに言えば、最高裁判決によって倫理感や価値観までも変わります。

例えば、最高裁はこれまでに次のような判決を下してきた歴史があります。

1954年 黒人隔離を違憲と判断した「人種差別問題」
1973年 中絶を女性の権利として認めた「人工妊娠中絶問題」
2000年 僅差で決着した「大統領選」
2008年 ワシントンD.C.における銃保持規制を違憲とした「銃規制問題」
2015年 同性同士の結婚を認めた「同性婚問題」
2020年 LGBTであることを理由にした解雇は不当とした「LGBT問題」

これらの最高裁判決はいずれも、アメリカを二分してきた問題です。二分されてしまった問題に対して法的な決着をつけるのが最高裁であり、アメリカ国民は最高裁判決の影響を間接的ながら受けることになります。

アメリカ人にとって最高裁の判決が持つ意味をごく簡単に言えば「自分が正しいグループに属しているか」ということを示すものなのです。

だからこそ、最高裁判事の顔ぶれや最高裁判事団のパワーバランスが重要で、バレット氏に対しても関心が高くなる訳です。

バレット氏が最高裁判事に任命されれれば、保守的な最高裁が長期化する

バレット氏が最高裁判事に任命されると、保守的な最高裁が長期化します。

アメリカ人の最高裁判事は終身制です。判事が辞任するか、死亡するまでその立場は変わらないため、87歳で亡くなったルース・ギンズバーグに例えると、バレット氏は39年在籍する可能性があります。

最高裁判事の平均在職期間は16年ですので、少なくとも16年以上は超保守派の判事が最高裁にい続けることになる訳です。

これまでにトランプ大統領は自身の政権下でふたりの最高裁判事を指名しています。ひとりは当時49歳だったニール・ゴーサッチ氏、もうひとりは当時53歳だったブレット・カバノー氏です。そして、ここにきて48歳のバレット氏を指名しています。


このことは、トランプ大統領が「長期的な保守派の最高裁」を作り上げることを目的にしているとも見えることから、是が非でもバレット氏を就任させたいという思いでしょう。

なぜなら、保守派が占める最高裁が長く続けば続くほど自身の功績や偉大さが増すためです。仮に、バレット氏が就任してこの計画が実現すれば、新型コロナウイルスの初動対応失敗や失業率の悪化など、取るに足らないほどの問題になるでしょう。

議会でのバレット氏承認阻止を狙う民主党

民主党はバレット氏が議会で承認されることを阻止したい思惑があります。

トランプ陣営の考えとしては、バレット氏就任に向けて10月中旬に公聴会を実施、11月3日以前に議会の承認を取り付けたいと見られています。こうすることで、大統領選投票日前に大きな成果を挙げることになり、バレット氏を支持する女性たちの票を確実にできます。

一方で、民主党は議会での承認手続きを遅らせるよう党内に働きかけています。バレット氏にとって山場となる公聴会では、厳しい質問を浴びせると見られており「バレット氏は最高裁判事にふさわしくない」というイメージを作り上げにくるでしょう。

バイデン氏は最高裁判事選びについてはほとんど触れておらず、あくまでも「トランプ大統領のコロナ対策失敗」に焦点を当て続け、この問題から国民の意識が離れてしまわないように慎重な姿勢です。

まとめ

以上、「アメリカ最高裁判事に指名されたエイミー・バレット氏とはどんな人物?」でした。

バレット氏は、かなりの保守派であることや、トランプ大統領をはじめとする共和党支持者からも信頼が厚い優秀な人物です。一方で、保守的過ぎることや信仰心の強さが懸念材料とされています。

トランプ大統領が考える「長期的な保守派最高裁」が実現するかどうかは、バレット氏の就任にかかっています。大統領選に向けて「公聴会の日程」や「議会の承認決議」、そして大統領候補者同士による「テレビ討論会」に注目しましょう。

本記事は、2020年10月8日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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