中高一貫校に教育実習に行ってきた3部作の第1部「教職課程の総仕上げ 中高一貫校に教育実習に行ってみた【準備編】」です。
実際に教育実習でどんな事をするの?
大学の学生さんが、教育実習生として学校にやってきた…という記憶がある方も多いのではないでしょうか?大学で学ぶ学生さんの中で、卒業と同時に教員免許の取得を希望する人は、普段の科目単位と同時に教職課程も履修します。
教職課程には、教科に関する事、教職に関する事など色々な科目の履修をしなければいけませんが、それとどうじに避けて通れないのが教育実習です。学生さんの履修状況や、先方の学校の都合によっても異なりますが、前期なら5月、後期なら10月ごろは特に多く教育実習生の受け入れが行われている時期になります。
この記事を読んでいる方の中には、これから教育実習を控えている方もいるかもしれません。実習とはいえ初めて教壇に立てる機会を得た事、そして久しぶりに母校を訪れる事で、期待と不安を多く持っているのではないでしょうか。
ここからの内容は、私が数年前に母校で行った教育実習の体験談について書いています。「教育実習でどんな事をするの?」「事前にやっておいた方が良い準備はあるの?」など、教育実習に対する不安がある方、大学で教職課程を履修しようか迷っている人には、ぜひ読んでいただきたい記事です。
本項は、教育実習の申し込みから、懐かしい母校へ打ち合わせに行った所まで、実際に実習を始めるまでの準備を中心に記述しています。
教育実習に向かうまで
必要な書類は、余裕を持って揃えよう
今から数年前、私はとある大学に属して教職課程も同時に履修していました。当時、私は会社員をしながら通信制の大学に通っていたので、手続きなどの面は少し異なる点もあるかもしれませんが、実際の教育実習は他の大学の学生の方と一緒に受けたので、同じだと思います。
まず、教育実習を希望するには大学の教務課に申し出ました。母校を希望したのですが、私の中高一貫校だったので中学か高等学校どちらかを選ぶ必要があり、私は中高の英語の教員免許取得希望だったので、中学を選択しました。それから必要な書類を期日までに揃えるように指示が出ました。私の時には、必要書類の中に健康診断の結果を大学指定の書式で提出する物があったので、総合病院で一番安く受けられる健康診断を予約して受けて、医師に記入してもらいました。
このように、健康診断の予約など、作成に時間のかかる書類が指定される事がありますので、提出書類を受け取ったら、すぐに準備にとりかかり、期日までに提出できるようにしておくと良いでしょう。
最初は10月の予定が5月に! 必要な科目は履修しておこう
教育実習の希望を出すのは、5月か10月でした。私は会社の休みの都合や卒論との兼ね合いで4年生の10月に希望を出しましたが、母校から「10月は文化祭や運動会などの行事が多いので受け入れが難しい、5月に変更できないか」と要望がありました。会社に休みの希望を変更するとOKが貰えたので、私の教育実習は5月になりました。
ちなみに、私と同じく10月に希望を出していて5月に変更を打診された学生の中では、教育実習に行くために履修しておかなければいけない科目をまだ履修していなかったので、急いで履修したり、結局履修できず教育実習が来年に持ち越しになったりした人もいました。ですので、教職課程で教育実習に必要な科目は優先して履修しておいた方が良いと思いました。
私は通信大学だったのでなかったのですが、教職課程を設けている大学の場合、教育実習に関する説明会やガイダンスを行っている場合が多いです。この時、教育実習に関する講話や、必要な手続きなどの説明を受ける事ができますので、必ず必要な科目や準備については聞き漏らさないようにしておくのがお勧めです。
必要書類を配布された後、日程調整を行って母校へ
実習校が決まったら、実習関係の書類が配布されました。私が受け取ったのは「誓約書」「教育実習生調査票」「教育実習日誌」「教育実習の手引き」の4つでした。誓約書は内容を確認して署名捺印、教育実習生調査票は必要事項を記入し、大学の教務課へ提出しました。
必要書類を提出したら、大学側から最終的な教育実習に向けての説明や確認事項を聞きました。
大学の看板を背負っている自覚を忘れずに
大学からの最終指導でとにかく言われたのが、「〇〇大学の学生としての節度を持って実習に励む事」という事でした。教育実習生といえど、学生ではなく先生という身分として実習校の生徒に接する事、また、実習校に貴重な時間をいただいて実習を受けさせていただく、という気持ちを忘れない事などです。
これから教育実習に向かう人に伝えたいのは、教育実習に関する心構えは、事前のガイダンスや大学側からの指導、渡される「教育実習の手引き」に書かれていますので、必ず確認し、教育実習生としてふさわしい行動をとるようにしましょう。あなたのひとつの行動で、今後あなたの大学からの教育実習の受け入れを断られるようになるかもしれません。
私も大学の看板を背負っている事を自覚して、教育実習に臨もうと思いました。
打ち合わせの時に中学→高校へ変更
大学からの指導が終わると、打ち合わせの為にいよいよ指定された日時に実習校へ向かいます。
私の母校は当時住んでいた所の2県隣だったので、片道2時間半の距離をかけて向かいました。打ち合わせの時の服装は実際に教育実習を行う時の服装(ジャケットも忘れずに)、懐かしい母校と言えど、ついはしゃいでしまう気持ちを抑えつつ校門をくぐりました。
打ち合わせは、私と同じ時期に教育実習を受ける学生さんと一緒でした。私も含めて3人で、もちろん私以外の2人は現役大学生なのでとても若々しくて希望にあふれている印象を受けました。(私は就職してから大学、というそもそもの順番が逆なので当時、私は彼女たちよりも5歳ほど年上でした。)私は英語、あとは体育と家庭科の実習生で、いずれも中学での実習でした。
ところが、中学での実習を希望&それでOKをもらっていた私ですが、打ち合わせの時に「中学希望だけど、高校に変更していい?」と言われました。英語科だけ、どうしても実習の都合がつかなったと説明されました。高校でも3週間以上実習を行えば単位は充足できるので、履修上の問題はありません。とはいえ、すっかり中学生を教える気分でいた私は出鼻をくじかれた気分になりました。けれども、高校生と接するのも良い機会かな…と考え、快諾しました。
英語教師を目指すきっかけになった、恩師との再会
学級担当の先生が、中学校1年生の時の英語&担任の先生でした
教育実習は、実習生一人につき教科担当と学級担当が指定されます。教科担当の先生は自分が受け持つ教科についての指導や実習を受け、学級担当の先生からはその先生が担任をしている学級の中で、ホームルームや授業以外の活動での指導や実習を受けます。
打ち合わせでも、全体での打ち合わせが終わった後に、教育実習生ごとに実際に指導を受ける教科担当の先生と、ホームルーム学級の担当の先生を紹介されました。
私の教科担当は、高校の英語課主任の男性教諭であるO先生でした。私が在学中にはいらっしゃらなかったので初対面でしたが、この学校に来る前は大学で教鞭を取られていたそうで、英語の指導実績も高く、端的に言えばO先生は「とてもすごい英語の先生」という事をお伺いしました。
一方の学級担任の先生ですが、こちらは私の中学校一年生の時の担任の先生だったF先生でした。
ここで一旦話が飛びますが、なぜ私が教員になりたいと思ったかと言えば、色々な理由があります。とはいえ、最初のきっかけは敢然とただ「教員」になりたい!と考えていてどの学校か、中学か高校ならどの教科か、というのも全く決めていませんでした。けれども、その時一番得意な教科が英語だったので、「じゃあ英語の先生になろう」と思ったのです。
F先生は私に英語を初めて教えてくれた先生です。F先生が英語を教えて下さったからこそ、私は英語が好きになり、得意になったのです。また、「英語」の先生になろうと決めたきっかけ作りになっただけでなく、F先生自身も私が「先生になりたい!」と思って影響を受けた方の中の一人です。
「F先生のクラスで実習を受けられるなんて!高校になって良かった!なんてラッキーなんだ!」「F先生全然変わってない!すごいF先生だ!」など、懐かしさも相まってキャーっとはしゃぎたくなりましたが、ここで大学の看板がずしりと重く私にのしかかります。しかも、私は現役の大学生とは違って普通に働いてお給料をいただいている会社員でもあります。大人になった教え子がこんな体たらくでは、さぞF先生もがっかりされるに違いない!とキャーっとなる気持ちを抑えて、冷静に対応し、改めて宜しくお願いいたします、と挨拶しました。
懐かしい学び舎との再会
その後、F先生が担任を受け持たれているクラスまで案内して下さいました。既に下校している生徒たちも多く、教室には誰もいませんでしたが、かつて自分が通っていた校舎や教室の中に入ると、どんどん懐かしさがこみ上げてきました。
私とF先生の2人だけだったので、はしゃがないようにはしましたが、懐かしいお話も沢山しました。また、私が実は教員にずっと憧れていた事や、社会人をしながら大学に通っている事、F先生のおかげで英語が得意になった事なども話しました。
一番驚いたのが、F先生が私の担任の先生だった当時、私の仲の良かった友人たちやその時の私がどんな生徒だったのかを覚えてらっしゃった事です。
教員をされている方にとっては当たり前かもしれませんが、F先生が私の担任の先生だったのは中学校1年生の時だったので、その当時で12、3年は経過しています。勿論、担任の先生でなくなっても授業でお世話になったり、校内でお話したりする事はありましたが、12、3年の間に私も含めて、F先生は本当に多くの生徒たちと会ってきたと思います。そんな中で、当時の私の事を覚えていて下さった事に驚きと同時に、とても感動してしまいました。
教材や単元の説明を受ける
その後、実際に受け持つクラスや、使用している英語の教科書や、実習も含めて今行っている単元の説明を受けました。
私が実習をさせていただくのは、教科授業・ホームルーム共に高校2年生です。高校2年生の英語という、とても大切な箇所を実習させていただく事が決まり、とても身が引き締まりました。
実際に教科書をお借りして拝読した所、一番に感じた感想が「難しい!」でした。「私が高2の時、こんな所勉強したっけ!?」と思いました。大学での勉強は英文学が専攻でしたし、その時にはほとんど単位履修していた事に加えて、会社でも英語は全く使いません。どんどん、実習とはいえ本当に教えられるのか不安になってきました。
帰宅途中に早速準備に入る
母校を後にして、自宅に帰る途中に東京駅があります。私は東京駅で下車し、駅近隣で教育実習で使う用具や教材の準備をしました。
その後、自宅に帰ってから実習までの間に、高2の英語を復習したり、通勤途中に英語の歌や映画を聞き流してみたり、今まで触れていなかった英語を取り戻すように生活してみました。
教育実習に持っていくならこれ! 私が準備したもの
ここで、実際に私が教育実習に持っていて役に立ったツールをご紹介します。教育実習日誌や筆記用具など、持っていて当たり前の物は省いてあります。
教科書ガイド
あんちょこや、虎の巻とも呼ばれていますね。教科書の単元ごとの詳細な解説が載っている教科書ガイドは必須でした。自分がどんな事を教えれば良いのか、というのが一目瞭然で、授業を展開する内容を取捨選択するのにとても役に立ちました。
もちろん、授業案は都度提出しているので、最終的な確認は教科担当の先生に取ってからなのですが、自分で教える内容を一から考えるとなると途方もない話ですので、教科書ガイドは重宝しました。
電子辞書
英語の先生でも分からない事はある…!「あれ?」と思った英単語など、分からない事を空き時間などにさっと調べる事ができます。持っておきましょう。
ちなみに、私は普段は紙の辞書派ですが、教育実習に行く時には自宅から母校への移動だけで長時間かかる事もあり、あまり重い物を持っていきたくない、という事から電子辞書にしました。
ウェットティッシュ
板書した後は手がチョークで汚れます。そして、実習中は色の濃いスーツをずっと着用していたので、袖などに白いチョークが付くのは見た目的にもあまりきれいな物ではありません。たまたまですが、ウェットティッシュがとても役に立ちました。
シャチハタ
実習日誌や授業案を担当の先生に見ていただく時など、教育実習中は捺印する機会がたくさんありました。わざわざ朱肉を出して印鑑を押して…という手間は省いた方が良いです。シャチハタを持っていない方は作っておくのがお勧めです。
爪切り
爪が伸びているのは言語道断なので、校内で爪を切るような事はなかったのですが、ささくれが出来てしまっている時や、爪が折れそうな時、衣服や持ち物の糸がほつれてしまっている時に、さっと切れる爪切りは便利でした。
USBメモリ
授業案や授業で使うプリントは、校内のパソコンを借りて作る事もできましたが、私は遠距離だったので毎日自宅で作成していました。その時のデータの持ち運びにUSBメモリを使いました。
また、先生が印刷して下さることもあるので、USBメモリの中には見られたくない画像やファイルなどは、絶対に入れないようにしましょう。巨幾実習用にUSBメモリひとつ持っておくのがお勧めです。
はさみ・のり
スティックのりですが、要所ではさみで切る、のりを使って張り付ける、という事が多かったのではさみとスティックのりを持っていてよかったです。
付箋
後編で書きますが、授業中や見学中、あっと思った事をメモするのも大変です。そんな時に付箋です。ぺたっと貼っておけば、後でメモが無くてもその箇所をすぐに振り返る事ができます。
オフィスサンダル
母校は上履きがなく、下足のままなのですが、教育実習中はオフィスサンダルを着用していました。教育実習中は、とにかく歩き回りますので、ずっとヒールだと疲れてしまうからです。
これは、学校によって禁止されている事もあるので、事前に確認した方が良いです。私は実際に他の先生が履いてらっしゃるのを見て「私も会社で使っているサンダル履いても宜しいですか?」と確認しました。
ここで準備編は終わりです。後編では、いよいよ教育実習がスタートします。
(文:千谷 麻理子)
コメント
コメント一覧 (2件)
教育実習の時に懐かしい先生との出会いや教員を目指すきっかけなどが書かれておりとても読んでいて楽しかったです。昔の学校を見た時の感想なども具体的でよかったです。
初めて教育実習に行く場合、大学からの情報や説明だけでは不十分で不安も多いかと思いますが、この記事では心の準備から用意して良かったものまで、詳細に書かれているので現場でのイメージがつきやすいなと思いました。