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わかる政治経済シリーズ 第38回

日本の国会における「衆議院の優越」について

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日本の立法システム国会の二院制シリーズ第3回目は、「衆議院の優越」について説明します。

目次

「衆議院の優越」とは?

日本の「国会」は「衆議院」と「参議院」の二つの議院からなる「二院制」を採っています。二つの議院を設けているのは、国民の意見を幅広く反映させ、より慎重な審議を行うためです。

基本的には、両院の意見が一致することで国会全体の議決となりますが、両院の意見が一致しない場合は「両院協議会」を開いて協議することになっています。

しかし、いつまでも議決されず国政が滞ってしまうことを避けるため、この両院は必ずしも対等であるというわけではなく、「予算の議決」や「条約の承認」などの様々な面で「衆議院の優越」が認められています。

「衆議院の優越」とは、「衆議院」は「参議院」より強い権限を認められているという制度のことです。

両院の議決が一致しなかった場合、「衆議院」の議決が「国会」の議決となったり、「内閣不信任決議権」のように「衆議院」のみに認められている権利もあります。

それではなぜ、「衆議院」は「参議院」より強い権限が認められてるのでしょうか?以下で「衆議院の優越」が認められている理由について説明します。

なぜ「衆議院の優越」が認められているのか?

「衆議院」が「参議院」より強い権限が認められている理由は、「衆議院」と「参議院」の性質の違いにあります。

「衆議院」は「参議院」と違い、「解散」があります。また、任期も「参議院」が6年であるのに対して「衆議院」は4年と短くなっています。そのため、「衆議院」のほうが選挙を行う回数が多くなるため、「衆議院」は「参議院」より直接的に国民の意思を反映しやすくなると考えられています。

そのため、より民意を強く反映していると考えられている「衆議院」に強い権限が認められています。

以下では、「国会」におけるどのような権限においてどのように「衆議院の優越」が認められているのかを見ていきます。


「衆議院の優越」その1「法律案の議決権」

「衆議院の優越」が認められる権限のひとつ目が「法律案の議決権」です。

法律案はまず「衆議院」で可決された後、「参議院」で審議されますが、ここで「参議院」が否決した場合、もしくは60日以内に可決しない場合は任意で「両院協議会」が開かれるか、「衆議院」の出席議員の3分の2の賛成で再可決され、「国会」の議決となります。

「両院協議会」とは両院の意見の一致を図るために行われる協議で、衆参それぞれから10人ずつ協議委員を選出して行います。「法律案の議決」に関しては「両院協議会」は必須ではなく、開催するかどうかは「衆議院」に任されています。

「衆議院の優越」その2「予算の議決権」

「衆議院の優越」が認められる権限の二つめは「予算案の議決権」です。

予算案について「衆議院」「参議院」でそれぞれ異なった決議がされ、「両院協議会」を開いても意見が一致しなかった場合、あるいは、「衆議院」の議決後「参議院」が30日以内に議決しなかったときは「衆議院」の議決が「国会」の議決となります。

「予算案の議決」の場合は「法律案の議決」の場合と異なり、「両院協議会」は必ず開かなければならないことになっています。

「衆議院の優越」その3「条約の承認」

「衆議院の優越」が認められる権限の三つめは「条約の承認」です。

条約の承認についても「予算案の議決」の場合と同様で、「衆議院」「参議院」でそれぞれ異なった決議がされ、「両院協議会」を開いても意見が一致しなかった場合、あるいは、「衆議院」の議決後「参議院」が30日以内に議決しなかったときは「衆議院」の議決が「国会」の議決となります。

「衆議院の優越」その4「内閣総理大臣の指名権」

「衆議院の優越」が認められる権限の四つ目は「内閣総理大臣の指名権」です。

「内閣総理大臣の指名」について、衆参でそれぞれ異なった議決をし、「両院協議会」を開催しても意見が一致しない場合、または「参議院」が「衆議院」の議決後10日以内に議決しない場合、「衆議院」の議決が「国会」の議決となります。

以上が、「衆議院の優越」が認められている四つの権限になります。

次に、「衆議院の優越」について理解するうえで押さえておきたい二つのポイントを紹介します。

「予算先議権」とは?

「衆議院」には「予算先議権」が認められています。

「予算先議権」とは「内閣」が作成した予算案は必ず「衆議院」に先に提出しなければいけない、つまり常に「衆議院」が先に予算案について審議するという権限のことです。

「予算先議権」は憲法第60条で次のように定められています。


第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

引用)日本国憲法

予算案について、「衆議院」に「先議権」が認められている理由としては、「予算」のように国民の負担に関わることは、より直接的に国民の意見を反映している「衆議院」を尊重すべきだと考えられていることが挙げられます。

内閣不信任決議権

「衆議院」には「内閣不信任決議権」が認められています。これは「参議院」には認められていません。

憲法第69条で次のように定められています。

第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

引用)日本国憲法

「内閣不信任決議」とは、「内閣」を信任できない、つまり現在の「内閣」に行政を任せることはできないとする「衆議院」の意思を表明する決議のことです。

「内閣不信任決議」が可決された場合、「内閣総理大臣」は「内閣総辞職」か「衆議院の解散」のどちらかを10日以内に選択することになります。

戦後、「内閣不信任」は4回成立しています。

憲法にも「衆議院で不信任の決議案を可決し」とあるように、「内閣不信任決議」は「衆議院」のみ行うことができます。「参議院」も「問責決議」によって「内閣」に対する意思を表明することは可能ですが、こちらは「内閣不信任決議」とは違って憲法上の権限ではなく、法的拘束力は持ちません。

まとめ

以上、日本の立法システム国会の二院制シリーズ第3回目、「衆議院の優越」について説明しました。

本記事は、2024年1月29日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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