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【第1回】オーストラリアの「新型コロナウイルス」の状況と政府の対応

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目次

はじめに

中国有数の工業都市・武漢で猛威を振るい、世界中で感染者拡大が懸念されている「新型コロナウイルスーCOVID-19」。

オーストラリアでは、昨年9月から5ヶ月間にも及んだ森林火災がようやく収束したというのに、安堵する間もなく、今度はウイルスとの戦いが幕を開けました。オーストラリアは比較的早い段階で、入国制限などの措置を講じていたことが功を奏して、3月3日現在の感染者数は33人に留まっていました。

しかし2週間が経過した現在の感染者数は565名(参照1)にのぼり、コロナウイルスが予想をはるかに上回るスピードで拡がっていることを物語っています。オーストラリアをはじめ、南半球に位置する国々はこれから冬期を迎えるため、今後の更なる拡大が懸念されています。

オーストラリアの新型コロナウイルスを取り巻く状況から現地からレポートします。

▼参照1:https://www.health.gov.au/news/health-alerts/novel-coronavirus-2019-ncov-health-alert

オーストラリア人を乗せた「ダイヤモンド・プリンセス号」

オーストラリアの人々が、自国民からコロナウイルス感染者が出る恐れがあるという事実を目の当たりにしたのは、200名を超えるオーストラリア人を乗せた「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜港での停泊を予期なくされているという一報が入った時です。

オーストラリア人の乗客のうち、船内で感染が確認された47名は、日本国内の医療機関で治療を受けるためにすぐさま下船、そして船内での2週間の検疫後に陰性が確認された170名はオーストラリア政府が用意したチャーター機で帰国し、ダーウィンの『ハワード・スプリングス施設』で更なる隔離生活を送ることになりました。

帰宅を心待ちにしていた乗客たちは落胆したと伝えられましたが、インタビューに答えた人のコメントを聞く限りは、予想していたよりも事態をポジティブに捉えているという印象を受け、オーストラリア人の陽気な国民性が現れていると感じました。

しかし、長い夏休みが終わり新学年が始まる2月になると、大らかなオーストラリア人の心にもウイルスへの恐怖心が芽生えていきました。

オーストラリアの入国制限について

2月に入り、オーストラリア政府は中国・韓国・イランなど、感染拡大が確認された国からの渡航者に対して、オーストラリアへの入国を制限することに踏み切りました。

オーストラリアへの海外からの留学生は年々増加しており、現在ではオーストラリア国内の大学在籍者数の20%以上を外国人留学生が占めています。中でも中国やインドをはじめとするアジア諸国からの留学生の数は群を抜いており、夏休みを故郷で過ごした学生たちが、感染拡大が懸念されている国々から一斉にオーストラリアへ戻ってくることに対して、警戒感を強めたことが決断の背景にあります。


中国本土からの帰国者については、西オーストラリアの首都パースから北西約2,600kmのところに位置するクリスマス島で2週間の隔離生活を義務付けるという策も講じました。

クリスマス島は、オーストラリア国内では難民収容施設がある場所として知られています。この施設は2018年に閉鎖されたものの、翌19年に現モリソン政権下で再開された施設。ここでの滞在が劣悪な環境であることに不満を募らせた難民たちが暴動を起こしたことで話題に上ったことから、この島に対してマイナスなイメージを持つ国民も少なくありません。このマイナスイメージを抱える島での隔離措置を、「オーストラリアの島流政策」と揶揄する媒体もあったようです。

トム・ハンクス夫妻が新型コロナに感染

オーストラリアでも感染拡大のニュースが連日報じられるようになった頃、映画の撮影のためにオーストラリアに滞在していたアメリカの人気俳優トム・ハンクス(Tom Hanks)と妻が二人ともコロナウイルスに感染していることを発表し、世界に衝撃が走りました。公表後、ハンクス夫妻はオーストラリア国内の医療施設で回復を待つことになり、トムは自身のSNSなどを通じて、闘病の様子などを発信し続けたことメディアで大きく報じられました。

時を同じくしてオーストラリアの政治家からも感染者が現れたことが報じられ、確実にコロナウイルスが私たちの生活に忍び寄っていることを印象づけました。

COVID-19での死亡率は、年齢に伴って高くなることが報告されており、二人とも既に還暦を迎えていたハンクス夫妻がこの病気から完治することはあるのか、メディアは二人の動向を注視していました。幸いなことに、3月も半ばに入り、夫妻は無事完治して医療施設を後にしたという朗報が伝えられ、ファン、そしてエンタメ界は安堵に包まれました。

そしてオーストラリアでも買い占めが始まった

日本でのトイレットペーパー、マスク、消毒液の買占めの現状が伝えられて間もなく、オーストラリアでも同様のことが起こりはじめました。

資源大国であるオーストラリアでは、トイレットペーパーなどの生産に利用するパルプの85%は国内産で、中国をはじめとする海外からの輸出には頼っていないという事実にも関わらず、最初に店頭で売り切れが相次いだのはトイレットペーパーでした。

マスクは森林火災の際に需要が跳ね上がり、政府が介入して供給を安定化させていたため、森林火災の時ほどの品不足は見受けられず、消毒液についても販売個数に制限をかけてはいるものの、薬局に行けばなんとか手に入るという状況が続きました。

しかし3月半ばになり、ヴィクトリア州とオーストラリア首都特別地域で非常事態が宣言されると、買占めに拍車がかかりました。トイレットペーパーだけでなく、ティッシュやキッチンペーパーなど、紙製品は店頭から姿を消し、米、パスタ、小麦粉、そして缶詰などの食料品も店頭で見ることがなくなりました。

この深刻な買占めからくる物不足の現状を踏まえて、モリソン首相は「パニックバイ(パニックによる買占め)は控えよう。大手スーパーマーケットは安定した購買ルートを確保できているので、パニックになる必要な全くない」と国民に事態の収拾への協力を呼びかけましたが、状況は改善されておらず、スーパーには行列ができるような状況が続いています。

オーストラリアの二大スーパーマーケットチェーンの「コールズ(Coles)」と「ウールワース(Woolworth)」は、午前7時から8時までの1時間を「スペシャルアワーズ」と称して、高齢者や障害者が混雑に巻き込まれず安心して買い物ができるよう策を講じました。

めまぐるしく変化するオーストラリア政府の対応策

コロナウイルスの感染拡大を受けて、オーストラリア政府は次々に拡大防止に向けた対策を発表しています。

店頭から商品が消えていくのと同時に、学校や地域の行事、さらにはスポーツイベントなどの中止や延期が発表され、就学時を抱える親たちは、「学校はいつ休校せざるを得なくなるのか」とささやきはじめました。

そんな中、モリソン首相は「公共施設、学校に関してはできるだけ通常通りでお願いしたい」と各種機関に要請しました。これは感染防止に成功しているシンガポールの例に倣ったものだとして、さらなるパニックを防止する意味でも効果的と見られているといいます。さらにモリソン首相は、オーストラリア在住者の海外渡航禁止そしてインドアは100人以上、アウトドアは500人以上の集会禁止を発表しました。

これに伴い、大手航空会社のヴァージン・オーストラリア(Virgin Australia)が国際線の運行停止を発表、オーストラリアのフラッグキャリアであるカンタス航空(Qantas Airways)もこれに続くものと見られていました。ヴァージン・オーストラリアの発表の翌日、オーストラリア政府が発表したさらなる防止策は、オーストラリア在住者以外のオーストラリアへの渡航を禁止するというものでした。これによってカンタス航空は、同社国際線そして関連会社のジェットスター(Jetstar)の国際線の運行を2ヶ月間に渡って全て停止・国内線については60%減便することを発表しました。


南半球の冬

ご承知のとおり、オーストラリアが位置する南半球は日本とは季節を逆にしています。そのため、これから冬期に突入する南半球でCOVID−19がますます猛威をふるう可能性、そしてインフルエンザが蔓延する可能性を示唆し、非常事態が長期化することを懸念しています。

医療関係者は、「今年ほど強くインフルエンザの予防接種を受けることを勧める年はないだろう」と、予防接種の重要性を説いています。オーストラリアでは州によっては薬局で予防接種が受けられるので、より多くの人が気軽に予防接種が受けられるとしています。薬局で予防接種が受けられるという状況については、医療関係者からは「医師が患者のチェックあアップをする機会が失われる」と懸念する声も上がっていました。

しかし、今回のような非常事態に接してみて、夜遅くまで営業している薬局で予防接種が受けられるようになったことは、懸念よりプラス面の方が大きいように感じる人も多いのではないでしょうか。

まとめ

感染が拡大すると共に、多くの企業や団体が職員のテレコミュートを推進しています。COVID-19終息後、オフィスワークの在り方にも大きな変化が訪れるものと、不安を感じる人も少なくありません。「イタリアのようにロックダウンという最悪の事態に発展してしまったら」と夜も眠れないという事業主も多いことでしょう。

モリソン首相は経済救援策についても次々に発表していますが、果たしてそれらの策が十分と言えるのかどうかは未知数です。

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本記事は、2020年4月10日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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