【知ってるようで知らないFRB】アメリカの「連邦準備理事会(FRB)」とは?

アメリカの「FRB(連邦準備理事会)」とはどのような組織なのか、ご存知でしょうか?

本記事では、「FRB(連邦準備理事会)」について徹底解説していきます。


はじめに

新型コロナウイルス感染拡大に起因する2020年3月のアメリカ株価暴落で頻繁に耳にするのが「FRB」という単語ではないでしょうか?

恐らく多くの方は「FRBはアメリカの中央銀行に相当するもの」と認識していると思いますが、実はFRBは銀行ではありません。

では、FRBとはいったい何なのでしょうか。

FRBはどんな組織で、どれほどの影響力を持っていて、日本を含む世界にどのような影響力があるのか、さらに新型コロナウイルス問題でFRBが果たす役割とはどのようなものなのかなどを分かりやすく解説します。

アメリカのFRB(連邦準備理事会)とは?

FRBの正式名称は「The Federal Reserve Board」です。日本では英語の頭文字を取ってFRBと表現されることが一般的ですが、アメリカでは「Fed」と呼ばれることがほとんどです。

FRBは日本語にすると「連邦準備理事会」となり、銀行という単語は含まれません。この理由は、FRBはアメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関ということがあります。アメリカには12地区に区分けされた連邦準備銀行(Federal Reserve Banks)があり、これらを取りまとめるのがFRB(連邦準備理事会)です。つまり、FRB自体は銀行ではなく、あくまでも12の連邦準備銀行をまとめる理事会という存在なのです。

ちなみに、連邦準備理事会も連邦準備銀行も英語の頭文字を取るとまったく同じ「FRB」になりますが、日本でFRBと言えば連邦準備銀行よりも「連邦準備理事会」を指すことがほとんどです。FRBには「Board」と「Banks」のふたつの意味があることを覚えておくと良いでしょう。

FRBの組織

FRB(連邦準備理事会)は7名の理事(議長と副議長1名ずつを含む)で構成されています。理事は14年任期、議長および副議長は4年任期で、いずれも大統領が上院の同意を得て直接指名します。理事は2年にひとりが任期満了を迎え、再任は認められません。

FRBはアメリカ政府機関の中でも独立性が高く、予算の割り当てや人事などに関しては議会からの干渉を受けません。アメリカの金融政策すべてを牛耳る組織として大きな影響力を持っています。世界経済にも影響力があることから、FRB議長は実質的には大統領の次に権力があると言われています。

FRB議長

2018年2月からはトランプ大統領に指名されたジェローム・パウエルがFRB議長を務めています。大統領就任後から経済成長を急いでいたトランプ大統領によって指名されたパウエル議長ですが、景気過熱を恐れて慎重な態度(利上げ継続)を取ったことから、夏頃にはトランプ大統領から「狂っている」などと痛烈に批判されています。

パウエル議長の前は、初の女性FRB議長、ユダヤ系アメリカ人として注目を浴びたジャネット・イエレンがオバマ大統領に指名されています。イエレンは経済政策に慎重で、経済が低迷していたオバマ政権の槍玉としてトランプ大統領から批判されていました。


FRB議長の指名は大統領から直接受けるものですが、大統領が誰を指名するかによって後のアメリカ経済に大きな影響を与えることから非常に重要なポイントとされています。大統領がどのようなタイプの人材を指名するかによって当面の経済指針が示されるのです。

とくに、利上げに積極的な「タカ派」、利上げに慎重な「ハト派」という言葉を使って例えられることが多いので覚えておくと良いでしょう。パウエル氏はタカ派、イエレン氏はハト派として知られています。

ちなみに、FRB議長の報酬はアメリカ議会で決められており、2019年は203,500ドル(約2,200万円)です。理事は183,100ドル(約2,014万円)で、いずれも日銀総裁の報酬である3,512万円に対して低いことが特徴です。さらに、ニューヨーク連邦準備銀行のトップは466,500ドル、サンフランシスコ連邦準備銀行のトップは422,900ドルのように、12連邦準備銀行のトップはFRB議長よりも報酬が高い事実があります。

FRB(連邦準備理事会)の目的とは?

FRBの主要な目的は「アメリカの金融政策を決定すること」です。金融政策を決定するための会合をFOMC(Federal Open Market Committee)と呼び、日本語では連邦公開市場委員会となります。日本では「日銀金融政策決定会合」がFOMCに該当します。FOMCはFRB理事7名に加えて、ニューヨーク連邦準備銀行総裁、残り11地区の連邦準備銀行から持ち回りで選出される4名の合計12名で構成されています。

FOMCは毎年8回開催され、その時の景気状況などを考慮して政策金利が決まります。この政策金利が「FF金利(Federal Funds)」です。アメリカ経済に関連する報道で頻繁に耳にする「利上げ」や「利下げ」とは、このFF金利を上げるか下げるかということです。

FF金利とは、アメリカの民間銀行が連邦準備銀行に預けなければいけない準備預金を民間の銀行間で融通する際に使われる金利のことを指します。余剰のある銀行が、資金不足の銀行に短期資金として貸す場合に用いられます。このFF金利はアメリカの金融政策の誘導目標金利であることから、政策金利としての意味合いが強いのです。

また、連邦準備銀行が民間の銀行に貸し出しをする際の金利もFRBが決めるため、FRBの決定はアメリカのお金の流れに大きな影響を与えます。一般的には、景気が悪い時はFF金利を下げて資金供給量を増やし、景気が良い時はFF金利を上げて資金供給量を抑制します。このようにしてアメリカ経済のバランスをとることがFRBの目的なのです。

新型コロナウイルス問題に対するFRBの対応

新型コロナウイルス感染拡大によって大きな混乱が起きたアメリカ経済ですが、FRBは市場の混乱を緩和する役割として「緊急利下げ」「量的緩和政策」「主要9ヶ国へ低金利ドル供給」などを実施しました。経済が非常事態を迎えた際に対策を取るのもFRBの役割です。

緊急利下げ

2020年3月3日、FRBは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて0.5%の利下げを実施しました。しかし、株価暴落を受けて3月15日にはさらに1.0%の利下げを断行し、実質的なゼロ金利の状態になります。通常の利下げ幅であれば0.25%ですが、わずか2週間以内に1.5%も利下げする異例の事態になったのです。

利下げをすることでアメリカの金融機関同士の資金調達や、アメリカの銀行が資金を準備しやすくなって融資も可能になることから、企業の資金繰りの円滑化や破綻を防ぐことが可能になるとされています。

一方で、FRBはこれ以上金利を下げられないため、金利で市場を操作する「金利政策」から市場に大量のお金を供給する「量的緩和政策」に移行することになりました。

量的緩和政策

FRBは量的緩和政策の一環として「国債の購入」や「コマーシャル・ペーパー(CP)の購入」も決定しました。国債については今後数ヶ月で5,000億ドル分の購入を予定しています。また、企業が無担保で資金調達ができるコマーシャル・ペーパー(約束手形)をFRBが購入することで企業に手元資金を行き渡りやすくする緊急措置も2008年のリーマンショック以降初めて発動しました。

他にも、住宅ローン担保証券(Mortgage Backed Securities)2,000億ドル分の購入も決めており、FRBは量的緩和政策として1兆5,000億ドル分もの資金供給をすることになります。

低金利ドルの供給

FRBは日銀や欧州中央銀行など主要国の中央銀行に対して低金利でドルを供給することを決定しました。これまでの主要国以外にもオーストラリア、韓国、シンガポール、ブラジル、スウェーデンなどにも対象を拡大し、各国に最大600億ドルという大量のドルを低利で供給します。

新型コロナウイルス感染拡大を起点とする世界経済の混乱によって、世界の基軸通貨であるドルを手元に確保する動きが広がりつつあります。この結果、ドルの調達難が起こり、銀行や企業活動に必要な資金が行き渡らなくなる懸念が出てきました。


そこで、FRBの低金利ドルの供給政策によってドルの確保を容易にする戦略が取られたのです。主要国で十分なドルが確保できれば、銀行や企業に必要な資金が行き渡るという仕組みです。

このように、FRBは新型コロナウイルス感染拡大によって悪化したアメリカ経済を回復させるための措置として「ゼロ金利政策」と「量的緩和政策」を実施しました。また、世界市場に流通するドルを確保するために、各国に低金利でドルを供給するなどあらゆる手を使っています。

アメリカの市場関係者は「FRBが出来る手はすべて使った」と見る意見もありますが、この歯止めが利かなければアメリカ経済だけでなく、世界経済も大きな転機を迎えることになります。FRBの対応が正しかったかを判断するのには時間がかかるでしょう。

まとめ

アメリカのFRB(連邦準備理事会)はアメリカの中央銀行に相当すると言われていますが、あくまでも、12ある連邦準備銀行を取りまとめる理事会だということが分かったと思います。そして、主な役割や目的は政策金利を決定して、市場つまりアメリカ経済を調整することにあります。

皮肉にも、新型コロナウイルス問題によってFRBがいかに権力があり、世界経済への影響力が大きいかということが分かりました。FRBが立て続けに実施した緊急措置はアメリカ経済が混乱に陥っていることを現しています。今後もFRBの動きを注視しましょう。

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本記事は、2020年3月24日時点調査または公開された情報です。
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