自由権における「人身の自由」とは
日本国憲法ができる以前の日本では、政治批判などを理由に、不当な逮捕や拷問が行われていました。こうした時代の反省をもとに、現行の憲法では、身体の自由として正当な理由なしに、身体活動を拘束されないように規定しています。
具体的には、奴隷的拘束及び苦役からの自由(第18条)、法廷手続きの保障(第31条)、令状主義(第33条)、黙秘権(第38条)、遡及的処罰の禁止、一時不再理(第39条)などがあげられます。
憲法18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」とは?
憲法18条で保障された「奴隷的拘束及び苦役からの自由」とは、人格を無視した非人道的な身体の拘束、肉体的、精神的な苦痛を伴う労役を禁止したものです。
憲法31条「法廷手続きの保障」とは?
憲法第31条では、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられないという「法の適正な手続き」と「罪刑法定主義」が保障されています。
罪刑法定主義
罪刑法定主義とは、何が犯罪であり、またそれに対してどんな刑罰が科せられるかは、議会の制定する法律で事前に決めなければならないという原則のことです。
行為時に刑罰を科する旨を定めた成文の法律がない場合、その行為を処罰することはできません。また慣習法の尊重や類推解釈も認められないです。
罪刑法定主義は、大日本帝国憲法でも導入されていました。
憲法33条「令状主義」とは?
犯罪捜査のための強制処分である、逮捕、勾留、拘禁、住居侵入、捜査、押収には、現行犯以外は警察官や検察官の判断だけではなく、裁判官の発する令状が必要となる原則のことです。
憲法38条「黙秘権」とは?
自己に不利益な供述を強要されない権利です。自発的とは認められない自白を証拠とすることはできません。また、唯一の証拠が本人の自白である場合、刑を科すことは禁止されています。
憲法39条「遡及的処罰の禁止」とは?
ある行為をした時点で犯罪でなかったものを、後で法律を制定して犯罪として処罰することを禁止とする原則です。
憲法39条「一時不再理」とは?
同一事件について、重ねて刑事上の責任を問われないという原則です。
ただし、被告人に有利な再審は認められます。また、刑事責任と民事責任とは、別々に追求が可能です。
無罪として扱われる被疑者、被告人
刑事事件で犯罪を侵した疑いがある人のことを、被疑者、被告人と言います。
被疑者と被告人の違いは、警察からの嫌疑を受け、捜査対象となる者が被疑者、検察官により起訴されていて、裁判がまだ確定していない者が被告人となります。
被疑者や被告人は、「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則のもと、有罪が確定するまでは無罪として扱われます。
まとめ
以上、自由権における「人身の自由」について解説させていただきました。
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